23話 作戦会議
今日は23話を昼12時、24話を17時にアップする予定です(本話は23話)。
エルフ女王国宮殿会議室の話し合いを終えた後、すぐに待機している『白の騎士団』が作戦会議のため集められる。
集められていると言っても、『白の騎士団』メンバーのみが住める特別宿舎で待機していたため、すぐに宿舎会議室に集まることが出来た。
テーブルは円卓のため上座、下座は無くおのおの好きな席へと腰を下ろす。
メンバーは全員で5人だ。
団長、ハーディー。
副団長、ミカエル。
射撃手、シャープハット。
遊撃手、ニア、キア。
以上だ。
全員が着席したのを確認したハーディーが重々しく口を開く。
「皆も知っている通り、首都近郊の原生森林奥地に『謎の巨塔』が出現した。冒険者達の調査によってレッドドラゴン成体が棲み着いているのが判明。よって我々『白の騎士団』がドラゴン討伐の勅命を受けた」
「ちょ、団長、レッドドラゴンってマジっすか? 調査したのは冒険者達ですよね。あいつらの目や耳なんて信用できるんですか?」
「情報の確度は高い。一つはヒューマンからの報告だが、もう一つは副団長の婚約者殿の報告だからだ」
シャープハットの疑問にハーディーが淡々と答える。
彼の問いに他3名の視線が副団長ミカエルに向けられる。
ミカエルは一切動揺せず、ニコニコ爽やかな笑みを浮かべ、
「サーシャ殿はワタシには勿体ない婚約者ですよ」
何時も通りの変わらぬ態度で返答した。
(ニア、どう思う?)
(キア、これは裏で副団長が色々動いているねー。怖いな、大人って)
双子のニアキア兄弟が視線だけで会話をする。
シャープハットも言葉にはしないが『権力闘争を現場に持ち込まないでほしいっすよ』と渋い顔をした。
ハーディーは空気の変化など気にせず、用件だけを淡々と告げていく。
目標となるレッドドラゴンの予想レベルは1000~2000。
他注意すべきモンスター『尻尾が蛇で巨大な4足獣』の予想レベルは1000前後。
準団員は予備戦力として首都に残す。むしろ連れていっても『さぶますたー』として優秀である自分達の足を引っ張るだけのため。
他にも細々とした説明をおこなう。
最後にハーディーはやや不機嫌そうに口を開く。
「……宰相殿の後押しで、副団長の婚約者であるサーシャ殿を斥候兼道案内役として連れていくことが決定した」
「団長……ちょっと待ってくださいっす。それって自分ッチじゃ斥候に不安があるってことっすか?」
『白の騎士団』斥候役を務めるシャープハットが眉根を寄せた。
普段はチャラチャラと調子の良い台詞、態度を取るが、自分の専門領域に手を出されたため不満を口にしたのだ。
これにハーディーが答えるより先に、副団長ミカエルが手を上げ視線を集める。
「シャープハット、もちろん君の斥候としての実力を疑っている訳じゃないよ。これはワタシの婚約者であるサーシャ殿からの提案だ。彼女は一度『巨塔』まで到達して、情報を持ち帰った張本人。モンスターの縄張りをすり抜け安全に『巨塔』へ到着するルートを熟知している」
ミカエルはそう言って皆を見回し、言葉を続ける。
「さらに言えば彼女はレベル500もあり、自身の身を護ることぐらいは出来る。だから少しでもワタシ達の力を消耗させず『巨塔』へ到達して欲しいと伯爵家を通して、宰相殿に願い出たのだ。……決して君を軽んじた訳ではないと理解して欲しい」
当然、ミカエル、宰相、伯爵家、サーシャ4つの思惑があってのことだ。
とはいえ宰相からの通達を既に団長であるハーディーが受け入れているのだ。1団員でしかないシャープハットがこれ以上ごねても意見は覆ることはない。
こうなった以上シャープハットにとって選択肢は『引き下がる』しかなかったが、嫌味の一つくらい飛ばすのは許されるだろうと彼は考える。
