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自然、狐、茶番

「そうだ農耕しよう」(溢れ出る探求欲)


キルに誠心誠意、8時間付きっ切りでみっちりと生命の営みについて授業(実技)してくれたので、私は命について深く考えようと思い至った。生命。それ即ち自然。人間は自然と共存し、自然を利用し歴史を築いて来た。

はい。農耕しましょう。


農耕もレイちゃんなら出来るでしょう多分。こう…こう…水場の近くで耕して種まいて骨粉じゃろ?(サンドボックス脳)


実際やってみた。


骨の大地ができた。


「?????…これは…愛情をかけすぎたからかな?」


(芽が)出ないなら、出るまでかけよう、骨粉を。

普通に考えて作物が数分で成長するわけないんだよなぁ。そんなことできるようにしたら自然に対する冒涜だよ。やっぱ人間はただのゴミなんだから分をわきまえなきゃ。

では続いての愛情はこれ、時間加速魔法!これは数分で作る代物じゃなくて半年を対象だけ加速する魔法だから冒涜にはなりません。


そーれあぶらかたぶら。


ココナッツの木が生えた。


「前世の恨みぱーんち!」


ココナッツの木は粉砕された。悪は滅びた。


びっくりした。まさかあんな適当極まるフレーバー描写っぽかった死因がリベンジしにくるとは…。


「違う違う…確かにあれは食べられる…飲めるモノだけど、そんな一部の地域限定の奴とかじゃなくて、普通のでいいんだよ普通ので」


あれだ。何も考えていないから深層心理からひっぱってくるんだよ。今まで散々同じパターンしたじゃん。つまりちゃんと考え想えば作りたいものを作れる。私は天才だからな!


と、いうわけでちゃんと方向性を考えて再チャレンジ。

想うは自然。人が営み育んでいく上で必要不可欠。人間は自然と共に生まれ、自然と共に滅ぶのです。語彙力ないんだから同じような言葉で自然について語っちゃうんだぞ。


というわけで時間加速どーん。


大樹が生えた。


「はーレイちゃんの才能が溢れすぎて辛いわー。集合場所に早く行き過ぎて本当にあってるかどうかの時の不安ぐらい溢れてるわー」


見てよこの生命力溢れる瑞々しい大樹。ちゃんと人いる場所で生えたら世界樹って言われててもおかしくないよこれ。


…おん?えっと何て言うんだっけ…あれだ、うろ。ぽっかり穴が空いてる奴。それがこの木にもある。というか中に何か光ってるのある。


「トワイライトフォレスト…蜘蛛スポじゃなければ~…ラッパ?」


なんでラッパ?

いやまぁ待て。そう安易に鑑定とかしようとするんじゃない。ここでラッパが出たということはこれは自然に関係あるものなんだよきっと。ランダム部屋君と一緒で生産系統も私の意図を組んで望む展開をサルベージしてくれてるはずだ。


ではこのラッパが何故自然に関係するか考えてみましょう。シンキングタイムスタート!


自然…自然でしょ?自然と言えば再生とか、繁栄とか…。それに反転して衰退、破滅?ラッパは何でできてるんだろう…金属か。関係あるのかな?


私がうんうん呻っていると、最近我が家のペットになり、私の犬小屋を見てドン引きしていたラキちゃん(あだ名)が、突然生えた私の子供に驚いてなのか、駆け寄ってきた。


「あ、ラキちゃーん。このラッパ何かわかるー?」

「突然大樹が生まれたと思ったら、あなたでしたか…。そのラッパですか?多分世界の終わりを告げるアレじゃないですかね」

「自然関係なくない?」

「私に言われても…」




「キル、私実は猫か犬かって聞かれたら犬って答えるんだよね(一番は狐だけど)」

「狐…ネコ目イヌ科イヌ亜科…狐のお面でも付けようか?」

「それは知ってるけど知らない。えーっとそんな図鑑とか辞書みたいな解説をして欲しいんじゃなくて、要は久々にあのフワフワしたお耳をモフりたいって事なんだよ」

「似たようなお友達(ペット)が最近───」

「しかしここは異世界。レイちゃんは思いました。もっと高望みしてもいいのではないか、と。そう、例えばこの前神社で見た獣人ちゃん。可愛い女の子と可愛い動物が合わさったらもっと可愛いのではという望みを叶えた、素晴らしいファンタジーがありましたね」

「レイって、何かやましい事があると怒涛の勢いで話すよね。つまり?」

「───キルのケモ耳姿、見てみたいなぁって」

「………ま、いいか。はい(犬耳犬尻尾追加)」

「うっひゃお△%@※□ω^$<~~~~~っ!」

「これだけで喜ぶなんて、レイは安いなぁ」

「素材が最高級だからオプションが安くても問題ないの!ほらキルっ!猫じゃらし!(召喚した猫じゃらしを振る)」

「犬なんだけどね。ふむ…じゃあ今日はサービスしよう。はいスーツ姿。この前好きって言ってたよね」

「…息が止まる…すっっっっっごい似合ってる…しゅき…」

「更に剣とかも構えたり───」

「あっあっあっあっ…ふわぁぁぁあああっ!」

「ニヒルな笑みを追加したり───」

「ふわぁぁぁあああっ!!」

「返り血と爆発を背景にしたり───」

「ふわぁぁぁあああっ!!!かっこいいイケメン好き抱く!」

「そこで「抱いて」じゃなくてネタに走って「抱く」な辺りレイらしいよね」

「アイデンティティだから。いやでも、ホント、今抱かれてもいいと心の底から思った」

「つまり普段は思っていないと?」

「思う前に強引に強制してくる人がいるからだよ待って最初が優しければ私も満足して抱かれれるのスットプステイぷりーずへるぷ!」




私の犬小屋、の隣になんかすごいちからで移設されたラキのお部屋。マイルームより5倍程大きく10倍程豪華で人間らしい(ラキは人間じゃないけど)お部屋で、私とラキは向かい合い雑談に興じていた。


