4話 ライトとエリー
今日は3話を昼12時、4話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は4話)。
「お帰りなさいませ、ライト神様」
「ただいま、エリー。無事、サーシャに紙を読ませることが出来たよ」
エルフ女王国首都から『SSR、転移』で一瞬で『奈落』地下に作った執務室へ移動した僕は、待ち構えていた『禁忌の魔女』エリーに笑顔で声を返す。
エリーは魔女帽子を押さえ、片手でスカートを掴み一礼する。
僕を裏切ったサーシャが、婚約者とお茶会をする日取りは把握済み。
その日に会わせて外出するルートに姿を一瞬だけ見せる。
僕に気付いて追ってきた彼女を路地裏まで誘導し、紙を貼り付けた後、『SSR、存在隠蔽』を解放。
僕の姿を見失ったサーシャが必死の形相で見回し、紙に気付き絶叫する姿は最高過ぎて、目の前で『SSR、存在隠蔽』を解除し、そのまま絶望を与えてぶち殺そうとするのを必死に我慢したほどだ。
僕の耳に残るサーシャの悲鳴、醜く歪んだ表情は今思い返しても、胸がすく。
自分でも分かるほど、満面の笑みを浮かべてしまう。
そんな僕をエリーが褒め称えてくる。
「ライト神様の目を通して、わたくしもあの裏切りエルフの姿を見物させて頂きましたが、引きつけるタイミング、紙を発見させる流れ、全てが完璧でしたわ。さすがライト神様! とくにサーシャに一瞬だけ姿を見せるタイミングと演技は、素晴らしいの一言ですわ!」
「馬車が丁度止まったからね。本当なら、進んでいる最中、通路を横切る程度だったけど。人種奴隷が荷物を崩してくれたからだけど……。鞭を打たれる姿は可哀相だったな……」
別に僕達がサーシャに一瞬だけ姿を見せるため、わざわざ荷物を崩したわけではない。
偶然である。
僕達はせいぜい邪魔が入らないように路地裏に手を入れたぐらいだ。
あの人種奴隷が、荷物を道ばたに崩し馬車が止まったお陰で、サーシャの視界に苦もなく一瞬だけ映ることが出来た。
本来なら彼女が乗る馬車の前、または横を通り過ぎるだけだったが、より完璧にサーシャを引っ張り出すことが出来たのだ。
とはいえ作戦上助ける訳にもいかず、関係ない人種奴隷が鞭を打たれる姿は見ていて気分が良いものではなかった。
僕の発言にエリーが口元を両手で押さえ、瞳を潤ませる。
「あぁ、ライト神様……。見知らぬ人種のために心を痛めるなんて! 聖人とはまさにライト神様のことを仰るのですね」
彼女は感動で潤ませていた瞳を、真剣なモノに変える。
「偶然とはいえわたくし達の計画の一助を担った者ですから、後ほど解放するよう手を回しましょう。ついでに鞭を打っていたエルフ種は殺しておきますね」
「うーん、さすがに殺すまではやり過ぎかな。素直に引き渡すなら、という条件付きだけど」
「かしこまりました。そのように手配致します」
僕の指示にエリーが深々と一礼して了承する。
これで確実にあの人種奴隷は助け出されるだろう。
心に引っかかった小さな問題を片づけると、次の疑問へと移る。
「でもエリー、本当によかったの? 事前に聞いていた作戦通り紙を残してきたけど、『巨塔で待つ。ライト』だけじゃ文章が短過ぎない? もっと確実に来るように長い文章で念を押しておいた方がよかったんじゃ……。それに僕を自分の手で殺すことを諦めて、国に助けを求めたりしないかな」
「文章に関しては、下手に長いと相手に情報を与えかねませんわ。なので極力短い文章で用件を伝えるのがベストかと」
『それに』と彼女は天使のような、地上の一般男性が目にしたら『恋に落ちる』どころか、自分自身だけではない他者の命を捧げてまでエリーの愛を得ようとするほど可愛く、美しい笑みを浮かべながら告げてくる。
「まだ『巨塔』は地上には出しておりませんわ。あの裏切りエルフ種は、どこに指定する『巨塔』があるか分からずのたうち回るでしょう。ライト神様が味わった苦労、屈辱、恥辱などを少しでも味わわせるために、このような小さな嫌がらせにも手を抜きませんわ」
「なるほど、素晴らしいね、エリー。場所が分からないサーシャの心を責める、という訳だね。その姿を想像するだけ心が躍るよ」
「ありがとうございますわ」
僕に手放しで褒められたエリーは顔こそ澄ましているが、膝がガクガクと震えるほど歓喜に全身を包まれているようだ。
彼女はその場に座り込むことには耐え、話を続ける。
「それに、サーシャが他者や国に漏らす心配も無いかと。元『種族の集い』メンバーに声をかけるにも距離がありますし、今度こそ自分の手で確実に殺そうと考えるのは必然。罠だと分かっていても飛び込まずにはいられない。例えそれが絶対に死ぬ魔王の口の中だろうと、ですわ。だって一度手にした幸福は人種、エルフ種関係なく絶対に手放したくはありませんもの」
エリーは心底、幸せそうに笑う。
「あの裏切りエルフ種、サーシャには誰を裏切り、傷つけ、絶望を与えたのか骨身、魂にまで刻む為にも苦しんで、狂しんで、狂死んで頂きますわ。直ぐには死ねない、死にたくても死ねない地獄のような席も既にご用意していますから」
僕はそんな彼女の笑顔に、同じように笑みを返す。
「頼もしいよ、エリー。ならこのまま引き続きこの作戦の指揮をお願いするね。期待しているよ?」
「はい! お任せくださいですわ! ライト神様が望む――いえ、それ以上の成果を必ず出して見せますわ!」
エリーは僕に頼られるのが嬉しいのか、地上で輝く太陽より明るい笑みを浮かべる。
こうして『裏切りエルフ種、サーシャ復讐作戦』が開始されたのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
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今日は2章3話を12時に、4話を17時にアップしております!(本話は4話です)
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