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5話 ライト、レベル3000前後

今日は5話を昼12時、6話を17時にアップする予定です(本話は5話)。

 メイ曰く、


(わたくし)は大抵のことができます。それ故に戦闘能力はあまり高いほうではありませんよ」


 メイは『自分は強くない』と言うが、彼女と模擬戦をすると何も出来ずに負けてしまう。

 文字通り手も足も出ずだ。

 彼女でこれほど強いのだ。

 戦闘特化のレベル9999はどれほど強いのだろう?


 そんなメイが斥候を担当し、『奈落』最下層の罠や地図、ダンジョン守護モンスターまでの道順を手に入れる。


 ダンジョン守護モンスターとは?

 ダンジョンコアを護る守護モンスターである。

 最も強いモンスターで、その先にダンジョンを維持、管理などしていると言われているダンジョンコアがあると言われている。


 メイが発見した大扉の先に、彼女曰く『大凡レベル5000前後の大型モンスターの気配がします』とのことだ。

 レベルから言って間違いなくダンジョン守護モンスターと見て間違い無いだろう。


「ダンジョン守護モンスターは大凡レベル5000前後。メイが居れば負けはしないよね?」

「はい。部屋に入り相対した瞬間、『魔力糸(マジック・ストリング)』でバラバラにできるかと」


 ……それでも彼女は強くはないらしい。

 意味が分からないよ。

 僕は気持ちを切り替え告げる。


「と、とりあえず戦闘訓練のためにも最初は僕だけで戦うから。部屋に入って出合い頭にバラバラにして倒さないようにね?」

「了解致しました。ですが、ライト様の御身が危険と判断したら介入させて頂きますからね。あまり無理をしてはいけませんよ」

「分かってるよ。もう、メイは過保護なんだから」

「メイドとしてライト様の身命を護るのは、ごく当たり前のことです」


 従者――というより、年上の姉のようにメイが釘を刺しながら、僕を優しく抱きしめてくれる。

『過保護』などと言って口調では反発してみせたが、本当は姉のような彼女の態度と優しさが僕は嬉しかった。


 こうして『奈落』ダンジョン守護モンスターと戦うことが決定。

 流石に今すぐは性急すぎるため、明日起きたら向かうことにした。


 明日の決戦に向けて、今日もメイと一緒にお風呂に入りつつ、体を休めるのだった。




 ☆ ☆ ☆




 翌日。

 朝食、身支度を終えて慣れた様子で『奈落』守護者の間へと移動する。

 途中、レベル1000~3000のモンスターと鉢合わせしたが、準備運動代わりに倒していく。

『奈落』最下層に落とされて1ヶ月以上経っているため、レベルも上がり、装備も充実、モンスターも見慣れたものしかいないため遅れをとることはない。


 すんなりと散歩のような気楽さで、守護の間まで辿り着くことが出来た。

 禍々しいレリーフが施された巨大な扉だ。

 大きさ4、5mはあるだろうか?


 風の属性を込められている槍『UR、ウラガン』を手に軽く準備運動をする。


「メイ、昨日も言ったけど、基本手を出しちゃ駄目だからね。最初は僕が訓練のために戦うんだから」

「分かっております。ライト様も危なくなったら私がお助けすることを忘れず、無茶はしないでくださいね?」

「もう、分かっているよ」


 まるで姉弟のような親しげな雰囲気で会話を交わしつつ、僕は巨大扉に手をかける。

 扉に触れると、巨人が開閉しているかのように自動的に開く。


 内部は暗かったが、扉が開くと天井、壁に火が灯る。

 暗闇を気にする必要がないほどの光が溢れた。

 天井は高く、奥行きも十分ある。

 小さな村ならすっぽり収まりそうなほど広かった。


 僕が先頭で部屋に入る。

 後からメイが楚々と三歩下がって付いてくる。


「……あれが『奈落』のダンジョン守護モンスターか」


 広間の奥にずんぐりとした体型の巨体が眠っていた。

 触れただけで切れそうな赤い鱗に、9つの首。

 僕達の存在に気付くと、ゆっくりと首を巡らせ、低く唸り声を漏らす。

 翼は無いが、その巨体は15mほどはありそうだ。


「レベル5000、ヒドラだそうです」


 メイが鑑定で確認し情報を告げてくる。

 予想通りのレベルだ。

 僕とは約レベル2000も離れている。

 レベル差を考えると本来なら手も足も出ずに敗北するだろうが――。


 ヒドラがのっそりと立ち上がるより先に、首の一つがこちらへ向けて口を大きく開く。


「!?」


 口が開いたと認識したと同時に、黒い塊が超高速で吐き出された!

