3話 お風呂回
今日は3話を昼12時、4話を17時にアップする予定です(本話は3話)。
『奈落』最下層に落とされてから、初めての本格的な休憩時間を無事に迎える。
メイのお陰で、僕のレベルは1000になった。
そんな彼女が告げてくる。
「ではライト様、とりあえずはキリもいいですし、レベルアップはこの辺りで終わりに致しましょう。食事の前に汗や汚れを落とすために、一緒にお風呂へ入りましょうね」
「おふろ? お風呂ってあのお貴族様や王様が熱いお湯に入るっていう?」
一応、知識としてお湯に全身まで浸かる『お風呂』という行為があることは知っているが、入ったことはない。
普段は『種族の集い』拠点の1人部屋で水、冬場などはお湯で濡らしたタオルで体を拭いていた。
野営などで近くに川があると男性達で、裸になって水を浴びたこともあった。
「はい、そのお風呂です。とても気持ちよく、疲れが取れるんですよ?」
「……メイ、いくらなんでも無理だよ。お風呂に入るためには大量の水をお湯にして、人が入れる箱とかにお湯を入れないといけないんだよ? 地上でも大変なのに、ダンジョンでお風呂に入ることなんて出来るわけないよ」
「いえ、問題ありません。全て私1人で準備できますので」
「?」
彼女は言うが早いか早速準備を開始する。
まず『魔力糸』で人が入れるほどの箱を作り出す。
「魔力よ、顕現し水を作り出せ、ウォーター」
メイが呪文を唱えると空中に水が作り出され、箱を満たす。
暫くすると、水から湯気が昇りお湯となった!
「す、凄いよメイ! あっという間にお風呂が出来たよ! えぇ、なんで水がお湯になったの!?」
「難しいことではありません。湯船は私の『魔力糸』で作り出したので、魔力を熱に変換して中の水を温めただけですから」
『魔力を熱に云々』の部分がよく分からないけど、なんか凄いことをしたのは理解できた。
まさか僕が、お貴族様や王様が入るお風呂に入れる日がくるなんて!
「では早速、お風呂に入りましょう。湯船に入る前に湯を汚さぬよう、まずはしっかりと体を洗いましょう。お手伝い致しますね、ライト様」
「ちょ、ちょっと待ってメイ! も、もしかして僕と一緒に入るつもりなの!?」
メイは突然、自身のメイド服を脱ぎ出す。
正確にはメイド服自体が『魔力糸』で作られていたらしく、一瞬で下着姿になった。
大きな胸、折れてしまいそうなほど細い腰、肉付きのよい太股――僕の視界にメイのきめ細やかな肌が晒される。
恥ずかしくて慌てて背中を向けて彼女へ問いかけた。
自分で耳まで赤くなっているのを自覚した。
メイはこの質問に、『当然』とばかりの声音で返答し、僕を下着姿のまま後ろから優しく抱きしめてくる。
(ん……っ、メイの肌が……柔らかい……っ)
メイの柔らかさに感動していると、彼女は後ろから抱きしめたまま指を動かし、僕の衣類のボタンを外して脱がしていく。
「ライト様、メイドが主君のお体を洗って、一緒のお風呂に入るのは自然なおこないです。ライト様と一緒のお風呂に入ってご奉仕するのは、メイドとして当然の行為なのです。……水が高きから低きに流れるように、鳥が空を飛ぶように、ごく自然なこと。なので決して恥ずかしがる必要はございません。こうやって抱きながら主君の服を脱がすのも、より丁寧に服を大切に脱がすために必要なこと。メイドとしてはごく当たり前の行為なのですから」
なぜか少しだけ早口でメイがまくし立ててくる。
僕は貧農出の12歳で、メイドを雇う上流階級社会について何も知らない。
……メイドで博識なメイがそう言うなら、当然のことなのかな?
「メイが……そう言うなら普通のことなのかな?」
「はい、我がメイド道に誓って」
きりっとした顔で断言される。
うーん、なら問題ないのかな?
