イカれた勇者パーティーの面子を紹介するぜ!
寝るときパっと思いついて書きたくなった紹介文
横を見るとキルは既におらず、残されたのは毛布一枚でハンモックに揺らされる美少女一人だった。もーキル、モーニングコールぐらいしてくれてもいいのに。おはようのキスも可。以前それ頼んだら朝から大変なことなったけど。
急に「TS男子と女の子は百合か否か」を語りたくなったので、くノ一衣装を着こんでギルドに転移してきた。ちなみに私は認める派。
お立ち台に飛んできて、3秒ぐらいシャキーン(`・ω・´)とポーズしてから周りを見ると、野球観戦を大人数でする店が如く、酒とつまみと共に容姿恰好色とりどりな問題児達が大画面モニターみたいな物の下に群がっていた。だからこの世界はファンタジーだっつってんだろ。見合わないモノ出すんじゃありません。
誤解を解いたのか、受け入れられたのか。熊ちゃんが普通に問題児に紛れてるのを見つけて、肩を叩く。指名です。
「熊ちゃーん。これ何で集まってるの?」
「ん?レイちゃんか。いやね、ミレーシャって国から勇者パーティーが出立するっていうから、皆で動物園しようと遠視魔法をモニターにジャックしてるのよ」
「わぁ趣味悪。それTS男子は百合になるか論争より楽しいの?」
「論争できるんならそっちの方が楽しいかもしれないけど、戦争になるじゃない」
「過激派はどこにでもいるからねぇ」
でもそんな争い、それすらもひっくるめて楽しいのが論争なんだよねぇ。バカみたいな話題で全力でバカになって言い争うのはとても楽しい。バカみたいな話題ではないけど。おいどうでもいいとか言ったやつどこ住み?リア凸するよ?
あ、雑談してたらモニターついた。最初に映ったのは…パレード風景?ご丁寧に音も付いてる。騒いでいる問題児にかき消されかけているけど、歓声と音楽からして多分パレート風景だろう。出立って言ってたし、多分今がその真っ最中なんだろうね。
勇者パーティーのメンバーは四人で、愛想よく民衆に手を振っている者がいれば、気まずそうに恐縮している人も、ローブに隠れて表情が見えない人もいる。
うぅん全然わからない。
「ヘイ解説!」
「説明しよう!」
わからなかったら聞けばいい。オタクは自分の知識を披露したい生き物だ。
「まずはリーダーのコンドウ・ケイト!元の世界で「にぃと」の称号を持つ程の猛者だった、異世界人だ!無職で役に立たないと最初は罵られていたが、何故か恐ろしく強く無双している!酷い境遇だった奴隷の女に色々教えつつ旅をしている!」
「凄い!なろう小説で主人公してそう!」
「ちなみにガチで頭がお花畑だったのでキルさんの管轄外だ!」
君たちでもいけてるのにダメだったんですか。やばそう。
「続いて右のフード、マーカス・オレボワール!稀代の魔術師だ!古代のロストマジックを思うが儘に操り、古代に生きていた程と謳われているぞ!農村出身という経歴を馬鹿にする奴等を跳ね除け、弟子のように慕ってきているクラスメートと旅をしている!」
「凄い!なろう小説で主人公してそう!」
「奥の怪しい奴はダルベット、暗殺者だ!彼はトイレに行く事が多く、大事な決戦前もよく消えるぞ!彼の功績は、何故かパーティーで討伐にいってもボスが既に倒されていたり、弱っていたりで、ロクな実績が無い!訓練の時もたまに驚く程上手くカウンターしてくるが、ま、まぐれだな!今は仕事で助けたとかいう少女と旅をしている!」
「凄い!なろう小説で主人公してそう!」
「最後は左の能天気そうな奴だ!奴はジュカ!正直一番やばい奴だと思っている!山奥で神様に育ててもらったとかアホ抜かしているが、ドラゴンを初級魔法、「ファイヤーボール」で倒しておいて、「これ、普通じゃないんですか?」とか言っちゃう野郎だ!世間知らずにも程があるな!監視と国からつけられた女騎士と旅をしている!」
「凄い!なろう小説で主人公してそう!」
「あぁ、そういえば最近もう一人追放された奴がいたな!トーナバスっていうバッファーだ!役立たずで追放されたらしいぞ!支援しかできない奴はいらないってな!追放された後は、故郷の村に帰って幼馴染と共にスローライフを満喫しているらしい!」
「凄い!なろう小説で主人公してそう!」
「後なんかたまに動いているように見える剣とか勇者パーティーに付きまとってるペットの狼とかも怪しいな!」
「解説面倒になってきてるじゃん」
キルと何かしたい。
しかしこれといってしたいものが思いつかない。
そもそも私さー、さーちゃんとかと三人で集まっても一人はスマ〇ラ、一人はようつべ、一人はあぺとかで、折角集まっても別行動だ。自由だね。いや仲はいいはずなんだけど。
んーんーんー。
まぁ何も思いつかなかったらとりあえずギルドへ。ツッコミ要員がいるだけで大分変るからね。
シャキーン(`・ω・´)。
さーて今日のギルドは~?
