4話 ライト、レベル3000前後
今日は3話を昼12時、4話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は4話)。
『奈落』最下層に落とされて、1ヶ月が経過した。
『奈落』のモンスターは大凡レベル1000~3000ほどだ。
メイの協力もあるお陰で、僕もレベル3000を突破するまでになる。
ただ問題があるとするなら……レベルの上がりが悪くなったことだ。
僕達は転移トラップで飛ばされた広い空間を寝床に改造し、恩恵『無限ガチャ』から出たベッドやテーブル、椅子などの家具を配置する。
下手に狭い場所に寝床を構えると、モンスターが発生した場合、ほぼ近接で対応しなければならないからだ。
結果、出入口をメイの『魔力糸』で塞ぎつつ、いつこの空間にモンスターが発生しても対応できるよう態勢をとる。
もうこんな生活にも慣れてしまったため、僕は椅子に座りメイが入れてくれたお茶を飲みながら話をする。
「『奈落』最下層のモンスターレベルが1000~3000だから、メイが危惧した通り僕のレベルもほぼ打ち止めになっちゃったね」
「唯一の救いは、武装や生活水準などがライト様の恩恵『無限ガチャ』のお陰で高水準を維持していることでしょうか」
「世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』最下層に居るはずなのに、地上より良い生活が出来るなんて……。僕も流石に予想外だよ」
『種族の集い』時代は、チームで借りた拠点でとても狭い1人部屋を与えられていた。
ベッドは狭くそれ以外のスペースも極狭、そして布団は極薄、枕も固い。
だが僕のような貧農から抜け出そうと都会に出た人種など、路地裏か、馬小屋、お金を稼いだ日は安宿の集団部屋に泊まるのが一般的だ。
例えとても狭くても、拠点の1人部屋など、本来は贅沢の極みである。
そして――現在はモンスターがいつ襲ってくるか分からないダンジョン内部ではあるが、メイドのメイが居て、大きなベッドにフカフカの布団。
食事も地上で食べたことが無い多種多様な美味しい物をメイが調理したり、カードで出すことが出来ていた。
甘いのやしょっぱいの、他不思議な味のお菓子も多数ある。
お風呂にも入れて、着替えの衣服も多数あるため、毎日下着を替えているほどだ。
現在の『奈落』暮らしは地上と比べ物にならないほど快適である。
「生活環境だけじゃなくて、武装も僕のような人種の子供が幻想級の槍を持てるとか……。地上じゃ本当に考えられないよ」
僕が現在メイン武器に使用している槍は、『UR、ウラガン』という槍だ。
幻想級の武具で、風の属性を込められているため所持しているとスピードがアップする。
さらに敵に突き刺し魔力を込めると、暴風の力を解放し傷口を広げたり、内部を傷つけるのだ。
殺傷能力が非常に高く、重宝している。
なぜ槍を使っているかというと、距離を取れるので安全度が高いというのもあるが……『種族の集い』時代、元メンバーから色々武器を習った。
その中で一番適性があったのが槍だ。
槍の次が弓で、一番才能が無かったのは剣である。
メイにも一通り見てももらったがやはり槍、弓、剣の順番で才能があるらしい。
……僕も男として剣に憧れたが、命がかかっている状況である。我が儘を言って身を危険に晒す趣味はない。
とはいえ幻想級はギルドの冒険者曰く、国宝級の武器・道具らしい。
「そんな物がポンと出てくるんだから自分の恩恵ながら『無限ガチャ』って凄いよね……」
「全てライト様のお力です。従者として鼻が高いです」
メイが給仕として、お茶のお代わりを淹れながら僕を褒めてくる。
ちなみに防具だけは、メイの『魔力糸』で作り出した衣服の方が軽くて丈夫なため、そちらを愛用していた。
「生活環境、武器や防具、嗜好品なんかは問題ないとして……今後レベル上げはどうしようか? 僕もメイのようにレベル9999まで上げたかったけど、このままじゃ無理そうだな……」
別に無理をしてレベル9999まで上げる必要はない。
ただ地上に上がって元『種族の集い』メンバー達への復讐、『ますたー』とは何か、なぜ僕が殺されそうになったのか等の真実を知るために、世界中の国々を相手にする必要がある。
復讐を遂げ、全ての真実を知るためには大きな力がいる。故に僕自身もレベル9999にしたかったのだが……。
メイが真剣な声音で切り出す。
