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はーいカットぉ!

我映画のリテイク集とか舞台裏とか好き。

1はーいカットぉ!


雲の上にて私たちはもめていた。正確には私がゴネてるんだろうけど、そんなものは直前に、しかもキャストが承諾していない高高度降下させる台本を見せてきたのが悪い。


「いや、いやいや、いやいやいやいや、嫌ですけど!?」

「でもほら、レイの世界には清水の舞台から飛び降りるって言葉あったよね。それと一緒だよ、きっと」

「スケールが違い過ぎる!」


たかだか12mと1万mを同列のように扱わないで欲しい。恐怖を感じるという点では同じでも、怖い!って声でる恐怖と絶句ないし笑うしかない恐怖は間が隔絶しすぎてる。

しかしそんな私の必死の抵抗虚しく、出番が終わったからカメラを構えてる天使もカンガルーだから空を飛べるとついてきたカンガルーちゃんも「ほら、いつものアレやれよ。」みたいな眼でこっちを見ていた。


えぇ…これマジでやらないといけないパターンですか。いくらステータス高くても全然本編で使ってない設定だし不安しかないんだけど…。


「いやーキル、これは私ダメだと思うよ。これやらされたらキルとの心が離れる気がするよ。物理的にも。何なら私からもハートが離れるかもしれない」

「大丈夫だって。レイならいけるさ。冷たくなるのは僕への態度でもレイの体でもないよ」

「いや何上手くも怖い事言ってるの待って待って押さないでこれほんとに落ちちゃうから落ちるおちああああああああぁぁぁあっっっ!」




2よーいアクション!


眼を開けると美少女がいた。


フードから覗く嫉妬するほど整った顔はAPP18と言われても納得できる程の美しさで、傾国の美女ってこの娘みたいな人を言うのかな、と思った。起きていれば外面だけはクールな印象を与えそうだけど、口を半開きにして寝ている今はいつも通りの安心感と残念感を与えている。

横になっている頬に掛かる髪は(私もだけど)ロクなケアをしていないくせに綺麗な白髪で、手を枕に眠る姿は一応は天使の姿を彷彿とさせる。


可愛いでしょ、この娘私の彼女なんすよ。


再確認する事暫し。


黙っていれば美少女な姿に思わず何でこうなったかどうでもよくなっていた私だが、もうちょっと近ずかないとと試みて気付いた。


手に手錠のような形の光がが付いていて拘束されている事を。あっ今気づいたけどなんか今いるとこベットっぽい。


ん?というか私の服装もワンピースになってる…自分で着替えるって言わなかったっけ?ってまぁいまはいいのだよそんなこと!


「………?????…っ!」


バチンっ


「あっ」


私を拘束していた†光の手錠†が弾け散った。

………………。


「カットです!えっいやレイさん何で手錠ぶっちぎっちゃったんですか???」

「いや違うんですよ。これはですね耐久が無かった手錠さんサイドに問題があると思います」

「ふーん?まぁ手錠が悪いと仮定して、その手錠誰が作ったか知ってる人いるかな?」

「「………」」


キルの質問に沈黙する私とカンガルー。準備の時点でどったんばったんしてたんだがら、この手錠を誰が作ったのか、そもそもどこからか調達したのかもしれないモノについて覚えてるワケ───

あ。

…そういえば台本見た時に「まぁこんな小道具壊す事ないでしょwww」とか言って私が作った気がするな…。

………。


「あっそれとレイさん!地の文結構おかしくなってましたよちゃんと思考制御してください!全部台本通りにしなくてもいいんで!」

「地の文は…後で編集すれば何とかなるよ、うん。それと確か軍事関連枠ってことで、手錠はグレネードに任した気がする」

「そうですか。グレネードさんですか。お給料のグレネードを減らす必要がありそうですね」

「手抜きの仕事は癖になったら困るからね」


キルが私に視線を向けながら何か言ってるけどあーあー知らなーい。

メイン()を生かすためのサブ(グレネード)の犠牲。トロッコ問題と一緒ですね。




3すりー、つー、わん、カッ!(SE)


温泉。それは日本人の魂である。それが露天ともなると魂超えて輪廻転生ですよ。まぁ私は輪廻転生してないんだけど!HAHAHA!


