11話 お手紙
魔人国から侵入してきた兵士――降伏してきた賊を無事に全員拘束する。
降伏しなかった者は全てメラの腹の中だ。
「ケケケケケケ! 意外と時間がかかったな……。たく、無駄な抵抗ばかりしやがって」
奇妙な笑い声を漏らし、身長が約2mもある美女がぼやくように漏らした。
『UR、キメラ メラ レベル7777』が、人種王国兵士の鎧を着た者達に縄で拘束された賊達を見下ろす。
(な、なんだよ、この化け物は……ッ。人種王国に警告を与えるため、ちょこちょこ村を襲って殺して奪うだけの楽な任務じゃなかったのか)
賊の1人……魔人国兵士が、メラと周囲を囲む異形の怪物達に視線を向けて震え上がる。
そんなメラが改めて賊達を見回し、奇妙な笑い声と共に話かけた。
「ケケケケケケ! それじゃ早速話を進めようか。オマエ達が魔人国側から来た軍の兵士なのは知っている」
「ち、違う。我々は魔人種だが、魔人国とは関係ないただの賊だ」
一応隊長が、恐怖心を抑えつつもメラの発言を否定する。
彼女は笑い声を漏らしつつ、袖が長い片手を振ってツッコミを入れた。
「ケケケケケケケ! オマエ達が魔人国兵士だってことは把握しているから今更隠しても無駄だって。第一、あんな練度の高い賊がそうそう居てたまるかよ」
メラの『オマエ達が魔人国兵士だって言うことは把握して~』台詞に賊達が動揺した空気を漏らす。
仲間の中や魔人国内部に裏切り者が居て、自分達の行動が筒抜けで『こんな化け物を配置して罠に嵌めた人物がいるのでは』、と彼らは疑心暗鬼に陥る。
実際は魔人国から人種王国に侵入する経路にモンスターを配置して監視。
姿を捉えて襲う村などを予想し、待ち構えていたに過ぎないが。
わざわざ手の内を明かす必要はないため、メラは話を進める。
「ケケケケケケ! 改めてオマエ達が魔人国に所属していることは把握している。でだ。この中でディアブロ閣下と知り合いがいたりしないか?」
予想外の台詞に賊達はすぐに反応できず、言葉を飲み込むのに時間を要した。
メラは根気よく情報を伝えようとする。
「ケケケケケケ! 魔人国男爵で、実兄を追い落とし子爵に陞爵し当主となったディアブロ閣下のことだよ。もし少しでも繋がりがある者がいれば名乗り出てくれ。本当に小さな繋がりで構わないからな」
意味が分からず賊達は目を白黒する。
しかしメラが辛抱強く、彼らの反応を待つ。
『この中に、ディアブロとの繋がりを持つ者はいない。ハズレか』という雰囲気がメラから漏れ出る。
その反応を敏感に察したのか、おずおずと声をあげる者が姿を現す。
「じ、自分の従姉妹が確かディアブロ閣下の領地に嫁いだ筈ですが……」
「お、俺の祖父の友人が、ディアブロ閣下領地の文官だと聞いた覚えがあります」
「実兄と結婚した義姉の実家が、ディアブロ閣下の領地にあります……」
約50人中、3人がディアブロと僅かな繋がりを持つ。
彼らの言葉にメラは機嫌良さげな態度を取った。
「ケケケケケケ! そうかそうか! 悪い、作戦上、事前にディアブロ閣下と繋がりがある者を選別する余裕が無くてな。おい、彼らの縄を解いてやれ」
「了解しました!」
人種王国兵士の鎧を着た者達がメラの指示に従い、縄を解く。
突然、3人が拘束から解放されて明らかに賊達が戸惑う。
メラは彼らの反応など気にせず、アイテムボックスから革鞄を取り出す。
人種王国兵士の鎧を着た者達が解放した賊達を連れて、メラの前へと移動する。
メラは好意的な態度で鞄を三人に渡した。
「ケケケケケケ! 中には食料、飲料水、着替えと中級ポーションなんかが入っている。あとこれは今回、怖い思いをさせた詫び代だ。とっておいてくれ」
メラが鞄の他に金貨がぎっしりとつまった袋を三人に渡す。
意味不明な展開と渡された金額に賊三人だけではなく、他に囚われている者達も含めて目を白黒させていた。
メラは彼らの反応など気にせず、話を続ける。
