7話 ライト、レベル3500
今日は7話を昼12時、8話を17時にアップする予定です(本話は7話)。
「これがダンジョンコアか……意外とおっきいね」
「ですね。私も、もう少し小さいモノというイメージを抱いておりました」
僕とメイは目の前に浮かぶ一抱え以上ある球体、ダンジョンコアを前に感想を漏らす。
数時間前――毒に犯されながらも、ヒドラの首を2つ落とし、心臓を破壊することが出来た。そして続くメイの攻撃によって、ヒドラの残りの首と体はサイコロ状にまで切り刻まれ死亡した。
メイから解毒と回復ポーションをもらい毒を消す。
毒の影響と疲れで動けなかったため、メイに体を預けていた。
痺れが消えるまで、僕は自分のレベルを確認する。
レベル3500を突破していた。
レベル3500も突破しているのは嬉しいが、今後ヒドラ以上に強いモンスターは居ないため、これ以上のレベル上げをどうするか考えないとな……。
「……もう大丈夫。そろそろ行こうか」
「はい、ライト様」
痺れも無くなり消えたので、ヒドラが居た場所よりさらに奥へと向かう。
途中、サイコロ状にまで切り刻まれたヒドラの遺体は、細かくなり過ぎて回収が難しく、メイが魔術で焼き払った。
斥候、魔術、料理、鍵開け、鑑定――本当に彼女は基本的に何でもできる。
ヒドラの遺体の処理を終えて、奥へと進む。
扉があって、ヒドラを倒さないと開かない仕組みのようだ。
扉の先へ進むと、広い空間が待っていた。
天井は緩やかなドーム状で、広さもお貴族様が住む巨大な屋敷が丸ごとは入るほどの余裕がある。
その広間の中心に一段高い位置にダンジョンコアが浮遊しているのだ。
近づき触れる。
仄かに光っているが温かくも、冷たくもない。
これが世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』のダンジョンコアなのか……。
「ライト様」
「大丈夫、分かっている。壊すつもりはないよ。僕の目的のためにも、ね」
メイの声音に僕は振り返り返答する。
ダンジョンコアを破壊すれば、『奈落』はダンジョンとしての機能を失ってしまう。
機能を失えばモンスターも発生せず、罠も復活しないし、『転移』カードが使えて、『種族の集い』メンバーに裏切られた地点へと一瞬で戻ることができる。
あの地点まで戻れれば地上まですぐに移動可能だ。
しかし、僕の目的とは一致しない。
むしろ、真逆とさえ言って良い。
僕の目的は『元メンバー達に復讐すること』だけではなく、『ますたーとは?』、『なぜ僕が殺されなければならなかったのか?』といった真実を知ることだ。
復讐はともかく、『真実を知る』には、国と争う可能性が高い。
国に対抗できるのは国だけだ。
故に僕も地上の国々に対抗するための国家を『奈落』で作る必要がある。
そのためにも僕が持っている『無限ガチャ』――使用回数無限のガチャ。魔力濃度によって排出されるカードの確率が変動する――の力が必要になるのだ。
最も魔力濃度が濃い『奈落』最下層でメイのような存在を多数輩出する必要がある。
なのにその魔力供給源とされるダンジョンコアを破壊するなど、本末転倒だ。
また世界最大最強最悪ダンジョンの最下層のため、外からの侵攻を気にせず戦力を溜め込むことができるのも重要である。
「『奈落』最下層ほど、僕の恩恵『無限ガチャ』と相性が良い場所もないからね。戦力も整っていないのにダンジョンコアを破壊なんてしないよ。……けど、このまま何もしない訳にはいかないよね」
ダンジョンコアを破壊するつもりはないが、何もせず放置し続けるつもりもない。
ダンジョンコアが存在する限りダンジョンは維持される。
つまりモンスターは湧き出て、罠が補充され続けるのだ。それでは『奈落』最下層に僕の国家を作ることが出来ない。
『奈落』最下層に僕の国家、戦力を溜め込むためにはダンジョンコアのコントロール、解析が必須である。