 僕は咄嗟に右側へと飛び、メイは余裕の態度で左へと回避する。

 僕達が立っていた場所が抉れ、床を砕く。


「動きが遅いと油断させておいて、超高速の岩石を吐き出すとか! 卑怯だぞ!」

「相手はモンスターですから。卑怯、卑劣の認識も無いかと」


 僕の叫びにメイが軽い調子でツッコミを入れてくる。

 彼女の指摘に反応している余裕はない。

 ヒドラとのレベル差はあるが、先程の岩石攻撃も風の属性が込められているために所有者の速度を上昇させる幻想級(ファンタズマ・クラス)の槍、『UR、ウラガン』で回避できた。

 この槍と『無限ガチャ』から排出されるカードも組み合わせれば十分勝利する目はあるはずだ!


 僕はお返しとばかりに、アイテムボックスからカードを取り出す。


「爆豪火炎! 解放(リリース)!」


『SSR 爆豪火炎』

 戦術級タクティックス・クラスの中でも上位に入る攻撃魔術だ。

 爆発と火炎の合わせ技で大抵のモンスターに有効なカードである。

 爆発で巻き上げられた煙がヒドラを包み込む。

 いくら『奈落』のダンジョン守護モンスター、レベル5000でもこれは無視できないダメージが入るはず!


『グオオオォォォオォォォォォォ!』

「む、無傷!? しかも攻撃を返す余裕もあるとか!」


 ヒドラの2つの口が開き、片方がお返しとばかりに火炎を吐き出す。

 もう一つは何かの液体を高速で撒き散らした。

『UR、ウラガン』で上がった速度を頼りに回避。

 火炎が頬を撫で、液体がダンジョンの床をなぞる。


 火炎は産毛が焦げた程度だが、液体が通った床が焼けるような音を立てて溶け出す。

 あんなのまともに喰らったらタダじゃすまないぞ!?


「ら、ライト様、そろそろ(わたくし)が手を出しても……」

「まだ始まったばかりだから大丈夫。まだメイは手を出さないで!」


 溶ける床を見てメイが心配そうに声をかけてくる。

 だが、まだ始まったばかりで、僕はこれでも男だ。彼女の前で、主としても早々に音を上げるわけにはいかない。


「魔術が効き辛いなら、直接攻撃を叩き込むまでだ!」


 床を蹴り、『UR、ウラガン』を握り締め突撃する。

 9つのうち3つの首がこちらを向き、残る6つがメイを警戒した。ダンジョン守護モンスターもどちらを注視すべきか本能で理解しているようだ。


 悔しいけど、好機と捉えよう。


 火炎、溶ける液体、岩石等が飛来する。

 僕は全てを余裕を持って回避し、距離を縮める。

 鈍重な見た目に反して、敵は尻尾を素早く一閃。

 だがこの攻撃は予想していたため、逆にチャンスとなる。


 強く床を蹴り、尻尾を回避!


 背を向ける首を狙って『UR、ウラガン』を両手で振るう。

 幻想級(ファンタズマ・クラス)だけあり、鋼鉄以上に硬そうな鱗を突き破り奥深くまで刺さる。

 僕はすぐさまウラガンの力を解放した。


「ウラガンよ! 力を示せ!」


 声と共に魔力を流し込む。

 同時にウラガンから暴風が発生し、ヒドラの首を引きちぎる!


『グオオオォォォオォォォォォォ!?』


 まさか僕に首の一つを奪われるとは想定していなかったらしく、ヒドラは苦痛と悔しさを滲ませた雄叫びを上げた。

 僕は欲を出さずすぐさま安全位置まで距離を取り、ウラガンを構える。


「よし! 装備のお陰で相手がレベル5000でも十分戦えるぞ! これならメイの力を借りずとも倒せるかも……!?」


 僕は最後まで台詞を言い切ることが出来なかった。

 なぜならウラガンの力で千切った首が、10秒ほどで再生し復活したからだ。


「ち、千切れた首をほぼ一瞬で再生させるとか! どれだけ凄い再生能力なんだよ!」

「ライト様、そろそろ(わたくし)の出番……」


 メイが心配そうに声をかけてくる。

 だが僕にも男としての意地がある。


 アイテムボックスから1枚のカードを取り出す。


「手を出しちゃ駄目だよ、メイ! まだ戦いはこれからだ!」


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

5話を12時に、6話を17時にアップする予定です!(本話は5話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 見返してみたらこのときではレベル5000のモンスターを瞬殺できるのにレベル5000のヒソミを一瞬で拘束しなかった上に、手間取ったのが意味わからない
[一言] 裏切られ差別され蔑まれ死にかけた可愛そうな主人公…だったはずが ここ数回で一気に裏山キャラへと…チクショウ爆発しろ 癒しのモヒカン回早よ
[一言] アハト・アハト回、おめでとうございます。 ようやく、これから(1話から)読み始めます(汗) 連載速度においつけずに「とりあえずブクマ」状態でした…… 作者的に次の「丁度」は、105,12…
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