えーと三話目当時は銭湯みたいなところと描写していましたが、それは露天風呂の意です。修正するの面倒だしね。


というわけで露天風呂。異世界日本人のテンプレを外さず、私も露天風呂は大好きだ。煙る視界の中外の冷気に耐えながら石の地面を進み、熱い温泉に浸かり、顔にお湯を掛け足を延ばす。それだけで体の奥底から満足感が湧いてくる。

家のお風呂より数段熱いお湯だとか、伸ばした脚を撫でる柔らかいお湯の感触だとか、お湯を流した顔に当たる風の冷たさだとか、全体を照らす淡い電球の光だとか。そういった様々な「風情を感じる」ものが合わさり、日本人の温泉たるものを確立しているのだ。


温泉に浸かると幸せな気持ちになる。満たされた気持ちになる。温泉に浸かった今この瞬間は、全てがどうでもよくなってくる───。



「…レイのセリフが中々聞こえないと思ったら、完璧に溶けちゃってるね」

「ふぃー生き返る、ぐらいは言ってくれると思ってたんですけどね…」

「ちゃんとレイを取扱説明書の通りに準備したかい?事前に温泉に漬けて、のぼせる直前に出す」

「準備しましたよ!この撮影の10分前に!私も一緒に入りましたもん。タイミング見計らって、「のぼせましたか?出ますか?」って聞いたら「うん出る」って!」

「あぁ…レイは人と一緒に入ったら、その人と一緒に出たがるタイプだからね。けど自分の限界には挑戦しないから、レイがのぼせたと自分で判断して一人で出るまで待つ、が正解だったね」

「めんどくさい人ですね。取説に書き足しておかないと…」




?回しとけ回しとけwww


次のシーンに向けて確認しとこうとイスに座って台本を眺めていると、唐突に私を浮かせたキルがイスを奪い、その上に向かい合わせになる形で座らされた。台本の奥から微笑んでいるキルが見える。


「あのーキルさん?まだ撮影始まってないし、できれば外で見せつけるのは止めて欲しいんだけど?」

「んん…?見せつけるも何も、いつもこうじゃないか」

「いやそうだけどそういう事じゃなくて…ああもういいや…どうせカメラ回ってないし」

「あっ面白そうなので回してますよ」

「えっ嘘でしょちょっと待って撮影時ならともかく普段もこんなのとか私知られたくな───




4はーいカットぉ!


まっそれに、キルなら本当に嫌な事はしないだろうって信頼はあるしね。


「無理やりは趣味じゃないんだよね」


こわ。(ほんとか?)



「…はーいカットでーす!これで第4の半分終了ですお疲れ様です!…最後ちょっとおかしかったですけど編集で直しておきます」

「内なる心の声が入っちゃった」

「表面だけの抵抗なのにね」

「別にレイさんが無理やりだろうと同意だろうとどうでもいいんで、撮影時だけはちゃんと演技してくれません?」

「思考までも反映する演技とか厳しすぎない?」


まぁやってるんだけどさ。いえーい皆見てる?今から皆のレイちゃんの思考を、撮影用に変えちゃいまーすw


「できなくはないなら出来るという事です。それが日本人に与えられた認識なんですから」

「日本人に対する風評被害じゃん」

「カンガルーですから。じゃあ私は少し編集してくるんで、休憩しといてください」


カンガルーだからとかよくわからないことを言い残してカンガルーちゃんは編集室となるランダム部屋君に跳んで行った。


「時間あるっぽいし、飲み物取に行ってくるねー」

「どこに?」

「鍾乳洞が見れる地底湖」

「あんまりお屋敷に負荷かけちゃダメだよ」

「私のために生成するのが生きがいだってランダム部屋君が言うから…」


キルに手を振りドアの向こうへ。(言ってない)とどこからか聞こえた気がするけど無視。

着ていたわんこパジャマを普通の私服に戻し、靴下だけ脱いで地底湖につける。ひんやりしていてとても気持ちい。

水が滴り地底湖へと落ちる音が染み渡る。どこからか照らされる自然光で浮かぶ自然の美しさをゆったりと鑑賞するこの時間はいいものだ。本来砂浜で踊ってるはずのダンスしてるカニたちはよくわからないけど、寒いと感じる程に冷えた空気の中ではツッコむ気力すら無くなってしまう。


「駄目だ駄目だ!ダンスのキレが足りねぇ!もっと体を揺らせ!大きく体を動かすんだ!鋏の振りが甘い!そこっ!リズムとずれてるぞ!お前は位置が悪い!…そう、そこだ!」

「何やってんの?」


ツッコんだ。いや、こんな(地底湖)場所にこんな(宇宙服)奴がカニにダンスの指導してたらそりゃツッコむよ。


「んおぉ?何だレイか。俺は見ての通り蟹にダンスアドバイザーをしている。時給は藻1kgだ。お前もダンスの練習に最適な場所を望んだのか?」

「アドバイス相手がカニじゃないとこんな場所選ばれないよ普通。休憩しに地底湖を指定しただけだよ、はぁ…」


何で私の周りの人たちはこう、どこかズレた人しかいないんだろうか…。



「この前さーキルとお医者さんごっこしてたらさー」

「ごく普通に振られるごく普通じゃない話の振りだなぁおい」

「聴診器胸に当てて、命の鼓動を聞こうとしたんだよ。そしたらどんな鼓動が聞こえたと思う?」

「あー…超鼓動がゆっくりだったとか?3秒に一回。分間20」

「どんちきどんちきって、愉快な音楽流れてた」

「そうはならんだろ」

「なっとるやろがい!」


カニたちは自主練タイムに入り、私と宇宙服は雑談に興じていた。宇宙服も足を地底湖につけ、冷たくて気持ちいなとコメントしたが、宇宙服は脱いでないのでほんとに冷たさを感じているかは疑問なところだ。


