6話 とある作戦
魔人国が人種王国に直接的な表現は避けてはいるが『人種王国領土に入り麦の略奪、人種奴隷狩り、村の焼き討ち、見せしめによる強奪、虐殺等をおこなう』と宣言してきた。
これに対してリリスは激怒するが、防衛する兵力が無い。
そこで僕達『奈落』の力に縋ってきた。
『奈落』最下層に戻った僕は、すぐさまメイ、エリーを呼びだし執務室で地図を広げつつ、リリスから聞かされた話を伝える。
メイ、エリー、どちらも不愉快そうに眉根を顰めた。
「地上の人種差別は酷いと理解しているつもりでしたが……本当に扱いが悪いですね」
「メイさんではありませんが、本当に酷すぎますわ。ライト神様、ご命令頂ければ獣人連合国の時のように魔人国から侵入してくる兵士共を一匹残らず始末してご覧に入れますわ」
「エリー、それは非常に魅力的な提案だけど、個人的には今回の一件、ただ侵入して来た魔人国兵士を始末するだけじゃ勿体ないと思うんだよ。出来るならディアブロへ圧力をかけて、破滅へと繋げるための嫌がらせが出来ないかと思ってさ」
メイ、エリーの返事を聞きつつ、僕は『奈落』最下層に戻ってくる間に考えた案を聞かせる。
この案を実行可能かどうか、『奈落』最下層を預かる内政責任者であるメイ、『巨塔』の責任者であるエリーに足を運んでもらったのだ。
では、その案とは――。
僕のアイデアを聞いてメイ、エリーが手放しで褒め称えてくる。
「お話を聞いてこの短時間でこれほど素晴らしい案を出すとは、さすがライト様です。魔人国兵士を撃退しつつ、きっちりディアブロへ痛烈なダメージを与えることが出来るとは……」
「メイさんの仰る通り! さすがライト神様ですわ! わたくしの頭脳からでは決して出てこない素晴らしい案ですの! ライト神様の海より深く、天より高い知の深淵に触れる事が出来てこのエリー、感激しきりですわ!」
「あはははは、ありがとう、褒めてくれて。でも、僕じゃなくても2人ならこの程度の案、出せていたと思うよ」
2人の手放しの褒め言葉に僕は笑顔で応えつつ地図を手元に引き寄せ、魔人国国境に近い人種王国の村がある位置を確認する。
地図に視線を落としつつ、メイ、エリーに確認を取った。
「僕の案を採用するなら、結構な人数の村人を『巨塔』に移動させる必要があるけど、受け入れる余裕はあるかい?」
「問題ありませんわ! 『獣人種大虐殺』後、奴隷や人質などになっていた大量の人種、最近では亡命者の受け入れの経験がございます。経験の蓄積だけではなく、住居、衣服、食料品、嗜好品などの備蓄余裕もありますので問題なく受け入れることが可能ですわ!」
エリーが『巨塔』の責任者として形が良く、大きな胸を張って力強く頷く。
僕は頼もしさを感じつつ、メイにも尋ねる。
「無駄な犠牲を出したくないから、この辺り一帯の村人達を移動させることになる。その際、魔人国兵士が村の建物や畑、井戸などを荒らす可能性があるから、その際は補填したいんだけど『奈落』から持ち出しても問題はないかな?」
「はい、問題ございません。『奈落』最下層で今でもライト様の『UR、2つ目の影』が『無限ガチャ』ボタンを押しているので、例え村そのものを破壊されても100、200、300程度ならばすぐに復興させる余裕がございます。なのでライト様の案は十分実行可能かと」
僕の案を実行した場合、村の一部が破壊される可能性があった。
なので『奈落』最下層からの持ち出しで、元に戻すことを考えていた。
内政を預かるメイに太鼓判を押されたため僕は自信を深める。
「なら作戦の肝……実行者はメラが適任かな。彼女を呼び出してもらえるかな?」
「ライト様、よろしいでしょうか?」
「メイ? どうかしたの?」
今日の僕の側付き妖精メイドにメラを呼び出すよう声をかけると、メイが遮り声をあげる。
彼女は僕に視線を向けられると、すぐに口を開く。
「アオユキ経由で、前回、魔人国入国に失敗したモヒカン冒険者達が意気消沈しているとのこと。今回の作戦に彼らも加えて名誉挽回のチャンスを与えるのは如何でしょうか?」
「あれはタイミングが悪かったせいで彼らには責任が無いから、『気にしないで』と伝えていたんだけどな……」
『奈落』メンバー達は責任感が強いため、思い詰めないか少々心配していたのだが……。
案の定だったわけか。
「今回の作戦はそれなりに頭数が必要だから、名誉挽回ではないけど魔人国国境にまだ居る彼らに手伝ってもらおう。もちろん、作戦の中心になるメラに話を通した後だけどね」
「ありがとうございます。きっと彼らも喜ぶでしょう」
メイは意見に耳を傾けた事に深々と頭を下げる。
僕は彼女の一礼を受け止めつつ、改めて今日の側付き妖精メイドにメラを呼ぶよう指示を出す。
「ケケケケケケケケ! お呼びとのこと、お待たせ致しまして申し訳ございません」
「全然、待っていないよ。ごめんね急に呼びだして」
「ケケケケケケ! お気遣いなく、ご主人さまに呼ばれて嬉しく思わない『奈落』住人はおりませんから」
メラの言葉にメイ、エリー、側付き妖精メイドが深く頷く。
彼女らにとって僕が呼び出したり、構ったりするのは大変嬉しいことらしい。
深く想われていることを喜ぶべきか、大袈裟すぎるとツッコミを入れるべきか迷うところである。
僕は軽く咳払いをして呼びだした用件を告げる。
メラに僕が考えた作戦内容を聞かせて、実行可能かを問う。
もちろん彼女の能力は今までの戦闘等やカードで確認しているため、問題なく出来ると考えているが一応念のため本人に確認しているのだ。
返答は当然、可能だった。
「ケケケケケケケケ! 問題ありません。余裕で実行可能です。ただ無いとは思いますが、あまり強すぎる相手が出てきた場合、モヒカン達を守りながら撤退は難しいのでその点だけは留意して頂ければと」
魔人国『ますたー』が出てくる可能性はゼロではない。
僕はメラの進言に頷く。
「了解。その点を考慮して作戦に必要なマジックアイテムなんかを用意するよ。メラ、今回の作戦責任者として必要な物資やマジックアイテム、人員が必要なら僕の名前において全て許可する。健闘を祈るよ」
「ケケケケケケ! ありがとうございます、ご主人さま! アタシの全能力を以てご主人さまが望む最高最善な結果を出してみせます!」
大役にメラはその場で誇らしく膝を突き、やる気がある声を上げる。
僕は彼女の言葉に満足そうに頷く。
こうして国境を越え村を襲う魔人国兵士を始末しつつ、ディアブロを破滅へと進めるための圧力をかけていく&嫌がらせをする作戦が決定したのだった。
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