番外編1
今日は番外編1を昼12時、番外編2を17時にアップする予定です(本話は番外編1)。
モヒカン達に『巨塔』近くで助けられた少女――名前をシリカと言う。
彼女は両親共々行商人として人種王国内部を行き来していた。
途中、モンスターに襲われ両親が死亡。
シリカだけは運良く生き残ったが、人種の少女1人で生きていくのが難しく奴隷に堕ちてしまう。
紆余曲折ありエルフ種に奴隷として買われ、先導役兼モンスターのエサとして原生森林を歩かされた。
しかし途中でエルフ種が『尻尾が蛇で巨大な4足獣』モンスターに襲われて死亡。『自分も食べられる』と怯えたが、モンスターは無視して森へと消えてしまった。
その後、モヒカン達に助けられて森を出ると商人に自分の所有権が移動したのだ。
元行商人の娘として、売られた先の商人は『堅実な商売をしている』し、自分達を可能な限り大切に扱ってくれていると評価した。
(ちょうど『巨塔』騒ぎで冒険者や兵隊さん達が集まっているから需要が大きいっていうのもあるけど、堅実な仕事振りだな……)
大きく儲けることはないが、赤字にもならない。
そんな売り方をしていた。
シリカは元行商人の娘だけあり計算が出来るため店で重宝された。
容姿も人並みで、愛嬌があるほうだと自負していた。
(このまま商人さんのお妾さんにでもなれるといいんだけど)
シリカ自身は奴隷で、容姿も人並みだが役に立つアピールは出来た。商人は独り身で年齢も高いが十分許容範囲である。
なにより、再び他者に売られて『先導役兼モンスターのエサ』なんてマネをさせられるよりずっとマシだと考えていた。
しかし、彼女の扱いは大きく変化する。
『巨塔の魔女』と名乗る人種女性が、ドラゴンの背に乗ってエルフ女王国を強襲。
エルフ女王に『人種絶対独立主義』を認めさせ、国に正式な法律として布告、人種を奴隷にすることを禁止させたのだ。
お陰で原生森林出入口近くで商売をしていた商人が抱える奴隷――シリカ自身達もこの法に引っかかることになる。
結果、商人のシリカ達少女奴隷の所有権が移動した。
正確には商人の下に、メイド服を着て背中に透明な羽が生えてぷかぷかとなぜか浮いている絶世の美女が、ドラゴンを連れて姿を現し、
「この辺りの担当はあーしなんだけど、彼女達は全部でいくらになるの~」
「そうですね……これぐらいで如何でしょうか?」
「りょーかい。それじゃこれでお願いね~、ちょっと色も付けておくから~。おつかれさま~」
「ありがとうございます!」
正式な金銭で自分達を買っていった。
無理矢理取り上げるなら、文句の一つも出るが自分達は奴隷で正式に売り買いされたら何も言えない。
やや気怠そうだが、胸も大きく、シリカ自身ですら微笑まれたら大抵のことは許してしまいそうになるほど美しい女性だった。
着ている衣服もメイド服だが、汚れ一つ無い。生地も一目で質が良いと分かるほど高価そうだった。
(わたし100人の値段より、あの着ているメイド服一着の方が高いんじゃないかな?)
