19話 レベル7777
今日は19話を昼12時、20話を17時にアップする予定です(本話は19話)。
僕はエリーの作戦で不安になった点を尋ねる。
「エリーの立てた計画だから問題は無いと思うけど……ちゃんとサーシャとその婚約者、それに『白の騎士団』は『巨塔』に姿を現すの?」
「はい、必ず姿を現しますわ。そのための手は既に打ってありますから」
いくら利益を追求した作戦だとしても、サーシャとその婚約者である『白の騎士団』副団長、そして『白の騎士団』団員達が『巨塔』に姿を現さなければ意味が無い。
エリーなら上手くやってくれると思っているが、心配になって質問してみた。
彼女は笑顔ですぐさま答える。
「ライト神様が冒険者ギルドに提出する予定の、『巨塔』についての詳細書類。アオユキさんのテイマーとしての能力を駆使して頂き、サーシャにも似た内容の書類を提出させる予定ですわ」
「にゃー」
アオユキが『任せろ』と言いたげに声をあげる。
「今まで何の情報も得られなかったところに、人種冒険者とエルフ種冒険者、2つのチームから似通った内容の書類を提出されればエルフ女王国上層部もその情報を信頼するでしょう。わたくし達の手のひらで踊らされているとも知らずに」
そのエルフ女王国上層部に渡る情報が重要らしい。
「サーシャ達にも『巨塔内部にレッドドラゴンの成体が住み着いている』という情報を上げてもらうのですわ。ここはエルフ女王国からある程度距離はありますが、ドラゴンの移動距離を考えればほぼ目と鼻の先。為政者がアホでない限りはこの短距離に居るドラゴンを放置するなど絶対にありえませんわ。そうなったらドラゴンを使役する者やその他のモンスターが居る可能性も考慮に入れて、確実に仕留めるため最大戦力である『白の騎士団』を投入してきます」
例えるなら自宅の横に、いつ暴れだすか分からない強大なモンスターが住み着いたようなものだ。
冒険者ならばその場から逃げるか、モンスターを退治するか、追い払うかするだろう。
だが、国なら移動は不可能。
レッドドラゴンの成体が近くにいるのならばエリーの指摘通り、確実に仕留めるか、最低限追い払うためにも十中八九、最大戦力を投入するのが常道だ。
戦力を小出しにするなど愚の骨頂なのは貧農出身の僕でも分かる。
(サーシャに見せるためにわざわざドラゴンを巨塔1階に棲まわせていたのか……)
皆に殺気を向けられ、お腹を見せた巨塔1階のレッドドラゴンの姿を思い出す。
なぜドラゴンを召喚したのか疑問だったが、ちゃんと理由があった。
エリーが寂しくて、ペット代わりに召喚した訳ではなかったらしい。
「そしてライト神様のご協力のお陰で、サーシャに紙を渡すことが出来ましたわ。『巨塔で待つ』と。『巨塔』の情報を得た功績も含めて、あの卑しい女は自身の幸せ、安寧を得るため今度こそ確実にライト神様の首を狙ってくるでしょう。自身が知る最大戦力『白の騎士団』に便乗して……ッ」
巨塔4階王座の間に『ギリッ』と奥歯を噛みしめる歯ぎしり、サーシャに向けられた殺意が渦巻く。
僕のために怒ってくれる皆の姿が嬉しくてつい口元が緩む。
エリーの話が続く。
「またサーシャの婚約者である『白の騎士団』副団長ミカエルは、先日捕らえたエルフ種カイトの記憶を読んだ限り、上昇志向が強く、『白の騎士団』団長をライバル視しているのは明白。一部噂ではエルフ女王国宰相と手を結び、保守派最大の障害である団長を蹴落とすため日夜、陰で動いているとか……。そんな俗物が今回の一件を座視するとは考えられませんわ」
副団長ミカエルは今回の一件を婚約者であるサーシャと共に解決し、産まれてくる赤ん坊を次期女王にしたいと考えている。
宰相の後押しもあり、確実にサーシャと婚約者ミカエル2人揃って巨塔に顔を出すだろう――というのがエリーの見解である。
「斯くしてこの『巨塔』を舞台にエルフ女王国最強『白の騎士団』はこぞってご参加頂けるかと。わたくし達も現時点で動かせる最高戦力をご用意しましたから、お客様達は決してご不満なく、最後までご堪能頂けること請け合いですわ」
エリーは不敵かつどこか楽しげな笑みを零しつつ、右手を自身に、左手をそって広げて控える者達へと向ける。
『SUR、禁忌の魔女エリー レベル9999』
『SUR、天才モンスターテイマーアオユキ レベル9999』
『SUR、真祖ヴァンパイア騎士ナズナ レベル9999』
ここまではいつものメンツだ。
ゴールドとネムムは除き、今回参戦するのは残りの3名である。
『UR、両性具有ガンナー スズ レベル7777』
「…………」
『相方モらいと様ノ為ニ頑張ル、トノコトデスワ』
スズは膝を突いたまま『マスケット銃』のロックにぼそぼそと話しかけ、代弁してもらう。
『UR、キメラ メラ レベル7777』
「ケケケケケケケケケ! その『白の騎士団』の連中はエルフ女王国で一番強いんだろ? 少しぐらいは楽しめるといいんだけどな」
メラはエルフ種最強と謳われる騎士団と戦えることに楽しげな笑い声を上げる。
『UR、炎熱氷結のグラップラー アイスヒート レベル7777』
「身命に懸けてご主人様のため力を振るわせて頂きます!」
アイスヒートは、真剣な表情で断言した。
メイは『奈落』の内政を任せているため動けない。
『UR、神獣・始祖フェンリル レベル9000』などのモンスターはアオユキの管轄で彼女の戦力として数えているためこの場には含まれない。
エリーの言葉通り、この場には僕を含めて現時点で外で動かせる『奈落』の最高戦力が揃っている。
『奈落』最高戦力vsエルフ女王国最高戦力『白の騎士団』
あぁ、エリーの言葉通り、きっとエルフ種側には何の不満もなく、最後まで楽しんでもらえるだろう。
僕は満足そうに笑みを浮かべる。
「さすがだエリー。これなら確かにサーシャ達もきっと満足してくれるだろう」
「ライト神様に喜んで頂けて嬉しいですわ」
エリーが言葉通り心底嬉しそうに笑顔を作る。
僕の抱いていた不安は全て拭え、サーシャに対する復讐が出来る喜びだけが胸中に溢れたのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
19話を12時に、20話を17時にアップする予定です!(本話は19話です)
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