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42話 サーシャへの復讐

今日は41話を昼12時、42話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は42話)。

『巨塔』4階、玉座の間。

 鋼鉄色の茨に絡め取られ、両手足をぐちゃぐちゃに砕かれ身動きを取れないミカエルは、エリーに記憶を読まれる。

 その苦痛から体中に茨が食い込んでいるにも拘わらず悶え、目、鼻、耳からですら血を流す。

 文字通り全身血だるま状態だった。


 そんな凄惨な光景に震えながらも見入るサーシャへ僕は向き直る。


「さてそれじゃサーシャへの復讐を始めようか……」

「ひぃッ!」


 サーシャは短い悲鳴を上げて後退るが、すぐに動きを止めた。

 後退った先に『白の騎士団』だった者達が横たわり、ぶつかったせいでそれ以上先へ進めなかったからだ。

 彼らにぶつからなくても、周囲はぐるりと僕達に囲まれて逃げる術など無い。


 彼女は逃げ道が無いのを悟ると、今度はゆっくり前へ進む。

 冷や汗を流しながら、上目遣いで媚を売ってくる。

 視線、表情、態度で僕へと訴えてくる。


「お、覚えているかしらライト? あ、貴方が『種族の集い』に入団した後も、貴方は他の種から差別を受けていたわよね? それが悲しくて貴方は1人で泣いていたわ。覚えているかしら?」

「…………」

「あ、あたしはその時、貴方を慰めてあげたわね? 泣いているライトの隣に座って背中を撫でながら、ハンカチで涙を拭いて慰めてあげたわよね? ねぇ、覚えているでしょ? 覚えているわよね? ね?」


 サーシャは媚を売りつつ、必死に昔の話を持ち出す。

 過去を持ち出し、情に訴えようとしているのだろう。

 僕は黙って何も言わず冷たく見下ろし続けた。


 サーシャはどうにか関心を引き出そうと必死に訴える。


「弓矢だって教えたし、森での採取のしかたや野営の時の料理だって教えてあげたわ! 仲間内でからかわれた時、真っ先にあたしが助けてあげていたじゃない! お願いよ! 何か言ってよ!」

「……確かにサーシャには色々教えてもらったね」

「! そうよね! あたし、ライトに色々教えてあげたわよね! ねぇッ!」


 僕がようやく反応を示したことで、サーシャが喜色満面の笑顔で反応する。

 彼女はエルフ種で斥候職だったこともあり、弓矢の扱い方や調理方法なども教えてもらったことがある。

 それ自体は確かだが――。


 僕は一転、冷たい瞳と声音で告げる。


「でもそれは全て嘘で、演技。本当は人種を見下していて、その本性を現して僕を嬉々として殺そうとしたよね? 未だに足に矢が刺さる夢を視るんだけど……」

「ッゥ!?」

『…………』


 僕の言葉にサーシャが息を呑み、アイスヒート達が憤怒、殺意を堪えるように奥歯を鳴らす。

 サーシャはさらに冷や汗を滝のように流し、弁解する。


「あ! あれは! 国からの命令で、竜人種(ドラゴンニュート)のドラゴや魔人種のディアブロまで居たのよ! あたしが1人逆らってどうにかできるはずないじゃない! 逆らっていたらあの時、あたしまで殺されていたわ! だからあたしは悪くない! 悪くないのよッ! 悪くない……あたしは悪くない……っ」


 後半は僕達にではなく、自分に言い聞かせるように呟き続けた。

 だがそんな理屈が僕達に通じないことは彼女も理解している――故に、サーシャは最後の選択を選ぶ。

 彼女は服を半脱ぎにし、訴えてきた。


「ライトは昔はあたしのことが好きだったのでしょ? あたしも本当は貴方のことが大好きだったの! あたしの体を好きにしていいから! なんでもするから! お願い助けて!」


 恥も外聞もない命乞い。

 彼女の態度に我慢の限界を超えたアオユキがブチ切れる。


「――いい加減にしろクソ女。自身の罪も認めず、あまつさえアオユキ達の崇高なる主を『偽りの愛を囁き、体を与えれば許す無能』だと侮辱するとは! 殺すッ。貴様だけは回復、再生を繰り返して、畜生共に生きたまま喰わせ産まれて来たことを後悔させてやる!」