とんでもない美女メイドが姿を現して、荒くれ者の冒険者達が黙っていられる筈がない。
彼女にちょっかいを出そうとするが、
『グルルルルルッ』とドラゴンの低い唸り声一つで黙り込む。
メイド女性は、ドラゴンの唸り声も気にせずシリカ達をうながす。
「それじゃ移動するからドラゴンの背中に乗って~。ここから『巨塔』まですぐだから怖がって暴れないでねぇ。暴れて落ちちゃったら死んじゃうから~」
「ッゥ!?」
ドラゴンの背中に乗って移動……。
つまりこれから空を飛んで移動するということだ。
奴隷である彼女達に選択肢は無く、シリカを含めた4人の奴隷少女がドラゴンの背中に怖々と乗る。
「それじゃお願いね~」
『グルゥ!』
メイド女性の声に合わせてドラゴンが羽ばたき空を飛ぶ。
「ひぃッ!」
シリカを含めた奴隷少女達が短い悲鳴を漏らすが、皆落ちないように体を強ばらせてドラゴンにしがみつく。
実際の移動時間は10分もかかっていないが、少女達の体感ではそれ以上に感じたようだ。
無事、噂の『巨塔』へ辿り着くと、少女達は全員が地面のありがたさを実感するようにその場へと座り込む。
「はい、ご苦労様~。この後、特にやることはないから、暫くのんびりしててね~。あーしは報告に行ってくるから、ちょっとだけここで待っていてね。後あーし達の許可無く森へ入らないように。一応、モンスターの掃除はしているけど、完全じゃないから下手に森に入ったら死んじゃうかもだから~」
「は、はい、気を付けます」
シリカが代表してメイド女性に返答した。
メイド女性はドラゴンに『ご苦労様~、今日はもう休んでいいよ~』と声をかける。ドラゴンは頷くと、空へと再び飛び立ってしまった。
メイド女性は空に飛び立つドラゴンを見送ると、スタスタと『巨塔』へ向かってしまう。
奴隷少女達はその場にポツンと残された。
シリカは一時的な空の旅で刺激された恐怖心が落ち着くと、『巨塔』について改めて観察を始める。
(ここが噂に聞いていた『巨塔』なんだ……)
『巨塔』の名前に負けない、真っ白な天を突くほど高い塔が広場の中心に建っている。
この『巨塔』を中心に半径約1kmの地面が均され、森との境目に警備兵代わりに約3mはありそうなゴーレムが均等に立っていた。
シリカ達の他にも元奴隷らしい人種が2、300人以上は居るようだ。
この人数にシリカが直感で気付く。
(わたし達、このままだと死んじゃう……)と。
『巨塔』周辺は均されているとはいえ、畑一つ無い。
家どころか、テント一つもないので寝るところもないし、衣服だって当然存在しない。
周辺は原生森林に囲まれているため、近くの街に買い物や行商人など来られる訳がないのだ。
仮に食料を仕入れようとしても一番近い購入場所は、プライドの高いエルフ種の国家、エルフ女王国である。
ドラゴンで再び脅して、食料を巻き上げることも可能だろうが……。
まだまだこの先、エルフ女王国全土から元奴隷の人種が集まるのだ。その全員を食べさせることなど物理的に不可能である。
(『人種絶対独立主義』を宣言したのは『巨塔の魔女』様だって聞いたけど、こんな凄い大きな塔やドラゴン達を多数従える人が下々の生活を気に懸けるはずがないよ。つまり、わたし達だけで、これから生活を作って行かないといけない……。でも子供のわたし達じゃ絶対に無理……)
畑で食べ物が取れるまでどれだけかかるか……。
放置されれば、それまでシリカ達のような少女達が生き残り続けるのは、ほぼ不可能である。
(こんなの、物語に出てくる伝説の魔術師のように魔術で食べ物を作るぐらいしないとみんな生きていけないよ……)
だが物語は所詮物語だ。
空想の産物で、一般的に魔術で食べ物を作り出すなど不可能である。
つまりシリカ達はここで死ぬしかない……。
そんな絶望に浸っていたシリカに、用事を済ませた妖精メイドの美女が戻ってくる。
「ごめんね、待たせて~。それじゃ皆が住む仮設施設を作るからちょっと待っててね~」
「……? かせ、え?」
「は~い、ちょっとそこスペースあけて~。それじゃプレハブ、解放~」
妖精メイドが手にカードを持ち『解放』と唱えると、目の前に平屋の鉄製の建物が姿を現した。
「…………え?」
シリカは目の前で起きた出来事が理解できず、疑問の声を漏らすことしかできなかったのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
番外編1を12時に、番外編2を17時にアップする予定です!(本話は番外編1です)
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