「上からの指示なら自分ッチも引き下がりまっすわ。けど、準団員を下げてそいつらよりレベルが低い奴を連れていって大丈夫なんっすか? 自分の身は自分で守れるって話っすけど、『やっぱり駄目でしたぁ~』なんて言われて結局足を引っ張られたら、困るのは現場の自分ッチ達っすよ」
「安心してほしい、いざという時は婚約者であるワタシが彼女を護るよ。それともシャープハットは、信用の置けないもう一組のヒューマン冒険者達に斥候役を依頼するかい?」
ミカエルの切り返しにシャープハットは顔を顰める。
ヒューマン冒険者を雇うぐらいなら、まだ陰謀&横槍まみれだがエルフ種冒険者の方が信用に値した。
「それはありえないよ、ねぇニア」
「だね、キア。ヒューマン冒険者の後を付いていくぐらいなら斥候役なんていないほうがマシだよ」
さらに一番年若いニアキア兄弟が心底嫌そうに声をあげる。
結局、サーシャを斥候役に受け入れることが決定した。
シャープハットは苦々しい顔をしつつも、頭を切り換える。
「……斥候役の件は了解したっす。レッドドラゴン退治も分かったっすけど、レベル1000前後の『尻尾が蛇で巨大な4足獣』も自分ッチ達が相手をするっすか?」
「可能性はゼロではない。一応、陽動作戦を立てるつもりだ」
悪くなった空気などハーディーは一向に気にせず、シャープハットの質問に淡々と答える。
人種冒険者、サーシャからもたらされた情報によると『尻尾が蛇で巨大な4足獣』は5、6匹。
モンスターが最も目撃されている場所に冒険者達を集めて、騒ぎを起こす。
この作戦の先導役は、もう一組『謎の巨塔』に到達した人種冒険者達が務めることになっている。
そして、『尻尾が蛇で巨大な4足獣』の注目を集めている隙に『巨塔』内部に侵入してレッドドラゴンを討伐――以上が今回の大雑把な作戦だ。
「典型的な陽動と奇襲っすか」
「典型的だからこそ効果が高い。それに――」
ハーディーはなぜか一拍おいて、皆の視線を自分に集める。
彼らしくない区切り方に、全員が首を傾げ目を向ける。
ハーディーは『ニヤリ』と悪人顔の笑みを浮かべつつ、
「危険な陽動役をヒューマン冒険者達が務めるというのが良い。あいつらはいくら殺しても畑から採れるからな」
一瞬、場が静まりかえる。
ミカエルすら眼鏡越しに大きく目を見開く。
最初に笑い出したのはシャープハットだ。
「団長、いくらヒューマンでも畑からは採れないっすよ! 雑草じゃないんだから! はははははははは!」
「ニア、団長のジョークは微妙だね!」
「キア、ニアはそこそこだと思うよ!」
「ワタシもなかなか面白いジョークだと思いますよ」
空気が悪いままだと作戦に支障をきたす。
故に場の空気を変えるため、ハーディーは珍しくいつもは言わない『冗談のつもり』の台詞を口にしたのだ。
宮廷政治のせいで横槍を入れられたが、彼らにとって大事な作戦に変わりはない。
確実に成功させるためなら団長として工夫の一つもするということなのだろう。
内容はエルフ種エリート層らしい蔑視に満ちたものだったが……。
ハーディーは拗ねたように再びぶっきらぼうな表情に戻し話を続ける。
「世辞はいい。作戦の詳細について詰めていくぞ――」
こうして『白の騎士団』の会議は続き、『巨塔レッドドラゴン討伐作戦』の詳細が詰められていくのだった。
――彼らを何が待ち受けているのかも知らずに。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
次話でライト達も登場!
いよいよ巨塔まわりが熱くなってきます!
また今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
23話を12時に、24話を17時にアップする予定です!(本話は23話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




