8話 『奈落』ダンジョン、1年目
今日は7話を昼12時、8話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は8話)。
――『奈落』ダンジョンに落とされて、約1年が経過した。
『奈落』の守護モンスターであるヒドラを倒し、ダンジョンコアの部屋を占拠した。
ダンジョンコアの部屋だとモンスターが湧かないため、生活の拠点をこの場所に切り替えたのだ。
その際、メイの提案で読み書き、四則演算、教養などを学んだ。
学ぶに連れて自分が如何に若かったのかを理解する。
(名前、簡単な足し算と引き算が出来るだけでインテリぶっていた過去の自分を殴りたい!)
それだけでも同年代の農村の子供と比べれば――1年前の僕は12歳だったということを考えると実際は凄いのだろうが、黒歴史という認識の方がどうしても強い。
話を戻そう。
『奈落』ダンジョンに落とされて、約1年が経過したが、その間に色々なことがあった。特にメイクラスのレベルを持つ仲間達が増えたのが印象深い。
例えばヒドラを倒し、ダンジョンコアの部屋に生活拠点を移して約2ヶ月後――『奈落』ダンジョンに落とされて約3ヶ月、メイ以外、初めてSURを引き当てた。
「『SUR、天才モンスターテイマーアオユキ レベル9999』、解放!」
カードを解放すると、メイの時のように僕を中心に神々しい巨大な魔法陣が発生する。
光が収まると、目の前に僕の妹ユメより少しだけ年齢が高そうな少女が立っていた。
猫耳がついたパーカーを羽織り、胸は小さく、手足も細い。
幼い顔立ちで、青い幻想的な髪色も合わさって非常に儚げな美少女だ。
アオユキは僕と視線を合わせると、『ジッ』と目を合わせ胸中を探るような瞳を向けてくる。
10秒ほど視線を合わせていると、
「にゃ~」と猫のように鳴いた。
猫耳がついたパーカーをピコピコ揺らし、僕との距離を縮めると胸に顔を擦りつけてくる。
本当の猫か、甘えてくる妹ユメを思い出し、ついつい頬が緩む。
顎の下を撫でると本物の猫のように目を細める。
「これからよろしくねアオユキ。色々大変だろうけど、僕達に力を貸してくれ」
「にゃ!」
アオユキは僕のお願いに元気よく猫語で返事をした。
彼女に早速『ダンジョンコアを制御できるか?』と尋ねてみた。
ダンジョンコアがモンスターを産み出すなら、ダンジョンコアはモンスターの一種ではないか?
ならば『天才モンスターテイマーアオユキ』ならば『制御できるかも』と考えたのだが……。
「うにゃ~……」
流石にアオユキでもダンジョンコアの制御云々は専門外で、首を横に振られる。
こればっかりはしかたない。
そしてアオユキが排出されて、約3ヶ月後――『奈落』ダンジョンに落とされて半年が経過した。
新しいSURを引き当てる。
しかも、ダンジョンコア制御の専門家、知識を持っていそうなカードだ。
早速、『SUR、禁忌の魔女エリー レベル9999』を召喚して尋ねる。
喚び出された彼女は金髪の髪を自信ありげに弾き、断言した。
「魔法、魔術、禁術、精霊術――ありとあらゆる術を極めた禁忌の魔女であるわたくしにかかればダンジョンコアの制御などお茶の子さいさいですわ!」
「おお! さすがエリー! 期待しているよ!」
「ンンゥッ――はい、お任せくださいませ、ライト神様!」
エリーは僕に頼られるのが心底嬉しかったのか、頬を赤く染め体を震わせ笑顔で了承した。
――だがエリーがダンジョンコア制御に挑んで約1ヶ月後……進展はゼロだった。
エリーはダンジョンコアの前で頭を抱えて、蹲る。
「ライト神様からの初仕事がまったく上手くいきませんの! なんですのこのダンジョンコアって意味不明過ぎますわ!」
「そう落ち込むなって、エリー。あたいで力になれることがあれば、いつでも言ってくれよな!」
「……ナズナさんの一番の仕事は大人しくしていることですわ。それだけで十分、わたくしの力になりますの」
「? 大人しくしているだけでいいのか? なら任せろ!」
ダンジョンコア制御の進捗は甚だ芳しくないが、新しいSURである『SUR、真祖ヴァンパイア騎士ナズナ レベル9999』を約1ヶ月後に引き当てた。
アオユキ、エリーは3ヶ月の間が空いているのにだ。
非常に運が良い。
他にも有用なアイテム――『種族の集い』メンバーに裏切られた絶望・復讐心を忘れないようにするために、12歳の年齢のままで居られる『UR、不老の腕輪』や、アイテムボックスからガチャカードを取り出して手にしなくも使用できるようになる『UR、カードホルダー』も手に入れることが出来た。
お陰で戦術の幅を大きく広げることが出来た。
ちなみにナズナを顕現させた時は、『真祖ヴァンパイア騎士』だけあり剣術、槍術が優れているのだろうと考え、稽古を付けてもらおうと思っていた。
確かにナズナは強い。
大剣だけではなく、普通の剣、槍、ハルバートなどでも天才的な技量を示した。
しかし……。
「ご主人様、槍はこうシュ! パッ! ハッ! としてグッとしたらいいんだぞ!」
「あっ、うん、ん?」
彼女は天才的な技量を持つが感覚派のため、教え方が非常に分かり辛い。
ナズナも必死に教えてはくれるのだが……人には向き不向きというものがある。結局、僕の稽古は引き続きメイが担当することになった。魔術に関しては時間を作り、エリーが担当してくれる。
とはいえナズナをカードから召喚して非常によかった。彼女は元気が良い性格で、すぐに僕達のムードメーカーとして明るい空気を作ってくれたのだ。
☆ ☆ ☆
――『奈落』に落とされて約1年後。
エリーがダンジョンコア制御に取り組んで半年後、ようやく一部の解析、コントロールに成功する。
「ライト神様! ようやくモンスター発生と罠などの制御に成功しましたの!」
「さすがエリー! これでようやく『奈落』改造に移れるよ!」
「おめでとうございます、エリー。貴女ならきっと成し遂げると信じておりました」
「にゃー」
「? なになに? おめでたいことでもあったのか?」
僕、メイが祝福を告げ、アオユキが猫語を話し、ナズナが『?』を頭上に浮かべ皆が何を喜んでいるのか尋ねていた。
僕達に賛辞の言葉を贈られたエリーは恭しく頭を垂れる。
「全てはライト神様のご協力があってのこと。何よりわたくしの手柄はライト神様のものですわ。ですが、お褒めにあずかり恐悦至極に存じますの」
とはいえまだモンスター発生と罠などのみだ。
転移阻害の解析が終わっていないため、地上へ出ることが出来ない。
こちらはエリー曰く、まだまだ時間がかかるそうだ。
しかし、モンスター発生と罠などが解除、制御できるのは非常にありがたい。
今までだと弱すぎてカードから喚び出せなかった者達――妖精メイドや建築、改造が得意な者達、他施設、戦力を充実させることに集中できる。
僕は改めて皆に告げた。
「復讐を遂げるため、各国から真実を聞き出すため、早速戦力拡大を図ろうか」
こうして僕達はようやく、国家に対抗するべく戦力を整えることに集中することが出来たのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は7話を12時に、8話を17時にアップしております!(本話は8話です)
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