 忠誠心が高いアオユキが、サーシャの言動に堪えきれなかった。

 アイスヒート、メラ、スズも同意見らしく、押さえ込んでいた殺意を堪えきれず解放する。

 ナズナだけは何で怒っているのか分からないが、皆が怒っているため、彼女も怒りだしたようだ。


 アオユキが両手から鎖を落とし、床を割る。

『天使のオカリナ』で召喚された筋肉天使の全力でも、砕くことが出来なかった床をだ。

『SUR、天才モンスターテイマーアオユキ レベル9999』

 僕達の中でも上から3番目に強い彼女が、明確な殺意、殺気を纏いサーシャへと歩み出す。

 彼女1人でエルフ女王国を陥落させ住まう住人、戦力を皆殺しにしてお釣りがくる力を持つ――が、僕の一言で足を止め、怯え、震える。


「アオユキ、僕はいつ彼女に手を出していいと許可したの?」

「……にゃ~」


 アオユキはばつが悪そうに『にゃ~』と鳴く。

 彼女だけではない。

 アイスヒート達もアオユキへの注意が『彼女だけではない』と理解し、外れそうになったタガをはめ直す。


 アオユキに注意を飛ばした僕は改めて、サーシャへと向き直る。


「安心して欲しいサーシャ、君を殺したりはしないよ」

「ら、ライト!」


 彼女は僕の宣言に人生で一番の笑顔を浮かべる――が、その笑顔もすぐに曇る。


「既に捕らえたガルーのように僕が真実を知り、人種以外に終末を与えるか否かの判断を下すまでは痛みの極みを与えつつ死ねないようにしておいてあげるよ。絶対に逃れられない『奈落』の奥底の暗闇の中で、激痛に苛まれながら絶対に死ねない。死にたくても死ねないようにして、ね」

「い、い、いやああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「メラ、『奈落』地下に連れて行くのを頼むよ。なるべく醜い、サーシャの嫌悪感を掻き立てるようなモノで拘束して連れて行って。ああ、ついでに気絶している『白の騎士団』の拘束もお願いね」

「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ! ご主人さま、お任せください!」


 僕に頼られたのが心底嬉しかったらしくメラは長い笑い声の後、スカートから醜い触手、爛れた動物の顔、ゾンビのような腕、他僕も知らない嫌悪感を非常に掻き立てる『ナニカ』が伸びる。

 サーシャはそれから逃げるように僕へと駆け寄り足に縋り付く。


「ごめんなさい! ごめんなさい! 殺そうとしてごめんなさい! お願い許して! ライト、お願い、なんでもするわ! 体も好きにして良いから! お願い! ごめんなさい! いやぁぁ、いやぁぁぁぁぁあぁっ!」


 彼女の足に触手、醜い動物の顔、『ナニカ』などが絡みつく。

 それらの力は非常に強く、僕の足に縋り付いていたサーシャを力尽くで引きはがしていく。


「嫌! 嫌! 嫌! 助けて! 助けてライト! 殺そうとしたことは謝る! 嘘をついたことも謝るッ! なんでもする! なんでもするからぁあッ! あたしはただ幸せになりたかっただけなの! 両親、姉妹達を見返したかっただけなの! 嫌あぁあぁぁぁっ、ライト! ライトさまぁぁぁあっ! たすけ――」


 力尽くで引っ張られ、サーシャは僕の足首を掴みすがろうとした。

 だが、レベル9999の僕は揺るぎもせず、皮膚に爪痕を刻むことすら出来ない。

 彼女に群がる醜い『ナニカ』達はサーシャの足から始まり、太股、胴体、肩、顔などに絡みつき引きずっていく。

 口まで押さえ込まれ、引っ張られ、最後にすがり掴もうとしていたその手も耐えきれず手放してしまう。


 そのままメラの長いスカートの奥へと引きずり込まれていく。

 彼女の瞳からは涙が大量に流れ、助けを訴え続けるが僕は気にせず見送る。そんな冷めた目を前に、サーシャはようやく『絶望』とは何かを理解したようだ。


 サーシャの伸ばされた腕がメラのスカート奥に消える。


 こうして僕はようやく2人目、エルフ種、サーシャへの復讐を終えたのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


ついにサーシャへの復讐完了!

正直、書いていて感慨深いというか、滅茶苦茶楽しかったです(笑)。

明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

また今日は41話を12時に、42話を17時にアップしております!(本話は42話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
強烈すぎて夢に出てきそう(。-`ω-)
最後の言葉にも、ライトを騙した原因となる人種差別が出てこない所が最低で、それが表現されて最高です。
一思いに心臓を射貫いてたらこんなことにならなかったのに 脚を狙ったのは嬲り殺される様を見たかったんでしようね
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