表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/571

45話 リーフ7世の記憶

今日は45話を昼12時、46話を17時にアップする予定です(本話は45話)。

「わたくしの『巨塔』に、お馬鹿さん達を送り込んだ者達に告げますわ。今すぐ責任者を出しなさい。さもなくば――この街を灰燼にしてさしあげますわよ?」


 レッドドラゴンの背中に乗った謎の少女の声音は不思議と大きく広がり、城だけではなく、エルフ女王国首都全域に広がった。


 謎の少女――エリーは続ける。


「街を灰燼にできる証拠に、わたくしの可愛いドラゴン達で実演をさせていただきますわね」


 彼女は特別大声を張り上げているわけではない――例え、大声を張り上げても彼女のような華奢な少女の声など、上空からかなり距離があるエルフ女王国首都の皆の耳まで届くことはない。

 エリーの声がなぜか宮殿内部で会議をしているリーフ7世達にも聞こえるのは、彼女が魔術を使っているからだ。


 エリーが合図を送ると、100匹以上のドラゴン達が、エルフ女王国首都の城塞外部。人影が無い場所へ向けて一斉にブレスを吐き出す。

 一瞬、空が多種多様なまばゆい光で彩られると、『ドン!』っと地震が起きたかのように地面が揺れる。

 直後、土煙が立ち上がり街全体をすら覆い尽くし、エルフ種達の悲鳴などが混ざり合った。


 土煙、悲鳴、怒号などが落ち着いたのを見計らって、エリーは再び声をかける。


「今から宮殿の庭に降りますから、一番の責任者はすぐに顔を出してくださいまし。そうですわね……3分以内にこなければ、今のように街を吹き飛ばしますわね」


 エリーがレッドドラゴンに合図を送ると、翼をはためかせてエルフ女王国宮殿庭へと降りていく。

 その間も宮殿内部、街中からエルフ種の混乱しきった声が聞こえてくる。


『あのドラゴンの群はなんだ!?』

『騎士団は何をしているの!?』

『女王陛下! いますぐ避難してください!』

『待て! 女王陛下を避難させてどうする! もし3分以内に一番の責任者が向かわなければ、首都が吹き飛ばされるのだぞ!?』

『貴様! 女王陛下を生け贄に捧げるつもりか!』


(混乱してますわね。というか魔術防御がずさん過ぎて、中の音や気配を探り放題ですわ。対魔術の意識、低すぎません?)


『禁忌の魔女エリー』からすると、エルフ女王国宮殿内部の対魔術防御が低レベル過ぎた。

 しかし、この国にとっては手に入れられる魔術、マジックアイテムを駆使した女王国自慢のものである。

 単純にエリーの魔術技能が高すぎて、低く見えてしまうだけだ。


 彼女を乗せたレッドドラゴンが庭へと着陸した。

 宮殿を護る200人以上の兵士が集まり、及び腰で槍や剣を向けていた。

 エリーは気にせず、ドラゴンの背から降りて責任者――リーフ7世が来るのを待つ。


 待つ……が、誰がエリーの下に行くかで酷く揉めていた。


『一番の責任者は女王陛下です。ここは女王陛下が向かうべきかと』

『女王陛下を人身御供にするつもりか! こういうときは宰相殿が向かうべきところでしょう!』

『宮殿内の兵士達は何をしている! さっさと庭に居るドラゴンを倒さぬか!』

『庭の1匹だけを倒してどうする! ここは警備責任者という名目で騎士隊長殿を派遣するべきでは?』


(ま、まさかここまでぐだぐたと揉めるなんて……さすがに予想外ですわね)


 とはいえ時間は3分しかないため、エルフ女王国は最終的に『上層部全員で移動する』という選択肢を選ぶ。

 移動中も盗み聞くに堪えない責任の押し付け合いに終始する。


(この方達……本当に救いようがありませんわね)


 顔の大半をフード付きマントで顔を隠しているため、表情を読まれる心配はない。

 そのため遠慮無く呆れた表情を作った。

 ギリギリ3分過ぎる前に一団が庭へと顔を出す。

 その中で、1人扇を持った女性が冷や汗を流しながらも、毅然とした態度で誰何してくる。


「妾はエルフ女王国女王リーフ7世! 何故、ドラゴンの大軍を連れての訪問など無粋なマネを致す! 不作法甚だしい! 今すぐドラゴン達を引かせるがよい!」

「……馬鹿なことを言っていますわね。わたくしの『巨塔』に招待状も無しに押しかけ、剣を向けてきたのはそちらが先ですのに。なのにこの程度が不作法なんて、本当に可笑しいですわ」

