5話 白の騎士団1
今日は5話を昼12時、6話を17時にアップする予定です(本話は5話)。
『エルフ女王国、最強の騎士団は?』とエルフ種に尋ねれば100人中100人が『白の騎士団』と答える。
当然、エルフ女王国には他騎士団が存在するが、実際『白の騎士団』の実力は突出していた。
『白の騎士団』正規団員5人と、残りのエルフ女王国騎士団の戦力が同等か、それ以上と噂されている程だ。
故にエルフ女王国において圧倒的に最強、と断言されても問題は無いだろう。
そんな『白の騎士団』正規団員5人中4人が、与えられた特別宿舎の庭で集まりのんびりとお茶を楽しんでいた。
「…………」
金髪を短く刈り込み歴戦の強者らしい空気を纏った『白の騎士団』団長ハーディーが静かにお茶を飲む。
身長は190cmを超え、ガッチリとした体躯を誇る。エルフ種だけあり顔立ちは美男子だが、静かな威圧感、雰囲気を持っている。完全に堅気の空気ではないため女性は最初、ときめくより気後れを抱くだろう。
剛健なイメージを抱かせる団長とは正反対に、同席している射手担当のシャープハットは膝に人種女性を乗せてイチャイチャしていた。
「ソーシャちゃんのおっぱいマジで最高っす~」
「も、もう昼間からおいたは駄目ですよ、シャープハット様」
シャープハットは髪を長く伸ばしており、一部結んだりしている。身長も180cmを超えるほど高い。見た目通り女性好きで、言動もチャラチャラして軽薄な印象を受ける。
しかしエルフ種の中でも上位に食い込むほど整った顔をしているため、軽薄な態度も様になっていた。
本来、これほどの美貌を持つ男に好意的な態度でかまわれたら、女性は悪い気にはならないはずだが……。
ソーシャと名を呼ばれた女性の顔色は悪かった。
彼女の注意を受けつつも、シャープハットは胸や太股を撫で回し感触を楽しみつつ目の前で静かにお茶を飲む団長に話題を振る。
「そういえば聞きましたか団長? 宝剣『グランディウス』を持ち出した『自称英雄馬鹿』のカイトが、ドワーフのダンジョンで『冒険者殺し』をしたらしいっすよ」
「…………」
「むごむごむごぉ!」
団長ハーディーが答えるより先に、木に縛られた人種男性奴隷の悲鳴が話題を遮った。その奴隷を的に、騎士団で一番若いエルフ種ニア、キア双子兄弟がナイフを投げ合っているのだ。
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「ニア、見て見て。足に当たったよ」
「キア、見て見て、ニアは耳を飛ばしたよ」
人種奴隷は口元を縛られているため、体を必死に動かし『もごもご』とくぐもった悲鳴を漏らす。
その様子を心底楽しげにニア、キア双子の兄弟が腹を抱えて笑う。
遊撃担当でまだ顔に幼さが残っている美少年達である。騎士団員というわりに身長や筋肉もまだそれほどあるわけではない。年下が好きな女性からすれば外見だけは非常にいい容姿をしているだろう。
性格は無邪気で明るいが、嗜虐心も非常に高い。
その証拠にわざわざ2人はお金を払って人種男性奴隷を買って、木に縛り付けて的当てゲームをしているのだ。
シャープハットの膝に乗る女性ソーシャの顔色が悪いのはこれが理由だ。人種男性奴隷が彼女に『もごもご!』と助けを求めるが、ソーシャに出来ることなどなにも無い。
ただ黙って視線を逸らすことしか出来なかった。
シャープハットは団長からの返事が無いのを気にせず話を続ける。
「調査員曰く、カイトの奴、自分の成長限界を認められず、噂に縋ってレベルを上げるためヒューマンを中心に獣人、ドワーフ種の冒険者を殺して回っていたらしいっすわ。しかも、冒険者殺しの最中、ヒューマンの子供に足下を掬われて逃げ出したって話っすよ」
『噂に縋って』の噂とは?
とあるエルフ種騎士が成長限界に頭を悩ませていた。ある日、奴隷の人種が粗相をした際、斬り殺したら成長限界を突破しレベルがアップした――と言うものだ。
人種だけではなく、獣人種、竜人種、エルフ種、ドワーフ種、魔人種版でも似た話は多々存在する。
「…………」
「むごむごむごぉ! もごもご!」
「……そのせいで顔やエルフ種だってことがバレて似顔絵まで描かれたとか。盗み出した宝剣『グランディウス』の飛行能力で上手くダンジョン奥地に逃げたみたいっすけど、外に出る入口は一つだけ。似顔絵も描かれたんじゃダンジョンの外に逃げ出すのも難しいっすよ」
「「きゃはははは!」」
ニア、キアが人種男性奴隷の痛みに悶える姿に笑い声を上げる。
シャープハットはヘラヘラとした笑みの深度を深めつつ、話を続けた。
「上はこれ以上、顔に泥を塗られたくないから、自分ッチ達を投入するつもりっすよ。マジ勘弁して欲しいんですけど~。自分ッチは、ソーシャちゃんとこうしてラブラブチュッチュッしている方がいいっすのに~」
「も、もうシャープハット様ったら」
ソーシャは顔色を悪くしながらも、シャープハットが顔を寄せ額にキスをしたせいで頬を染める。
「ニア、次は反対の耳を狙おう!」
「キア、ならボクは目を狙おうかな」
「むごぉ! もごッ!」
「――いい加減殺せ! クソガキども五月蠅いだろうがよ!」
流石にシャープハットが切れて怒鳴った。
彼の叱責にニア、キアは頬を膨らませる。
「ニア達のお金で買ってきた奴隷で何をしようが勝手だろ!」
「キア達のお金で買ってきたんだから、いいじゃないか! 女の趣味が悪いシャープハットめ!」
「そうだそうだ! ヒューマンの女とイチャイチャするなんてブス専め!」
「ソーシャちゃんはブスじゃねぇ! 愛嬌があるって言うんっすよ!」
シャープハット、ニアキア兄弟、的当ての奴隷――複数の声が重なり合い庭に響く。
「……黙れ」
『白の騎士団』団長ハーディーが静かに、呟くように一言注意する。
『…………』
たった一言で空気はピンと糸を張りつめたように緊張感を孕む。
シャープハット、ニアキア兄弟だけではない。
痛みに藻掻いていた人種男性奴隷すら、ハーディーの凄味に威圧されて黙り込んでしまう。
彼はゆっくりと味わうようにお茶を口にして、ソーサーに戻す。
「人種が騒ぐと茶が不味くなる。ニア、キア、遊ぶなら自宅でやれ。そしていたぶるな。殺しの腕が鈍る。シャープハット」
「うっす」
シャープハットは膝に女性を座らせたまま自身も席から立つことなく腕を向けると、『ずどん』と音がして奴隷の首から上が潰れる。
首から血が溢れ出てる。
まるで即席に作られた噴水だ。
庭に濃い血の臭いが充満し、シャープハットの膝に座るソーシャの顔色はより悪いモノになってしまう。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
他作品ではありますが、無事に今日、『【連載版】廃嫡貴族のスキルマスター』が完結しました!
まだ未読の読者様は、これを機会に良かったらゴールデンウィークの暇潰しに、是非読んで頂ければ幸いです!
また今日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
今日は5話を12時に、6話を17時にアップしております!(本話は5話です)
では最後に――【明鏡からのお願い】
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