表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/571

24話 『冒険者殺し』狩り2

今日は23話を昼12時、24話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は24話)。


「クソ! クソ! 畜生! あのクソガキどこに行きやがった!」


 エルフ種、カイトは焦っていた。

 成長限界を突破するため噂に縋って人種を含めた冒険者を殺して回っていた。

 今日も目に付いた人種冒険者エリオ達を殺すため近付いたが、そのうちの1人に逃げられてしまったのだ。


 カイトはレベル1500のエルフ種で、相手はレベル20にも届いていないだろう人種である。

 にもかかわらず図星を突かれて激昂し宝剣『グランディウス』で斬りかかると、突然目の前が光り輝き、気付いたら剣は空を切り地面へ。

 光が消えると追いつめていた少女の姿はどこにも無かったのだ。


 あまりに予想外かつ、意味不明な現象に1分以上はその場で呆然としてしまった。


『自分の素顔、種、特徴、容姿、戦闘方法などを知った少女を取り逃がした』という事実に気が付いた時には後の祭りだ。


 慌てて宝剣『グランディウス』の力で剣身を分離。

 その剣身に乗って周囲を飛び回り、気配を探ったが逃がした少女の気配どころか、冒険者の姿すら発見出来なかった。


 上空を飛行しながら、ガジガジと自身の親指の爪を噛む。


「この周辺に人の気配は無い。何かのマジックアイテムで姿を一時的に消していても僕様の気配察知から逃れられる訳がない。なら転移系アイテムでここより遠方……まさか既にダンジョン外へと移動した!? いやいやいや! ありえないだろ。そんな高位マジックアイテムをあんな小汚いヒューマン(劣等種)の娘が持っているはずがない! あるならどうしてすぐに使わないって話だろ!」


 自分の命がかかっている状況だ。

 カイト自身だって同じ状況に陥ったら、どれほど稀少なアイテムでも使わないはずがない。


「……あの光はただの目眩ましで、僕様から逃げただけかもしれない。煙玉の例があるから可能性はあるな……。にもかかわらず周囲に気配が無いのは――あっ! 仲間達の方へ戻ったのか!?」


 カイトはダンジョン出入口方向へ意識を向け、気配を探っていた。

 無意識に『自分がもし少女と同じ立場ならダンジョン出入口へ向かう』と決めつけていたからだ。


「ダンジョン出入口に逃げると見せかけて仲間達の下へ戻る! そして瀕死だったら治療しさらに有用なアイテムを得て、改めて脱出しようとしているのか! クソ! ヒューマン(劣等種)は虫けらのように弱いのに無駄にずる賢い知恵だけはありやがる!」


 よく考えたらミヤに逃げられたのと、すぐ死ぬだろうと思っていたので彼らにとどめを刺していない。

 カイトは慌てて進路を変え、兄エリオ達が倒れている現場へと向かう。


 ダンジョン1階層でうろつく見るからに駆け出しの少年冒険者達が、長距離を移動出来る稀少な転移アイテムを所持していると考えるのは難しい。

 本来は王族、貴族、トップ高レベル冒険者、豪商などが、『いざ』という時に身の安全を確保し、その場から逃げるために常備する代物だ。

 元々数は少なく、オークションにも出回らない稀少な品物だ。

 売れば平民が数十年暮らせるほどの大金を得られる。

 その稀少性から、駆け出し冒険者が持っているなど普通ならばありえない。

 まだ運悪く見失い、上手く逃げ出されたと考える方が自然だった。


 グランディウスの剣身を飛ばすことで、数分かからず元の現場が見えるところまで引き返すことが出来た。


「……チッ、居ないか」


 眼下を見下ろせば倒れたままの少年達。最後に戦った少年の様子を見れば、とどめを刺していなかったのでかすかに息がある。逃げた少女の兄だ。もう少しで死ぬだろうが、囮にはちょうどいいかもしれない。

