番外編 メイド達の主張
今日は『番外編 ナズナの1日 後編』を昼12時、『番外編 メイド達の主張』を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は『番外編 メイド達の主張』)。
『奈落』の地下妖精メイド部屋に、部屋の主である妖精メイド4人が集まっていた。
妖精メイド達は基本4人部屋で、部屋ごとに仕事のローテーションが設定されている。
今日、彼女達は休日だった。
いつものように売店で買ったお菓子を並べて摘み、手持ち無沙汰を慰めるように雑談に耽る。
話題は当然、彼女達のご主人様、主、存在意義、神――であるライトについてだ。
そしてなぜか席に座る4人とも頭にたんこぶを作っていた。
このたんこぶは『SUR、真祖ヴァンパイア騎士ナズナ レベル9999』を巧みに騙し、嗾けた件についての懲罰である。
「メイド長のメイ様のご主人様部屋掃除独占について抗議したら、本人に怒られた件について。これはもうメイド長に反旗を翻しても良い理由では?」
見た目はとんでもない美少女だが、結果逆に個性が薄くなっている気がする妖精メイドが主張する。
「激しく同意します。主様のお部屋掃除を独占するなど羨まけしからんです!」
眼鏡を掛けた生真面目そうな妖精メイドが、フレームを押し上げ激しく同意した。
隣に座るギャル系妖精メイドが、物騒な発言を漏らす。
「でも~相手はメイド長だし、分が悪いにもほどがあるっていうか~。毒でも盛る~?」
「む、むむ無理無理、あの人、毒物無効だから。伊達にレベル9999じゃないから」
最後の1人、彼女も美しい顔立ちをしているが、前髪を伸ばし、纏う雰囲気がどこか暗い。だが逆に影があるため、押しが弱い、気弱な男子が好意を抱きそうな空気を纏っていた。
「所詮レベル500程度の木っ端妖精メイドじゃ相手にならないかー。でもいいなぁメイド長、わたしもご主人様のお部屋をお掃除したいよぉ!」
「分かる~。そして役得でお布団の匂いを嗅いだりしたいよね~」
「激しく同意します!」
眼鏡を光らせ真面目メイドは力強く断言した。
一方、オタクっぽい妖精メイドが欲望に濡れた笑みを浮かべつつ告げる。
「う、うう、ウチはマスター様が食事につかったフォークとかを、こっ、こっ、こっそり、舐めたい!」
「変態だよ!」
一番個性の無いメイドが叫ぶが、彼女は動揺せず言及する。
「で、で、ででもみんなだってマスター様の使ったフォークがあったら、舐めるでしょ?」
「舐めますね」
「舐めます」
「絶対に舐めるっていうか~」
「だ、だ、だよね!」
4人全員が何の躊躇いもなく断言した。
ふと、ギャル系メイドが思い出したかのように告げる。
「メイド長も内務仕事が忙しいんだから、私室の掃除ぐらいあーし達に任せてくれればいいのに。てゆーか、メイド長って一番初めにライト様に喚ばれたんだよね~」
「そうだよ? どうしたの突然」
「確かアオユキ様が喚ばれるまで約3ヶ月ぐらいかかっていたって話だけど……」
メイド達の唾液を飲む音が部屋に響く。
「当時は勉強不足でまだ知識に欠けていた主様と当時まだ危険なモンスターが溢れる『奈落』ダンジョンで約3ヶ月も2人っきり」
「当時はご主人様も見た目通りの12歳で、レベルもわたし達より低かったらしいよね。そんなご主人様と2人っきりって……」
「き、き、きき、危険なダンジョン、若い男女2人、な、ななな、何も起きないはずもなく……」
妖精メイド部屋は耳が痛くなるほどの沈黙に包まれる。
「……メイド長への羨ましさ、嫉妬心が止められないよ!」
「爆発すればいいのに。むしろ爆発させるべきでは?」
「あーし達の嫉妬心を呪いに転換できたら、いくらメイド長でも効くのかな~」
「滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅滅……」
「――酷い言われようですね。折角良いお話しをお持ちしたのに」
『!?』
部屋に響く第三者の声音。
妖精メイド達は一斉に扉へと視線を向ける。
そこにはくだんの『SUR、探求者メイドのメイ レベル9999』が立っていた。
彼女は妖精メイド達の嫉妬心を耳にしたのにもかかわらず、涼しい顔をしていた。
「め、メイド長! 部屋に入るならノックぐらいしてくださいよぉ!」
「しましたよ。貴女達が、一心不乱に私への不満を漏らしていたから気付かなかっただけです。まったく、折角良いお話しを持ってきたのに、これは別のメイドに持って行くべきですかね……」
「さっきからメイド長が言っている『良いお話』ってなんのことですか~」
ギャルメイドの質問にメイが一拍おいてから告げる。
「近日中に主君が『奈落』へ一度ご帰還されます。その際の側仕えをこの中から選ぶ予定でしたが――」
「私はメイド長に絶対の忠誠を誓うメイドです! 他とは違います他とは!」
速攻で眼鏡メイドが他を裏切る。
「う、ウチだって以前からメイド長を姉と、師と、恩人とお、お、思っていました!」
「あーしなんてメイド長を召喚前から尊敬してたし~!」
「メイド長! メイド長! メイド長! メイド長! わたしのことを是非犬とお呼びくださいわん!」
他メイド達も一斉に手のひらを返し、メイに媚びを売る。
その際、一切の躊躇いはなかった。
彼女達の一瞬の躊躇もない態度の切り替えに、メイは頭痛を覚える。
「……メイド達への教育を私は間違っていたのでしょうか。我がメイド道をはずれている?」
彼女達のアピールから一時意識を逸らし、自身の歩む『メイド道』に問題が無いかついつい考え込んでしまう。
結果、暫しの間、妖精部屋は彼女達の自己主張する声で五月蠅く、騒がしくなってしまったのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!
今日は『番外編 ナズナの1日 後編』を12時に、『番外編 メイド達の主張』を17時にアップしております!(本話は『番外編 メイド達の主張』です)
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