2話 ライト、レベル1000
今日は1話を昼12時、2話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は2話)。
運良く恩恵『無限ガチャ』から、すぐに『N、食パン』カードが出た。
カードから戻し食べてみると、白くて、柔らかくて、ほんのり小麦の甘さがあった。
僕は初めて食べる白パンに驚き、衝撃を受ける。
「御貴族様や王様は毎日、こんな美味しいパンを食べているのか!」
僕の感想にメイは、『こうぼが云々?』と説明してくれた。
多分、御貴族様や王様が食べるパンは、街の職人達が鞄や靴などを作るように専用のこうぼ――恐らく工房で作られていると説明したかったのだろう。
彼女は美しいだけではなく、見た目通り頭も良いらしい。
(貧農出の僕とはやはり違うな)
食事を終えて、一息つくと早速僕のレベルアップの件について説明をしてくれる。
「私の紡ぐ『魔力糸』は魔力で作り出した糸です。なので柔らかさ、形状、材質、硬度などを魔力操作によって自由自在に変化させることが出来るのです」
メイの『魔力糸』によって僕が眠っていた布団、掛け布団を作ったり、襲いかかってきたモンスターを倒したり、または捕縛して身動きを封じていたのだ。
現在、座っている真っ白な絨毯も、彼女が『魔力糸』で作った物だ。
「あの白い繭の状態になっている物の中に私達に襲いかかってきたモンスターを捕らえております。ライト様は石を手に、近付かず遠距離から投げて当ててください」
「? それでいいの? 頑張れば『無限ガチャ』から強い武器が出てくると思うよ?」
「仰る通り出てくるでしょう。しかし、ライト様はまだレベル15。私がお側にいるとはいえ下手に近づき、万が一があっては困りますので。過保護と思われるかもしれませんが、どうかご容赦を」
確かにメイはレベル9999で『魔力糸』という強い力も持っているが、この世に絶対は無い。
レベル1000を超えたモンスターの攻撃など、かするどころか余波だけで僕は死ぬだろう。
そんな万が一を考えたら、レベルが上がるまでは過剰でも安全に気を付けるのは当然である。
僕は彼女の気遣いに笑顔で答える。
「ありがとう。メイの指示通り遠くから石を投げるね」
「こちらこそ寛大なお心で答えて頂きありがとうございます」
メイが座った状態で一礼してくる。
僕は照れくさそうに笑い返す。
彼女が顔を上げると、早速うながしてくる
「ではまず一番近いあの繭から始めましょうか。ライト様、石をどうぞ」
「うん、ありがとう」
メイから手渡された石は、投げやすいように加工されていた。
どうやら僕が寝ている間に、『奈落』の壁や床を『魔力糸』で切り取り加工したようだ。
立ち上がり、メイの影に隠れながら白繭へと移動する。
「…………」
白繭の一部が剥がれ拘束されているモンスターが姿を現す。
最初に僕を襲った『尻尾が蛇で巨大な4足獣』だ。
メイの鑑定曰く『スネークヘルハウンド』という名前のモンスターだ。
現在は彼女の『魔力糸』で雁字搦めにされ身動きは取れず、口も縛られているため泣き声をあげることすら出来ない。
ウルウルとした悲しそうな視線で命乞いを訴えてくる。
正直、非常に石を投げ辛い。
「さぁライト様、どうぞ」
「う、うん、了解……」
僕はメイにうながされ石を投げる。
硬く、丈夫そうな毛皮に当たり弾かれる。
ダメージとしてはほぼ0だろうが、重要なことは僕が攻撃をして当てた事実だ。
冒険者パーティの間では常識ではあるが、この世界の冒険者は前衛だけとは限らない。
大人数のパーティになれば、回復役の後衛だって居る。
では、モンスターがもたらすLVアップ――経験値は、攻撃した前衛にしか入らないのか?
答えは否だ。
どういう仕組みかは分からないが、戦闘貢献に沿って経験値は分配される。そのため、回復役や斥候、後衛であっても経験値が手に入る。
そして――それを利用したのが、『横殴り』だ。
つまり、他の冒険者パーティが戦っている横から、小さな攻撃を当て経験値のおこぼれをもらう。この場合、ダメージが少なくても戦闘に参加したということで最低限ほんの少しではあるが経験値が分配される。
本来ならば忌避される行為だが――メイはこの『横殴り』を意図的に行うことによって、僕のレベルを底上げすることにしたのだ。
「……よし、ダメージは入っていないけど、気を引くことは出来てる!」
相手の注意を引くことでも、経験値が上乗せで分配されることが分かっている。
攻撃力のない斥候などがよく使う手だ。
「では――とどめを刺させて頂きますね」
続けてメイが軽く手首を振るうと、白繭が再びモンスターを包み込む。
僅かに繭が震えると、赤い液体――血がじわりと地面に広がった。
あの一瞬で内部にいるレベル1000のモンスターを悲鳴も漏らさず殺害したのだ!