メイも僕の側に並び、ダンジョンコアを観察する。
「……基本、何でもこなせると自負する私ですが、流石にダンジョンコアの解析、コントロールは不可能ですね」
メイが僕に向き直る。
「ですがライト様の『無限ガチャ』から私のようなレベル9999の魔術の専門家、もしくは解析に特化した者を召喚できれば、十分ダンジョンコアの制御も可能かと」
メイの言葉に僕も頷く。
確かに現状では僕もメイもダンジョンコアを制御することは出来ない。
しかし、僕達には『無限ガチャ』がある。
ダンジョンコアを解析、コントロールできそうな人物カードが排出されるまで、どれほどの時間がかかろうとも『無限ガチャ』を連打し続ければいいのだ。
この辺りが『無限ガチャ』の強みである。
「とりあえず、ダンジョンコアの解析、制御に関しては将来排出される仲間達に任せよう」
「ライト様の仰る通りかと」
「あと、広間の寝床をここに移そうか。どうやらダンジョンコア周辺にはモンスターが発生しないようだし」
床に一切の傷が無い。
いくら頑丈な『奈落』最下層の床でも、モンスターが移動すればそれなりの跡が付く。一つもないということは、ダンジョンコア周辺ではモンスターは発生しないのだろう。
現在、僕達が寝起きしている広間でも、慣れているので問題が無いと言えば無いが……。
やはりモンスターが発生するのを気にする必要がないのなら、それに越したことはない。
メイもこの提案に納得する。
「広さも十分ですし、モンスターが発生しないのは大きいですね。これでライト様に今後、落ち着いて戦闘訓練や勉学、教養をお教えすることが出来そうです」
「……? メイ、どうしてモンスターが発生しない場所の確保と僕が勉強することに繋がるの?」
「いつモンスターが発生して襲いかかってくるか分からない状況で、勉強に集中するのは難しいかと。なのでダンジョンコアルームにモンスターが発生しないのなら、2人での戦闘訓練も増やし、さらに勉学も今後は行うべきです」
彼女の発言にちょっと『むっ』としてしまう。
「僕は確かにメイのように教養は不足しているかもしれないけど、これでも多少は勉強はしてるんだよ。お陰で自分の名前はちゃんと書けるし、街で買い物をしてもお釣りを誤魔化されることも無いんだから」
僕は胸を張って主張する。
貧農出の子供がここまで教養を身に付けているのは稀だ。普通、自分の名前も書けないし、文字も読めない上、足し算、引き算も身に付けていないので街で買い物をするとよくお釣りを誤魔化される。
正直、貧農出の子供としてはかなり頭が良い分類に入るのだ。
僕の胸を張った主張にメイは片手で額を抑える。
「ライト様……お気持ちは分かります。ですがどうか私を信じて勉学を受け入れてくださませ。将来、ライト様の復讐、真実を得るために必ず必要になります。決して後悔させないとお約束いたしますので。もしも少しでも後悔なさった場合、私の命を以て贖って頂ければと」
「? あが?」
メイの言葉の意味が分からず首を傾げてしまう。
とりあえず彼女の必死な思いは伝わった。
なので渋々ながら受け入れる。
「まぁ……メイがそこまで言うなら勉強するよ。……や、優しく教えてね?」
「――ッゥ! もちろんです。我がメイド道に懸けて、手取り足取り、2人っきりでお教え致しますね」
メイは僕のお願いに視線を逸らし、鼻を押さえた。
数秒ほど何かを堪えた後、改めて向き直りいつも通りの態度で返答する。
こうして僕はヒドラを退治しダンジョンコアまで到達した後、なぜか2人っきりで戦闘訓練に加えて勉学をすることになってしまうのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
7話を12時に、8話を17時にアップする予定です!(本話は7話です)
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