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25話 『冒険者殺し』狩り3

今日は25話を昼12時、26話を17時にアップする予定です(本話は25話)。

「死ねえぇぇえ! クソヒューマン(劣等種)!」


 顔を真っ赤にして幅が広い剣を両手で握りエルフ種――鑑定で確認した限り、カイト、レベル1500が真っ直ぐ突っ込んで来て、フェイントも無くレベルに頼った力任せで剣を振るってくる。


 僕は手にした杖で振り下ろされる剣を弾き、切り返しを受け流し、さらにがむしゃらに振るう剣を全ていなし、弾き、受け流す。

 そして全て受けきった後に、剣を全力で振りすぎたせいで隙だらけになったカイトの腹部を強かに杖で打ち据える。


「ぐげぇッ!?」


 一瞬で殺害しては気が収まらず手加減はしたが腹部を打たれる勢いは殺しきれなかったようで、カイトが地面を転がり倒れる。そのまま地面に蹲りながら、


「おごぉッ、ぐぅぅッ、げぇえぇッ――」


 口から巨大な卵でも吐き出すかのような勢いで吐瀉する。

 追撃を仕掛ける絶好のタイミングではあるのだが……。

 あまりにもカイトの戦い方が拙すぎて、思わず溜息と共に小言を漏らしてしまう。


「激情に任せて何も考えず猪のように剣を振るうだけって……。駆け引きやフェイント、読み合いも無し。あまりにも隙だらけでむしろ罠なのかと疑うレベルだが……もしかしてそういう作戦なのか?」


 僕の指摘に騎士として見かねたゴールドも思わず指摘する。


「主の指摘もそうだが、こ奴、根本的に剣術の基礎が足りておらぬぞ? まだ剣術の基礎を見よう見まねでしていたエリオ達の方が、向上心のある分こ奴よりマシなんだが……」


 今回は冒険者ランクを上げるため、誰よりも先に『冒険者殺し』を確保し、情報を引き出した後、殺害するのが目的だ。

 直ぐには殺さず、エリオ達を襲った罪として痛い目に遭わせようと考えていたが……。

 弱すぎて、痛い目に遭わせる前に力加減を間違えて殺してしまいそうだ。

 まさかここまで弱いのは想定外である。


「――ッす」


 僕達が感想を言い合っていると、吐き気が収まったのかカイトが瞳に炎が灯りそうな勢いで激怒していた。

 彼は口から涎をだらだらと流し、狂ったように叫ぶ。


「殺す! 絶対に殺す! 殺してやるぞ! グランディウスゥゥゥゥゥッ!」


『シャラン』と楽器のような音を鳴らし、グランディウスの剣身がぶれて複数の刃を生み出す。

 数は全部で30本。

 カイトは地面に膝を突いたまま、手にした剣――グランディウスを突きつけてくる。


「あのクソヒューマン(劣等種)を串刺しにしろ!」

「!」


 声に合わせて放たれた矢の如く30本の剣身が僕に向かって飛翔する。

 僕は必要を感じなかったため今まで一歩もその場から動いていなかったが、さすがに手数が足りないのと、


(何か嫌な感じがするな。ここは大人しく回避しておこう)


 直感に従い足を動かす。

 カイトを中心に円を描くように駆け出すと、立っていた場所に数本刺さり、追尾して僕を追いかけてくる。

 その速度は最初の頃と変わりがない。


(並の冒険者やモンスターが相手なら十分脅威だな。けど、雰囲気からこれだけって訳じゃないだろう――)


 考察していると、反射的に背後へ向けて杖を振るう。


「ッと!」

「チッ! 僕様のこの一撃まで防ぐか!」


 飛翔する剣身を足場に、また目隠しにして上手く背後へ回り込んでいたカイトからの一撃を弾く。

 彼は悔しそうに舌打ちし、明後日な方角の分析を口にする。


「見た目は魔術師だから最初は侮ったが、まさか一流の戦士だったとは! 魔術師の装いで相手の油断を誘うなんて、これだから卑怯で卑劣なヒューマン(劣等種)は嫌なんだ!」

「? 僕は一応、分類上は魔術師だけど」

「き、き、貴様のように僕様と対等に戦える魔術師が居てたまるか! 馬鹿にするのもいい加減にしやがれ!」


 馬鹿になどしていない。

 メイ達曰く――まだ僕の前衛戦闘技術は専門家に通じるレベルではないが、後衛としては恩恵(ギフト)『無限ガチャ』で得たカードを通して一流魔術師とほぼ遜色がない魔術を行使することが出来る。

