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47話 新しい情報と――

今日は47話を昼12時、番外編1を17時にアップする予定です(本話は47話)。

 エルフ女王国中枢部を陥落させてきたエリーが、『奈落』地下へと戻ってくる。

 彼女は一連の出来事を書類にまとめて、僕の所へと持って来た。

 僕は執務室で書類をチェックし終えると、エリーを手放しで絶賛する。


「さすがエリー。無事にエルフ女王国を屈服させるだけじゃなく、女王からもしっかり『ますたー』や真実に関する情報を引き出してくるなんて」

「――ッゥ! ……いえ、全てはライト神様のご協力があってこそですわ」


 エリーは僕に褒められたのが心底嬉しかったのか、真っ赤な顔で体を震わせつつ謙遜する。

 彼女が持ち帰った情報を確認する限り、『ますたー』情報に関して『白の騎士団』団長ハーディーの記憶と同一部分が多かった。

 リーフ7世がハーディーの母親のため、似た情報が多かったのだろう。


 しかし、一点だけ非常に興味深い情報が彼女の記憶から確認することが出来た。


「4年に1度シックス公国でおこなわれる会議の席で、『ますたー』に関する情報交換を各国首脳が秘密裏におこなった。出席したのは人種(ヒューマン)を除いた5種族の代表者達」


 会議の内容は各国の情報と現状を説明し合うものが大半で、大した内容のものはなかった。

 だが――重要な情報はここからだ。


「……秘密会議が終了後、エルフ女王国代表として離席する際に、後ろからの微かな会話で『ますたー以外の可能性も棄てきれない。殺しておくのが云々』という声をリーフ7世が耳にした、と」

「はい。ただ、女王の記憶の奥底に僅かにひっかかっていたものだったので、既に記憶が劣化しており、詳細は不明です。『ますたー以外の可能性』。この意味が『さぶますたー』や『ますたー』未満の候補のことを指しているのか。それとも――」

「もしかしたら、『ますたー』以外の、全く別種の存在が居るかもってことだね?」

「はい、ですわ」


 僕の返答にエリーが同意する。


『ますたー以外の可能性も棄てきれない。殺しておくのが云々』の『ますたー以外』が、『さぶますたー』や『ますたー候補』では辻褄が合わない。


『さぶますたー』は『ますたー』の血を引く存在で殺す必要性は薄い。

『ますたー候補だから殺す』でも、わざわざ『ますたー以外の可能性も棄てきれない』と発言をする意味が無いのだ。


 残るは第三の可能性『ますたー以外に危険視する存在が居る』ということだ。


「……エリー、どの種族が口にしたのかまでは分からないんだよね?」

「申し訳ありませんわ。リーフ7世が偶然小声を拾っただけで、護衛も含めてあの場にはそれなりに人数が居たので難しいかと。ただ女王自身が耳にしても意味を理解していないエルフ種、そして与えられている情報レベルが低いであろう獣人種を除けば、ドワーフ種、魔人種、竜人種(ドラゴンニュート)の3つの内どれかなのは確実ですわ」


 リーフ7世自身、興味なく聞き流した。

 偶然、それが記憶に引っかかっていて、エリーが拾い上げた結果、僕達は知ることが出来たのだ。


「ならリーフ7世は『ますたー以外に危険視する存在』について何か知っていたかい?」

「それもありません。エルフ種は人種(ヒューマン)『ますたー』に気に入られやすく、血を取り込むため女性を宛った際、色々酷い目に遭うこともあったようですわ。そして、選ばれた女性は情報漏洩を考えると、昔はエルフ女王国上層部関連、親族等の女性が選ばれていたことが多かったようなのです。そのせいでエルフ女王国は、上層部に近ければ近いほど人種に対して怨みが募っていたようなのです」


 さらに、とエリーは続ける。


「エルフ種は自らの種に対してプライドが高く、『さぶますたー』達に人種(ヒューマン)の血が入っていることを毛嫌いし、ごく一部の上層部、今の体制では女王と『白の騎士団』団長ハーディー程度しか知らない機密扱いにしており……。それらの理由もあって、『ますたー』引いては人種(ヒューマン)をさらに嫌うようになったようで……。人種(ヒューマン)の『ますたー』と直接出会った者、過去の王族等は絶対に敵わないという劣等感もあったのでしょうね。血は積極的に取り込んでも『ますたー』に関する情報等は無意識に避けていたようで詳しいことはなにも知りませんの」


 上が人種(ヒューマン)嫌いになったせいで、下のエルフ種にも人種(ヒューマン)差別が広がったのか?

