錬成連想霊感
「最終回だと思った?違うんだなーこれが」
「あまりにももう一人の自分と話し過ぎてると検査することになるよ。脳を開いて」
「ひえっ」
一人言への制裁がヤバ過ぎる。この娘だったらマジで脳を切り開きそうで怖い。というな絶対切り開く。一人言はもう止めとこう。…暫くは。
前回、まるでそのまま消えてしまいそうな終わり方してたけど、まだやりたいことあるんで止まるんじゃねぇぞ…。
今はキルと背中合わせで座りながら、お互い本を読んでいる。伝わる体温が心地いいぜ。読んでる本の題名は「革靴をはいたケットシー」。児童娯楽文学らしい。しきしゃりつ?こう、文字かけたり読めたりする人の割合…キルが読み方教えてくれたけど忘れちゃった。ともかくそれは、大体王都でも仕事とかで使う人含め40%くらいらしく、裕福な子供向けて作られてるそうだ。私が子供扱いされてる件に関しては突っ込まないと決めた。実際大きくなっても絵本とかたまに読む分には懐かしくて楽しめたりするもんだよ。
なお、絵本の内容は、人間の靴に興味を示し革靴を作り履いたケットシーが、地面痛くないしサイコーってなって靴無しではいられなくなり、野良に還れなくなった話だった。なんだこのクソ民話…。
「ねぇレイ」
これ何の教訓になるんだろうと私が考察していると、微動だにせず難しそうというか全然読めない本を読んでいたキルが首を後ろに倒し話しかけてきた。何の言語なんだろ。
「あいあい、何ー?」
私も首を後ろに倒し目線を合わせる。さっきまではキルの髪で首がくすぐったかったけど、今は私の髪がクッションになってそうでもない。
というか未だにこんな至近距離で目を合わせるとドキドキしちゃうね///
「今この召喚獣についての本読んでたんだけど」
「うん」
「やっぱりメスを呼んだら仲良くできないかな?」
「まだそのネタ引っ張ってたの!?」
せめてもうそろそろ人間扱いがいいなぁ私!複数飼いは考えなきゃいけないとか言ってないでさぁ!
「そうだ賢者の石作ろう」(繰り返される歴史)
キルが「まぁペット増やすかもって考えといてね」と言い残し去っていったので、背中が寂しくなり読書はやめた。そして暇になった私は錬成しようと思い立った。立ち止まったら再び歩きにくいだろう?止まっちゃダメなんだよ人生。
錬成もレイちゃんなら出来るでしょう多分。こう、人口天然水作ったりカブトムシ混ざればええんじゃろ?(お気に入り)
実際やってみた。
マジックストーン(比喩抜き)ができた。
「?????………今回は前回の反せ…経験を活かして最初っから魔力込めたけど、ほんとに魔力こめただけのじゃん」
拾ってきたときと色も変わってない。そこらへんで見る石に漏れず鼠色のままだ。たまにエンチャントエフェクトなのか紫色に光るけど。
んーまいっか。使ってみよ。
地平線に向かってぽーんドォォォオオオオオンッ!!!
「わお…ぅん…想像の上を行く爆発規模だった…」
なんかこう、「FBIopenup!!」の爆発の100倍くらいが起きて地面が削れて、地平線が遠くなった。核MODかよ。水爆の上は行かない。
「まずは何でこうなっちゃったからかなー。爆発するように考えたわけじゃないんだけど…」
でも余計な操作一切してないはずなんだよねー。空気中の成分が邪魔とかだったら錬成難易度高すぎない?ってなるんだけど…。
いや、そうだな。むしろ余計な操作してないのが悪いのかもしれない。次はちゃんと魔力込めるだけじゃなく指示っぽいのもしよう。
材料は…えーと…石追加で入れて水入れりゃーいいでしょ。後はなんかこういい感じになるよう指示っぽいの作って…。
氷っぽいのできた。
「はーレイちゃんの才能が溢れすぎて辛いわー。温泉のお湯ぐらい溢れすぎて辛いわー」
で、性能は?