 あえて定義するなら今までこの世界に存在しない『無限カード魔術師(マジシャン)』という新しい職業になるのだ。

 故に分類上、僕は『魔術師』と呼んで差し支えないのだが。


「さすがダーク様! 巧みな話術で相手の冷静さを奪うなんて! なんという戦闘上手なのでしょう!」


 一方、ネムムはなぜか僕が話術でカイトの冷静さを奪う戦術だと誤解する。

 結果としてそうはなっているのかもしれないが、別に狙ってやっている訳じゃないんだけど……。


「いい加減、僕様を馬鹿にするのは止めろぉおおぉおぉッ!」


 カイトが剣を振るい飛翔していた剣身を再び僕に向かって誘導させる。

 ちょうど良い。

 僕が分類上は魔術師だということを証明する良い機会だ。


「アイスソード!」


『R、アイスソード』×25枚を消費して、僕の周囲に氷の剣『アイスソード』を生み出す。

 さらに向かってくる25本の剣身に向けて、精密に誘導し迎撃してみせる。

 これには激昂して耳の先まで赤くなっていたカイトも水を頭から被されたかのように狼狽えた。


「え、詠唱破棄!? しかもあれだけのアイスソードを生み出すなんて! ば、馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ! 本当に魔術師だとでも言うのか!? 僕様とこれだけ戦っておいて魔術師だと!?」

「だからそう言っているじゃないか。僕は分類上は魔術師だって」


 さらに付け足すなら複数の魔術を出して任意で操作するのは地味に高等技術なのだ。

 エリーの魔術講座で習い習得した技術である。

 僕だと30本前後が限界だが、エリーは鼻歌交じりに1000本以上を余裕で操作する。


 さすが『禁忌の魔女』だ。


(しかし、カイトの剣もそこそこの業物だな。まさかアイスソードをぶつけたら炎や風、雷を発生させるなんて)


 どうも剣身の分裂だけではなく、生み出した剣身に魔術を込めることが出来るらしい。

 しかも使用者の魔力を使用せずだ。

 これはまあまあの業物である。


 僕がカイトの剣に注目していると、彼は視線に気が付き頭を掻きむしるように動揺していた気持ちを立て直す。


「あは! あははははは! そうだ僕様にはまだこの宝剣『グランディウス』があるんだった! これこそエルフの国宝! 過去の『ますたー』が天から授けられし聖剣が一振り、グランディウスだ! 触れたら最後、貴様の体を戦闘級魔術で破壊し尽くすだろう。魔力、体力も無限ではない! どこまで回避し続けられるかな!」

「……『ますたー』だって!?」


 彼の発言に僕だけではなく、控えるネムム、ゴールドも息を呑む。

 聖剣より、僕達は『ますたー』という言葉に反応する。


「『ますたー』を知っているのか……?」

「あははははは! そうだ僕様こそが世界に選ばれた『ますたー』! 女神様に選ばれた存在なんだッ!」


 カイトは僕達の動揺を見て、世界最高級のワインを口に含んだかのように陶酔した表情で見つめてくる。


「正確には『ますたー』の血を引く子孫さ。『さぶますたー』と呼ばれている将来の英雄、勇者となる神の血筋を引く存在なんだ! 貴様らゴミのようなヒューマン(劣等種)とは血の一滴から違う高貴な存在なんだよぉッ! 頭が高い! 頭が高いんだよ! 控えろ! ヒューマン(劣等種)がッ!」

「……『さぶますたー』? 『ますたー』ではないのか?」


 ここに来て新しい情報を得る。

『ますたー』の血を引く子孫を『さぶますたー』というらしい。

 どうやら『ますたー』ではないが、それに近い存在のようだ。

 貴重な情報源には変わりはない。


「……『ますたー』ではないにしろ、貴重な情報源には変わりはない。予定を変更する。この場では殺さない。殺すのは変わらないが……こいつは『奈落』へ連れていく」


 僕はすぐさま判断を下し、初めて手にした杖を構えたのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


今日も2話を連続でアップする予定です。

25話を12時に、26話を17時にアップする予定なのでお見逃しないようよろしくお願い致します!(本話は25話です)。


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
余裕あるからってさすがに舐めプしすぎ。他者の命を背負ってる背景描写とかがなけりゃ別にいいんだけど、知人◯ろされてるからね?舐めプするなら相手に実力を発揮させずにストレス地獄に陥らせて完封勝利とかしなけ…
「殺す! 絶対に殺す! 殺してやるぞ! グランディウスゥゥゥゥゥッ!」 グランディウス「えっ!?」 ところ天の助「えっ!?」 急に国宝の剣に殺意をむけたのかと
[気になる点] 蔑む人種であるマスターの血を受け継ぐ自身を高貴って評するのおかしくない?規格外に強くても人種だよ?作者さま
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