16話 ゴールドの特技
シックス公国に各種代表者が揃ったため、数日後に会議を開く事が決定する。
現在は各種外交官が集まって日時のすりあわせをおこなっている段階だ。
僕達はその間シックス公国観光を兼ねて、いざという時の逃走経路把握や地理に明るくなるために辺りを見て回っていた。
「露天市場は随分賑わっているけど、これぐらいならもっと活気がある街ぐらいはありそうだ……でも、これほどマジックアイテムが揃ったお店があるのはちょっと珍しいね」
「うむ、普通に栄えている街の数倍くらいはありそうだな」
僕の言葉にゴールドが同意して頷く。
最初は食べ物が集まる露天市場に向かった。
ここには河川舟運によって食料品や香辛料、他品物が多数集まる。
故に市場には人種王国ではまず見かけない食材などが並んでいた。
とはいえ、貿易が盛んな街なら、まだ見る光景だろう。
シックス公国らしい光景は店舗にあった。
マジックアイテムを扱う店舗が多数存在したのだ。
ゴールドの指摘通り、他の街の数倍はありそうだ。
ネムムが首を捻る。
「ですが、どうしてこれほどマジックアイテム店舗が存在しているのでしょうか?」
「多分だけどシックス公国が学術都市の側面を持つから、最先端のマジックアイテムが開発されてどこより先に並ぶんだろうね。あとは竜人帝国が地味にマジックアイテムを開発するのに長けた国だってこともあるんだろうな」
『獣人種大虐殺』がおきた際、獣人種の1人が笛を吹いていた。
その笛は『狂奔の笛』と呼ばれ、ドラゴンを混乱・狂乱、暴れさせる力を持ったマジックアイテムだった。
あれほどの力を持つマジックアイテムを作成できるかどうかはともかくとして、強い力を持つマジックアイテムは戦況すらも左右する力を持つ。
学術都市&マジックアイテム開発国家の特色から、シックス公国は他国よりマジックアイテム系のお店が多数存在するのだろう。
「それにしても最新のを扱っている店、中古のものを扱っている店までは分かるが……マニアックなものや失敗作マジックアイテム店など、意味不明なモノまであるのだな。失敗作を売っても良いのか?」
一般的な街ではまず見ない変わったマジックアイテム店まである。
しかも意外と学者風の人々が集まり繁盛しているようだった。
店舗の通りを確認すると、次は噂の『シックス公国魔術師学園』へと向かう。
魔術師の才能がある人種のミヤが推薦を受けて進学する予定だった、魔術師にとって最高峰の学園である。
シックス公国魔術師学園は東側の高級住宅街側にある。
ちなみにシックス公国を大雑把に説明すると中心に会場があって南側が一般区画。
北側がスラム。
西側が河川舟運の出入口になる。
僕達は現在、西側の市場、店舗通りにいるので、反対側の高級住宅街側に向かう。
シックス公国魔術師学園は中心会場と高級住宅街の間にあるイメージだ。
教員、学生達は貴族の割合が多いため、雰囲気は高級住宅側に近い。
とはいえ一般人の学生や教員も居るため、市場や店舗でもマントを着けた魔術師風の人達をちらほら見かけた。
僕達は東側へと移動。
シックス公国魔術師学園の正面、正門まで辿り着く。
「ここがあのシックス公国魔術師学園か……」
正門の奥には並の貴族屋敷より大きな校舎があり、マントを身につけた魔術師の者達を多数目撃することが出来た。
ここまで魔術師が集まっている光景を目にするとは……。
ある意味、シックス公国を最も表している光景かもしれない。
ゴールド、ネムムも正門外から様子を窺い感想を漏らす。
「これほど魔術師が居るというのも圧巻だな。他ではまず見られない光景だね」
「ダーク様がご興味ありそうなので、中の見学などを出来ればいいのですが……」
「確かにネムムの言う通り興味はあるけど、いきなり部外者が見学なんて出来る訳ないよ」
「主の言う通りかも知れぬが、とりあえず訊くだけはタダではないか。ちょっと我輩が聞いて来るとしよう」
ゴールドは止める間もなくシックス公国魔術師学園正門へと近づき、生徒に声をかける。
生徒達は最初こそ突然声をかけてきたゴールドに警戒心を露わにしたが、数度会話を重ねるとまるで以前からの知り合いのように談笑を始める。
僕とネムムはその光景を感心したように眺めた。
「ゴールドって、人見知りせずよく初対面の人に話しかけられるね……。あの度胸というか、愛嬌はいくらレベルを上げてもマネできそうにないよ」
「……自分ももう少し、ゴールドのように積極的に地上の者達と仲良くなるよう心がけた方がいいのでしょうか」
ゴールドの他者に対する積極的態度に、地上の人々を下に見て敬遠しているネムムでさえ、彼の行動力を前に自身を鑑みて改善しようかと悩み出す。
……ただネムムの場合、その容姿の良さからよく地上の人々に絡まれるせいで、『奈落』最下層の時とは違って消極的になっている面もある。
無理をして精神的疲労をするより、ゴールドのように任せられる部分は任せても僕は良いと思う。
生徒達と話していたゴールドが、彼らに連れられてズンズン正門を越えて、校舎へ向かって行く。
残された僕達に対してゴールドが軽く校舎を指さし、『ちょっと行ってくるぞ』と合図してきた。
「生徒達が付き添って責任者に許可を取りに向かったのかな?」
「恐らくは……」
僕とネムムが所在なげに、他生徒達に遠くから見られて数分。
ゴールドが生徒ではなく、見るからに責任者らしい人物を1人連れて戻って来る。
「主よ、待たせてすまぬ」
「ううん、大して待ってないから大丈夫だよ。それでそちらの方は……」
ゴールドと一緒に付いてきた人物は……浅黒い肌に尖端が尖った尻尾を伸ばしている。身長は175cm前後で、禿頭で白い顎髭を生やした魔人種だった。
外見的見た目は人種に例えるなら30歳前後ぐらいだろうか?
彼は気さくに自己紹介をする。
「私はシックス公国魔術師学園で教員兼攻撃魔術研究をしているドマスというものだ。貴殿が冒険者A級の『黒の道化師』ダーク殿ですかな?」
「は、はい。『黒の道化師』パーティーのダークです」
自己紹介を返すと、彼、ドマスは子供のように目を輝かせる。
「ダーク殿は人種にも関わらず戦闘級、戦術級の詠唱破棄が出来るという噂を耳にしたのだが本当か!? もし可能なら見せてもらえないだろうか! もちろんタダでとは言わない。技術観戦料は支払うし、公国魔術師学園見学どころか入学の口利きもするぞ!」
攻撃魔術の話になると途端に早口になる。
まるでマジックアイテムを前にしたドワーフ種の王のようだ。
僕が視線をゴールドへ向けると、彼は喜々として親指を立てる。
『我輩、良い仕事をしただろう?』と言いたげな態度だった。
どうやらゴールドは学園見学をするため、生徒をツテに攻撃魔術研究者であるドマス教員に接触。
僕が戦闘級と戦術級の詠唱破棄が出来ることをエサに彼を釣り上げ、見学のチャンスを掴んできたようだ。
ゴールドは戦闘だけではなく、『交渉の分野も出来るのか』と僕は思わず感心してしまった。
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