「そっちは?あんだけ濃いメンツいるんだから、面白い話の一つや二つは絶対あるでしょ」

「毎日が面白れぇからそりゃあるぞ。ペスト医師式健康運動促進会の日記Ver334とか、勝手にギネス記録挑戦させバトルとか、どきどき人体実験万博博士とか」

「もうそれで小説かアニメか映画作りなよ」

「もうある」

「あるの!?」


何でそんな面白そうなの渡してくれないの熊ちゃん。ひょっとして身内の恥だからか?それだったらそういうの気にし無さそうなグレネードから調達する必要があるかもしれない。


「あっ休憩終わりだって呼び出しきてる。から戻るね。宇宙服の出番ももうちょっとだからいつまでもアドバイザーしてないでよ」


足湯(冷水)から脱け出し岩をぺたぺた歩いてドアの方へ。次の衣装はなんだっけな。誰だよこんなころころ衣装変わる台本書いた奴。


「安心しろ。既にバックダンサーとして使うには十分だ」

「多分使わないよ!?」




6はーいカットぉ!


ヌッ。

大木達の間から私のリクエストに応じティラノみたいな顔したのがでてきた。なお顔のサイズは2mぐらい。端的に言ってやばい。

スッ。


あっ、目があった。


……………………………。


「あー…本日はお日柄もよく…」


ヌッ。


…頭消えた。どっかいったのかな…。


………漏らしてないよね…?


「おまたせ」


恐怖で足がガクガクしたりするどころか指一本動かせない中、自分が漏らしたのかを心配しているとキルがやってきた。

待ってたんだよ…この時をよぉ…!(涙目


「きっきるっ!私くらいの体格の大きい顔した奴がこっちにぬって!」


キルが近くにいるという安心感か───


「…いや、カットだな。カットカーっとぉ!」


キルの肩を掴んだまま私は不満顔でカットを出した宇宙服を睨む。


「えー今のダメー?焦った声とか表情とか、それなりに演技できたと思ってるんだけど」

「んにゃ、焦ってたにすりゃセリフがすらすらと言え過ぎてる。もっと噛んでいいぞ。いや噛むのはダメだな、どもってくれ」


どもる…どもるか。自然にやるのは難しそうだなぁ。しかし嫁の前で弱音を吐くわけにはいかない。

ちらっと横を見るとキルは宇宙服の奥のスロースを見ていた。視線の向き的にこれでキルが私の肩に手を置けばフォーリンラブの完成である。やらないけど。


「あー、あー…ききききっききる!い、いみゃわたわたしくらいの───」

「いやそれはどもり過ぎだろ」

「注文の多い映画監督かな宇宙服は」

「二個目だろまだ」


そういう事じゃないんだよという気持ちを表情に変えてると、スロース君から笑われてしまった。


その後はキルに頬突っつかれて表情を元にもどし、二回のリテイク後オッケーをもらいましたとさ。

そんなものは直前に、しかもキャストが承諾していない高高度降下させる台本を見せてきたのが悪い。

SCP-1428-JP 高高度降下低高度開傘するメリーポピンズ


カンガルーちゃんも「ほら、いつものアレやれよ。」みたいな眼でこっちを見ていた。

SCP-1598-JP ほら、いつものアレやれよ。


メイン()を生かすためのサブ(グレネード)の犠牲。トロッコ問題と一緒ですね。

愛にできることはまだあるゆかり 面白いよ、いやマジで。こんな小説読んでないで見てきなさい


本来砂浜で踊ってるはずのダンスしてるカニたちはよくわからないけど

Crab Raveという音楽。海外のカニのゲーム。私はやったことない


ペスト医師式健康運動促進会の日記

ペストマスクを被る事でしずらくなるため呼吸強化、薬草を常時吸い込む事による免疫強化、その状態で運動することでさらに効能Up!を促進するペストマスクふんどしネクタイオンリーさんの日記。

Ver1 「それペストマスクの必要ある?」


勝手にギネス記録挑戦させバトル

唐突に現れては対象に無理やりギネス記録(自称)を挑戦させるグループ。大体抵抗されるのでバトルで勝ったらやらせる。負けたら焼き土下座記録を挑戦し始める。最高記録182℃で11分52秒。


どきどき人体実験万博博士

万博博士による人体実験の映像記録

第一記録 根性(HPが1残る)VS自爆(自身に致命ダメージを与える)

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