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43話 新情報と国落とし

今日は43話を昼12時、44話を17時にアップする予定です(本話は43話)。

「アオユキ、後は頼むよ」

「――お任せください。身命に代えて『巨塔』管理、他雑務を遂行してみせます」


 僕の言葉に普段の『にゃー』な猫言葉ではなく、真面目に返答をする。

 僕の許しもなく、サーシャに手を出そうとしたのを気にしているのだろうか?


 サーシャへの復讐も無事に終わり、『ますたー』に関する貴重な情報源となりそうな『白の騎士団』団員達も全員無事に捕らえることが出来た。

 彼らの記憶を読むためにも一旦、『奈落』へ帰還することになったのだ。


 そのため『巨塔』の管理責任者をアオユキに任せる。


 彼女は現在進行形で『巨塔』関連のモンスターの管理をおこなっている。

 今も『巨塔』に突入した『白の騎士団』のバックアップとして、人種(ヒューマン)冒険者――ゴールド、ネムム、僕の偽者が騒ぎを起こしモンスターの注意を引いていた。

 こちらの戦闘は終わったため、レッドドラゴンも1階に戻して、冒険者達の戦いも切りの良いところで上手く終わらせる必要があった。

 故にアオユキには『巨塔』の管理責任を任せたのである。


「それじゃ皆、準備はいいかい?」


 僕自身、『神葬(しんそう)グングニール』を再度封印し、いつもの地味な杖に戻す。

 右手のひらの浸食を受けた呪いは、恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カード、『SSSR 高位呪術祓い』で清める。

 サーシャ達の発言でつい怒りがこみ上げて、『神葬(しんそう)グングニール』を第一段階解放してしまったが、正直そこまでしなくても倒すのは難しくなかった。

神葬(しんそう)グングニール』の実戦テストも出来たとはいえ、正直大分オーバーキルだったかもしれない。


 僕が胸中で考えていると、皆が返事をしてくる。


「問題ありませんわ、ライト神様(しんさま)

「あたいもいいぜ!」

「アイスヒート、問題ありません」

「ケケケケケケ! 副団長さんも取り込んだからいつでもいけますよ」

「…………」

『相方モ問題無イソウデス』


 エリー、ナズナ、アイスヒート、メラ、スズの返事を聞き終えると、僕は恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カード、『SSR、転移』を使用する。


「転移、奈落へ、解放(リリース)


『巨塔』にかけられていた転移阻害は既に解除済みのため、ミカエルのような転移失敗などは起きない。

 僕達は無事、計画を完遂して、『奈落』へと帰還した。




 ☆ ☆ ☆




 ――サーシャへの復讐と、『白の騎士団』を捕らえて数日後。


 サーシャはガルーと同じく地下牢獄へ。

 今頃、僕の宣告通り『絶対に死ねない。死にたくても死ねない』苦悶を味わっているだろう。

 ガルーと違う点は、サーシャが心底毛嫌いしている『醜いモノ』も混ぜている点だろうか。


『白の騎士団』に関しては情報を引き出した後に全員人種殺害・虐殺の罪で死刑に処したが、色々面白い、正直ちょっと信じがたい情報が多数発見される。

 彼らの記憶をエリーが魔術で漁り、情報を取得したのだ。

 そのため嘘ではないモノであるのは間違いないのだが……。


『奈落』執務室でエリーと2人で向き合う。

 彼女から上がってきた『白の騎士団』を通して知り得た情報をまとめた書類に目を通す。

 一番役に立ったのは『白の騎士団』団長ハーディーのモノだ。

 彼は現エルフ女王国女王の血を引く息子のため、多数の情報を共有していた。

 故にかなり深い部分まで知っていた。


 他副団長、シャープハット、ニアキア兄弟は以前捕らえた元団員のエルフ種カイトとどっこいか、ちょっと良い程度の情報しか持ち合わせていなかった。


 書類を読み終えると、僕は眉間に皺を寄せて背もたれに体を預ける。


「……エリーを疑う訳じゃないけど、これはちょっと信じ難い内容だね」

「お気になさらないでくださいまし。むしろわたくし自身、目を疑う内容ですわ」


 記憶を読んだエリー自身、『この内容は本当なのか?』と訝しんでいた。

 その内容とは――。


 以前、エルフ種カイトの記憶を読んだ際、各国が『ますたー』を警戒している理由が『野放しにした場合、世界が滅ぶ可能性があるため』と知った。

 最初、理由が分からず僕達は皆、首を捻った。

 今回、『白の騎士団』団長ハーディーの記憶を読むことでその理由を知る。


「『ますたーを放置すると文明が加速して、ある程度を越えると世界が滅ぶ。それを避けるためますたーを確保し、隔離して、姫のようにあやし、外部への影響力を最小限に抑える』……なんて」

「しかも、ただの眉唾ではなく、実際に過去、高度な文明が存在し滅んでいるのは事実なんですわよね……。『世界全てが滅ぶ』は言い過ぎだとしても、一部の高度文明がますたーがもたらした何かによって滅んだ、ということは考えられますわね」