 その辺の考察はとりあえず脇に置いて……僕は執務室の背もたれに体を預ける。


「『ますたー以外に危険視する存在』か……」


 もしかして僕は『ますたー』候補だったからではなく、『ますたー以外の危険視する存在』の可能性があったから殺されそうになったのか?

 ――正直、情報が少なすぎて判断が付かない。


 あれこれ考えても、情報が足りなければ妄想の類にしかならないため頭を切り換える。

 僕はエリーから提出された書類を確認しつつ、エルフ女王国についての確認をする。


「エルフ女王国を落とした後、植民地にするかどうか検討したけど……あまりうま味はなかったからね。……これからどうしようか」

「そうですわね、ライト神様が仰るとおり、植民地としてわたくし達がエルフ女王国を抱え込むことは簡単ですわ。ですが、抱え込んでもあまりメリットがありませんの」


 僕達がエルフ女王国を植民地に抱え込んだ場合、エルフ女王国はその主権を失うことになる。

 エルフ女王国はそこそこの地位を持つ国だ。植民地にすれば経済的には潤うだろうが……僕たちはお金には困っていないし、経済を追求する理由も薄い。


 エルフ女王国が現在持つその地位を利用するためだけに、エルフ女王国を抱え込み植民地にする選択肢を選んでは勿体ない。


 他にもエルフ女王国は、『巨塔』から見た場合、東にある。

 北は山岳地帯で、南は海、西は原生林。仮に『巨塔』を各国連合軍で攻略しようとした場合、大軍を動かすならば東しか道が無いのだ。

 その際、エルフ女王国を思う存分盾代わりに出来る。


 リーフ女王の記憶を確認できたお陰で、エルフ女王国の戦力も把握済み。

 いつでも滅ぼせる。

 故にせいぜい利用するだけ利用し、美味しいところだけ使わせてもらって問題が起きるようならば最後は放置するなり捨てるなりすればいい、という訳だ。


「なにより植民地として抱え込んだ場合、天から降り注ぐ恵みたるライト神様の恩恵をエルフ種(ゲス)共に与えなければなりませんから。そんな贅沢、あいつらには必要ありませんわ」


 エリーは可愛らしく頬を膨らませて憤慨する。

 彼女のエルフ種に対する好感度は低い。

 それだけエルフ種の人種(ヒューマン)差別に嫌気がさしているのだろう。


 人種(ヒューマン)差別と言えば――。


「資料を読む限り、エルフ女王国で奴隷にされていた人種(ヒューマン)達の解放は順調なようだね」

「はい、ですわ。現在約5000人が解放され、『巨塔』周辺で保護、自活できるよう支援しておりますの」


 これもエリーの献策だ。

 わざと『人種(ヒューマン)絶対独立主義』なる過激発言を宣言。

 以後、エルフ女王国に正式な法律として布告、禁止させた。

 人種(ヒューマン)奴隷を保護するためレベル500の妖精メイド達に『スネークヘルハウンド』&ドラゴンの群の護衛を付けて脅し、威圧、解放に向かわせた。

 実際に人種(ヒューマン)奴隷を次々、問答無用で解放させたのだ。


 以前サーシャとの接触を偶然ではあるが助けてくれた人種(ヒューマン)奴隷も無事に奴隷から解放。

 またモヒカン達が助けて、息がかかった商人達が買い取っていた人種(ヒューマン)少女達もこれで心置きなく奴隷解放することができた。


 さらに保護した元人種(ヒューマン)奴隷達は『巨塔』周辺で自活できるよう支援した。


 こうすることで世界的に『巨塔』に注目が集まる。


 各国が『人種(ヒューマン)絶対独立主義』を掲げた『巨塔』を潰すため戦力を派遣するかもしれない。

 現状、人種(ヒューマン)が虐げられているのは、『ますたー』と関連しているからである。『ますたー』が人種(ヒューマン)からしか産まれてこないままで、さらに人種(ヒューマン)が一カ所に集まるのであれば……。各国がそれを座視するとは思えない。

