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1話 サーシャと婚約者

今日は1話を昼12時、2話を17時にアップする予定です(本話は1話)。

 午後、穏やかな木漏れ日が差す庭で、優雅にティーカップを傾け合う男女が居た。

 どちらもエルフ種で、真っ白なテーブル、椅子に腰掛け、メイドに傅かれながら談笑する。


 女性のエルフ種、サーシャが楽しげに向かい側に座る男性へと話をする。


「――そうして『ますたー』候補だったライトは、あたし達にまんまと踊らされたと知って絶望の表情を浮かべたんです。そしたら急に逃げ出したのであたしの矢で足を射って動けなくしてやったら、『オマエ達は偽者だ! 絶対に偽者なんだッ!』とか叫びだして。本当にあの顔はヒューマン(劣等種)らしい醜い絶望顔でした。でもなぜかお腹を抱えて笑えるほど愉快でしたの。是非、ミカエル様にもお見せしたかったですわ」


 彼女の醜悪な過去に実際起きた話を聞きながらも、正面に座る男性は心底にこやかに同意の声をあげた。


「サーシャ殿のお話はいつ聞いても愉快ですね。ワタシもできればその無様に踊った『ますたー』候補のヒューマン(劣等種)少年の絶望顔を見てみたかったですね。ワタシ達もたまに作戦でヒューマン(劣等種)の村を滅ぼしたり、旅人や現場を目撃して逃げるヒューマン(劣等種)を殺すのですが、殺される瞬間は普段以上に醜く顔を歪めて命乞いをするんですよね。老若男女問わず。でも逆にそれが醜すぎてとても面白いんです」

「分かります! 凄くよく分かります! ライトも殺される間際、普段以上に醜くて汚い顔なのにそこがお腹を抱えて笑えたんですよ」


 サーシャの向かい側に座る男性は、彼女の婚約者だ。

 名前はミカエル。エルフ種、男性で王族の血を引き、エルフ女王国最強の騎士団『白の騎士団』の副団長を務めている。

 金髪を邪魔にならないよう丁寧に切り揃え、眼鏡を掛けた柔和なハンサム顔だ。雰囲気、見た目は真面目な秀才のようだが、体つきは『エルフ女王国最強の騎士団』副団長だけあり肩幅、奥行きもあるガッチリとした体格をしている。

 言うなれば文武両道タイプだ。


 2人はまるでコメディー舞台を観劇した後のように人種(ヒューマン)の死に際、命乞いの醜さ、愉快さについて共感し合う。

 2人とも美男美女と断言して差し支えないが、会話内容は醜悪の極みである。


 サーシャ、ミカエル共に『人種(ヒューマン)の命乞い、醜さが笑える』という趣向が一致しているため、『ますたー』候補だった人種の少年を殺す際の話は茶会のたびに触れる定番の話題と化していた。


 そう――約3年前、エルフ種、サーシャは『種族の集い』メンバーの1人として、『ますたー』疑惑のあったライトと接触し仲間として取り込んだ。

 約3ヶ月掛けて調べた結果、彼は『ますたー』ではないと判断され、念のため殺害を命じられた。


 そして世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』に連れていき殺そうとしたが、取り逃がしてしまった。

 正確にはサーシャが足を射ち、動けなくなったライトにガルーが止めを刺そうとしたが、ライトの伸ばした手が偶然にも転移魔法陣を起動。


 一応、サーシャ達もダンジョンのどこかに転移したライトの姿を可能な限り探したが、結局発見することはできなかった。

 だが足に矢が刺さり出血してまともに歩くことも走ることもできないヒューマン(劣等種)の子供が、世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』のどこかに転移したのだ。

 血の臭いに引き寄せられたモンスターに襲われ、喰い殺されるのがオチである。


 結果、メンバー全員『ライトは死亡した』と意見を一致させ、上層部にも報告した。

 上層部もメンバーの話を聞き、『ライトが生存している可能性は低い』と判断。

 死亡を認める決断を下す。


『ますたー』疑惑があった人種(ヒューマン)殺害の褒美として、サーシャは王族の血を引く『白の騎士副団長』ミカエルとの婚約を得て、さらに一生遊んで暮らせるだけの報奨金が支払われた。


