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12話 帰省2

今日は11話を昼12時、12話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は122話)。

「何だこれ……どうなってるんだ!?」


『奈落』の転移阻害を解決し、ようやく地上に出ることが出来た。


 そして僕らは故郷の村を目指したのだが――そこは『ナニカ』に滅茶苦茶に破壊された廃村となっていた。

 畑は荒れ放題、家々も破壊され、燃えた痕が残っている。

 何より近付くと気付くが……死体が多数転がっているのだ。


 風に晒され、腐り、小型モンスターや鳥、ネズミなどに囓られ白骨化しているが、着ていたであろう衣服の一部、体格で相手の予想がつく。


 ユメの友達であるメメちゃん、顔が厳ついが子供達に優しかったオヤジさん、パンの日に美味しいパンを作ってくれたおばちゃん達――無意識に飛行を止めて村へ降り立ち地面を駆ける。

 頭ではなく、体に染みこんだ道を進むと、僕の実家、家族が待つ家が、


「ぁぁあぁ……」


 無かった。


 柱1本建っておらず、巨人に踏みつぶされるように潰されていた。

 何より、家の近くに2つの白骨遺体があった。

 衣服から男性と女性で、男性が女性を庇うように倒れている。


 その衣服に見覚えがある。

 数年前、毎日見ていた服だ。


「とうちゃん、かあちゃん……?」


 父と母の死。

 現実感が無い。


「――イト様――ライ――」


 僕は間違えて別の場所に来てしまったのではないか?

 もしくはまだ眠っていて、悪夢を視ているだけで……。


「ライト様! お気を確かに!」

「メ、イ……?」


 肩を掴まれて振り返ると、メイ、アオユキ、エリー、ナズナが全員心配そうにこちらを見つめていた。

 彼女達と一緒に村へ向かっている途中で異変に気付き、メイ達を無視して1人先走ってここまで来てしまったのだ。

 そう、目の前に広がっている光景は全て現実なのだ。


「ぇ、ッ!」

「ライト様!?」


 衝撃が強すぎて、堪えきれずうずくまりえずいてしまう。

 メイは慌てて寄り添い体を支えながら、背中を撫でてくる。取り出したハンカチが汚れるのも気にせず世話を焼いてくれる。

 エリーは口を濯がせるため魔術で水を作り出し、アオユキは僕の視界を遮るように間へ入った。

 ナズナはどうしていいか分からず、オロオロと立ち往生する。


「――ざけるな」


 胃の中身を吐き出すだけ吐き出すと、次は感情を吐き出す。

 僕は幽鬼のようにふらりと立ち上がると、雄叫びの如く叫んだ。


「ふざけるな! どうして村が滅んでいるんだ! どうしてとうちゃん、かあちゃん、村の皆が殺されないといけないんだ! どうして! どうしてッ! 神よ! 僕はここまでの非道を受けるほどの罪を犯したとでも言うのかッ!?」


 直感が告げる。

 なぜ村が滅び、村人、両親が殺されたのか?

 僕が『ますたー』候補だったからだろう。

 もちろんまったく関係ないモンスターや山賊が暴れたのかもしれない。


 だが僕は『ますたー』候補として調査を受け、『奈落』で殺されかけた。

 偶然、今度は故郷が滅ぼされました――なんてありえるだろうか?

 普通に考えてそんなことありえるはずがない!


 順当に考えれば僕を殺そうとしたように、各国が、もしくは一国単独だったかもしれないが、村を滅ぼしたのだろう。

 僕は内側から溢れ出る殺意を抑えることができなかった。

 天に向かって吼える。


「殺してやる! 僕の故郷を破壊した奴らを! 殺してやる! 家族を殺した奴らを絶対に! 絶対に許さないぞ! 草の根を分けてでも探し出して絶対に殺してやるからな! 報いを与えてやる!」


