11話 帰省1
今日は11話を昼12時、12話を17時にアップする予定です(本話は11話)。
エリーの頑張りのお陰で『奈落』の転移阻止を解除することが出来た。
これで『SSR、転移』を使い、『種族の集い』メンバー達に殺されそうになった場所まで戻ることが出来る。
あそこからなら地上まで戻る道順は覚えているため、約2年振りに地上に出られそうだった。
地上に出られそうになったので、まず始めにやりたかったことは故郷への帰省だ。
僕の故郷に一度戻ると知ったメイ、エリー以外にもアオユキ、ナズナが付いてくると宣言した。
他妖精メイド達も行きたがったが、さすがに全員連れていく訳にはいかず代表して彼女達4人のみとさせてもらった。
出発前、皆が執務室に集まる。
「この服ではなくやはりあちらの方がよかったでしょうか? ライト神様のご家族とお会いするのですから、少しでも良い印象を抱いて頂かないと……。わたくし、少々着替えてきますわね!」
「エリー、『SSR、存在隠蔽』を使用するので姿を見られることはありませんから、どの衣服を身につけようと意味はありませんよ」
「――メイの発言は正しい。しかしメイ自身、先程から髪やリボン、メイド服の細かい直しをし過ぎでは?」
自身の魔女風衣装を何度も見返し、納得できず着替えて来ようとするエリーをメイが嗜める。しかし、珍しくアオユキがメイにツッコミを入れた。
「う、これはその、一応万が一を考えてですね……。そ、それはそうと、アオユキだっていつもより綺麗にしてるじゃないですか……」
このツッコミにメイは、頬を薄く染めアオユキへと視線を向けて少しだけ口を尖らせる。
「にゃ~」
アオユキは視線を逸らし、猫のように鳴く。
メイ的には主である僕に、メイドである自分が両親と顔を合わせるかもしれないため(実際は存在隠蔽を使うため可能性はゼロに近いが)、いつも以上に気合を入れて見た目を整えているのを知られたくなかったらしい。
自分の反論を猫の鳴き声で華麗にスルーしたアオユキを、メイは頬を赤く染めながら少しだけ睨む。
「ご主人様の家族、故郷がどんなところか楽しみだな!」
一方、ナズナは純粋に僕の家族、故郷が見られることを楽しみにしていた。
僕は彼女達の言動に微苦笑を漏らしつつ、『SSR、存在隠蔽』を皆に見えるように取り出す。
「時間も勿体無いし、そろそろ行こうか。皆、準備は良いかい?」
「はい、問題ありません」
「にゃー」
「わたくしも、大丈夫ですわ」
「いつでもいけるぜ!」
メイ達の返事を聞くと、僕は『SSR、存在隠蔽』カードを使用する。
「『SSR、存在隠蔽』、解放!」
『SSR、存在隠蔽』は僕達の存在を五感、魔術的力、マジックアイテムでも認識することができなくなるカードだ。
使用者同士が認識できなくなることはない。
今でもしっかりとメイ達の姿を捉えている。
続いて、僕は転移カードを取り出した。
「『奈落』上層部へ移動するよ。――『SSR、転移』、解放!」
しっかりと頭の中で、裏切られた現場を思い出し『SSR、転移』を使用する。
気付けば一瞬で何度も夢に視た場所、僕が『種族の集い』メンバーに裏切られ、殺されかけた『奈落』中層に入るための広間へ移動していた。
「…………」
「ライト様」
「大丈夫だよ、メイ。今更、裏切られた場所に来たからって、感情を乱されて表に出すことなんてないよ」
悲しみより怒りと復讐心がグツグツと煮えたぎるが、その感情を表に出す場面ではない。
僕は笑顔で皆をうながす。
「それより早く移動しよう。ここからなら地上まですぐだよ!」
あくまで『奈落』最下層からと比べてだ。
地上までの道順は僕が知っているため、先へと歩き出す。
全員、レベル9999のため、『種族の集い』メンバーと潜った半分もかからない時間で来た道を戻り、地上へと出た。
まだ時間は午前で、天気は晴れ。
約2年振りに地上の太陽を全身で浴びる。
「ここが地上なのですね……」
「にゃー……」
「『奈落』の周辺は木々ばかりなのですね。空もあんなに高いですわ」
「周辺にいるモンスターはあんまり強そうなのがいないなー。『奈落』のモンスターの方がまだ手強いぞ」
メイ、アオユキは感慨深そうに呟き、エリー、ナズナは興味深そうに周囲を観察する。
僕は久しぶりに全身に浴びる太陽光を堪能していた。
『奈落』地下でも擬似的な日光を浴びていたが、やはり地上の光は格別である。
(ようやく地上に戻ってこれたな……)
数年ぶりの地上への帰還。
皆からすれば召喚されてから初めての地上と太陽だ。
一通り堪能した後、皆の注目を集めるため新しいカードを取り出した。
「それじゃ早速移動しようか。『SR、飛行』、解放!」
『SR、飛行』は使うと24時間、空を飛ぶ事ができるのだ。
僕の故郷は『奈落』から西にある。
『奈落』がある原生森林を越えて、海まで繋がっている大川を越えて、さらに進むと――村がある。
人種王国で最も北にある開拓村だ。
生活は厳しいが、その分、皆が助け合って生活をしていた。お陰で村全体がひとつの家族のように仲がよかった。
そんな僕の故郷が数時間ほど飛行していると見えてくる。
「……?」
レベル9999まで上がったため視力も強化されている。まだ遠いがお陰で村の様子をとらえることが出来たが――。
「畑が荒れて、あれ? どうして建物が崩れているんだ?」
場所を間違えた?
ありえない! 飛行しているため道を間違えようがない。
だが、どう見ても故郷の村――ではなく、廃村だった。
ただの廃村ではない。
自然災害によって潰れたのではなく、暴力的な『ナニカ』によって滅茶苦茶に破壊されていた。
畑は荒らされ、家畜小屋や住居が破壊、燃えた痕が多数ある。
井戸も潰され、柵も破壊されていた。
「何だこれ……どうなってるんだ!?」
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
11話を12時に、12話を17時にアップする予定です!(本話は9話です)
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