「キルを嫉妬させたい…させてみたくない?」

「私にはちょっとわからない欲望ですね」


これだから寂しい独り身はよぉ!


さて、前回キルの驚愕を拝もうとして半分成功し、報酬に見合わぬレベルで体を酷使させられた私ですが、性懲りもなくキルから新しい感情を見てみようとしています。

そう、嫉妬という表情をな!多分見えてる地雷だと思うんですけど…。


「別にレイさんがどう調教されようとどこ開発されようと私はいいんですけれども、巻き込まないでくれませんか?私はゴロゴロダラダラしたいんですから」

「働け堕天使」


この娘出会いの時もダラけてたけど、もしかして一生ダラけるつもりですか?ナマケモノって今度から呼ぶよ?


「レイさんには言われたくないです。というか本当に何で私の部屋来たんですか不法侵入ですよ」

「この地に法はないよ。いや、人を嫉妬させようと思ったら、つまり隔絶した才能を見せつけるとか、その人じゃ手に入らない物を見せるとかじゃん?けどキルにそれは通じないでしょ?そうなると私が他の女の子とイチャイチャしてる方が嫉妬しそうだなーと…」

「やっぱり私を巻き込んでるじゃないですか!嫌ですよ私!キルさんが本気になったら、私なんて最高級羽毛布団一直線ですよ!」

「自信満々に卑下するじゃん。大丈夫だよ、一応私のペット扱いなんだから。…少なくとも殺されはしない」

「死な安の価値観を人に押し付けないでください!」


なんでよー。私はラキの飼い主だぞ。飼い主の価値観に合わせるのは当然にして必然じゃないか。


「ま、大丈夫大丈夫。どうせキルは私しか見てないから、巻き込まれないよ」

「その言葉本当に信じていいんですかね…」

「そりゃもちろん。例えば今この場で、ラキ大好き!…て言ったらこんな風に謎の寒気が沸き起こるわけですよ、はい」

「はいじゃないですけお!?」


だいs───な辺りで何の兆候もなく急にラキハウスが氷点下10度に包まれた。体が震え息は白くなり、出された熱々のお茶は氷掛けた。

これはキルなりに猫舌な私に気遣ってしてくれたんでしょう。


ラキは寒いからか、羽で腕を抱き手で頭を抱えるという、中々防寒性高そうな姿勢を取っている。


「さぁっ!今もキルが観戦している事実が確認されました!ここでハグとかしたら絶対嫉妬に駆られてキルが来るよ!れっつはぐ!フリーハグ!」

「嫌です嫌です!何かテンション変になってませんか!?人形でも召喚して一人でやってくださいよ私は機雷には近づかない主義です!」

「逃げるなあぁぁぁあああっ!」


狭い室内でどったんばったん鬼ごっこ。

待ってよラキ、確かに君は何も得るものが無いかもしれない。けど飼い主が満足するんだよ?それ以上の報酬があるっていうのかい?あっこら待て抵抗するな燃やすぞ!


「ふっふっふっ…もう逃げられまい!観念して私にハグされるんだ!」

「どうして!なんで!ありえない!私が何をしたというんですか!」

「何もしてなかったから付き合わされてるんだよ」

「ちゃんとダラダラするとい日課をこなしてました!」


上空に跳んだり短距離転移を駆使し逃げ回っていたラキですが、魔術妨害と私の欲望ブーストフィジカルを前にしては屈せざるを得なく、ついに壁際に追い詰めらてしまった。

哀れか弱いラキはレイちゃんにハグされるのでした。私みたいな美少女にハグされるんだからちょっとした命の危機ぐらい甘んじて受け入れなさい。甘んじてというか喜んで受け入れなさい。


「やだあぁぁぁあああっ!!!」


「ぎゅ~~~~~っと!………あれ?」


嫌がる女の子を無理やり襲うのは興奮するなぁぐへへと抱き着くと、予想していた感触と違うことに気づく。

背中に回した手には羽のもっふもふの感触ではなく、サラサラな髪の感触。抱き着くとき、クッションになるだろうなぁと思っていた胸部装甲はなく、密着度が増す。


ふむ。この匂い、抱き心地、状況からして…。


そーっと抱き着くのを止めて、顔を覗く。

にっこり笑顔なキルと目があった。


………えぇ。(状況把握からの諦観)


「ベット、行こうか?」

「…マダナニモシテナイ」

「実はしようと思った時点でお仕置きは決めてたんだ」

「」(絶句)


肩に担がれて運ばれる中、キリシトみたいな感じで壁に魔力で打ち付けられたラキが、責めるような視線を向けているのが最後の記憶です。

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