 レベル9999に到達した者の慟哭。

 あまりの迫力にメイ達でさえその場から動けず、森からは一斉に鳥が飛び立ち、獣達も我先にと距離を取るため逃げ出す。

 レベルが上がり鋭くなった気配察知が教えてくれるが、今の僕には何の慰めにもならない。

 喉が嗄れるまで僕は世界に向けて怒り、怨念を吐き出し続けた。




 ☆ ☆ ☆




 一通りあの場で感情が落ち着くまで叫んだ。

 その後は、いつまでも激怒しているわけにもいかず、行動へと移す。


 一度、『SSR、転移』で『奈落』へと戻り、村の調査をおこなうチームを作る。

 少しでも村を滅ぼした、村人、僕の家族を殺した者達の手がかりを得るためだ。


 とはいえ、やはり年月が経っているため分かったことは少ない。


 ・村が滅びたのは数年前。

 ・家屋、畑、家畜小屋、井戸なども徹底的に破壊されつくしていた。

 ・村人達も逃げ出した様子はあるが、ほぼ皆殺し。


 まるで村に怨みを抱いているか、村の存在を消すかのように破壊され尽くしていた。


 ただやはり時間が経ち過ぎてモンスターなのか、他種の手によって壊滅されたのかが分からなかった。

 唯一の救い、朗報は一つだけ。


 にぃちゃん、ユメの死体が未だに発見されていないことだ。


 調査後、両親、村人達の遺体を集めお墓を作った。

『奈落』から妖精メイド達を『SSR、転移』で移動させて、手伝ってもらった。

 集めて確認した限り、衣服、体格的ににぃちゃん、ユメの遺体が無いのだ。


 この事実が判明した後、近くの森を含めて周囲を調査させたが、成果は無し。

 もちろん、例えば森に2人が逃げてモンスターに襲われて死亡。遺体を丸ごと食べられて遺骨も見つからない――なんてよくある話である。


 だが、遺体が無いということは、この世界のどこかに2人が無事に逃げられて生きている可能性があるのだ。

 ――もちろんその可能性が限りなくゼロに近いことは理解している。

 この事実を知った僕は執務室にメイを呼び出し指示を出す。


「地上に上がる商人、冒険者候補達ににぃちゃん、ユメ、2人についての情報を集めるよう指示を頼む」

「……優先順位はいかが致しましょうか?」

「そうだな……」


 リソースは有限で、『あれもこれも』と全てを調査するのは難しい。下手に全部を調べようとしたら浅いか、中途半端な情報しか集まらず、逆に困惑や混乱のタネになる。

 優先順位を決めるのは当然のことだ。


 村や両親の仇も当然許せないが、自分の復讐と真実を知ることも決して蔑ろには出来ない。

 僕は迷わず告げる。


「復讐と『ますたー』や各国に対する情報を優先して欲しい」

「畏まりました。そのように手配致します」


 メイが綺麗に一礼する。


 あくまで直感でしかないが――故郷壊滅、村、両親の殺害には僕が『ますたー』候補だった一件が関わっている気がした。

 故に復讐と『ますたー』や各国を優先すれば、その線上に故郷壊滅関係の情報を得られるような気がしたのだ。

 あくまで勘でしかないが……。


 メイが執務室を辞去する。

 残された僕は椅子の背に体を預ける。


 目を閉じると、滅ぼされた村、虐殺されただろう村人、両親の姿が次々に浮かんでくる。

『ガリッ』と奥歯が無意識に鳴った。


「――とうちゃん、かあちゃん、皆、仇は絶対に取るから……」


 僕しかいない執務室に小さく声が響く。




 ☆ ☆ ☆




 それから約半年後、ガルーへの復讐を終え、彼の反応から僕達の力が十分地上に通じることを理解する。

 僕は確信する。


『ああ、ようやく復讐の準備が整ったのだ』と。


 そして僕達は『奈落』から、地上世界へと溢れ出たのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


無事、ライト過去編が終わりました!

ここまで書いてこられたのも読んで下さり応援して下さっている皆様のお陰です、本当にありがとうございます!

次は番外編――モヒカン達に助けられた少女のその後をやった後、明後日から人種王国編に突入します!

新キャラも登場するので是非お楽しみに!


また、章の区切りということで、宜しければ本作品を『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下に評価ボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。今後も書き続けていくやる気・モチベーションとなります!


また明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

また今日は11話を12時に、12話を17時にアップしております!(本話は12話です)


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 白骨だけだと大人子供、衣服での男女くらいしか分からさそうなのに、体格が分かるというのはメイの教育の賜物ですかね? 現代の科警研に匹敵するほどの技術、知識に感心しますが、できればその辺の…
[気になる点] エリーが死者蘇生で生き返らせないのは、時間が経って出来ないからかな?
[一言] 主人公精神年齢が育ってない メンタルよわいね
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