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28話 1階での戦い3

今日は27話を昼12時、28話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は28話)。

「なんなんだよ! なんなんだよ、あの怪物達は!? レベル7777とか! ありえないよ! ドラゴン退治じゃなかったの!」

「わ、分かんないよ! と、とにかく逃げて、このことを本国に伝えないと! ドラゴン以上の怪物が2匹も居るって!」

「そ、そうだね! 逃げて本国に伝えないとね! だからこれは敵前逃亡とかじゃないよね!? 幸いレベルはあっちが上のようだけどボク達のスピードには付いて来られないみたいだしね!」

「このまま出口まで逃げ切ろう!」


 ニアとキアはアイスヒート&メラから逃げるため、全速力で『巨塔内部』を駆ける。

 どこに自分達が入って来た出入口があるかは分からないが、まず壁際まで移動。

 そこから壁沿いに移動すれば、いつか出口が見つかると考えているのだ。


 いつ自分の手で首を引き千切ったり、『ウインドカッター』を正面から受けてもそよ風程度にも感じない化け物達が追いかけて来ないか恐怖に怯えながら、2人は駆ける。

 振り返り背後を確認するが追ってくる気配は無い。


『このまま出口まで逃げ切れる』と2人は淡い期待に縋り付きながら、がむしゃらに走った。

 実際、アイスヒートとメラがスピードで2人に追い付くのは容易いし、既に出口は閉じていて、彼ら程度の能力では出られないのを2人は知らない。


「ニア、壁だよ!」

「キア、このまま壁沿いに移動して出口を探そう!」

「了解! ……って? ちょっと待ってニア。何か変だ……」


 最初にキアが気付く。

 ニアも彼の指摘に、最初は訝しんだが直ぐに異変に気付いた。


「な、なんだか空気が熱くなっている?」


 最初はアイスヒート&メラに対する恐怖心から、全速力で逃げるため体を動かした暑さだと考えていたが――すぐに否定する。


 肌で感じる温度、空気がどんどん加速度的に熱くなっていた。

 最初は真夏の日差し程度だったが、すぐに直接火で炙られるような熱さ、熱波に変化する。

 温度の上昇に2人は冷や汗と一緒に脂汗を全身から流す。


「ふ、巫山戯るなよ! あの化け物ヒューマン(劣等種)共! 『巨塔』にマグマの源泉でも引き出したとでもいうのか!」

「ニア! 騒いでいる場合じゃないよ! このままじゃボク達は焼け死ぬ! すぐに防御態勢を取らないと!」


 ニアが理不尽を叫び、キアが諭している間にも加速度的に温度が上昇していく。

 既に常人なら呼吸するだけで喉が焼け死ぬレベルだ。

 2人がまだ耐えられているのはレベル1800前後の恩恵である。

 キアの言葉にニアも頷き、すぐさま防御態勢を取った。もう出口を探している場合ではない。


「「魔力よ、顕現し氷河を作り出し、我が敵、我が身を遮る壁となれ! アイスウォール!」」


 ニアとキアは声を重ね合わせて戦術級タクティックス・クラスの『アイスウォール』を詠唱する。

 詠唱後、2人の前に巨大な氷壁が姿を現し熱波から包み隠す。


 ニアキアは風魔術に特化しているエルフ種だ。

 初級の戦闘級(コンバット・クラス)なら詠唱破棄も可能だが、戦術級タクティックス・クラスにもなると流石に詠唱が必要となる。


 2人は肌を焼く熱波が『アイスウォール』に遮られ、ひんやりとした氷の内側に入ったことでようやく一息つくことが出来た――が、その時間は長くは続かない。


「に、ニア! 氷が! 『アイスウォール』がどんどん溶け出しているよ!」

「まだ温度が上昇しているってこと!? いったいあの化け物ヒューマン(劣等種)共は何をやっているんだよ!? 巫山戯るなよ!」

「ニア! 文句は後だ、とにかく『アイスウォール』を張り直さないと!」


 キアの指摘通り、2人の魔力が作り出した『アイスウォール』は熱で溶けていく――どころか、もう蒸発する勢いで消失していく。

『アイスウォール』の内側に居る筈なのに、熱さを感じるほどだ。


「「魔力よ、顕現し氷河を作り出し、我が敵、我が身を遮る壁となれ! アイスウォール!」」


 再びニアキアは『アイスウォール』を詠唱するが、1分かからず再び熱さを感じてしまう。


「嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! なんでボク達がこんな目に遭わないといけないんだよ!」