「ケケケケケケ! 最後にこの手紙をディアブロ閣下に渡してくれ。中身は3通とも一緒だが、紛失する場合に備えて各自で持って帰って欲しい。ディアブロ閣下には是非とも『成功した暁にはくれぐれもよろしく』とお伝えしてくれ」
最後に同じ内容が書かれた手紙を三人にそれぞれ手渡す。
ディアブロと薄いながら繋がりのある3名は鞄、金貨入り袋、手紙を預かり呆然とする。
先程まで一方的に虐殺をしていたメラが、優しく三人に話しかける。
「ケケケケケケ! 他に必要な物はあるかい? 無事に魔人国に戻ってディアブロ閣下に手紙を渡して欲しいから、出来る限りは融通するぞ」
彼女の言葉に目の前の三人より、未だ縄で囚われている賊達が反応し声をあげる。
よほど『無事に魔人国に戻って~』という台詞が彼らに響いたようだ。
先程まで『ディアブロと繋がりがある』と知ったらどういう扱いになるのか分からなかったが、魔人国に戻れるなら話は別である。
「お、俺もディアブロ閣下と知り合いなんだ! だから縄を解いてくれ! 帰らせてくれ!」
「おれも! おれもだ!」
「自分なんて直接、ディアブロ閣下と話したこともあるんだ! だから解放してくれ」
「ケケケケケケ! 黙れよ賊共が……」
メラの威圧に、エサを投げ入れた鯉のように声を上げていた者達が黙り込む。
実際、本当にディアブロと繋がりがある者達が居るかもしれない。
しかし、あの時に名乗り出なかった時点で、彼らの役目は決まってしまっていた。
メラが荷物を受け取った三人の間を通り抜け、賊達の前に立つ。
彼女は美しい容貌に残虐な笑みを作り、長いスカートの下から新たな怪物を呼び出す。
うねうねと醜い触手を動かし、見るだけで精神を汚染する怪物を生み出した。
その姿、メラの威圧に捕らえられた賊達は黙り込む。
「ケケケケケ! あの時、名乗り出なかった時点で嘘をついているのは明白。貴様達は愚かにも人種王国の村を襲った罪人で、警告のためにも残虐に殺されなければいけないんだよ」
「と、捕らえた我々をこ、殺すというのか!? 降伏を促しておいて、殺すなど捕虜虐待! 許されざる蛮行ではないか!」
「ケケケケケ! 許されざる蛮行? おいおい賊共が蛮行云々なんて口にするなよ。それにオマエ達だってアタシが居なければ村人達に似たようなことをしようとしていたんだろ? なら自分達にも似たようなことをされる覚悟を持つべきだ――自分達が何をしようとしていたのか後悔しつつ、せいぜい苦しみ抜いて死ね」
触手が伸びる。
捕らえた賊を融かし、抉り、啜り、毒を流し、異形の怪物以上に苦痛を与える殺し方で命をうばう。
縄で身動き出来ないため、碌に抵抗できず悲鳴をあげながら残虐に殺されていく。
目の前で仲間達が見たこともないような方法で苦痛の限りで殺される姿を見て、荷物を渡された三人は腰が抜けたのかその場に座り込んでしまう。
賊に扮しているが彼らは魔人国でも能力が高く兵士になった人物達だ。しかも戦いを経験し、修羅場を潜り抜けてきた猛者である。
そんな彼らが幼子のように震えて、座り込んでしまうほどの残虐な処刑が目の前で繰り広げられていた。
メラが『今さら気付いた』と言わんばかりに振り返り、へたり込んだ3人を見下ろす。
「ケケケケケケケケ! これは失礼。皆様の前だというのを忘れて気が逸って処刑を開始してしまいました。しかしご安心を、なるべく苦しむように殺しますが、死んだ後の死体はしっかりと喰って腹の足しにしますので」
やや裂けた口元が気になるが、メラの美貌で作る笑顔と背後で繰り広げられる血が舞い散り、肉と骨が壊される音、悲鳴などが混じり合った光景が一種の芸術作品だと錯覚してしまう。
それだけメラの笑顔が美し過ぎたのだ。
しかし、三人組も生き残ったとはいえ無事ではすまない。
目の前で戦友達が想像を超える残虐な方法で殺害されるのを見せられているのだ。精神に深い傷を負い、病んで一生この悪夢に苦しみ続けるのは確実だ。
メラはその可能性を織り込み、三人の生き残りの目の前で虐殺を開始したのだった。
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