38話 神葬グングニール、第一段階解放
今日は37話を昼12時、38話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は38話)。
「魂魄封絶第一限定解除! コード、『9999』、フォーナイン! 『神葬グングニール』!」
右手で握り締めた杖――『神葬グングニール』の封印を一部解放する。
普段、僕が使っているこの杖。
一見すると魔術師風の地味な杖だが、実際は槍である。
創世級、『EX、神葬グングニール』。
約3年間、恩恵『無限ガチャ』を毎日引き続けて、ようやく1枚だけ最上級のEXが出た。
それがこの『神葬グングニール』である。
性能は分かっていない。
恩恵『無限ガチャ』カードの『SR、鑑定』を使っても、レベル9999のメイ達が鑑定しても詳細を把握することが出来なかったのだ。
正確には鑑定をしたが『神■■り■を■■し槍』など文字化け表記が多すぎて、詳細が分からないのだ。
唯一、理解できるのは力が強すぎることである。
そのため僕、メイ、エリー、アオユキの魂を枷に封絶処理を施した。
術式を担当したのは当然『禁忌の魔女エリー』である。
エリーが、レベル9999まで昇華した魂の力を起点に術式を構築。『神葬グングニール』の力をほぼ完全に封じ込め――封絶した。
僕達レベル9999の4人で分担し、見た目地味な魔術師風の杖にまで押さえ込んだのである。
逆に言えば『神葬グングニール』の力を押さえ込むのに、レベル9999×4人を必要としたのだ。
これだけでどれほど力を秘めているか分かるだろう。
僕の権限で自分が負担している4分の1、25%の力を解放する。
25%の力を解放すると、杖から黒い刃が出現したシンプルな槍の姿に変化した。さらに黒い炎、煙のような物が産み出され、槍全体から溢れ出る。
『ジュワァッ!』という肉が焼けるような音が響く。
たった25%力を解放し握り締めているだけで、レベル9999の僕の手のひらにダメージを与えてくる。
火傷……というより呪術によって手のひらを浸食されているイメージが近い。
一応、右手だけに意識を集中し、防御能力を高めることでなんとか釣り合いを取っている。
先程まで威勢が良かったサーシャ、ミカエル共に『神葬グングニール』の威圧に黙り込む。
「…………」
「…………」
2人とも真夜中の暗闇の中から、強大な力を持つ怪物が目の前に姿を現したかのように押し黙る。
少しでも刺激を与えないように、本能的に黙り込んだのだ。
僕は耳まで裂けるほどの笑みを浮かべ臨戦態勢をとる。
「さぁ……約束通り、本物の『絶望』を見せてやろう……!」
「て、天使達、あ、あの化け物をこ、殺しなさい!」
僕の言葉に反応してサーシャが慌てて天使達を嗾ける。
恐怖心より、命の危機を敏感に感じ取ったらしい。
「&%%&~+*+`%!」
石像天使が呪文らしきモノを唱えると、ほぼ同時に僕の頭上から強い光が勢いよく降り注ぐ。
「聖属性の攻撃か。……まあ、こんなものか」
僕は軽く槍を振るう。
天使による聖属性範囲攻撃らしいが、LV差もあり、何より『神葬グングニール』の黒い炎、煙のような『ナニカ』に触れただけで霧散してしまった。
「”#$$(&~(~+`!」
筋肉天使が聖属性攻撃に便乗し、間合いを詰めて鉄塊のようなメイスを振り下ろす。
僕はその場から動かず、『神葬グングニール』を軽く合わせる。
本来の物理法則であれば鉄塊のようなメイスに、シンプルな槍状態の『神葬グングニール』など勝てず、折れてしまっても不思議はなかった。
――しかし、『神葬グングニール』がメイスに触れた瞬間、筋肉天使が持っていた巨大なメイスは熔けてしまう。
斬るでも、折るでも、砕くでもない。
音もなく、水に溶ける砂糖の如く、手持ち部分まで熔けてしまったのだ。
「*`+LP~~(’%!?」
天使語は分からなくても、筋肉天使が驚愕しているのが手に取るように分かる。
さらに追撃として、槍を振るう。
杖で突いた時と同様に石像天使が光の壁を作り出すが、前回以上に壁は意味を成さず、回避しようとした筋肉天使の太い胴体に深い傷を作る。
「ヒィ!? か、回復! 早く回復を――」
悲鳴を漏らしたサーシャが石像天使に回復をうながすが、遅い。
まるで紙に火がついた如く、筋肉天使は数秒も持たず黒い呪いに浸食され、消滅してしまう。
たった一撃でご自慢の天使が消滅してしまったのだ。
この事実にサーシャは絶句の表情を作るが、
「サーシャ殿! 残った天使を前に! 時間を稼いでいる間に天使を再度補充してください!」
「は、はい! ミカエル様!」
幻想級の盾である『祝福と天罰』を掲げながら、流石の事態にミカエルも冷や汗を流しつつ指示を出す。
彼の指示にサーシャは慌てて『天使のオカリナ』を再使用。
僕はその間を見逃さず、距離を縮めるため地面を蹴る!