「キア! 速く、詠唱を! 火が、熱がすぐそこまで来ているから!」


 キアの悲鳴に、ニアが落ち着かせて詠唱をうながす。


「「魔力よ、顕現し氷河を作り出し、我が敵、我が身を遮る壁となれ――」


 必死にアイスウォールを唱える。

 次は数十秒も持たない。


「「魔力よ、顕現し氷河を作り出し、我が敵――」」

「「魔力よ、顕現し氷河を――」」

「「魔力よ――」」


 最後はもう焼け石に水。

 気付けば2人とも魔力を失いその身を地獄のような業火によって頭から爪先まで焼け包まれる。

『巨塔』1階。広い空間が全て炎で埋め尽くされた。




 ☆ ☆ ☆




「ケケケケケ! 居たぞ、ここだ、ここ。一応まだ生きているようだな」


 メラが未だ熱が篭もる『巨塔』1階を歩き、頭から爪先まで黒こげのニアキア兄弟を発見する。

 彼女の背後から、右目、右髪のツインテールを包む赤く燃える炎を揺らしながらアイスヒートが続く。

 彼女は失敗を犯した者のようにぎこちない態度で倒れているニアキア兄弟を覗き見る。


「こ、これちゃんと生きているわよね? 死んでいないわよね?」

「ケケケケケケ! 安心しろって、ちゃんと息はあるから。……とはいえいくらなんでもやり過ぎじゃねぇ?」


 メラが呆れながら、アイスヒートへ視線を向ける。


 ニアキア兄弟の身に着けている鎧、衣服は当然燃え尽き。髪、皮膚、手足など火傷していない所など一つもなかった。

 まさに全身大火傷で生きているのが不思議なレベルだ。

 微かに胸が動き、呼吸している、生きているのを確認することが出来る。


「ケケケケケ! エリー様のダンジョンコアを研究して得た技術と知識、魔力で術式を組み上げたお陰でなんとか生きている状態だな。もしその術式がなかったら……情報を引き出す前に死亡確定? 大失態ってレベルじゃなかったな」

「あああああああ! まさかこれほど弱いなんて! 想像の下を行きすぎでしょう!」


 メラの指摘通り、エリーが独自に作り上げた術式のお陰でニアキア兄弟は生きているに過ぎない。

 死にたくても『死ねない』のだ。

 また『巨塔』1階も炎に包まれたが、崩壊せず多少焦げ付いているだけなのもこの術式のお陰だ。

 正確には一定以上の力が加わると一時的に壊れるが、エリーの魔力で修復していくのだ。焦げている部分も彼女の魔力によって徐々に修復されていき、最初の白さを取り戻していく。


 規則にうるさく、生真面目なアイスヒートはニアキア兄弟の弱さに頭を抱える。


「第一、イフリートを右手に宿して、ちょっと気合を入れただけでこんなに重傷になるとか予想外にもほどがあるでしょう! 左手どころかまともな攻撃すらしてないのに……エリー様はどうして『実験しろ』なんて仰ったのよ! こんなの弱すぎて『実験』以前の問題よ!」


 アイスヒート的に例えると……『空気を肺一杯に吸い込み、気合を入れて吐き出したら2人が死亡しかけた』というレベルの話だ。

 攻撃すらせず、気合を入れただけでこれだ。


 荒ぶるアイスヒートにメラが突っ込む。


「ケケケ! エリー様は実験しろって話だったが、アタシ的にはしておいて正解だと思うぞ。もし自分達の力の強さを知らずに『巨塔』内部ではなく、地上でアイスヒートの力を使っていたら……」

