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1話 ライト、レベル15

今日は1話を昼12時、2話を17時にアップする予定です(本話は1話)。

「ここまで来た、か――」


 僕は巨塔の一番上、ウェディングケーキのような段々になっている部分の一番上の部分に立ち、風を受ける。

 眼下には人種(ヒューマン)達が多数集まりつつある。

 食事の準備をしている者、居住区を作ろうと作業をしている者、幼い者、若い者、年老いた者――様々な人々が集まってきている。


 全て、エルフ女王国に奴隷とされていた人種(ヒューマン)の人々だ。


 エルフ女王国の最高戦力である『白の騎士団』を倒し、エルフ女王国に『人種絶対独立宣言』をつきつけた。そして人種を解放し、この場所に一種の独立都市を築くことにしたのだ。


 もちろんその中心は僕達の創った『巨塔』だ。

 最初は辺り数十メートルのみ刈り取られていた木々はさらに広く伐採され、既に1kmを超えている。

 そこに人種(ヒューマン)の人々の居住区を作り、簡易ではあるが商業区を作り、街を作り始めていた。


(サーシャへの復讐も出来たし、『なぜ僕が殺されなければならなかったのか?』の疑問、『ますたー』についての情報も進展した。『ますたー以外の存在』等、不明な点も多いけれど……僕達はこれからさらなる情報を集め、復讐をおこなっていかなくてはならない。女王国以外の国と戦うことにもなる可能性が高い。まだ僕達は地上に出たばかり、これから何があるか分からない。気を引き締めていかないとな……)


 風が吹く。

 僕の髪を微かに揺らし、心地よい風が吹いていく。


(思えば、ここまで大変だったな。特に最初の頃、奈落最下層に転移した時はメイと2人っきりで……)


 僕は巨塔から出来上がりつつある街を見つめながら、昔に思いを馳せる。


 そう、それはあの時、殺されかけてメイと出会った時。



 思えば全てはあの時から始まっていたのだ――。




 ☆ ☆ ☆




 ――約3年前、奈落。




 僕こと、ライトは信じていた仲間達、『種族の集い』メンバーに裏切られ、殺されかけた。

 運良く、転移トラップに引っかかり、『種族の集い』メンバー達からは逃げることが出来たが、次は『奈落』最下層のモンスターに命を狙われる。


 僕は破れかぶれで恩恵(ギフト)『無限ガチャ』を連打――結果、『SUR、探求者メイドのメイ レベル9999』を得て運良く命を拾う。

 そんな彼女、メイと今後についての会話を交わした。


『僕は強くなってアイツらを見返してやりたい。そして国がどうして「ますたー」を探して、取り込んだり、殺そうとしたのか真実を知りたいんだ』と。


 僕の意思を聞いたメイが告げる。


恩恵(ギフト)「無限ガチャ」で仲間を増やしこのダンジョンにまずはライト様の王国を作り出しましょう』


 メイの発言『ライト様の王国を作り出しましょう』は漠然としか理解できなかったが口にせず、僕は『無限ガチャ』のボタンを押すことにする。


 ――しかし、


「……ッゥ、あれ?」


『無限ガチャ』のボタンを押して3枚ほどカードを出すと、足下がふらつく。

 膝に力が入らず、崩れてしまう。

 メイド服姿のメイが慌てて僕を抱きしめ、支えてくれた。


「大丈夫ですか、ライト様……」


 身長差もあるため、彼女の豊かな胸に顔を埋める形になってしまう。

 本来なら恥ずかしくて顔を赤くしてしまうが、今の僕にその余裕すらない。

 メイは申し訳なさそうに眉根を下げる。


「申し訳ございません、ライト様。裏切られて転移した直後、『奈落』最下層でモンスターに襲われかけて気力、体力共に限界近い状態に気付かず、『無限ガチャ』を引かせてしまって……」


 彼女の言葉に気付く。

 確かに30分も経っていないのに、『種族の集い』メンバーには裏切られ、レベル1000もあるモンスターに襲われ、メイと出会ったりと――大嵐中、海に漕ぎ出した小舟の如く色々な事が起きた。

 歳のわりにレベル15と高いと言っても、6種の中で一番貧弱な人種(ヒューマン)の子供に耐えられるものではない。

 メイの指摘通り気力、体力を失っているのは当然だ。


「で、でもこんな所で眠ったら……」


 この場所は恐らく世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』の最下層だ。

 まだ『無限ガチャ』で有用なカードを1枚も引いていない。なのにここで僕が気を失ったら……。メイがいくらレベルが高くても、僕という荷物を抱えて自身まで護るのは難しいのではないか?

 僕の心配を払拭するように、メイが愛しげにギュッと抱きしめ、頭を撫でてくる。


「ライト様の御身は(わたくし)が必ずお護りいたします。傷一つ付けさせません。なのでどうぞご安心してお眠り下さい」

「め、い……」


 聖母のような微笑み。

 彼女の甘い匂い、じんわりと体の芯に染みこむような温もり、優しい手つきに抗えず僕の意識はここで途絶えてしまった。




 ☆ ☆ ☆




「…………ンッ」


 意識が緩やかに覚醒する。

 全身が温かく、いつまでも『このままでいたい』と思ってしまうほどだ。特に頭が柔らかく良い匂いの感触、肌触りだった。

 一生、この枕に顔を埋めていたいほどに。


(……あれ? 僕の枕ってこんな良い匂いがしたっけ?)