 ミカエルは王族の血を引くが、エルフ女王国は母権制で男性である彼に王位継承権は存在しない。

 だが王族は王族だ。


 多額の報奨金を得て、ミカエルとの婚約が決定したことを知った両親や姉妹達の手のひら返しは何度思い出しても腹を抱えて笑えるほど楽しい。


「――と、楽しい時間は本当にあっという間に過ぎるのですね」


 ミカエルが茶会終了の時間に気付き席を立つ。

 彼は眼鏡越しに優しく手をサーシャへと差し伸べる。

 サーシャはミカエルのイケメン顔にうっとりとした表情で頬を染めて手を取り立ち上がる。

 ミカエルは彼女の手を愛おしげに握り締めながら、微笑みを浮かべる。


「サーシャ殿と出会って本当によかった。無骨な騎士であるワタシとここまでお話しが合うご婦人はそうそういらっしゃいませんから。ワタシ達は非常に相性が良いですね」

「あたしこそ、ミカエル様と婚約できて本当に幸せです。幸せ過ぎて夢でも見ているよう……」

「それはワタシの台詞ですよ」

「もうミカエル様ったら」


 2人は見つめ合い楽しげに笑い合う。

 逢瀬の終わりを惜しみあう恋人同士のようにサーシャが馬車に乗り、見えなくなるまでミカエルはその場に居続けた。

 サーシャも馬車の窓からミカエルが見えなくなるまでずっと振り返り続ける。

 国が報酬の一つとして決めた婚約者だが、相性は非常に良いようだ。




 馬車がエルフ女王国首都街道を進む。


 馬車内部にはサーシャ、そして彼女が雇っているエルフ種メイドが1人着席している。

 サーシャは幸せそうに溜息を漏らした。


「はぁ……ミカエル様、今日も素敵だったわ」

「はい、ミカエル様とご婚約できたお嬢様が羨ましいです。お嬢様とミカエル様、どちらもお美しいので本当にお似合いの婚約者同士かと」


 メイドは如才なくサーシャを持ち上げる台詞を告げる。

 彼女も気分良く賛辞を受け止めていた。


「うふふ、ありがとう。そう言ってもらえるとミカエル様に相応しい女になるよう努力した甲斐があったわ」


 美貌磨きや教養なども相応に努力したが、もっとも苦労したのはレベル上げである。

 当時、サーシャのレベルは300前後。

 ミカエルはレベル2000を超えている。さすがに差が有りすぎるため、埋めるための努力をしなければならなかった。

 約3年間、結婚ではなく婚約で止まっていたのはこれが理由である。


 文字通り死ぬほど努力してレベル500前後までアップ。

 どうにか恰好が付き、ようやくミカエルとの結婚許可が下りたのだ。


「本当にお嬢様はミカエル様のために努力なさっておりましたから。まだ準備がありますが今年の終わり頃にはお嬢様がご結婚成されていると考えると感慨深いですね」

「もう、気が早いわよ。今年の終わりなんてまだまだ先じゃない」

「お嬢様、そうやって気を抜いているとあっという間に結婚式当日になってしまいますよ。油断したせいでウエディングドレスのウエストが締まらないなんてマネしないでくださいね」

「失礼しちゃうわね。そんなことしないわ――っと、何? 急に止まって」


 メイドと女性らしい会話をしていると、馬車が急停止する。


 雇い主であるサーシャが声をかけると、馬車を動かす御者が説明するために振り返った。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


サーシャへの復讐編が始まります!


ちなみに今日も2話を連続でアップする予定です。

今日は2章1話を12時に、2話を17時にアップしております!(本話は1話です)


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になります。 [気になる点] たまに、変換ミスがあります。 ざまあ!は、正直、読んでて楽しいです。 しかし、設定が無双なので、小蝿をいたぶって潰すのを素直に楽しめない気持ちもあ…
[良い点] 投稿頻度が高いし、なにより面白い!! [気になる点] 体壊さないように、たまには休んだ方が良いですよ。 (上から目線ですみません。) [一言] これからも頑張って下さい!
[一言] いよいよざまぁが始まりますね!ワクワク
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