「ライト様、レベルは上がりましたでしょうか?」
「う、うん、確認するね」
メイに指摘を受けて慌ててステータスを確認する。
レベル15だった僕のレベルが今ので70まで上がっていた。
石を一つ投げただけで、55も上がるなんて!?
「す、凄いよメイ! レベルがこんなに上がるなんて!」
「おめでとうございます。ですが、まだまだ始まったばかり、他にもモンスターは居るのでドンドン石を投げてくださいね」
メイは微かに微笑みを浮かべ、どこからか投げやすいよう加工された石を取り出す。
また白繭は10以上は確実に存在する。
どうやらこの繭全てに石をぶつけるまで終わらないようだ。
(メイって意外とスパルタなんだな……)とつい僕は胸中で考えてしまった。
☆ ☆ ☆
とにかくひたすら仮眠を挟みながら――石を投げ続けた。
レベルアップしていくにつれて、僕のステータスも上がり、僅かではあるがダメージが入るようになっていく。
僕はそれが感じられて、その実感を離すまいととにかく攻撃をし続けた。
生き残るためには、何よりもステータスが大切だ。いかにメイのLVが高いとはいえ、弱いままの僕では一撃で死んでしまう。
僕は彼女の足を引っ張りたくはない。命を救ってもらっただけではなく、さらにずっと足を引っ張り続けるなんて許されない。
僕はひたすら石を投げ続けた。
そしてそれは僕のステータスが上がるにつれて次第に僅かなダメージからそこそこのダメージへ、そしてより大きなダメージへと変わっていった。
そして敵の種類も多種多様なもの、より経験値が入りやすいものをメイと一緒に倒せるようになっていった。
そして――僕は1人自身のステータスを確認しつつ震える声音を漏らす。
「れ、レベル1000……。まさかぼ、僕が竜人種、魔人種、エルフ種の最高峰であるレベル1000に到達するなんて。人種の僕がレベル1000って……」
「ライト様ならこの程度、当然かと。ライト様には素質がございますから。むしろ個人的にはもう少し伸びると考えておりましたが……。予想が外れてしまいました」
「いやいや、メイ! レベル1000って凄いことだからね! 人種の最高レベルは100でそれ以上、上がらないと言われているんだから! ……あれ? 確かそんなことを冒険者ギルドで聞いた覚えがあったけど、僕はどうして人種の成長限界を超えているんだ?」
これは『種族の集い』メンバーとしてギルドで他冒険者から聞いた話だ。
種によって色々レベルの上限があるらしい。
それを一般的に成長限界と呼ぶ。
ある一定のレベルに達すると、それ以上は上がらないらしい。
おおよそ人種でレベル100、獣人種で200~300、ドワーフ種が500、魔人種が300~1000、エルフ種と竜人種が1000と言われている。
あくまで常識的な目安で、絶対ではないらしいが。
なのに僕はどうしてレベル1000になっているんだ?
この疑問にメイが答える。
「他種は分かりませんが、ライト様――人種にはその『成長限界』が無いのでは? 人種がレベル100以上を突破しないと考えられるのも単純に要求される経験値が急激に上がり、そしてそれに到達できないだけかと。その枷のせいで私が予想したより、ライト様のレベルの上がりが低かったのかもしれません。もしかしたら他種も要求される経験値が高くなるレベル帯があるだけで『成長限界』なんていうものは無いのかもしれませんね。ただレベルの低いモンスター等ではレベルが上がりにくかったり、個々人や種によって成長補正値が違う等も影響しているのかもしれません。……あくまで現状の憶測ですので外れている可能性も高いですが」
「な、なるほど……実際、僕はレベル1000になっているんだから、メイの考えが正しいかもしれないね」
これってもしかして凄い発見なのかもしれない!
……『奈落』に居る僕達がどうこう出来るモノでもないけど。
「とりあえずライト様のレベル上げを考えると、このダンジョンに出る程度のモンスターでは物足りませんね」
「メイ……一応ここは世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』の最下層だからね……」
まさか『奈落』最下層で『物足りない』と言い出すとは思わなかった。
僕の指摘を軽く流し、メイが告げてくる。
「ではライト様、とりあえずはこの辺りで終わりに致しましょう。食事の前に汗、汚れを落とすため一緒にお風呂へ入りましょうね」
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日はライト&メイのお風呂回!
この回のために1話を書かせて頂きました! 後悔はしていません!
――まぁ、ノクターンではないのでかなりライトな表現のお話しになっていますが。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は1話を12時に、2話を17時にアップしております!(本話は2話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