「タッチ~あなたが鬼よ!」
「どこへ行こうというのかね!どこへ!どこ…ちょっはやっ追いつけねぇ!」
「待てやゴルルァア!耳揃えて返さんかいやボケがぁ!」
鬼ごっこ中だった。やだ大人数でやる鬼ごっこ楽しそう。ギルド内でやるもんじゃないと思うけど私もやりたい!
「へいキル!鬼ごっこしようぜ!」
ルール説明。
ギルド中心の周囲一kmでの増え鬼ごっこ。最初の鬼はキル。逃走者100人ちょっとの内一人でも30分逃げ切ったら勝利。身体能力は「速度(足の速さ)、持久力、運動能力(アクロバティックな動き)」から6ポイント振り分け(各上限5ポイント)。転移系統の魔法はなし。鬼になったら頭上にゲームみたく赤の逆三角形が付くらしい。
ルールとしてはこんなもの。穴があったとしてもこれ以上思いつかない作者が書く登場人物達なので問題ないです。
5分の初期逃げ時間を貰って、はいよーいスタート。木の上で遠くに見えるギルドから打ちあがる花火(開始の合図)を確認する。キレイだなー。
「でもさーいくら転移系統封じられてるって言ってもさー、キルにマーキングの魔法とか使われたら嫌だよねー。素の身体能力は皆一緒にしてるとはいえ、キルの魔法底が見えないから絶対追いつかれるー」
脳死でポイントを速度に振り分けつつ、近くの木に登っている世紀末モヒカンに話しかける。この人見た目に反して礼儀正しい好青年なんだよね。ひょっとしたらこの性格だからこそ世紀末モヒカンになった、深い事情があるのかもしれない。そんな深く掘り下げないけど。
あっ余った1ポイントどうしよう。んーまぁ使わなくてもいっか。これが強者の余裕って奴?
「まぁ安心してくださいよ。何もマーキングできるのがキルさんだけじゃありません。もちろん、僕のデータにもマーキング魔法はあります。この魔法を使った鬼ごっこの勝利確率は、95%は固いですね」
「安易なデータキャラ止めろ」
こいつメガネ無いのにメガネをクイっとするモーションしてる。君脳筋みたいな恰好してるんだから大人しくヒャッハーしてなさい。
「さぁキルさんの位置を特定しましょう!そう、マーキングによるとキルさんの位置は…な、い?バカな、こんなこと僕のデータに無いぞ…!」
「安易なデータキャラ止めろ」
頭を抱え、震え始めるモヒカン。木の上でやってるから木がガサガサ揺れて、葉っぱのこすれる音とかがうるさい。
小さい子がやってたら可愛いんだろうけど、トゲ肩パット付けた上半身裸の男がやっているともはやホラーまである。
はぁ…ここは「落ち着いて!友情パワーでなんとかなるよ!」とか慰める場面なんだろうか。私データキャラぬきたしぐらいでしか見たことないからわかんない。
さっきからほんとガサガサうるさいしさっさと慰めてキルの観測でも───
ドサッ。
「まず1」
嫁の声が聞こえると共に、モヒカンが木から崩れ落ち地面に横たわった。まるで肩を潰さんとしたばかりに右肩から腹部にかけて黒い靄が走っており、その顔は白目を向き体液を垂らしている。その腕はぶるぶると震えながらも、地面に「まおう」とダイイングメッセージを残した。
増え鬼って言ったよね?何で殺したの???
「安易なホラー展開も止めてよさぁほんと…!」
私はスタミナに1ポイント振って脱兎の如く逃げ出した。
「半径1km地点には、崖とも言える切り立った山脈がギリギリ入っています。そう、ここだね」
「HQHQ!こちら崖上拠点!戦況はどうなっている!?応答しろ!」
『そんな…お前は…何故、何故裏切ったんだ!』
『えへへ…上かぁん…こちら側も、案外イイですよぉ…?ほら、ちょっと体を触れるだけでいいんです…それだけでワタシと一緒に…ねぇ…?』
『…クソッ!クソックソックソがあああぁぁぁあ!』
「ダメだ…砂漠拠点も侵攻されている!」
「ねぇ何かドラマ生まれてるけど」
宇宙服はなおもトランレシーバーに叫び続けていたが、やがてガックリと膝を着き、砂漠拠点壊滅を伝えてきた。まぁ砂漠拠点の人達も楽しそうだったからいいんじゃないですかね。
「へーい残り人数どのくらい?」
「ポイント振り分け画面から見れるぞ。さては説明書読まないタイプだな」
「詰まったら見りゃいーの。後半分くらいかー。まだ10分しか経ってないのに半分はやばいなー」
遊びとはいえ勝負は勝負。キルが相手に回っている以上勝ちたい。というか負けたらナニされるかわかんないからね。
増え鬼だっていったてずっと逃げ続けることもないし、バレるまではここでハイディングしとこう。
私は安置で追いかけっこしてる人と鬼を蚊帳の外感出して見守るのも好きなのだ。
「おーいお嬢ちゃん。大変だなぁって雰囲気出してるとこ悪いが、これ位置バレてるぜ?」
「…えーマジで?」
なんでさ。ここマップで言えば端っこだぞ。それに高台だし…もっと探しやすい場所あるやろ!
