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37話 絶望とは?

今日は37話を昼12時、38話を17時にアップする予定です(本話は37話)。

「アオユキ、エリー、絶対に手を出さないでね」

「にゃー」

「畏まりましたわ、ライト神様」


 僕は『巨塔』4階の玉座から立ち上がると、『SSR、道化師の仮面』をエリーに預けながら2人に釘を刺す。

 彼女達の返事を聞き終え、杖を手にしたまま階段を下りる。


「さぁ、復讐を始めようか……」


『白の騎士団』副団長のミカエルが盾を構え前面に出し、背後にサーシャが手にしたオカリナを掲げる。

 僕は気にせず、散歩でもするかのように距離を縮めていった。


「あたし達の愛の前に滅びなさい、薄汚いヒューマン(劣等種)め!」


 サーシャが叫ぶとオカリナに口を添えて鳴らす。


(幻覚攻撃? 音で精神攻撃でもしかけてくるつもりかな?)


 僕は適当に推測するが全て外れる。

 サーシャを中心に魔法陣が展開。さらにその外部に2つの魔法陣が出現し、羽根が生えた人型――天使を召喚した。


 一体はガチムチの体で身長は4mを超えていた。手には巨大な鉄塊のようなメイスが握られている。上半身裸で顔はフルフェイスヘルムを被っているため、表情を確認することは出来ない。

 背中に羽根が生えていなければ天使というより、別種のモンスターだと誤解しそうな外見である。


 もう一体は大きさが同じく約4m。彫刻のように硬い素材で手足が体にがっちりとくっついている。両手で握る杖も埋め込まれ、見た目人型のチェス駒のようだった。こちらも背中に羽根が生えていなければ、見た目は新種のゴーレムである。


「$%#’((&%KJYP!」

「LJ`*+PO)=~~%!」


 天使語なのか意味不明な言葉を発している。

 そんな天使達を背後にサーシャが自慢気に叫んだ。


「これこそ伯爵家秘蔵の幻想級(ファンタズマ・クラス)! 『天使のオカリナ』の力よ! この神々しい天使達に虫けらの如くぶち殺されるといいわ!」


 どうやらあの『天使のオカリナ』は天使を2体召喚し、戦わせるモノらしい。

 サーシャの言葉に従い、2体の天使が襲いかかってくる。

 羽根を一切羽ばたかせていないのに、空中を滑るように素速く動く姿はなかなか異様な光景である。


「%$HFPSM``*!」

「ッゥ!」


 筋肉天使が高速で接近してきて、手にある巨大な鈍器を振り下ろす。

 僕は素速く地を這うように退避する。

 そのまま筋肉天使は、床を砕き退避方向へむけて飛礫を放つつもりだったのだろう――が、


「=~~$%#’!?」


 エリー特製の『巨塔』――4階は彼女曰く玉座の間ということで他階層より強固に作っているらしい。

 エリーの謎のこだわりだ。

 結果、床が壊せず、飛礫を放つどころか、罅を入れるだけに止まる。

 自身の怪力で壊せなかったのと、予想以上に床が硬くて腕が痺れたのか筋肉天使が困惑した。


「そんな隙を逃すほど、僕は甘くはないよ!」


 踏み込み、手にした杖で筋肉天使の腹部を突く。

 突き破るつもりで振るったが、筋肉天使に到達する手前で光の壁に遮られる。

 光の壁を複数枚割り、筋肉天使の腹部へ杖の一撃を叩き込む!


「まずは一撃っ……!」


 そのまま筋肉天使は吹き飛び、腹部も一部抉れていた。

 全力ではなかったが、光の障壁に遮られたせいで一撃で落とすことは出来なかった。


 そこに天使の奇妙な言葉が響く。


「)’&%&(&%$*+PL!」

「傷が消えていく?」


 石像天使が呪文を唱えたのか、筋肉天使の傷が癒えていく。

 どうも石像天使は見た目通り魔術師タイプらしく、先程の障壁、傷の回復もこいつの仕業らしい。


(レベル1500前後ぐらいかな? 物理攻撃の筋肉天使、魔術師タイプの石像天使か……なかなか面白い構成だな。……天使同士の傷が治せるならば、これならどうだ?)


 天使を一時無視して、狙いを召喚者のサーシャへ向ける。


「ファイアーウォール!」

「!? 戦術級タクティックス・クラスの詠唱破棄をヒューマン(劣等種)が使ったですって!?」


 少し間の時間だけでも邪魔が入らないように『SR、ファイアーウォール』で天使達の前に炎の壁を作り出す。

 お陰で僅かな時間だが天使達の足止めに成功する。

 その間に戦術級タクティックス・クラスの攻撃魔術詠唱破棄に驚くサーシャへ、僕は突撃し杖を振るう。


「ワタシの婚約者に汚い手で触らないで頂きましょうか、ヒューマン(劣等種)君!」

「手じゃなくて杖だけどね!」


 天使達の介入を抑えても、側に居る『白の騎士団』副団長が僕の一撃を見過ごさず、きっちり盾で防ぐ。


「さすがにこんなあからさまな奇襲は防がれるか――って、おぉ!?」


 独白していると、僕は大きく吹き飛ばされる。

 咄嗟に空中でバランスを取り、床に手を突きザリザリと焦げ臭い匂いを作りながら、床を大きく滑った。

 無事、足で着地できた後、予想外の反撃の考察をする。


「シールドバッシュ? でも予備動作がゼロで、動いた様子もなかったのに。感触的にも魔術攻撃じゃなかったし……」

「驚くのも無理はありませんね。何せ貴方自身の攻撃がそのまま自身に跳ね返ってきたのですから」


 ミカエルが得意気に語る。

 彼はニヤリと相手を馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、手にした盾を自慢気に動かす。


「宰相殿から託された幻想級(ファンタズマ・クラス)、『祝福と天罰』! 愚か者が天に逆らった罰はそのまま自分の身に降りかかるのです。そして――」


 盾が光り、輝く。

 同時にミカエル、サーシャ、天使2名も光に包まれた。


「この盾を所持する者が、味方だと認識する相手のステータスを底上げすることも出来るのですよ。先程以上に強くなった天使達相手に、ヒューマン(劣等種)君がどこまで耐えられるかな?」

