ニューキャラさぷらいず
「これは…ワインセラーじゃな?ワシにはわかる」
今日も今日とてランダムで部屋巡り。
ごめんワインセラーって言ったけどこれ貯蔵庫だ。ビンで並んでるやつじゃなくて樽が積みあがってるやつ。上品なのじゃなくて無骨の。
屋敷も私の考えを察してくれてか、最近は何も言わなくても私好みの所に連れて行ってくれてる。下手したらキルよりもデートしてるかもしれない。いやこの屋敷キルの意識みたいなもんなんだろうけど。
さて。いつもは射撃場とかネカフェとかさっぽろ雪まつりとかに連れてくる部屋が、今回はランダム部屋君、貯蔵庫を出してきました。
そう、これはつまり飲めということです!(16歳)
大丈夫大丈夫!私fromオーストラリアだから!コアラと一緒に育ってきたから!ユーカリのおむつ履いて幼年期過ごしたから!
やっぱねー私もおかしいと思ってたんですよ射撃場とか!これは今お酒をキメるための布石だったんだね!じゃないとごく普通の女子高生にとっては物々しくて委縮するであろう射撃場なんかには連れてこないもの!射撃という別の年齢規制を先に経験させることによって、テンプレである酒で酔ってくんずほぐれつでキルの鉄壁ガードを剥がしていつもの仕返しをしてやるふははは。
あ私は射撃場普通に楽しめる系女子なので楽しかったです。AKS-74とか。
「?…お酒か。まぁ飲んで欲しいなら飲むけど」
「えっ」
ごくごくごく。
片手で開いた本を読みながらもグラスを傾け中身を嚥下していくご主人様やだ色っぽい…。
…あーそっかキルは大丈夫な人だったかお酒。そういやバニーコスの時も飲んでた気がするなぁ。テンプレだと誰かは甘酒レベルで酔うんだけど…私も平気だったし…というかワイン普通に美味しくて貯蔵庫にあった樽から1Lぐらい飲めたし。
つまり不発。
「いやまぁ待て…ランダム部屋君と私は固い絆で結ばれているんだ…意味ない部屋を提供してくるはずがない…」
というわけでリターン。戻ってきました貯蔵庫。私は一度攻略した後ストーリー進んでもう一回来ると更に奥にいけるパターンとか好き。
で。ここに何かあるんですよ。確信はないんですけど、ここには何かあるんですよ。だってランダム部屋君がそう言ったんだもん。(絶対なる信頼)
んー…貯蔵庫って何か仕込むとしたら樽の中身とかかなぁ…他に仕込むとしたら一部の棚っぽいのが扉になってて隠し扉とか?
そういうのゲームだから見つけれるだけで、実際探すとなると見つかる気がしないなー…魔法で………いや、全部燃やすか。
「燃えろ~燃えろ~てーんまで届けー♪野を焼き~天焦がし~人をも~燃やせ~♪」
お酒ってね。燃えるんですよ。
なんとお酒に含まれるアルコールは燃えるのだ!アルコールにはヒドロキシ基が含まれていてそれが含まれてる奴は大抵燃える。授業で習った。それ以外のはもう忘れた。
これって量多かったら爆発とかするのかな。んー爆発したら困るな。じゃあ爆発しないということで。実際はどうか知らないけど、この世界ではアルコール一度にいっぱい燃えても爆発しません。
なんやかんやあってお酒とそれ入れてた樽は燃え尽きました。よくよく考えると多分酸素も燃え尽きて私酸欠になってると思うんだけど最近人外プランに入ったから問題ないということで。
積もった灰を蹴っ飛ばしながら床とか壁とかをクリアリング。すると地下室への隠し扉っぽいのが、黒く焦げた床の継ぎ目で見つけることができた。やはり燃やす事が正規ルートだったか。
隠し扉を開ける。
ファンシーな女の子っぽい部屋でもこもこなクッションに包まれて寝ている緑髪の少女が見える。
隠し扉を閉める。
「?????」
なんっか無骨な貯蔵庫とは180度対照的な可愛らしいお部屋が見えた気がする。私の趣味じゃない奴。
……………。
まいっか。迷ったらね、突撃なんですよ。
「開けロイトデト!」
「うひゃあああぁぁぁあ!?」
私が隠し扉(金属製)を蹴破り突入すると、彼女は驚いて飛び跳ねるという割といいリアクションをしてくれた。
目を白黒させてクッションに倒れこんでいる彼女の容姿は紫の瞳にふんわりした緑髪のボブカットで…丸っぽい眉毛ってなんて言うんだっけ…まめしばみたいな丸い眉毛?が特徴的。他にもっといい表現の仕方なかったの?
