9話 ライト、レベル7000
今日は9話を昼12時、10話を17時にアップする予定です(本話は9話)。
エリーがダンジョンコアの一部解析、制御に成功する。
モンスター発生と罠などのみではあるが。
転移阻害の解析が終わっていないため、地上へ出ることが出来ない。
こちらはエリー曰く、まだまだ時間を必要とするとか。
だがモンスター発生、罠などが制御できるようになったお陰で僕達はようやく『奈落』を改造し、国家としての戦力を蓄えられるようになったのだ。
そんな忙しいエリーが、暇を作っては僕に彼女の専門分野である『魔術』についての授業をしてくれる。
エリーはいつもの魔女風衣装姿で手にチョークを持ち、黒板に『魔術と魔法』について文章を書いてくれる。
僕はその様子を机に座った状態で見守っていた。
エリーが一通り書き終えると、チョークを置いて手をパンパンとはらう。
机に座る僕へ向き直ると、説明を開始する。
「では改めて『魔術の分類と、暗黒魔法や禁忌魔法などの魔法との違いについて』の授業を始めさせて頂きますの」
エリーは得意気な表情を浮かべて、黒板の一部を指さす。
「まず『魔術』についてお話しをさせて頂きますわ。魔術は大きく分けて3つに分類されますの。戦闘級、戦術級、戦略級、以上の3つですわ。基本的に攻撃魔術でも、防御魔術でも、回復、補助、支援含めて全てこの3つに分類されますの」
慣れてくると詠唱破棄が可能で、込める魔力の量によって威力が変化し、イメージによってある程度の形などを変えることが出来る。
この辺りは以前から習っている所なのですんなりと理解できた。
「では、この3つにどうやって分類されるのか?」
エリーは軽く咳払いをしてから説明をする。
戦闘級――1人の魔術師がおこなう小規模魔術のこと。代表的なのはファイアアロー、アイスソードなどの攻撃魔術。人によって、覚える属性が偏ったり、数多かったりする。一般的に偏った方が、特化型として大成すると考えられている。
戦術級――広範囲に影響を与える魔術を指す。戦術級を一つでも使えるかどうかが『1流』の壁とされている。
「『種族の集い』時代、ギルドの冒険者から聞いたけど……人種はこの壁を越えられないらしい。竜人種、エルフ種、魔人種なんか余裕で越えてくるけど」
「人種冒険者の場合、低レベルの内は基本的に魔力が低いのでしかたないのでしょうね。レベルを上げれば違ってくるのでしょうが……」
最後は戦略級――空から隕石を降らせたり、津波や地震で地割れを起こすなど、戦術級以上に影響を与える魔術だ。故に『戦略級』と呼称されている。
高等技術な上、コストが非常にかかり滅多におこなえない魔術と言われている。
だがエリー級になると、戦略級など余裕で扱えるとか。
「以上が簡単な分類方法ですわね。さらに……一般的には知られていない戦略級より上の魔術がありますわ。それが極限級ですの」
極限級――天候変化や死人を生き返らせる(使用条件が細かく有る)、天使(女神の使い。光使い)を降臨させる、異次元へと繋げる、などだ。
「極限級になりますと、わたくしでも詠唱は必須。モノによっては1日1回しか使用できませんわ。では最後に魔法について説明致しますわね」
魔法――上4つに分類されていない魔術、新魔術、地方の土着魔術などを魔法と呼ぶ。暗黒魔法、呪術魔法、禁忌魔法など。分類、理論、解明されていないため便宜上、『魔法』と呼んでいる。与える影響範囲や強さによって、戦闘、戦術、戦略に分類することは可能だ。
一通り説明を終えると纏めに入る。
「ライト神様のレベル上げに使用している『悪夢召喚』は、極限級に分類される魔術ですわ。異界の悪意を持つモンスターを召喚しているのですの。なので決してわたくし達の『仲間』を召喚しているわけではありませんですわ」
「でも召喚は召喚でしょ? こちらの都合で招いておいて倒すのはやっぱりちょっと引っかかるっていうか……」
今回なぜ僕達が『魔術についての授業』をしているかというと……この『悪夢召喚』について疑問を抱いたからだ。
レベル3500で頭打ちになった僕のレベルだが、エリーのお陰で解決の糸口を得る。