とりあえず納得して、一緒にお風呂へ入ることに。
「め、メイ! 自分で服ぐらい脱げるよ」
「いえ、これもメイドの務めですから。最後までライト様へのご奉仕は気を抜けませんので」
彼女は下着を脱ぎ、『魔力糸』で作ったタオルを体に巻きつつ、僕の上着やズボンを脱ぐのを手伝ってくれる。
レベル差があるため、抵抗など殆ど意味が無く優しく衣服、下着を脱ぐのを手伝われた。
僕は彼女が作ってくれたタオルで下半身を隠しつつ、彼女の膝へと座らされる。
「……ライト様はお風呂が初めてということで、ご説明しながらご奉仕させて頂きます。まずは、寒くはありませんか? 少し私の体で温めておきましょう」
そう言ってメイは僕の体を優しく抱きしめる。
肌から伝わってくる、温かな体温。まるで包まれているみたいで、心地よい。
「……メイ、気持ちいい温度だよ。なんだか安心する……」
「私も、ライト様を抱いていると安心します。護るべき主君がここにいる、今私は全身全霊でライト様をお護りすることが出来ている、とても嬉しくなってしまいます。この世に顕現して初めて出会えた方が、こんなに可愛らしく素直な主君だったなんて……。本当に運命です。私の存在意義は、今ここにあります。全てはライト様のため。私の命は全てライト様のものです……」
柔らかく優しく抱きしめてくるメイは、僕を抱きしめる腕をより強くした。
その柔らかく張りがあって上気している肌が触れると、何故だか僕は心が跳ねてびくっと震えてしまう。
(何だろう、この感情は……。こんなに優しく抱きしめられたことなんて無かったから……)
「ライト様、少しは慣れてきましたか? ……まずはかけ湯で大まかに体についた汚れを洗い落とします」
メイがお湯に手を伸ばす。
そして糸とは思えない硬い桶にお湯をすくい、頭からざっとお湯をかけてくる。
(熱っ……そして気持ちいい……っ)
ちょうどいい温度のかけ湯に、肌が上気するのを感じる。
さらにお湯の温かさも良いが、僕は後頭部、背中などに当たるメイの柔らかな肌やしっとりとした太股の感触、包み込んでくるような人肌温度の方が熱く感じてしまう。
「目を閉じて……。もう1回かけますね。そうそう、上手ですよ……可愛いです」
メイがもう一度かけ湯をかけてくる。こんどは体全体になじむようにゆっくりとかけて、そして最後に僕を抱きしめ、その細くしなやかな指で僕の肩や背中を撫でる。
(っ……あったかい……)
メイの指が触れる肌から、優しい熱が伝わってくる感触がある。
彼女は僕を大切にしてくれている。まるで宝物を洗うように、僕に触れて、指で撫で、頬を触れあい、ゆっくりと温めてくれる。
僕は彼女がくれる熱を意識する一方でメイは説明を続ける。
「……かけ湯が終わりましたね。それではここから本格的に体、髪の汚れを落とすために洗います。幸い、シャンプーと石鹸がライト様の『無限ガチャ』から出たのは非常にありがたいです。まずはライト様のお髪を洗いますね。目に泡が入ると痛みますので、目を閉じていてください」
「う、うん、はい」
『しゃんぷう?』というのをするため、目を閉じる。
メイの細くしなやかな指がわしゃわしゃと髪、頭に動きくすぐったいが気持ちがいい。
お湯で泡を流すと、次は体を洗うことに。
「め、メイ! 体ぐらい自分で洗えるから!」
「いえ、これもメイドの務めですので」
「うぅぅー」
『魔力糸』で作ったタオルで石鹸を泡立て背中を流す。
メイドの務めで、さらに頑張ったご褒美と言われたら抵抗は難しい。
優しい泡と彼女の手のひらが、僕の肌に触れ、洗っていく。彼女が触れる度に体が何故か熱くなる気がするが、ぎゅっと目をつぶって大人しくされるがまま洗われる。
……でも背中はともかく、正面を洗われるのは正直、非常に恥ずかしかった。
「はい、これで大丈夫ですよ。洗い終えましたから、湯船に入りましょう。肩まで浸かって100まで数えましょうね」
「…………」
メイに背後から抱きかかえられながら、湯船に浸かる。
後頭部に彼女の胸が当たるが、背後からギュッと抱きしめられ、耳元で彼女の声音を囁かれるためお湯の熱さと恥ずかしさのせいで上手く頭で考えられなくなっていた。
「お風呂から上がったらお食事にしましょう。これからは病気予防と健康維持のため、毎日一緒にお風呂に入りましょうね」
「う、うん、分かったよ、一緒にお風呂に入るよ……」
メイがお湯の中でギュッと拳を固める。
モンスターでも近付いて攻撃態勢に入ったのだろうか?
しかし、そんな影は僕の視界では発見できなかった。
恥ずかしさとお湯の温かさで上手く思考が回らず僕はただメイの言葉に頷く。
こうして僕とメイは、一ヶ月間毎日、お風呂に一緒に入るようになったのだった。
☆ ☆ ☆
『奈落』最下層に落とされて、1ヶ月後――僕はレベル3000を突破した。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
お風呂回は書いていて楽しかったです。
また昨日の2話誤字について、レベルアップの数字を修正しました。
アップ前にレベルアップ上昇値が不自然ではない風にするため、色々弄っていたのが原因で修正ミスでアップしてしいました。
読み直しはしているのですが、見逃してしまったようで……。
そういう意味では誤字チェック機能は便利ですね! ご指摘頂き本当にありがとうございます。
また今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
3話を12時に、4話を17時にアップする予定です!(本話は3話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