顔立ちは美人よりなんだけど、泣き顔と雰囲気も相まって幼い印象。子供っぽい部屋のも一因。
身長は私より…キルよりも高く、胸も今まで見た中で一番ですね。クソが代。
そんな彼女の服はカジュアルなスーツ。ネクタイ緩めてる感じ。私ネクタイ締めてるかっこいい女の子好き。この娘かっこいいタイプじゃないし緩めてるけど。
そしてそんなものよりも彼女を特徴つけているものがある。それは羽。彼女のスーツに包まれたその背中から、純白でふわふわとした、白鳥のような羽が生えていたのだ。
所で描写しててふと思ったんだけど、私自身とキルってちゃんと描写したっけ?確認してくるから待っててね。
してませんでした!
…まぁ我が一か月超えの生活を覗いてた人達ならきっと脳内補完されてるでしょう。各自好きにキャラクリしてください。私ショトカでキルがロングってのは譲らないけど。
はい。
「アップハンドダウンボディノーレジスト!」
「うひゃあああぁぁぁあ!?」
「ふざけた格好しやがって!コスプレとかなめてんのかぁ!?」
「うひゃあああぁぁぁあ!?」
「手始めにその羽毟り取って手羽先にしてやるぁあああ!」
「いやぁあああぁぁぁあ!?」
「もふもふ…ふわふわ…気持ちいい…夢心地…」
「あの…和んでいないでそろそろどいていただけると…」
「眠くなりゅ…これ欲しい…毟り取ってクッションつくりゅ…」
「猟奇的に和んでる…!?」
和解しました。
いやぁー平和と穏便をこよなく愛する私にとって、やっぱり暴力はアレルギー案件だからね。何事もなく収束してよかったよかった。上の部屋全焼したけど。
上にある、貯蔵庫さんの家あるじゃない。最近、燃えたらしいわよ。怖いわね〜。
「お仕事の話をします」
「あっはい」
「何故こげなとこおりはったんでござるか?」
「一言で纏めるならアイデンティティですかね」
「はい?」(理科不能)
「はい」(力強く断言したら何とかなりませんかね的な返答)
「はい」(面倒だしそれでいいやな納得)
「はい?」(え納得しちゃったの?)
事情聴取…。
「なるほど。じゃーあなたは自分を天使だと思っていると」
「思っているじゃなくて実際天使です」
「そしてお酒好きが祟って、夜な夜な上から無銭飲食を繰り返すようになったと」
「無銭飲食ではないです。ちゃんと対価として天使パワーで美味しくしてます。まぁ全焼したらしいんですけど」
「しかし自身の行いについては反省しているので、今後一生私の下で償いをすると」
「言ってないです」
「もーすーぐそうやってわがまま言うー」
「私が悪いんですか!?」
お母さんはそんなわがまま言う子に育てた覚えはありません!
「でも…名前何?」
「サートラキです」
「サートラキこれからどうするの?誰がやったかは今捜査中ですけど、上全焼しちゃってるしここ多分異空間だから逃げるに逃げれないんじゃない?」
「え?今ここそんな感じになってたんですか?まだ5年ぐらいしかヒキニートしてなかったのに…。あと自分の罪を認めてください」
「やだ。私は何も知らないよ。来たら何か燃えてました保存状態が悪かったんでしょ」
「はぁ…。まぁとりあえずこの異空間の主に挨拶しましょう。案内してくれませんか?」
「おkおk」
「キールーペット飼っていいー?」
「喧嘩しないならいいよ」
「ありがと!」
「…力量差を考えると、何も起きなくて助かるんですけど…釈然としません…」
こうして我が家にペットが増えた。
嫁の驚いた顔が見たい。
キルが私に見せてくれる表情は、基本的に無表情か笑顔で、私に向ける顔に至っては笑顔オンリー。そしてそこから笑顔にフレーバーが追加される。
これは嗜虐的な笑みだなーとか、困ったような笑顔だなーとか、慈しみの笑顔だなーとか。つまり雰囲気で笑顔以外の喜怒哀楽を表現してる。怒哀の表現してるところ見たこと無いけど。私が常に笑わせてあげてるからね!