 エリーの指摘通り、過去に栄えた、現代でも実現不可能な高度な文明を誇る遺跡が多数存在する。

 このような遺跡はモンスターが住み着き疑似ダンジョン化したり、貴重品を護るため過去文明の警備システムによって今でも護られていたりするのだ。

 そういった遺跡に潜って冒険者達は『遺物級(レリック・クラス)』武具やアイテム、中には長距離転移アイテム、金銀財宝などを得る。

 過去遺跡は冒険者達にとって、最もポピュラーな『夢』がある場所なのだ。

 しかし『なぜ現代以上に発達した魔術文明が滅んだのか?』は、今日(こんにち)の歴史学者達でも賛否が分かれその謎は判明していない。


 さらに、『ますたー』は『人種(ヒューマン)』からのみ発生する。

 それならばいっそ、『人種(ヒューマン)を絶滅させよう』と人種以外の国家が動いても、魔王認定を受けて『ますたー』が産まれた際、逆に他種に滅ぼされかねないらしい。


「……『ますたー』はあくまで文明を加速させる存在で、彼らが世界を滅ぼしている訳じゃないんだよね?」

「はいですわ。ハーディーの記憶を読む限り、あくまで『ますたー』は強力な恩恵(ギフト)、武器、魔術、戦闘技能、知識を所持しており、文明を加速させるだけの存在ですわ。世界を直接その力で滅ぼしている可能性は、低いとありましたの」

「……なるほど。つまりまとめると――」


『ますたー』は、強力な能力や知識、アイテムを所持しており、王族や高位貴族などの権力と結びつき周囲への影響を行使することによって、文明を加速させる。

 そして文明が加速することによって、栄え、そして滅んだ文明が実際に過去存在する。さらには、文明が加速することによって世界が滅ぶ、とも言われている。


「……そうなれば、文明の発展を求めず安全第一で現状維持派の王族や高位貴族からすれば、『ますたー』は不要どころか、居てもらっては困る存在。だから僕は『ますたー』候補として調査されて、違うと判明したから念のために殺されそうになったのか?」


 約3年前を思い出す。


『種族の集い』リーダー、竜人種(ドラゴンニュート)のドラゴは言った。

『一応、念のために殺しておけと言われているんだ』と。


「……ドラゴの口ぶりから『国から念のため殺せ』と命令を下されているのは確かだ。けど……」


『ますたーが文明を加速すると、何故か国や世界が滅ぶので、ますたーを始末する』

 一見、論法的には正しく見える。

 だが、文明が加速すると何故国が滅んだのか? その明確な因果関係は現在証明できていない。少なくとも僕には分からない。

 予測するならば、高度な文明を取り合って内部分裂とか、世界に覇を唱えようとして逆に攻められたり孤立したりで失敗等があるが……。これもあくまで予測の一つに過ぎず、他の諸々の要素についても検討しなくてはならない。

 それに――。


「……これって、『ますたー』候補を逆に殺す方が危険度が高い気がするんだけど……僕の気のせい?」


 実際、エルフ女王国は『ますたー』の血を取り込み、自らの戦力にしていた。

『ますたー』候補だとしても、使い道はあるのではないだろうか。『ますたー』候補が本当に『ますたー』だったとしたら、問題が発生する恐れもあるだろう。

 僕の疑問にエリーが即座に同意する。


「いいえ、ライト神様(しんさま)のお考えは間違っておりませんわ。いくら『ますたー』ではなかったとはいえ『念のために殺せ』など危険度が高すぎますわ。仮に存在するかもしれない本物の『ますたー』にその所業が漏れたら、激怒する可能性もありますし、即座の敵認定もありえますわ。そんな無駄な危険を負わずとも、まだレベルの低い冒険者ならば、適当にはぐらかし追い出すなり、別のチームを紹介すればいいだけですわ」

「だよね……。むしろ殺すことのデメリットの方が高いよね」


 殺害を100%隠蔽できればその限りではないが……。未来永劫、100%隠蔽できるとは限らない。実際、僕という例外が既に存在している訳なのだから。

 しかし、そんな危険を冒しつつも、『ますたー候補すら殺害しなければならない事情がある』ということなのだろう。


「……ハーディー、またはエルフ種すら知らない情報がまだあるってことかな?」

「はい、恐らくはそうですわ」

「だよね。でないと辻褄があまりにも合わないもんね」


 だがこれ以上、調べようにもハーディーの記憶は総ざらいした後だ。残りは人種(ヒューマン)虐殺や母親であるエルフ女王国女王との日常などの記憶しかない。

 故に僕達は次の段階へと移る。


「エリー、ハーディー達の記憶を確認した限り、彼ら以上の戦力はエルフ女王国にはもう無いんだよね?」

「はい、ございませんわ」

「なら、問題はないね。作戦通りに続きを頼むよ」

「はいですわ! では、早急に『巨塔』と今回の強襲を利用し、エルフ女王国を落として参りますわ」

「頼んだよ、エリー」


 エリーは地上の男性なら誰もが恋に落ちる笑顔で、『国落とし』を宣言した。


 僕は微笑みを浮かべ、彼女にお願いしたのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

43話を12時に、44話を17時にアップする予定です!(本話は43話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
おおっ!歴史的事実もしくは背景⁉ 現実世界でも説明できない10万年の空白期間が存在するっていうからあながち否定はできないだろうね。 過去に存在した高度な文明はなぜ突然その場にいた人たちまで一緒に消滅し…
姫のようにあやしてやりなよ!
陰と陽みたいな感じ? 片方に傾くとバランスを取るように世界が動く、的な
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