34話 約3年振りの再会
今日は33話を昼12時、34話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は34話)。
「大丈夫、エリー? 随分、魔力を持っていかれたようだけど……」
「だ、大丈夫ですわ。まだ魔力には余裕がありますの。ただナズナさんが大暴れしたせいで急激に魔力を持っていかれたのが足腰にきただけで……魔力もそのうち自然回復しますわ」
エリーが健気な笑みを浮かべる。
それ以上の心配は無粋と考えて、僕は話題を変える。
「3階の戦闘……ナズナの戦いは予想通りとはいえ、こんなすぐに終わるとはね……」
「相手の予想レベルが3000前後ですから……。ナズナさんの相手にはやはりなりませんでしたわね。エルフ女王国特有の未知の技術で何かあるかとも考えていましたが……」
「『静かなるハーディー』って呼ばれるぐらいだから、僕も何かしらあるかと思っていたけど……。結局、追加効果は『レベルの一時的底上げ』だけだったのかな? 正直ナズナ相手に3000も4000も大して変わらないと思うんだけど……。まあ、とりあえず身柄は押さえたんでしょ? ならナズナに関しては作戦成功ってことで」
「わたくしとしては、今回の一件でもう少しナズナさんが手加減の大切さを覚えて頂けると嬉しいのですが……」
「にゃー」
『巨塔』4階最上階、王座の間。
僕は玉座に座りながら、各階の情報を耳にする。
『白の騎士団』とサーシャは既に『巨塔』1階に足を踏み入れ、エリー特製の転移トラップで分断。
3階のナズナvs『白の騎士団』団長戦は既に決着が付き、他1階、2階の戦いももうすぐ終わりそうだとか。
3階のナズナ戦はむしろエリーのお説教の方が長かったぐらいだ。
僕は玉座に座り、左側にエリー、右側にアオユキが立つ。
アオユキは『巨塔』内外を隠密特化のモンスターの視線とリンクさせて監視していた。
エリーは『巨塔』内部に入った『白の騎士団』とサーシャ達を外部に逃がさない&死なないように、建物を含めた修復のための術式を展開。
お陰で『巨塔』内部で多少無茶をしても、彼女の魔力を代償に死に辛くなり、建物を壊しても修復されたり、他にも色々な要素が盛り込まれている。
だが結果としてナズナがすぐに大暴れ、左隣に立つエリーが、『あふぁぁっ……ッ』と声を出し産まれたての子鹿のように足をプルプルさせてた時は何事かと思ったものだ。
本人曰く『大量に魔力を抜かれると覚悟すれば耐えられますが、不意打ちだと体が反応してしまうのですわ』とのことだ。
来ると分かっていれば、背後から大声をかけられても驚かない。
不意打ちの場合、驚いて声をあげてしまうようなものだろうか?
エリーが産まれたての子鹿のように足をプルプルさせつつ耐えた後、断りを入れてから『SR、念話』でナズナに釘刺し。
その後、すぐ再び『あふぁ……』という声を漏らす。
すぐさま再び断りを入れて2度目の『SR、念話』でお説教を開始したのだ。
ナズナには同情するが、フォロー出来ないため微苦笑してエリーの好きにさせた。
エリーは『はぁ……』と溜息を漏らしつつ、頭が痛そうに片手でこめかみを押さえる。
「ナズナさんはお強いんですが、元々の性格もあるのでしょうが、わたくし達の中で一番最後に出たSURカードのせいか、末っ子気質なところがあるのですわよね。皆さんもそのせいかナズナさんには妙に甘いというか、甘やかしている節があるのですわ。その辺りどうにかしないとナズナさん本人のためにもよろしくないですの」
彼女の愚痴は納得できた。
ナズナは単純に強い。
魔術に対する抵抗値がやや低いが、それ以外は軒並み高い。
例えばアオユキとエリーが手を組んでナズナと勝負をしたとしても、勝敗がどちらにつくかが分からないレベルだ。
にもかかわらず僕の恩恵『無限ガチャ』から排出されたSURカードで一番最後に排出されたせいか、本人の性格もあるがエリーの指摘通り『末っ子気質』な部分がある。皆も『ナズナだし……』と甘やかしている空気感があった。
『奈落』地下妖精メイド達もナズナには甘い。
規律にうるさい真面目なアイスヒートですらナズナには甘い気がする。
もちろん僕自身もだ。
結果、今回の一戦で手加減が利かずオーバーキルを連発。
エリーに負担を掛けてしまった。
ふと、メイ達を姉妹として置き換え連想してしまう。
(メイがしっかり者の長女で、アオユキが要領の良い次女、エリーが優秀だけど苦労性の三女で、ナズナが元気な末っ子って感じかな?)
その連想は妙に嵌った。
思わず1人ニヤニヤと笑ってしまう。
「にゃ~」
「ん? ……ああ、そろそろお客様がいらっしゃるようだね」
アオユキの言葉に、意識が現実へと戻る。
僕の気配察知が、『お客様』――サーシャと彼女の婚約者である『白の騎士団』副団長ミカエルが近くまで来たことを感知する。
2人は転移トラップで仲間達と分断されてから、以後二度とトラップにかからないように警戒しつつ慎重に進んでいるため、移動に時間がかかっていたのだ。
愚痴をこぼしていたエリーも気付いており、態度を改めつつ謝罪を口にする。
「ですわね。申し訳ございません。大切な作戦中に愚痴ってしまって……」
「いやいや、むしろ有意義な時間だったよ。だがここからは僕達にとって大切な時間だ。皆、こちらに集中しようか」
「はいですわ!」
「うにゃ!」
「それとエリー、手筈通り彼女達が部屋に入って扉が閉まったら、ナズナ達にいつでも意識を失った『白の騎士団』団員達を移動できるよう準備するように、通達を頼む」
「了解ですわ!」
僕は指示を出しつつ、『SSR、道化師の仮面』を被り直し、黒いフード付きマント、杖を改めて握り直す。
もうすぐ、後少しで彼女達が到着する。
仮面の下で僕は笑ってしまう。
ようやく復讐できる喜びでどうしても口元が笑みを作ってしまうのだ。
扉が音もなく開く。
金髪の長い髪、尖ったエルフ種特有の耳――約3年ぶりに僕はライトとしてサーシャと顔を合わせたのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
また今日は33話を12時に、34話を17時にアップしております!(本話は34話です)
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