 一応、周辺をグルグルと空中から見て回るが、人気はない。


 念のため地面まで下りて、周囲に隠れていないか神経を集中させ、目を凝らし、辺りを窺うが……やはり人どころか、モンスターの気配すらなかった。


「居ない……やはり居ないぞ。だとしたらあの雌ガキはどこにいったんだ? ……まさか本当に長距離転移のマジックアイテムで移動したのか? ありえないだろ! なんであんな薄汚いガキが、白の騎士団団員でも所持していない稀少アイテムを持っているんだよ!?」


 だが、カイト自身がここまで探して見つからなければ、転移アイテムで逃げたとしか考えられない。

 つまり自分がダンジョン内部で『冒険者殺し』をしているのが元本国に発覚するのは時間の問題だということだ。


 元本国――エルフ女王が代々統治する女王国家。


 元々、成長限界を超えるため宝剣『グランディウス』を盗み出した。

 エルフ女王国は全力で宝剣を盗み出したカイトを捜索している最中である。故に彼は調査員の目から逃れるためにエルフ種とドワーフ種が争う国境線に近いダンジョンを選び中へと入った。

 レベルを突破するまでダンジョンに篭もり、調査員の目から逃れようとしたのだ。


 しかしミヤを逃したことで、特徴からカイトがこのダンジョン内部で『冒険者殺し』をしているのが確実に本国へ伝わる。

 宝剣『グランディウス』の回収、自国の汚名を表沙汰にしないため、政治的利用させないためにもエルフ女王国は自国最強の戦力を投入するはずだ。


「ッゥ!? 白の騎士団――最悪、あの忌々しい団長が乗り込んでくるのかよ!」


 元古巣、元上司の澄ました顔を思い出し忌々しい舌打ちと同時に、怖気を震わせる。

 噂だが白の騎士団団長のレベルは3000を超えているらしい。

 そんな団長が、レベル2000、1500を超えた団員達を連れて宝剣『グランディウス』と同等の武器、防具を手に乗り込んでくるのだ。


 カイトは抵抗する暇もなく証拠隠滅のため殺害されるだろう。


「クソ! クソ! クソが! 未来の英雄で、勇者の僕様がこんな所で殺されてたまるかよ! さっさとダンジョンから出て他国に移動するべきだろう。『グランディウス』の飛行能力があれば国境なんて無いも同然だ! 次はヒューマン(劣等種)が溢れる人種の王国にでも行くか? いや、エルフ女王国から距離を取るためにも魔人種領辺りまで移動するべきだな」

「――いや、貴様にもう逃げ道は無いよ」

「!?」


 カイトが自問自答していると、凛と澄んでいるにも関わらずコールタールより重く絡みつくような不吉な声音で否定される。

 驚愕し、声の主から慌てて距離を取った。


 気付けばいつの間にか見覚えのある人種達が立っていたのだ。


 1人はカイトより頭一つは大きい黄金色の全身甲冑を身につけた人種だった。


 もう1人は口元をマフラーで隠し、暗闇でも分かるほど美しい顔立ちをした美少女だ。


 最後の1人は、まるで夜の闇に溶け込むような頭から爪先まで黒色で、道化師の仮面を被った人種少年だった。


(こ、こいつらどうやって僕様の側に近付いたんだ!? 周囲は見晴らしがいい草原で、女や子供はともかくあんなキンキラの黄金色の騎士がいたら一目で気付くぞ! 僕様のように空から気配を殺して近付いてきた? だがもしそうだとしてもLV1500の僕様が気付かないはずがない。ではどうやって……)


 音も気配も無く、今までカイト自身が冒険者にやってきた奇襲を逆にされるが、その手口が全く想像がつかなかった。

 恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カード、『SR、飛行』と『SSR、存在隠蔽』のコンボというカイト自身の手管より高度な技術でやり返されたという事実に彼が気付くことは永遠にない。

 そんな彼を前に、仮面を被った子供が言葉を漏らす。


「近くでよく見れば、僕達が初めてダンジョンに潜ろうとした際に横入りを注意した輩じゃないか。まさかお前が『冒険者殺し』とは……」

「おお! 確かに見覚えのある立ち振る舞いだと思えば! 主よ、よく1ヶ月近く前のことを覚えているな!」

「さすがダーク様! 素晴らしい記憶力ですね!」


『ダーク』と呼ばれる少年の指摘に、黄金の騎士と妖精の女王の如く美貌を持つ少女が、一斉に褒め称える。

 彼の指摘にカイト自身も、彼らのことを思い出した。


(あぁぁ! 初めてダンジョンに訪れた際、僕様に注意した無礼なヒューマン(劣等種)達か!?)


