事後説明
最悪な目覚めだった。
身体は疲労困憊だし汗やら何やらで気持ち悪いし首にはチョーカーらしきものが巻かれていて息苦しく感じるし。私マフラー息苦しく感じるから着けない人。耳当ても嫌という理由で寒くないように髪伸ばしてます!
んーお風呂入ってる時とかさ、暖かいお湯のシャワーだったら何も思わないけど、地面に落ちたぬるかったり冷たかったりしたのちょっと汚く感じない?私は感じる。今そんな気分。
ぐったりと四肢を投げだしながら、お風呂入りたいなと思いながら知らない天井を見ていると、ドアが空く音が聞こえてきた。
「おはよう。初夜後の目覚めはどうかな?」
元凶だった。最悪だよマイハニー。
なんなら初夜後でもない。体感時間どう考えても3日は超えてたぞ。やっとまともに目覚めれた人に対する言葉がそれですか。暫くは起きたら次の初夜だったからな。次の初夜とは一体。でも本当にずっと調きょ…うっ頭が…。
首すら動かすのが億劫な中、無理やり動かし声がしたほうを見るとキルちゃんは湯気が立つお皿を乗せたトレイを持ってきているのが視界に入った。朝ごはんらしい。私普段食べないタイプ。なんならチョコ一個を朝ご飯と言い切るタイプ。
「僕と生活するからには毎日食べて貰うよ。健康的とかまでは言わないけど、食べなきゃ持たないかもしれないのを放っておく事はできないしね」
多分その[持たなくなる]原因を作るのはキルちゃんだと思うんだけどそこんところどう?というかさらっと私の心読んでるねこわ。
「それも含めて食べながら色々説明しようか。あーんしてあげようか?」
「口移しして欲しい」(ウルウル目おねだり)
「話が進みにくからダメ」(有無を言わさぬ笑顔)
むぅ。でもあーんもそれはそれで…と思ってたらスープが並々と注がれたお皿を口に付けられた。ん?
「レディ?」
えっマジで?あーんは?
「んんんっんにゅにゅにゅぅうううんっん!?」
ここでむせてスープを溢すのは簡単だ。すぐ楽になれる。
だが諸君。学生の頃を思い出してくれ。水筒でお茶を飲んでいるとき、口から水筒を離せないように手で押さえつけられるイタズラをされたことはないか?私はある。あの時も止まぬお茶を溢さず飲みきり、友人の手から逃れ復讐を果たしたではないか。
思い出すのだあの頃を。思えば、あの経験は今を覆すための布石だったんだ!そう、私はこんなところで負けるわけにはいかない!必ずしも報復を待ってこのスープ凄いアツい私猫舌ッ!!
私はむせてスープを溢した。
溢したスープを私の肩を抑えながらキルちゃんは軽く舐め(舐めたところは私の鎖骨辺り。くすぐったくて悶えた)お風呂に入ることを提案してきた。スープ以外でも私は汚れていたので文句を言わずお風呂に連行されることにした。私、汚されちゃった…。どうせならお風呂に入ってからゆっくり冷めたスープ飲みたかったです。味は普通に良かったし。いや風呂で飲むのも乙だな…。今度提案してみよう。
ベットとテーブルしかない水色ばっかな部屋からドアを開けると銭湯みたいなところに出た。脱衣場すらない。
「どういうことなの…」
「廊下を飛ばしただけだよ。僕の家はパズルみたいに空間を組み合わせて構築されてるからね」
それ廊下いる?直接部屋移動していけるならいらないよーな?
まぁいっか支障はないし。キルが(親愛を込めた呼び捨て)指を鳴らすと全裸になったので(首のチョーカー覗く)何かいつのまにか普通に動くようになった体をお湯に投げ出した。先に体を洗え?めんどうだからやだ。
「ふぃ~~~…生き返るぅ~」
壁(岩)に背中付けて首を上に向けて眼を瞑る。額に乗せるタオルがないのが残念。
「生き返ってるんだよねぇ」
「待てキサマどこまで知っている」
私はまだキルの事信頼しきってないんだからねっ!これで心を許したなんて思わないでよねっ!
「心を許さず身体を許したの?」
「許した記憶は確認されていません」
「後半割と快楽に溺れて素直になってたのに言うね」
こんな…っ…こんな凄いの知らないっ!(真顔
「まぁそこらへんはまた今晩ね。どうせ屈服させるし」
不穏な言葉を残しつつキルは私のそばに浸かって来た。そしてお湯を満喫していた私を抱え自分の膝に乗せる。私は…キルもだけど、私はキル以上に小柄なのですっぽりと抱えられてしまう。キルはそのまま私の肩に首を起いた。
「僕はこの世界では上位の立場にいるんだよ。この世界を守る…いや、管理していると言ってもいい。そして管理するのは神にとっても都合が良かったんだろうね。神は僕に様々な事を教えてくれた。君のような事も含め、ね」
「んー…あー…私の事は事前に知っていた、と?」
「うん。通常の転生者はマークだけされる。彼らの多くはこの世界に脅威となる力を持っているけれど、僕に敵うほどじゃないからね。問題を起こすまでは放っておく事になっている。基本的にはね。でもレイは違う。力大きすぎた。今、対処しなければ僕が負ける。それほどだったんだ」
「…で、その対処がこれ、と?」
「自分より優れた人を支配するっていいよね。優越感凄いよ」
「やば」
ふーむ。私ってそんなに凄かったのか。今から頑張ったら下克上できないかな。そしてキルを屈服させれないかな。
「一度奴隷契約した以上は無理だよ。拘束耐性低かったのは嬉しい誤算だったね」
「ちくせう」
「奴隷契約の証はそのチョーカーだよ。効果としてはまぁ僕に逆らえないと思ってくれればいい。ちなみに奴隷になった事で過去とか今考えてる事とか全部僕に筒抜けになるよ」
本当にぃ?
心のなかで罵ってみた。
背後からまるで殺意の様な威圧が急に沸き上がった。こわ。
「証ってチョーカーじゃないとダメなの?首苦しいから嫌なんだけど」
「別に腕輪とかでもいいし、そもそも体に刻まれてるからなくても大丈夫だよ。けど僕、昔から犬を飼いたかったんだよね」
こわ。