「&)%~’’+L{K<*!」
石像天使が2人の前に出て再び頭上から光のシャワーに、目から光線、さらに防御用の光壁を限界一杯まで出現させた。
僕は彼の頑張りに思わず喝采してしまう。
「多芸だね。……でも無駄だよ」
頭上の光、目の光線は全て『神葬グングニール』の黒い炎、煙のような『ナニカ』に触れて消滅。
光壁も濡れた和紙より意味を成さずあっさりと破られる。
見た目頑丈そうな石像天使を頭から爪先まで、縦真っ二つに両断した。
石像天使が時間稼ぎをしている間に、サーシャは再度天使を再召喚しようとするが……。
「さ、サーシャ殿まだですか!?」
「駄目! 何度呼び掛けても再召喚されない! ど、どうして、聞いていた話と違うッ!」
ミカエルにうながされ、焦った様子で『天使のオカリナ』から再度天使を召喚しようとするが、全て失敗に終わる。
むしろ再召喚どころか、石像天使が縦真っ二つにされたためか、『天使のオカリナ』は乳白色からまるで墨汁を垂らしたかのように黒ずんでいく。
黒ずみは加速度的に広がり、最終的に『天使のオカリナ』はサーシャの手の中で粉々に壊れ、黒い砂になってこぼれ落ちる。
「な、なんで!? なんで!? どうしてよ! あたし、何もしていないのにッ!」
「さすが『神葬グングニール』。神を葬るための槍。天使にはことのほか効いたようだ。まさか存在を『消滅』させ、再度召喚すらさせないとはね」
ミカエルの顔からは既に余裕は消え呆然と呟く。
「ま、まさか幻想級の武具を破壊するほどの力を持つとは……いったいその槍はなんなんですか? いや、むしろ本当に人種なのですか? 変質したエルフ種とかではないですよね?」
「変質したエルフ種? 止めてくれ、僕はちゃんとした人種だ。それにこの『神葬グングニール』は創世級の武具。幻想級が元から敵うはずがないだろう?」
「ははは……じょ、冗談にしても笑えませんね。レベル9999の次は、創世級? ワタシ達が持っている国宝である幻想級の上、神話級のさらに上の、神話世界の武具だって!? 馬鹿も休み休み言ってくださいよ、クソヒューマンッ!」
信じたくない現実を目の前に突きつけられ、ミカエルは額から大量の冷や汗を流す。それでも心が折れていないのはエルフ種としてのプライドと、まだ手の内にある幻想級の盾である『祝福と天罰』があるからだろう。
上擦った声音でミカエルは強がる。
「た、たまたま『天使のオカリナ』に適応した武具を手にしていたからと言って、調子に乗らない方がいいですよ! 第一、この全ての攻撃をカウンターする『祝福と天罰』がある限りワタシ達に敗北はありえません! 全てを反射する力があるのですからッ!」
「なら、『天使のオカリナ』と同じようにオマエ達の『祝福と天罰』を砕いてやるよ」
僕は『神葬グングニール』を、ミカエルは縋るように『祝福と天罰』を構えた。
「クっ、いつでも来るといい……! エルフ種が、下賎なヒューマンに負ける筈がないのです!」
「なら、高貴なエルフ種様のお力で止めてみればいいさ」
僕は地面を蹴り、『神葬グングニール』を走らせる!
その一撃に合わせるように絶妙なタイミングでミカエルが背後にサーシャを庇いつつ盾『祝福と天罰』を突き出してくる。
「下賎なヒューマンが! 大人しく自身の攻撃! 天罰で死ねぇぇぇッ!」
ミカエルは必死に、祈るように声をあげた。
『神葬グングニール』と『祝福と天罰』が正面衝突。
「…………げぇぇええぇえっッ!? 盾がッ!?」
――だがミカエルの祈りもむなしく、力を25%とはいえ解放した創世級の一撃に幻想級の盾はガラスのように儚い音を奏で砕けてしまう。
衝撃が盾を構えるミカエル、サーシャまで及ぶ。
「ぎゃぁあああぁッッ!?」
「いやぁぁあアあああッッ!」
2人は悲鳴を上げて、他階層より硬い床をバウンドして吹き飛んでしまう。
エリーの力のお陰で死ぬことはないし、当然こうなることは予想できたので僕自身、かなり手を抜いた。
「ぐぅうぅ……」
「ッゥ……」
2人は体中を痛めつつもまだ生きており、意識もある。
サーシャ、ミカエル共に全ての幻想級を破壊されて、驚愕の表情を作り出す。
だがまだ絶望へは至っていない。
特にミカエルの瞳はまだ死んでいなかった。
どうやら彼にはまだ秘策があるようだ。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は37話を12時に、38話を17時にアップしております!(本話は38話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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