「………メタンハイドレート?」
そうはならんやろ。
「夏なのでホラーが見たい」
「見ればいいんじゃないかな」
今回はちゃんとキルに言ったのでペナルティは無しです。私も脳を切り開かれたくはないからね。
夏の部分に突っ込みを入れてくれない嫁に寂しく思いながら、キルの服の裾を握り堅い意思を持った瞳で力強く発言する。
「ホラーが、見たい」
いや、あるじゃん?たまーにホラーがどうしても見たくなること。ホラー見たい症候群だね。
「苦手なのに見たいという考えは、僕には一生理解できなさそうだね」
言外に怖いから一緒に見てと伝えると、嫁でも共感できないことがあるという衝撃の事実が発見された。悲しい。
でも「怖がる姿もまた良いものかな。こんど僕もサプライズしてみよう」って不穏な事いいつつ付き合ってくれるキルも好きだよ。きっとそういったジョークで和ましてくれてるんだよね。ジョークだよね?ジョークと言ってくれ。ねぇ。
勝手に出てきたソファーで、キルの膝の上に乗り私の前で腕を組ませて抱き締めさせる。私の頭にキルの顎も来て密着度は最高数値だ。どっちかっていうと抱き締められてるより抱えられてるって感じかな。似たような単語だけどイメージが違うんだよなー。各自補正して。
まぁいつもはキルにされるまではここまでしないけど、ホラーを前にしてはそんな余裕はない。秘密にしていたが実は私は怖がりなんだ。あ、知ってた?そう…。
そうこうしてる間に、目の前にテレビが用意されホラー映画が始まる。ポップコーン(キャラメル)とチェロスとコーラが添えられるおまけ付き。更に気遣いなのか電気が消されムードはバッチリだ。その気遣いいらない。
「………っ!…ふぅー…ぅー…ひぅっ!?」
急に現れる化け物や効果音、演出等に涙目でビクビクしながら観賞を進める。あのね、お化けとかがリアルにあるはずがないって私は思ってる派なんだけど、それでもいるかも、って考えてしまい凄く怖い。私想像力が天元突破レベルで豊だから。
最強になってる今ですらそれは変わらず、寒くもないのに体がぶるぶる震えてくる。昔は考えたよ。むしろ幽霊とかと出会えたらラッキーじゃないかって。貴重な体験だって。どうせ幽霊って怖がらせるだけで命取らないじゃん(取るタイプいるけど)。あとはお化け以上に現実が怖いとか。寝れないと明日の学校がやばいとか、起きないと怒られるとか。そーいった諸々も考えまくって恐怖を軽減させようと
『ヒッヒッヒッハッハッハッ!!』
「ううううっ!?う"~…!」
………やっぱだダメだわ。思考は高い精神力のステータスのお陰か直ぐ落ち着くんだけど、体は精神を受け入れてくれない。さっき以上に涙目になって体を震わせ、キルの腕をぎゅっと握り抱擁を強めさせる。これ以上は持ちそうにないね。ホラー見たい欲求は完全に消えてきたし、もう終わろう。
「キル…もういいから消して…後ベットまで付いてきて一緒に寝て…」
「ん。もういい時間だしね、一緒に寝ようか」
腕を引き涙目というか泣きながら上を向き懇願すると、心身がマジで弱ってる私に気遣い優しい笑みで、特に弄ることもなく受け入れてくれた。しゅき。
テレビとソファーが消え、明かりが戻った室内をお姫さま抱っこ状態で後にし、水色ベットに優しく寝かせられる。不安にさせないためか、寝転がり布団を被せてくる時もキルは手を繋いでいてくれた。
後ろから抱きつかれる体型で二人床に着く。屋敷も心配してるのか、完全には暗くせずほんのりと部屋を照らし、無音にしないよう火のはぜる音を出してくれている。やっぱ悪ノリはするけど優しいなこの屋敷。地味に怖い水のせせらぎとかをチョイスしない辺り解ってる。火は原始的だからこそ安心できるからね。
体を密着させ、顔を並べ頬を着けるキルの体温を感じながら、私は安心して眠りについた。
「…そういえば昨日調教無かったね?」
「期待してたの?」
「そういうわけじゃないです」
「寝てる間の、っていうのが気になってね。また別の赴があったよ」
「ひぇ」
識字率 しきじりつ