「あぁ。今トランシーバーから『ボス…俺は本当に着く側を知りました。ボスにも招待したいと思います』って来た」
「宇宙服のせいじゃぁん?」
急なドラマ出演の巻き込みは勘弁してよもー。
崖から下を覗くと、岩肌を魔法的なパワーで張り付いて登ってきてる複数名が見えた。飛んでこないだけまだ良心的かー。
「じゃ、生きてたら勝った後にってね」
「おうよ。2年後、シャボンダマ諸島で」
私はポケットから取り出したパラグライダーで脱出した。実はパラグライダーできるんですよ。宇宙服は傘を広げてふわふわとしてた。すごい無重力だ(?)!
「どれだけ更新を望もうと、復活を希おうと、自身の手で作ったものじゃない限り、どうすることもできない。悲観、絶望、諦観。素晴らしきものも、魅力があるものも、次々と供給される新しいものに埋もれ、ネットの広大な渦に飲まれ、やがては人の記憶からも消えていく。そう、結局は自分でどうにかするしかないのだ」
「…つまり?」
「クソ雑魚魔王ちゃんとクソつよドS勇者ちゃんの百合が見たい」
私はキリっとした顔で言い切った。夢は声に出さねば叶わない。大事なのは恥ずかしがらない事。
カンガルーちゃんが「知らねーよそういう話は嫁にでもしてろ」って感じの視線を向けてくる。けどさーこの話をキルにしたら多分私がクソ雑魚魔王ちゃんに転生させられるよ?記憶をいい感じに処理されて。あの娘私が幸せなら私の意思は無視してもいいと思ってる節がある。これだからナチュラルサイコパスは。
「こうね?ついぁたーでね?いい感じのね?そうゆう画像がね?流れてきてね?こう、妄想が捗るけど、もっとガソリンが欲しいって感じで…」
「この世界ついぁたー無いですよ」
「…私の心の中にはあるんだよ」
心の中であったらあったで、それは実際には繋がってないけど自分は世界と繋がってると思い込んでいてやばいのでは?私はそう思ったが口には出さないことにした。
あの後、フィーリングでパラグライダーを操り空中を満喫していると、地面から迫撃砲が飛んできた。Q.何で殺そうとするの?A.だって生きてるんだもん。参加者全員増え鬼って説明されてるはずなのに何で武器持ち出すんですか?
結局私は飛行困難になり、グレネードをバラ撒きながら不時着した。そこから視界切れそうな森を見つけて、森に流れて、たまたまカンガルーと合流して歩きながら話してるって感じなのが今。
カンガルーはどうも運動神経とスタミナに振ったようで、その強靭な脚を活かし森で立体機動して逃げ切る算段らしい。大丈夫?あいつら森ぐらい焼いてくると思うよ?
「嫌だったら言わなくていいんだけどさー、カンガルーちゃんがその姿になったのって何か理由あるの?どうしようもなくなっちゃったんなら、キルに頼んだら人間に戻してくれると思うけど」
私根っこの部分はとても優しい慈悲溢れた美少女だからね。自分が手を指し伸ばせる範囲の人達には幸せになって欲しいのだ。私がこれ以上の幸福がないって所にいる余裕もあるけど。
私が優越感に浸ってる事を察したのか、カンガルーちゃんは私カンガルーの事ちゃん付けしてたっけ読み返そあーしてなかったまいいやカンガルーちゃんはまるで嫌な人を相手にするような態度になった。ひどい。
「いえ別にこの姿に不満はないですよ。何なら望んだ姿です」
「ケモナーなの?名前はカンガルー?」
「コイツ性癖を先にって感じに言うの止めてください。違いますよ。私転生した時11歳だったんですよ。か弱い少女と異種族な動物を比べて、カンガルーを選んだんです。…今は転生してから二年ぐらいで、先日13歳の誕生日を迎えました」
…今13歳?まーじで?転生したとき11歳ってそ歳でそんな判断できるほど人間できてたの?凄いね。私11歳とか何してただろ。泥団子でも作ってたんじゃないかな。
まぁとりあえず。
「おう敬語使ってね年下だし。あと午前ティー買ってきて」
「だから今まで全員に丁寧語で喋ってたんですよレイさんにはたった今丁寧語も使いたくなくなりましたが」
「あー丁度反抗期のお年頃だもんね」
「違います」
これだから多感なお年頃は難しい。素直になりなよ子供なんだからー。