「……ライト様、レベルアップの案がございますが、ご提案してもよろしいでしょうか?」
「えっ! さすがメイ、もちろんお願いするよ! それでどんな方法なの?」
「『無限ガチャ』で私のような意思を持つ者やモンスターのカードが排出されました」
嫌な予感がする。
彼女の指摘通り、僕は時間を作りなるべく『無限ガチャ』を連打している。お陰で食料品、生活必需品、飲料、嗜好品、武器防具などが排出され、他にも『妖精メイド』や『モヒカン』、『商人』など人種やモンスター型のカードも多数出た。
レベル10~5000と振り幅が大きい。
カードは『無限ガチャ』から出た『SSSR アイテムボックス』で覚えたアイテムボックスに入れて保管している。
『無限ガチャ』の呪文カードは基本は使えば消えるが、『SSSR アイテムボックス』のように魔法を所有者等に憶えさせることの出来るカードも一部存在している。
アイテムボックスに入れている人種やモンスター型のカードを召喚せず未だにメイと2人っきりなのは、あまりにレベルが低いカードだと『奈落』で生きていくのが難しく、僕達が護らなければならないからだ。
さらに『時間等も未だそちらに割く余裕は無いと思われます。2人の方が良いです』とメイが言っていたため、現状僕とメイの2人で生活をしていた。
彼女と話し合って、メイのような『SUR』カードが出たら召喚しようということになっているが。
なぜ今、他カードの話に触れたんだ?
メイはいつもの冷静な表情、声音を意識した態度で告げる。
「レベルが高い者達を召喚しライト様がお手をかければ、レベルが上がるかと。召喚される彼、彼女達も私同様にライト様の糧になれるのであれば、喜んでその身を――」
「メイ!」
僕は初めて彼女の名前を怒り、悲しみを伴った声音で呼ぶ。
「僕にあいつ等……僕を裏切り、ゴミのように殺そうとした『種族の集い』メンバーと同じことをしろって言うのか? 仲間に裏切られた僕が、仲間を裏切れと……ッ」
「――ッ。申し訳ございません。失言でした。我が身の浅慮どうかお許しください」
メイは深々と頭を下げて許しを請う。
僕は席から立ち上がり、彼女へと歩み寄る。
頭を上げさせると、ギュッとメイを抱きしめる。
背丈は彼女の方が高く、胸に顔を埋める形になってしまう。
僕は過去の裏切り、彼女の言葉の悲しみから潤んでしまった瞳を隠すように胸に埋めながら告げる。
「メイ……もう二度と仲間を犠牲にするような発言は止めてくれ。もしメイまで僕の下から居なくなったら……きっと僕は耐えられない」
「はい、私は何があろうとライト様のお側に居続けます。全ては愛おしい主君の為に、この体も心も全ては主君のもの。我がメイド道に誓い、主君に絶対の忠誠を。天にあっては比翼の鳥となり、地にあっては連理の枝として、幾久しくライト様のお側におります。ずっと一緒に、居させて下さい……」
「うん……ありがとうメイ」
彼女を暫く抱きしめ、メイも愛おしげに僕の背中、頭を撫でてくる。
僕も彼女に応えるように抱きしめる腕の力を強めた。
数分後――赤くなった顔、目を誤魔化すように袖口でごしごしと拭う。
「メイの提案――仲間を犠牲にするようなマネは絶対にしない。けど、レベルを上げたいのも本音だ。だから、僕としてはそろそろ『アレ』を倒すべきだと思うんだよ」
「――『奈落』の最奥に居るモンスターですね」
「うん。レベルアップのため『奈落』のダンジョン守護モンスターを倒そう」
こうして『奈落』最奥に鎮座するダンジョン守護モンスター、推定レベル5000の討伐が決定したのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日はついに『奈落』のラストボスとのバトル回になります!
普段のシーンも書いていて楽しいですが、バトル回も書いていて楽しいです!
『奈落』のラスボスはどんなモンスターで、ライト達がどう戦うのかお楽しみに!
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は3話を12時に、4話を17時にアップしております!(本話は4話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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