『悪夢召喚』で召喚したモンスターを倒すというものだ。
『悪夢召喚』から召喚されるモンスターはレベル9000台がゴロゴロと出てくる。
世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』の守護モンスターであるヒドラなど足下に及ばない怪物達がだ。
それらモンスターをメイ達と一緒に倒すことで僕のレベルも7000まで上がったのだが……。
『召喚しておいて倒すのはどうなのか?』、『いくら敵意を持って無差別に襲いかかってくるモンスターとはいえ召喚したのだから、僕達の仲間のようなモノという可能性はあるのか?』という疑問が浮かびエリーに質問したのである。
僕自身、『種族の集い』メンバーに裏切られ殺されかけた。その経験があるため仲間を犠牲にしてまでレベルを上げたいと考えていない。
この問いに彼女は、わざわざ時間を作って順序立てて説明してくれたのである。
エリーは改めて僕に向き直り滔々と説明を続ける。
「ライト神様がお気になさっている点……確かに通常であれば召喚するモンスターは基本的に召喚主の命令を聞く、仲間のような立ち位置になりますわ。ですが『悪夢召喚』は例外の分類に入るのです」
「例外?」
「はいですわ。『悪夢召喚』は異界に居る敵勢モンスターを召喚――召喚だと誤解を受けますわね……出入口を目の前に作ってあげて、『来るならこい』とうながしているだけですの。なので別に仲間とかではありませんわ。むしろ相手は『殺せて、食える獲物がわざわざ自分から姿を現した』程度にしか考えておりませんの」
改めて説明されると酷い。
「つまり『召喚』という名称が入っているが、『悪夢召喚』とは敵を目の前に連れてくるだけの魔術ということ? 召喚で契約しているのではなくて、空間を繋げているという意味合いに近いのかな」
この疑問にエリーが笑顔で応える。
「さすがライト神様ですわ! まさにその通りですの」
「褒めてくれるのは嬉しいけど、ちょっと疑問が……。ただ敵を呼ぶための魔術なんてどうしてあるの? 僕には役立っているけれど、通常の使い方が良く分からないんだけど……」
一応、僕のレベル上げには非常に役立っているが、他で求められる状況がまるで想像できない。
危機に陥って、敵を倒すために使おうにも、敵味方関係なく襲いかかってくるより凶悪な怪物を召喚するだけ。レベル上げに使うには、地上にいる冒険者達等では難度が高すぎる。
自爆覚悟、道連れにしか使用方法が思い付かないのだが……。
この問いにエリーは再び笑顔で応えた。
「仰る通り『悪夢召喚』は危険な魔術ということで禁忌魔術指定をうけておりますわ。所謂『禁術』扱いですの。ですがなぜこんな危険な魔術が存在するかと問われたら……そこに興味深い題材、研究、魔術があるからですわ!」
エリーに良い笑顔で断言される。
彼女は『悪夢召喚』を開発した魔術師に強い共感を得ているようだ。
職人が自身の腕を磨いたり、興味深い研究テーマを前に我慢できず禁忌すら犯すようなものなのだろう。
それに実際、僕のレベル上げに『悪夢召喚』が役立っているのは確かである。
『役に立たない』、『意味がないから』と研究を否定する訳にもいかない。
「とりあえず、説明して分かって頂けたとおり『悪夢召喚』から召喚されるモンスターは仲間ではありませんの。むしろ、敵勢モンスターですわ。なのでライト神様のレベルを上げるために遠慮無く倒してくださいましね」
エリーの言葉に僕はとりあえず頷いておくのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
なんだかんだ言って明日で過去編が終わります。
やっぱり2回更新って消費スピードが早いですね~。
また今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
9話を12時に、10話を17時にアップする予定です!(本話は9話です)
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