10話 降伏勧告
「痛い! 痛い! た、助けっ、ぎゃぁあぁぁあ!」
村に響く悲鳴。
山を越えて人種王国へと侵入し、賊に扮した魔人国兵士が村を襲おうとした。
しかし、殺したと思った人種少女達がどれも異形の怪物で、逆に仲間が食べられてしまっているのだ。
さらに建物からも続々と、首が無く胴体に口がある者、両手にびっしりと牙が生えた者、胴体に大きな顔が生えている者が姿を現す。
多くのモンスターと戦ってきた魔人国兵士達でも見たことがない醜い怪物達が、自分達を喰らうおうと襲いかかってくるのだ。
それは一体どれほどの恐怖なのだろう?
魔人国兵士――賊達は悪夢に出てきそうな異形の怪物達に仲間を喰われて最初こそ浮き足立つが、すぐに意識を切り替える。
彼らの指揮官が声をあげた。
「出し惜しみは無しだ! 攻撃魔術が使える者は遠慮なく使用して怪物達を殲滅しろ! 仲間を助け出すんだ!」
指揮官の言葉に賊とは思えない反応で行動を開始する
「魔力よ、顕現し氷の刃となりて形をなせ、アイスソード!」
「魔力よ、顕現し炎を作り形をなせ! フレイムランス!」
「魔力よ、顕現し大地の矢を作り出せ! アースアロー!」
他にも他種多様な属性を持つ攻撃魔術が放たれる。
戦闘級の攻撃魔術は狙い違わず異形の怪物達へと襲いかかった。
攻撃魔術が当たると異形の怪物達の肉が裂けて飛び散り、剣や槍では与えられなかった明確なダメージを受ける。
異形の怪物達がダメージを受ける姿を前に、賊達は歓喜の声を上げた。
「よし! あの怪物共に魔術が効いているぞ!」
「どうやら魔術攻撃に弱いようだな」
「このまま殲滅して、仲間達を助けるんだ!」
賊達の底まで落ちていた士気が、天を突くように回復する。
全てメラの演出だとも知らずにだ。
「なっ!?」
異形の怪物に攻撃魔術が効いているのに士気を上げていたが、喜んでいられたのも束の間で、彼らの目の前でダメージを受けていた筈の異形の怪物達が一瞬で回復してしまう。
千切れ落ちた部分もある程度の大きさの物は独立して動き、小さな破片は蠢いて近くにある異形と合流しようとしていた。
その光景に賊達は絶句する。
『UR、キメラ メラ レベル7777』の体から作られた異形の怪物達が、戦闘級の攻撃魔術程度で傷を負う筈がない。
全てメラの演技で、賊達に最初『魔術が効いていると』誤認させるのが狙いだ。
『魔術が効いていると』誤認させて、実は『効果ありません』と落とす事で絶望感をより強く引き出すのが狙いだった。
「ぎゃあぁぁぁ! 足に! 足に食いつかれた!」
小型になった分、素速くなった異形の怪物が1人の賊に食いつく。
賊は足に囓りつかれた痛みと負傷で、その場に尻餅を付いてしまう。
動きを止めたところに、大きな異形の怪物がエサに群がる肉食動物の如く尻餅をついた賊へと駆け寄り食らいつく。
「た、助け! 誰か! 戦友! たすけ――」
視界一杯にびっしりと牙が密集した醜い異形が口を塞ぎ、体という体に食らいつく。
助けを求めて腕を伸ばすが、誰もその手を取らず空を切る。
最後は根本から千切れて地面に落ち、その腕も異形の怪物の中へと貪り喰われてしまう。
この光景を見て、賊達の士気はどん底まで落ちた。
指揮官は作戦遂行を不可能と決断し、遅すぎる撤退を叫ぶ。
「全員今すぐ戻れ! 撤退だ! 全力で撤退するんだ!」
指揮官の声に賊達は入り込んだ入り口から全力で逃げ出す。
未だ喰われているが息のある賊達が仲間に助けを求めるが、絶望的な表情を浮かべつつ背中を向けて見捨てる。
そんな賊達に対して、一番最初、彼らに食らいついた頭部の割れた少女が笑う。
「ケケケケケケケケケ! おいおいおいおいおい、勝手に押しかけて来て、まだこっちの用件は終わっていないのに帰るのはマナー違反じゃないか。無垢な村人を殺して犯そうとしておいて、形勢が悪くなったら逃げて自分だけ助かろうってのか? もう少しゆっくりしていけよ、な?」
少女が大人の女性の声を漏らしつつ、140cm前後の肉体から、べきごきぼきと音を立て、巨狼、虎、馬のモンスターを複数体生み出し、逃げる賊達の逃げ道を塞ぐように高速で移動する。
少女の体はそのまま変化を止めず、約2m前後の美女へと姿を変えた。
その間にも、生み出された足の速いモンスターは牧羊犬のごとく賊達の進路を止めて、奇妙な笑い声を漏らしつつ、悠々と歩み寄る。
気付けば彼女の背後にいつの間にか、人種王国兵士の鎧を着た者達が揃っていた。
「ひゃぁっはー! 大人しく降伏しな! この極悪人ども!」
「逃げ道なんかないんだよ! 武器を捨てて大人しく降伏しろ!」
「ケケケケケケケケケ! オマエら、武器を捨てて抵抗を止めた奴から、縄で拘束しろ。諦めず暴れている奴は無視していいから。そいつはアタシの分体が喰らうからな」
目の前の異常事態を引き起こすメラの指示に、人種王国兵士の鎧を着た者達が素直に従う。
彼らは手に縄を持ち、武器を捨て、両手を上げて無抵抗をアピールする賊達を捕らえていく。
足の速いモンスターに囲まれて逃げ道を失っているのに諦めず、抵抗する賊共は――。
「降伏! 降伏するか――」
「ケケケケケケケケ! もう遅いんだよ。いいから大人しく激痛にのたうち回って喰われておけ」
メラのスカート下から新たに異形の怪物が生み出され、抵抗しようとした賊に食らいつく。
なるべく苦痛を与えるかのように、手や足、腹など傷ついてもなかなか死なない箇所に喰らいつき貪る。
「ぎゃあぁぁぁぁッ! こ、ころして! せめて楽にころ――」
「な、なんでこんなことに……! 村の女を犯して楽に金を奪えるんじゃなかったのかよぉッ! うぎゃあぁああッ!」
「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ!」
その悲鳴が未だに逃げ出そうとする賊達の心を砕く。
彼らは次々手にした武器を捨てて、両手を上にあげる。
約100人居た賊達は、半分の50人になるまで喰われてしまったのだった。
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