「うっ……」


 その光景を想像して、頭から水をぶっかけられたようにアイスヒートが落ち着く。

 友人が冷静さを取り戻したのを確認してから、メラがニアキア兄弟に向き直る。


「ケケケケケ! 地上で力を振るう際はアタシも気を付けないといけないな。さて、次はご主人さまの言いつけを守らないと」


 メラは大きな背丈を腰から折り曲げて、床に倒れるニアキア兄弟に声をかけた。

 赤い目が光り、ギザギザの歯、巨大な口を開き語りかける。


「アタシ達が敬愛し、絶対的忠誠を捧げる尊きご主人さま曰く、『人種(ヒューマン)を拷問にかけて殺すのが趣味らしい』な? そんなオマエ達にご主人さまは大層ご立腹なんだ」

「た、け……」

「……す、て……」


 全身火傷を負い、一部炭化しているニアキアは『たすけて』と微かな声音を漏らす。

 メラは気にせず、話を続ける。


「『情報を引き出すためすぐに殺すわけにはいかないが、今度は自分達も同じ目に遭わせて、心を折ってやれ』とのご命令だ。だから今からオマエ達の心を折らせてもらうぞ? アタシの中でもとっておきを使ってやるからな。滅多に表に出さないからありがたく思えよ?」


 メラの長いスカートの下からタコ、イカのような足、ムカデ、触手、見ているだけで理性がガリガリと削れる長い『ナニカ』などが溢れ出す。

 あのアイスヒートすら嫌そうに視線を背ける。

 それらが2人の体へ集まり出す。


 ニアキアが涙を零し、力を振り絞って助けを請う。


「た、け、て……」

「すけて……」

「ケケケケケ! 助ける訳ないだろ? 『助けて』と言った人種に対して、お前達は何をしてきた? 笑いながら許しを願う人達を、遊び半分で殺し続けてきたんだろ? ……ご主人様の命令だ。『お前達は絶対に許されない』。ご主人様のご命令通り今までの罪を懺悔し、苦しんで、狂しんで、情報を引き出すまでの間、逃れられないと知りながらご主人さまの許しを請い続けていればいいんだよ」


 2人に色々なモノ、『ナニカ』が絡み付きズルズルとメラの長いスカート下に引きずり込まれて行く。

 ニアキアは最後の気力を振り絞り叫ぶ。


「「嫌だ! イヤだ! いやだぁぁぁッ! 助けて、助けて、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえがいgぁいlががぁっぁぁあ!」」

「ケケケケケケケケケケケケケケケケケ!」


 薄暗い『巨塔』1階の戦闘は狂った悲鳴と笑い声によって終幕を迎えた。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


メラ    ――ニアキア兄弟と戦闘、トラウマ、心を折る役目を務める。出番多く大活躍。

アイスヒート――ちょっと本気出したらニアキア兄弟が虫の息。

メラは大活躍したのですが、アイスヒートは……。

メラは能力的にも、性格的にも非常に動かしやすいのが出番が多い原因だったのかな?

まぁレベル差があるからしかたないよね!

それに今後、アイスヒート活躍話があるかもしれないし……!


ちなみに明日はスズvsシャープハット戦になります!

さらに明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

また今日は27話を12時に、28話を17時にアップしております!(本話は28話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
氷炎将軍フレイザードを思い出したが、ナイスアレンジ!フレイザードと違ってキャラの氷の部分が際立ってるけど、微妙にドジなのはフレイザードそっくり。アイスヒート何気に可愛い❤
[一言] 外道双子エルフの最後が面白かったです。メラとアイスヒートの様なキャラクター達が外道達と比べたら一千倍まともに見えるのは私だけでしょうか?
[一言] アイスヒートが最新話で久しぶりに活躍を見せたので戻ってきました。 本当に長かったなぁ……(´;ω;`)
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