 寝ぼけた頭の隅で考える。

『種族の集い』が使用している拠点の1人部屋に置かれたベッドは中古の木製ベッドだ。

 布団も薄く、枕もこれほど良い感触、肌触りなど絶対にしない。


(第一、僕は『種族の集い』メンバーに裏切られて……ッ!?)


 一気に意識が覚醒する。

 体を跳ね起こし身構えた。

 なぜなら僕は『種族の集い』メンバーに裏切られて、『奈落』最下層まで落ちてしまったのだ。

 こんなにのんびり寝ている余裕など本来ない。


「……おはようございます、ライト様。寝起きですぐ動くのは危ないですよ」

「め、い?」

「はい、主君のメイド、メイでございます」


 長い黒髪をポニーテールに結んだメイド姿の美しい女性が座って朝の挨拶をしてくる。


 寝起きのぼんやりした頭が動き出す。

『種族の集い』メンバーに裏切られ、僕の恩恵(ギフト)『無限ガチャ』から『SUR、探求者メイドのメイ レベル9999』を喚び出すことで生き残ることが出来たのだ。その後、気力、体力が限界に達して眠りに落ちたのだ。

 そう、裏切られて――。


「あぁぁッ……」

「ライト様?」


 僕は頭を抱えてその場に蹲る。


「あぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁッ!」


 裏切られたのだ。

 信じていた『種族の集い』メンバーに裏切られ、罵られ、殺されそうになったのだ。

 僕が『ますたー』という存在ではないと分かったため、念のため事故に見せかけて殺そうとしたのだ。

 夢ではなかった。


『種族の集い』メンバー、ドラゴさん、ガルーさん、サーシャさん、ナーノさん、ディアブロさんに裏切られたのは夢ではない!

 現実だった。

 悲しくて、悔しくて、思わず人目も憚らず涙を流してしまう。


 そんな僕をメイが子供をあやすように抱きしめ、背中を撫でてくる。


「お辛いですよね。信じていた人達に裏切られて……。ですが大丈夫です。ライト様には(わたくし)がおります。例え女神が敵になったとしても、私がライト様のお側に居ます」


 彼女が僕を強く抱きしめる。

 優しい感触。

 何度もその柔らかな手が、僕を撫でる。


「メイ……ッ……」


 僕はその優しさに包まれて、涙が止まらなくなってしまう。

 全てを失ったと思っていた。

 もう死ぬんだと、殺されるんだと思っていた。

 だが、僕には彼女がいた。

 たった1人、たとえ神が敵になっても、側にいてくれるという彼女が。


「ありがとう、メイ……ッ」


 僕は彼女の胸に顔を埋め、嗚咽と共にお礼を告げる。


 ――どれぐらい経っただろうか。


 涙、嗚咽、弱音、怒りを吐き出したことでようやく気分が落ち着く。

 メイに僕の恥ずかしい所を見られて顔が赤くなる。


「ごめん、変な所を見せて。もう落ち着いたから」

「変な所など。滅相もない。むしろ、ライト様の貴重な一面を見せて頂きメイドとして嬉しい限りです」

「うぅぅ……」


 真っ直ぐ本音をぶつけられて僕は顔をさらに赤くしてしまう。

 同時にお腹が鳴った。

 昨日、転移トラップで飛ばされてから何も口にしていないのだから、当然といえば当然である。

 僕のお腹の音を聞くと、メイが申し訳なさそうに尋ねてくる。


「ライト様、まずはお食事を――と言いたいところなのですが、メイド道を掲げるメイドとして慚愧の念に堪えませんが、ライト様の恩恵(ギフト)『無限ガチャ』から食料や調味料を出すことは可能でしょうか? 最悪、(わたくし)達に襲いかかってきたモンスターを口にしなければなりませんが……。あんな怪しげな生物のお肉を主君の口に入れるのは我がメイド道に反するので……」


 言われて気付く。

 僕達が居る場所は転移トラップに引っかかった場所から動いていない。

 広い空間のほぼ中央に居て、周囲に白い繭状態の塊が複数存在した。恐らくあの白い繭の内側に倒したモンスターを包み込んでいるのだろう。

 僕が居る場所もフカフカの糸によって絨毯、掛け布団などが形作られている。

 こんな芸当が出来るのはメイしかいない。


 彼女の便利な力に感心しつつ、僕は言葉に従い『無限ガチャ』を押す。


「地上でも『パン(カビ有り)』とかが出たから、きっと食料や調味料も出ると思うよ。とりあえず連続で押して食料を手に入れるね」

「ありがとうございます。食事を終えたら、早速レベルアップをしましょう」


 メイの言葉に思わず手が止まる。


「レベルアップ?」

「はい、まずは即死を避けるため最低でもレベル1000を目指しましょう」


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


ライト過去編!

ライトがレベル15から、レベル9999にどうやって上げたのか?

『奈落』の転移阻害をどうやって解除したのか?

『奈落』初期、ライト&メイはどのような生活を送っていたのか? ――など、その疑問を解決するべく過去編を書かせて頂きました。

予定では11話前後で終わる予定です。

なのでさっくり楽しく読めるかと。

――11話も書いて、2話を毎日アップしたら1週間もたないのか……。改めて考えるとヤバイですね。


今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

1話を12時に、2話を17時にアップする予定です!(本話は1話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
当初3年間を端折ったのは勿体ないと思っていましたが、ある程度キャラが揃ってからの過去編って、唯々上手いな~と感嘆するばかりです。
[一言] ライト過去編,面白そうだ LVUPの疑問が解けるのか。
[一言] メイ、お母さんすぎて恋愛感情抱けないわ(笑)
感想一覧
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