41話 茨の束縛
今日は41話を昼12時、42話を17時にアップする予定です(本話は41話)。
エリーに『ミカエルの処置を任せる』と声をかけると、彼女は甘くとろけるような声音と笑みを僕へ向けてくる。
そんな彼女にミカエルの扱いを代わると、一転、内側に抑えていた殺意を解き放つ。
エリーだけではなくアオユキも、また『SR、念話』で聞かされていたのか、アイスヒート達も彼に対して殺意を叩きつける。
ミカエルが彼女達の殺意を浴びて、親に怒られる幼子のように震え上がる。
「――よくも散々わたくし達の前で、ライト神様を罵ってくれましたわね。腑が煮えくりかえって、腑が煮えくりかえって、ご命令を無視してぶち殺そうとするのを何度となく耐えたことか……ッ! 楽に死ねると思わないでくださいね?」
「あ、あれはまだライト――ライト様の偉大さを知らなかっただけ! 今は違います! ライト様と鉾を交えたことで、誰よりもライト様の偉大さを文字通り身に染みて理解した次第です!」
「あらそうなの? ライト神様の偉大さを理解したの?」
「はい! はい! しました!」
殺意を叩きつけていたエリーが一転、気の抜けた声音を漏らし可愛らしく小首を傾げる。
ミカエルは『た、助かったか?』と内心抱いた表情を作るが、その淡い希望は直ぐに砕かれる。
エリーの表情が一瞬で殺意に濡れた。
「――ですがその程度の理解では、まだまだ全然足りませんわ。あの程度でライト神様の偉大さを理解など出来るはずありませんわ。だからその体に直接刻み込んであげますわね」
「!?」
地獄の底のような暗い、絶望的な瞳で貫かれる。
魂を直接捕らえられたような感触。
この時、ミカエルはようやく『絶望』とはどんなものか頭ではなく心で理解した。
「ひぃいぃあぁぁあぁッ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! どけ! どけくそ! 」
ミカエルが悲鳴を上げて駆け出す。
レベル2500前後あるため、そこそこ逃げ足も速い。
アイスヒートとメラが脇をすり抜けようとするミカエルを逃がさぬよう臨戦態勢を取るが――それ以上にレベル9999の禁忌の魔女エリーの詠唱速度の方が速かった。
「茨の束縛!」
鋼鉄色の茨が即座にミカエルの体に絡みつく。
茨の棘が食い込み、下手に動けば赤い血の雫を流しそうになる。
ミカエルは覚悟を決めて、歯を食いしばる。
「この程度の拘束! 痛みを堪えて引きちぎれば!」
茨の棘で皮膚、肉が裂けるのを覚悟してレベル2500前後の膂力を振るうが――破れない!
エリーは藻掻くミカエルを目にしつつ、コツコツと歩き近付く。
途中、サーシャの脇を通りかかると、
「……チッ!」
「!?」
エリーは心底『この女を今すぐに生きたまま素手で腑をえぐり出し、自身の内臓の味を確かめさせた上、この世の全ての苦痛を与えバラバラにしてやりたい!』という濃密な殺意と共に舌打ちをする。
過去、サーシャは僕に酷い裏切りと、足に矢を撃ち込み苦痛を与えた。そのことに加え、さらに自分と同じ女性である点がエリー……いや、この場に居る皆がサーシャについて苛立ち、許せない部分のようだ。
僕の許可が無いため手は出せないが……。
怯えるサーシャを横目に、エリーは手を出さず彼女の脇をすり抜け、ミカエルへと歩み寄る。
彼へ近付くと歌うように告げる。
「無駄ですわ。戦略級、茨の束縛。単体しか拘束できませんが、わたくし達クラスでも一時拘束できる魔術ですわ。貴方程度のレベルでは脱出は不可能ですわよ」
「戦略級のうえ、詠唱破棄!? 例え伝説のエルフ種魔術師でもそんなこと不可能だ! ありえない!」
「別に信じる必要はありませんわよ? どうでも良いことですから。とりあえずもう逃げ出さないように両足と……一応腕も折っておきましょうか」
「!? や、止めてくれ! 止めてく――ぎぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
鋼鉄色の茨がエリーの意思に従い締め付けを強くする。
小枝を折るが如く、ミカエルの両手足を容赦なくへし折っていく。一度だけではない。再生が難しくなるレベルで『バキボキバキ』と何度も折っていった。
「うるさいですわね……『サイレント』」
「――!」
エリーの魔術でミカエルの悲鳴が消える。
彼女は満足そうに、天使のような笑顔で宣言した。
「存分に痛くしながら、記憶を確認するため脳を調べてさしあげますわね。ライト神様にすぐ首を差し出さなかった、暴言を吐いた罪を懺悔しながら地獄の苦痛にもだえなさいな」
「――!? !?」
ミカエルは涙を流し苦悶の表情で必死に口を動かす。
しかしサイレントで音が消されているため、懇願の台詞が相手の耳に届くことはない。
攻撃魔術で足掻こうにも、苦痛が強すぎて意識を集中することすら難しかった。
エリーは茨を操作して、ミカエルの頭を前に出させる。
彼女が手で触れて意識を集中すると――ミカエルが耳、目、鼻から血を流し体を足先から切り刻まれるより過酷な苦悶の表情を浮かべる。
彼にとっては地獄の痛みだろうが、エリー含めた僕側の女性陣は誰1人同情していなかった。
むしろ『ライト様を侮辱した相手になんて緩い対応をしているんだ!』と一部非難の目すら向けている者達も居る。
とはいえ、『ますたー』情報を得るためエリーが記憶を読むのは必須だ。誰1人文句は言わない。
エリーの作業を脇に置いて僕は、サーシャへと向き直る。
「さて、それじゃサーシャへの復讐を始めようか……」
彼女は言葉をかけられると、今にも死にそうな表情を作る。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
レビュー頂きました!
しかも昨日、2件も一緒に!
本当にありがとうございます!
今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
41話を12時に、42話を17時にアップする予定です!(本話は41話です)
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