2話 ユメの所在
今日は1話を昼12時、2話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は2話)。
エルフ女王国を無事に落とし、新しい情報まで持ち帰ったエリーを僕が褒め称えていると、メイから念話で緊急連絡が入る。
その内容は――僕が探していた家族の1人、妹のユメの所在が分かったというものだった。
エルフ女王国陥落、『ますたー』に関する新情報などを一瞬で消し飛ばす内容に、思わず僕も声を裏返し、『ぶふっ!? ゆ、ユメを発見しただって!?』と驚愕したほどだ。
メイが慌てて執務室に顔を出し、詳細情報を告げる。
「……ユメが人種王国に囲われている?」
「正確には、メイド見習いとして働いているようです」
メイの報告に同席していたエリーが殺気立つ。
「偉大なるライト神様の妹姫様をメイド見習いとして働かせるなんて……ッ! 不敬にもほどがありますわ! いくら人種といえどその罪は命を以て贖わせるべきですわね」
「エリー、まだ報告は終わっていないんだ。静かにしてくれ」
「も、申し訳ありません!」
メイの報告が遮られて、苛立ちで僕の声音が荒くなってしまう。
エリーは怒りで殺気を漏らしていた姿から一転、主人から叱られうなだれる。
いつもならフォローを入れるが、その余裕はなくメイの話に意識を向ける。
彼女も話の続きが望まれているのを理解し、報告を優先した。
「人種王国第一王女リリスが、首都を馬車で移動中に倒れているユメ様を発見。傷の具合が酷く回復ポーションを使用、お陰で命を取り留めたようです。王女は他にも私費で炊き出しなど慈善活動に精力的で、正義感の強い人物だそうです。一部からは『人種の聖女』と呼ばれているとか。ユメ様をメイド見習いとして雇ったのも、『ポーション代金を支払わせる』という名目の他、行き先の無い彼女を保護する側面もあるかと」
ユメやにぃちゃんの情報は一応探していた。
調査は孤児院、奴隷商を中心に情報を集めていたため、王族のメイド見習いは盲点で発見が遅れたらしい。
僕はメイに質問する。
「疑う訳じゃないけど、その子は本当にユメなのは間違いないのかな」
「はい、特徴は一致するとのことです」
「けど、王女に保護されたのは人種王国首都なんだよね? 僕の故郷からどれだけ離れているか……。 普通に移動したら馬車で1ヶ月以上はかかるのに」
「申し訳ございません。その辺りはよく分かっておりません」
メイが申し訳なさそうに謝罪を口にした。
ユメが無事で、生きているなら問題はないが……どうやって人種王国首都まで移動したんだろう?
「にぃちゃんの姿は? ユメと一緒ではないの?」
「お兄様は確認されておりません。あくまでユメ様のみです」
2人で襲撃を受けた故郷から無事に逃げ出したのかと思ったが、ユメ1人だけしか発見されていないということは、途中ではぐれたか最悪亡くなってしまったのだろうか?
ユメと顔を合わせて話を聞けば色々分かるはずだ。
「とりあえず報告ありがとうメイ。ユメの無事と居場所が分かって本当によかったよ。とりあえず隠密性の高い者にすぐに護らせるのは当然として、今後の安全性を考えれば今すぐにでもユメを『奈落』へ連れてくるべきだよね」
「でしたらその役目、是非このわたくしにお任せくださいませ!」
僕に叱られたエリーが、汚名返上とばかりに手を上げる。
そんな彼女にメイが意見した。
「エリーは『巨塔』の管理や周囲に集まった人種達の生活環境構築、陥落させたエルフ女王国への睨みとして残って頂かないと困ります」
「ンギギギギ、ですわ」
メイの指摘は正論のため、エリーは反論できず異音を口にする。
実際エリーには『巨塔の魔女』としての役割がある。
エルフ女王国から人種奴隷達を解放し、『巨塔』を中心に生活圏を作り上げている最中だ。
いくら『SSR、転移』があるからとはいえ軽々にエリーが動いてもらっては困る。
「確実性を考えて私を行かせて頂ければと」
「メイなら安心だよ。妹を……ユメを頼む」
「我がメイド道に懸けて、必ずやライト様の下へお連れ致します!」
僕とメイが見つめ合う。
彼女に任せておけば安心だ。
「ただ問題はどうやってユメを連れて帰るかだけど……」
お城に侵入して強引に連れ帰る訳にはいかない。
相手はポーションを使用し、雇用して保護してくれたのだ。恩を仇で返すような礼節を欠くマネは出来ない。
また本当に『ユメ』本人なのか、僕自身の目で確かめたい気持ちもある。
この考えにエリーが再び挙手する。
「でしたら、エルフ女王国を通して人種王国へ『巨塔』視察に来て頂くように要請するのは如何でしょうか?」
『人種絶対独立主義』を宣言し、実際に人種奴隷を『巨塔』周辺に集めて解放し、生活環境を整えている最中だ。
人道的に扱っているのか、人種王国側が視察に来るのは筋違いではない。
「わたくし達に膝を屈したとはいえ、エルフ女王国にはまだ権威がありますわ。その権威を利用するため植民地化せず残した訳で、ここでわたくし達のために是非働いて頂きましょう。人道支援に熱心な第一王女の視察をエルフ女王国から要請すれば、決して拒絶されることはありませんもの」
また移動、滞在費用なども全てこちらが負担し、安全も保障、歓迎する旨を伝えれば拒絶する理由はなくなる。
人道支援に熱心な第一王女を歓迎し、妹ユメを同行するように仕向ければいい。
そうすれば直接顔を確認し、そのまま『奈落』へ引き取ることも可能になる。
エリーの妙案に僕は笑顔で褒める。
「さすがエリー! 素晴らしい案だよ! すぐに実行をお願いできる?」
「ンンゥ! もちろんですわ! すぐにエルフ女王国に乗り込んで要請手続きをさせて頂きますの!」
彼女は僕に褒められ、喜びで体を震わせると喜々として、執務室を出る。
エリーは『巨塔の魔女』としてエルフ女王国に乗り込み、『人種王国第一王女の視察要請』を出すよううながしに向かう。
残された僕とメイは打ち合わせ――妹ユメを僕が直接確認する方法、本人だった場合すぐさま『奈落』へ引き取るための手段等を細かく話し合ったのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は1話を12時に、2話を17時にアップしております!(本話は2話です)
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