でもですね。たまにはキルの笑顔以外が見てみたいんですよ。これは普段クールキャラが驚いたらきっと面白いんだろうなぁとかそういう私欲ではなくキルの新たな表情という一面を知ることによりさらに親密になろうという夫婦(?)関係を慮る故の行動で決して下心があるわけでは以下略。
驚いた顔…驚いた顔か…さてどうやって驚かせよう。(無計画)
キルは私が知る限り、感情が全然揺れなくて、表に出すこと殆ど無い。夜ベットでトイレ行こうとしたときを除けば、馴れ初め(捏造)の時、顔を隠してたから、ひょっとするとまだ見ぬ表情だったかもしれないなーってぐらいだ。
キルは最強だ。なんせ私が勝てなかったからな。高い察知能力により不意打ちなんてまず成立しない。わっ!とやってみたところで微動だにしないだろう。
それにステータスが高いから、自分を害せる存在がいないとわかっているが故に大抵の事には動じない。
後何か企んでいると心を読まれる。最近は私が普段何も考えてない事を知ってか読まなくなったらしいけど、それでも怪しい動きをすれば読んでくるだろう。まぁ自然体で行けば多分問題ないけど…。
では上記を踏まえてキルを驚かす方法を考えて見ましょう。
不意打ちでわっってするのを除き、友人を驚かそうとするときの方法は三つ。
一、何かしら驚くものを持っていく。
二、何かしら驚く事を目の前でする。
ごめん三つもなかった以上の二つ。
まず一つ目の案。これは通常なら爬虫類とかの苦手な人はとことん苦手なモノを持っていくところだけど…キルがその程度で驚くとは思えない。ヒレロース(?)とかいう恐竜っぽいの見ても微笑んでたキルだ。多分動じないだろう。そもそも急にペットって言って羽生えた娘連れてっても眉一つ動かさなかった娘だ。無理だろう。
となると二つ目の案。実はこれに関しては割といい案が思いついてある。
これは性癖とかではなくただの事実なんだけど、私は積極性がない。ネコなのだ。受けともいう。
実際、私がキルにナニかされても反撃とかすることはまずない。私からキルにナニかすることもない。常に求められるがままに受けたり逃げたりしてきた。
そんな完璧「待ち」な私からアクションを起こせば…キルは驚くのではないか?いや驚く。だって私に対してはちゃんと人間になるもん。
考えるのだんだん面倒になってきましたね。もう突撃でいいんじゃない?誰かが言ってたよ。迷ったら突撃って。
はい。
キルへーと念じながら扉を開けると、ガラス張りの植物園に案内された。360度大小様々な形や花の色をしたジャングルの中心で、ご主人はベンチに腰掛け街頭に巻き付いたツタを見上げながら微笑を浮かべていた。
「やぁレイ、何か用かい」
「うんちょっと野暮よー」
いつも通り千変万化な景色をいつも通り見渡しながら、いつも通り歩みキルに近づいていく。癖になってんだ…いつも通りを演出するの…。
そのままキルの真っ正面まで近づき、座っているキルに目線の高さを逢わせるため膝を曲げながらキルの太ももに手を付き体勢を安定させる。
そのまま間を開けずキス。
いつもキルがしてくる、舌を交えるような濃厚なキスではなく、幼い子供がするような、初々しい軽いキス。
突然だからか作戦がうまくいってるのか、手を付いている太ももは硬直していて、キルの瞳が心なしか揺れている。
一方私も固まっている。ここ一ヶ月ほどで慣れてきたキスだが、やはり自分からしにいくのは負担が大きかったらしい。さっきまで先を想定していなかったからか平穏だった心臓は破裂せんばかりに暴れだし、体温が上がる。キルの瞳に移る私の顔は真っ赤に染まっていて、目がぐるぐるしてた。
双方固まること暫し。
息が苦しくなってきた事に気づいた私はハッとして、飛び跳ねるようにしてキルから距離を取る。我ながら艶があるような気がする吐息をした後、口を手で拭いながらキルの顔を見る。
くっ何か考えてた(考えてない)以上に雰囲気に呑まれてしまった!これで成果なかったら泣くぞぉ…!
果たしてキルの表情は…。
呆然としていた。
ぼーっと。
虚空を見るように。
私にキルをされたままの体勢で。
………えぇ?
どうしたんだろキル…私からされたの予想外過ぎてオーバーヒートでも起こしたのかな…。いやどれだけ嬉しかったって話なんだけどこれだけ嫁に喜ばれるんだったらこれからもたまにはしたほうが───
「───よね」
「…ん?」
気づくとキルは俯いて、私に何かを呟くように言ってきた。
なんて?
「それは、誘っているんだよね?」
あ。
腕を引っ張られる感覚。続いていつぞや体験したような、体がふわっと浮いて気づけばベットに寝転がされてるような…。
引き攣った笑みを浮かべる私の視界に、キルの満面の笑みが映される。
「レイが悪いんだよ?」
オワタ。
オーストラリアは18歳から飲酒可能