「!? お、お主! お主が『巨塔』の持ち主なのかえ!?」


 エリーの発言に彼女以外の皆が驚愕し、ざわつく。

 彼女は事も無げな態度で肯定する。


「ええ、そうですわ。あの『巨塔』はわたくしの所有物ですの。にもかかわらず数日前、下賎な男女共が何の断りもなく押しかけて、暴れましたのよ。話を聞けば、彼らはこの国の騎士団団員達で、強盗働きをするように命令されたとか」

「お、お主はいったい何者ぞ! ハーディーは! 団員達をどうしたのか申せ!?」

「わたくしは……そう、ですわね……『巨塔の魔女』とでもお呼びなさいですわ。それと、団員達について教える必要はあります?」

「き、貴様……ッ」


『既に死亡している』とも、『未だ生きている』とも取れる回答だった。実際は搾り取れるだけの情報を絞り出した後、人種虐殺などの罪に問い既に処断している。

 この返答に愛しい息子の生死が分からずリーフ7世が激怒の表情を浮かべる。

 エリー……『巨塔の魔女』は一切気にせず逆に問う。


「むしろ、どうしてわたくしの『巨塔』にあんな下賎な強盗共を送り込んだのかしら?」

「強盗ではないわ! 『巨塔』にレッドドラゴンが住み着いたという情報を得たから、討伐するための人員を派遣しただけ! 首都の近くにドラゴンが住み着いたのだから処理するのは当然ではないか!」

「……本当にそれだけかしら? わたくしの財宝、研究成果を掠め取るための誤魔化しではなくて? 少々確認する必要がありますわね」


 これはただの言いがかりである。

 第一、『白の騎士団』が『巨塔』に来るよう仕向けたのはエリー達側だ。

 彼らの目的など百も承知である。


(本命はエルフ女王の記憶を確認し、『ますたー』や有益な情報を得ること。ですが、わざわざ素直にわたくし達の目的を教えてやる必要なんてありませんわ)


 最初から因縁を付けて記憶を読むつもりだったのだ。


「お、お主、何を言って……ち、近付くでない!」

「女王陛下!」

「女王陛下に侵入者を近づけさせるな! 殺せ!」


『レッドドラゴンに立ち向かえ』と命令されたら、躊躇しただろう。

 しかし相手は見た目、スタイルは良いが華奢な少女である。

 エルフ種兵士達は女王の覚え目出度くするため、張り切って突撃する――が、レッドドラゴンを従える『巨塔の魔女』が弱いはずがない。


「ま、待って!」


 野生動物並に危機感が強い宰相が慌てて止めようと手を上げるが遅かった。

 エリーは一切の躊躇なく、剣や槍を向けてきた相手達に攻撃魔術を行使する。


生け贄の木々(サクル・アルボル)


 リーフ女王を除く宰相などのトップ陣営達、兵士達の足下から鋭い木々が生えて、一瞬で彼らを貫く。

 槍のように鋭い木々は兵士、宰相達を貫いたまま血、肉などを栄養にドンドン成長していった。

 さらにその場から動くことは出来ないが、『人面木』のモンスター化してしまう。

 エリーが使った魔術は攻めてくる敵を攻撃し、足止めをする木々を作り出す戦略級(ストラテジー・クラス)の攻撃魔術である。


「ひぃ、いぃ、ひぃい……ッ」


 唯一、生き残ることを許されたリーフ7世が細切れな悲鳴を漏らし、その場に座り込む。

 エリーは一瞬でおこなわれた『エルフ種上層部潰滅』を気にせず、リーフ7世へと歩み寄る。

 彼女は座り込んだリーフ7世に、優しい声音で告げる。


「……では、記憶を覗かせて頂きますわね」


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

45話を12時に、46話を17時にアップする予定です!(本話は45話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
容赦ね~!
[一言] 騎士団員たちは殺したあとに自我だけ残して魂を縛ったアンデットにした方が後で面白かった気もしますねぇ(・ω・)
[良い点] 作者様はじめまして。 いつも楽しく読ませていただいております。 [気になる点] 間違いではないのですが 「お、お主、何を言って……ち、近くではない!」 「近く」を「近づく」にした方が読みや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