「ふふふ! うふふふふ! さらに天使達はあたしが停止を求めるまで動き続け、傷だって癒されるわ! 頑張って倒しても、再度すぐに召喚も可能だし!」


 倒してもクールタイム無しで召喚可能というのがブラフでなければ、想定以上に『天使のオカリナ』の力が強い。

 さすが幻想級(ファンタズマ・クラス)と言うべきか。


「そして召喚主のあたしを倒そうとしても、ミカエル様が護ってくださる! かといってミカエル様に手を出そうとすれば『祝福と天罰』の盾で自分の攻撃が自分に返ってくる! ねぇどんな気持ち!? クソ雑魚ヒューマン(劣等種)の癖にあたし達上位種であるエルフ種に刃向かって手も足も出ない状況に追い込まれてどんな気持ちかしら! 教えてよぉぉおぉッ、ねぇ! クソ雑魚ナメクジなゴミラーイートーくーん!」


 サーシャがミカエルの陰に隠れて全力で煽ってくる。

 婚約者のはしゃぎようにミカエルは微苦笑を漏らし、肩をすくめた。


「サーシャ殿の言ではないけど、ヒューマン(劣等種)である君はもっと自分の立場を弁えるべきでしたね。君のような低脳で劣悪なヒューマン(劣等種)君には理解できないかもしれませんが、『勝負は始まる前から終わっている』ものなんです。君がワタシ達に勝負を挑んだ時点で負けていたんですよ」


 サーシャだけではなく、婚約者ミカエルもまるですでに勝負が決まったような戯言を漏らす。

 彼は友好的な――見下した笑みで続ける。


「この攻防一体、鉄壁の布陣を崩すのはゴミ虫のヒューマン(劣等種)では不可能です。君の発言を借りるなら『今すぐ降参して首を差し出すなら楽に殺して』あげますよ? 正直、ヒューマン(劣等種)の汚い死に際の声、死体をそちらのお嬢さん達に見聞きさせるのは忍びないので」

「? なぜそこでアオユキ、エリー達が出てくるんだ?」


 流石に意味が分からず、僕は問いかけてしまう。

 ミカエルはめんどくさそうに溜息を漏らす。


「ヤレヤレ、これだから知能指数が低い猿と話すのは疲れるんですよね……。いいですか。彼女達は君に騙されていただけ、そんな彼女達を救うのは『白の騎士団』副団長として当然のことです。そんなことも分からないなんて、本当にヒューマン(劣等種)の相手は疲れますね」


 説明になっていない説明を返された。

 僕はさらに意味が分からず『?』と首を傾げてしまう。

 一方、アオユキとエリーは先程からサーシャ達2人の発言に憤激し続けている。僕が『絶対に手出しをするな』と釘を刺しているから、殺意を抑えているだけだ。そんな彼女達が大人しくミカエル達に従うなどありえない。

 彼の自信はいったいどこから来るのだろう?


 さらにミカエルは僕自身の地雷を踏み抜く。


「この絶望的状況を崩すことは不可能です。大人しく首を差し出すのが賢明ですよ?」

「絶、望……」


 この程度が『絶望的』だって?

 あまりに馬鹿馬鹿しい発言に僕は心の底から笑い声をあげてしまう。


「ははは! ははははははは! あはははははははははははっ! あハハハハハハハハハッッッ!」


 あまりにあまりに! 可笑しくて僕はお腹を押さえて笑ってしまう。

 だってこんなのが『絶望』だなんて!

 笑わずにいられるだろうか。

 本当の絶望も知らない甘ちゃんどもが、したり顔で『絶望』などと言っているのだ!

 これを笑わずに何を笑えて言うのだろうか!


「き、気色悪いわね……」

「……絶体絶命に追い込まれて自暴自棄になる。よくあることですよ」


 サーシャは心底醜いモノを見るような目で見下してくる。

 ミカエルは戦闘で何度も目にした光景なのだろう。逆に無感動に突き放していた。


 一通り笑い終えると、2人に向き直る。


 メラではないが、耳まで裂けそうなほどの笑顔を作りながら。


「2人とも、心底楽しく笑わせてくれたお礼だ。本当の絶望を教えてあげよう――」


 僕は手にした杖を右手だけで握る。


「ニャッ!」

「ら、ライト神様!」


 アオユキ、エリーは僕が何をするのか気付いたのだろう。

 思わず声を漏らす。


魂魄封絶(こんぱくふうぜつ)第一限定解除! コード、『9999』、フォーナイン! 『神葬(しんそう)グングニール』!」


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

37話を12時に、38話を17時にアップする予定です!(本話は37話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
なに~!超絶的必殺技が発動しそうな詠唱 バトル大好き少年垂涎のセリフ~! 期待しかない!
[良い点] まぁ最終的にはスカッとさせてくれるところかな。 [気になる点] いやマジで胸糞悪い。 でも読み手が止まらないな…なんでだろ。 [一言] 主のせいで他の作品の亜人種にイメージ引きずりそうだわ…
[一言] 敵方のエルフさん、自分の能力喋りすぎ問題
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