9話 にゃ~
今日は9話を昼12時、10話を17時にアップする予定です(本話は9話)。
エルフ女王国から『謎の巨塔』と呼ばれる『巨塔』は4つのパーツで構成されている。
4つとも円形で、土台部分が一番大きく、上に行くに連れて小さくなっていく。
建築素材は不明だがシミ一つないほど真っ白で、大理石のように表面がツルリとしている。
近くで見ると、『巨塔』というより『巨大なウェディングケーキ』の方が近い。
「にゃ~」
そんな巨塔の一段目の縁に『SUR、天才モンスターテイマーアオユキ レベル9999』が座り足をプラプラと揺らしていた。
アオユキは猫耳パーカーを着込み、特徴的な青い髪色をしている。
胸は小さく、手足も細い。
幼い顔立ちで、青い幻想的な髪色も合わさって非常に儚げな美少女だ。
現在は『天才モンスターテイマー』の名前の通り、テイムしたモンスターとリンクを繋ぎ五感を共有。
モンスターの指揮官のように行動の指示を飛ばし、『巨塔』に近付く敵冒険者達を排除していた。
そんな彼女の側に空中からふわりとスカートを広げて、舞い降りてきたエリーが着地する。
彼女は軽く広がった髪を整えると、目を瞑るアオユキに声をかける。
「首尾はどうですの?」
「にゃ~」
「……順調でいいのよね? ライト神様はこれでちゃんと会話できるのが凄いですわ」
エリーは軽く咳払いしてから話を続ける。
「アオユキさんの実力は疑っておりませんわ。ですが、地上で実際に多数の種を相手に多くのモンスターを操作して取捨選択する判断技能、疲労、細かい問題等、『奈落』原生林調査とはまた違った問題が出るでしょう。その問題点の洗い出しに良い機会ですから、存分に楽しんでくださいましね」
『それと』と彼女が付け足す。
「ライト神様のご命令で、人種が非道な振る舞いをされていたら救うように指示されておりますが、非道な振る舞いをする者達は種関係なく殺してもいいですわよ。その辺の判断はアオユキさんにお任せするとのことですわ」
「にゃ」
アオユキは目を閉じたまま、エリーの指示に返事をする。
エリーはアオユキを見つめつつ、胸中でライトの意図を深読みしていた。
(さすがライト神様ですわ。今回の一件をわたくし達の感情面、善悪を測る試金石にしていらっしゃるなんて! アオユキさんは理解しているでしょうが、他の者達は理解しているのかしら? 特に森を回って人種を保護させている冒険者達。あの変な髪型にこだわるモヒカン達はライト神様のカードから召喚された手前裏切りはほぼ気にしなくてもいいですが、善悪の判断を間違えて今回の計画に致命的なミスを働く可能性もゼロではありませんわ。そうなる前に釘を刺しておくべきか? けれど下手に釘を刺してライト神様の意図を損なってしまったら……不興を買いそうですわね。ならここは大人しく見守っておくのがベストかしら?)
『どう致しましょう』とエリーが思考を高速回転させていると、側に居るアオユキが小さく毒を吐く。
「――気にする必要はない。主はその点も考慮している。アオユキ達が神たるあのお方の考えを推し量る時点で不敬だ」
アオユキの指摘はライトの意図を汲み、最大限の結果を出そうと奮起していたエリーに水を差す。
当然、彼女は面白くなく『むっ』と表情を硬くした。
「そうかしら。その神たる頭脳に少しでも近づき、あのお方を理解し、側に居て支え、子を成すことこそが女性として、忠誠を捧げる者としての勤めとは考えませんの?」
「――無い。アオユキ達は主が望むままの存在であればいい。主のために生きて、戦って、癒して、求められて、傅いて、愛して、恋して、寄り添って、鉾となり、盾となって、殺して、殺されて、燃えて、燃え尽きて、灰になってもお役に立つことだけを考えればいい。それ以外はアオユキ達に不必要で、不純物だ」
アオユキの珍しい長文台詞。
『ライトが望むならどんなことでもする』と言いたいらしい。
現在、ライトからはアオユキの見た目から疑似妹、癒しを求められている。だから妹、ペット枠として振る舞っているようだ。
この回答にエリーは不快そうに眉根を寄せる。
「……だからペット枠ですの? 理解できませんわ」
「――理解できないのはお互い様。主の前でメイと争っている時点で、殺意を抑えられないよ。主にご迷惑をかけるなら殺す」
「あらあら面白くないジョークですわね。アオユキさんがわたくしに勝てるとでも?」
「――試せば分かること。ついでにアオユキ達が死亡した場合、どうなるのか丁度良い実験にもなる」
アオユキがパーカーで目を隠し、側に居るエリーと睨み合う。
遠くで鳥達が飛び立つ。
2人の間にピリピリとした空気が作り出された。
強さのランキングで言うと1位がナズナ、2位がエリー、3位がアオユキで、4位がメイとなる。
1位のナズナは単純に強い。
4位のメイは万能型で、何でも出来るが決定打に欠けるのだ。
エリーは広範囲型。
アオユキもモンスターをテイムし、同時操作による広範囲タイプに分類されるが、『破壊力』、『殲滅力』という点で『禁忌の魔女』エリーにどうしても一歩劣ってしまう。
とはいえどちらもLV9999で、2位、3位だ。
『エリーがアオユキに楽に勝利できる』と言う訳ではない。
「「…………」」
互いに睨み合う。
数秒、1分近く経っただろうか。
「……にゃ」
アオユキがエリーから視線を外し、遠くの森へと向ける。
どうやら感覚をリンクさせているモンスターに指示を求められているようだ。
エリーも息を吐き出し、髪を整える振りをしつつ浮かんだ冷や汗を拭った。
「……これ以上、お仕事の邪魔をしてはいけませんわね。ですがアオユキさんの本音が聞けてなかなか有意義な時間でしたわ。機会があればこうして胸襟を開いた話し合う場を設けるのも一興ですわね」
「にゃー」
アオユキは再び目を閉じ興味があるのか、無いのか分かり辛い返事をする。
エリーもそれ以上の追及は諦めて、再び巨塔最上階へ向けて、浮かび上がったのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
無限ガチャの初レビューを頂きました!
ありがとうございます!
これからも頑張って書いていくので、是非応援のほどよろしくお願い致します。
ちなみに今日も2話を連続でアップする予定です。
今日は9話を12時に、10話を17時にアップしております!(本話は9話です)
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