 記憶を刺激され、約1ヶ月前に受けた屈辱と共に、エルフ女王国でも見たことがない美貌を持つ少女に対する劣情も思い出す。

『英雄で勇者の僕様に奉仕させる側仕えにしてやろう』と考えていた銀髪褐色女だ。

 劣情と興奮で体が一瞬熱くなるが、今は彼らに構っている時間も惜しい。


「何か勘違いしているようだが、これらは僕様がやったものじゃないぞ。異変に気付いて調べに近付いたらすでにこうなっていたんだ。犯人扱いは止めて欲しいんだけどな」

「下手な誤魔化しは必要はないよ。僕達は既にミヤちゃんを保護して、彼女から詳しい話を聞いているから、お前を捕らえに来ただけなんだからさ」

「みや……ッ!?」


 さすがのカイトもついさっき取り逃がした人種(ヒューマン)の名前は覚えていたらしい。

 黒い仮面少年の言葉を聞いて顔色を変える。

 そして驚きから一転、カイトは心底愉快気に『ニチャリ』と笑みを作った。


「なんて……なんて僕様は運がいいんだッ! くくくっ、はははははッ! まさかあの逃げたヒューマン(劣等種)の雌ガキの居所を知るマヌケがわざわざ僕様の前に現れるとは! なんていう幸運なんだ! やっぱり僕様は女神様に愛された将来の英雄、勇者なんだ!」

「英雄? 勇者? いいや、違うね」


 心底幸せそうに自身の幸運を笑うカイトを黒ずくめの少年が否定する。


 カイトは少年の言葉に反応して、視線を向けた。

 少年は仮面越しに断言する。


「お前は僕達の冒険者ランクを上げるためのただの踏み台だ。お前が『冒険者殺し』の主犯だとギルドに証言する証拠は既に揃っているから安心してくれ。今――ここで、僕の手でお前を殺す。人種を手にかけ、エリオ達に危害を加えたお前を絶対に生かしたままにしておくものか」


 そう言って少年はカードを取り出し、解放(リリース)、と呟く。


 それと同時に何らかの光がエリオ達を包み込み、回復効果と防護効果を発揮する。


「もちろん後ろに居るゴールド、ネムムにも手出しはさせない。2人ともいいね? ああ、ただし『冒険者殺し』が逃げそうになったら妨害はしていいから」

「うむ、了解したぞ主!」

「ダーク様のお心のままに」


 背後に控えるゴールド、ネムムが気楽に答える。


 彼らの返答にカイトのプライドが傷つけられる。


「……む、虫けらのヒューマン(劣等種)の分際で、エルフ種で将来の英雄、勇者の僕様を生かしておかないだと!? ……絶対に殺す。貴様だけは生きたまま全身の皮を剥いて、口に詰め込み足の先から切り刻んでやるッ!」


 カイトは頭に血を昇らせ激昂し、幻想級(ファンタズマ・クラス)の宝剣『グランディウス』を両手で構える。


 迎え撃つ全身黒ずくめの少年は手に杖を持ち、仮面の下で静かに笑うのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


明日も頑張って2話をアップするので、是非チェックしてください!

23話を12時に、24話を17時にアップする予定なのでお見逃しないようよろしくお願い致します!(本話は23話です)。


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エリオが回復されるときにどの辺にいるのか分からない。敵の足元?
[気になる点] レベル1000の魔獣が神話級なのに、団長や団員がレベル3000とか2000なのはおかしくないかな?と思った レベル1000の魔獣を神話級とまでは言わない方が良かった気が
[一言] エルフ国の騎士団は2000越えが当たり前なのか、カイトは「レベルが上がりやすい」だけで、ステータス的には高くなかったりして、宝剣まで使って3階層の敵で息切れしてたし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