 その際、以前もエリーが説明してくれたが、『他国がどのような対処を見せるのか? 仮に他5ヶ国が攻めて来たとしてどの程度の戦力を投入してくるのか? わたくし達の把握していない奥の手、切り札があるのか? その辺りの試金石に出来ればと考えております』というメリットがある。


 最悪、『巨塔』を潰されても、『奈落』には何の影響も無いのだ。


 もちろん無駄に負けるつもりはないし、先程も説明した通りちょうど良いエルフ女王国()の存在もある。

 なので簡単に負けるつもりはない。


 疑問も解消した所で僕はエリーを再度手放しで褒める。


「サーシャにも理想的な復讐が出来て、『ますたー』やその他の情報も手に入れて求めるべき真実に一歩近づけたし、利用できそうな手駒も増えた。まさに『最大限の利益を目指して存分に利用する』を達成したわけだ。本当にありがとう、エリー」

「ンッッ――いえ、わたくしなどライト神様のお手伝いを多少致しただけですわ」


 僕に手放しで褒められたのが本当に嬉しかったのか、今まで以上に喜びで体の芯から震わせる。

 なるべく表に出さないよう努力をしつつ、彼女は深々と一礼した。

 エリーの背後から『これでわたくしこそがライト神様の1番、右腕ですわ!』と内心でガッツポーズを取っているのがビンビンに伝わってくる。

 それだけの成果を叩き出したため僕は微苦笑して流す。


(でも実際、エリーのお陰で1歩も2歩も前に進んだ気がするな……)


 感慨に耽っているとメイから『SR、念話』で通話が入る。

 僕は首を捻った。

 メイは今回の作戦で『奈落』の管理、内政を任せていた。

 なので現在も同じ場所、つまり『奈落』内に居る。報告するなら直接顔を出せばいいのに……。


「エリー、ごめん。ちょっとメイから念話が入ったから」

「メイさんから?」


 彼女も『なぜ直接、顔を出さないのです?』と首を傾げた。

 エリーに断りを入れてから、意識をメイに向ける。


「メイ、どうしたの? 念話なんて、直接顔を合わせて話せない内容の問題でも起きたの?」

『いえ、早急にライト様にお伝えする情報が届いたので、念話を使用させて頂きました。実は……主君の妹様を、発見いたしました……ッ』

「ぶふっ!? ゆ、ユメを発見しただって!?」


 メイの報告に驚き噎せる。

 予想外の報告に喜び、驚愕、困惑などの感情によって、『サーシャへの復讐』やエルフ女王国の扱い、新しい疑問、情報などが全て吹き飛んでしまったのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


サーシャ編終了!

今日の午後17時アップと、明日の2話は番外編をアップ予定です。キャラ話ですね。

明後日から、新章――過去編をやる予定です。

新章の過去編では0話で、ライトが裏切られ『奈落』最下層へ移動。メイに助けられた後の話をやる予定です。

ライトがどうやってレベル9999になったのか?

『奈落』ダンジョンをどうやって攻略、改造したのか?

『奈落』ダンジョンでの生活は?

――など本編で語っていない部分を描かせて頂ければと思います。

あまり長くなるお話ではありませんが(現時点での予定では)、どうぞお楽しみに!

また今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

47話を12時に、番外編1を17時にアップする予定です!(本話は47話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
「ますたー」って実はかなりクズだったのかも。他種が劣等感を抱いたってあるが、態度も悪かったから、ノーマルヒューマンへ矛先が向いたんじゃない?
[一言] やっぱマスターって転生者なんかな?
[良い点] 妹ちゃん、見つかって良かったね
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