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31話 尋問

 創世級(ジェネシス・クラス)、『EX、神葬グングニール』で汚染された右腕を切り落とし治癒後、汗を流し着替えて『奈落』最下層訓練場へと移動する。

 そこに『巨塔街(きょとうがい)』に侵入し情報収集をおこなっていた、『ますたー』とおぼしき人物『ミキ』が尋問するため拘束されていた。


「あら? ようやくお話し合いが始まるのかしらぁ。ミキィ、待ちくたびれちゃったぞ☆」


 僕がエリーとナズナを連れて訓練場に顔を出したことに気付き、目隠しされ拘束されているミキが声をかけてくる。


 彼女は椅子に座り手足を拘束され、首には僕の恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カードから出た『SSSR 呪いの首輪』を嵌めている。

 この『SSSR 呪いの首輪』を身に着けるとレベルダウン、魔力、身体能力低下、所持している恩恵(ギフト)の制限など、弱体化する。装着者自ら外すことが出来ず、必ず第三者の力を借りなければ外すことは出来ない。

 とはいえ完璧に能力を封じるのではなく、あくまで弱体化だ。あまりにレベルが高い場合、この状態でもそれなりに戦うことも出来る。


 戦略級(ストラテジー・クラス)茨の束縛(ドルン・フェッセルン)によってさらに拘束。

 ミキの周囲をメイ、アイスヒート、メラ、最後にある意味、今回の当事者であるスズ に見張ってもらっていた。

 アオユキは他襲撃者が居ないか引き続き『巨塔』周辺を監視中である。


 レベル、能力、魔力、身体能力がダウンした状態で茨の束縛(ドルン・フェッセルン)を引き千切り彼女達を倒して、『奈落』最下層から脱出することは不可能だ。


 メイやアイスヒート達は僕の姿に気付くと揃って一礼し、メイが代表して状況の説明をおこなう。


「ライト様が席を外している最中、対象は(わたくし)達に声をかける以外特に怪しい言動はおこなっておりません。ただ……」

「ただ?」


 メイが言い淀み、逡巡する。

 根気よく待っていると躊躇いがちに告げた。


「対象は非常にスズに執着しており、彼女に関する発言を多くしております。中には不快……聞き苦しい内容も含まれておりまして、ライト様が同席し、尋問するのは適さないかと」

「大丈夫だよ、メイ。例えどんな耳に馴染まない内容でも、彼女が重要な情報を抱えているのは確かだ。僕は大丈夫だよ、心配してくれてありがとう」

「いえ……出過ぎたマネを致しました」


 最終的に納得してくれたようだが、メイは奥歯に何か挟まった物言いで下がる。

 彼女らしくない態度に、僕は首を傾げてしまうが、追求するより現在一番興味を抱くミキの尋問をするため彼女へと向き合う。


 ミキは椅子に座らされて、手足を拘束、『SSSR 呪いの首輪』、戦略級(ストラテジー・クラス)茨の束縛(ドルン・フェッセルン)によって完全に身動きが出来ないが、猿ぐつわをしていないため口をきくことは出来た。


 ミキに問い質す前に、エリーへと声をかける。


「エリー、彼女の記憶を読み取ってはいないんだよね?」

「はい、正確には彼女の右頬に刻まれた『誓約蜂(オウス・ビー)』によって、どんな誓約(オウス)が刻まれたのか分からず、手の出しようがないのですわ」


 エリー曰く、『誓約蜂(オウス・ビー)』は一見すると弱々しい蜂モンスターのようだが、実際は魔術で作り出された術式のようなモノらしい。

 本来は相手に、例えば『人殺しをしてはいけません』というような誓約(オウス)を刻み体の好きな場所に染みこませる。

 以後、誓約(オウス)を破った場合、刻まれた相手は死亡するというものだ。

 誓約(オウス)の内容は自由に決めることが出来るらしい。


「彼女がどんな誓約(オウス)を科して自身の体に染みこませたか分からない以上、安易に手を出すことができませんの」

「つまり、例えば『僕達が拷問してでも情報を引き出そうとしてくる場合、自分が死亡する』なんて条件だった場合、彼女から拷問して情報を引き出そうとした場合、その瞬間に死亡するってことか……」

「はい、そうですわ」

「エリーなら解除か、誓約(オウス)の内容を解析することは出来ないの?」

「申し訳ございませんわ。どうやら特殊な術式を使っているようで、一度体に染みこんだ『誓約蜂(オウス・ビー)』を解術することも、その内容を読み取ることもすぐには不可能ですの」


 例え『SSSR 高位呪術祓い』でも不可能で、染みこんだ部分を抉り取り、エリーの極限回復アルティメット・リーフで回復するというやり方も意味がないとか。

 あくまで表面上、顔に入れ墨の如く蜂の姿が描かれているが、『誓約蜂(オウス・ビー)』は魂に刻む術式。表面上の入れ墨部分を抉っても意味がないらしい。

 ミキはその辺りまで計算して自ら『誓約蜂(オウス・ビー)』を刻んだようだ。


「……つまり僕達が彼女から情報を引き出すためには、拷問も、魔術で記憶を読み取ることも、薬物等で意識を混濁させるなども出来ないということか」

「正解~。全てはミキィの胸先三寸次第なんだぞぉ☆」


 ミキはまともに動けず、目隠しされているにも拘わらず余裕の態度を崩さない。

 彼女は謳うように条件を告げてくる。


「ミキィが持つ全ての情報を引き渡す条件は、ミキィの安全、衣食住の保証、そして……スズちゃんとのラブラブ結婚を認めることよぉ!」

「…………」


 一応、話は聞いていた。

 ミキがなぜかスズに一目惚れして意味不明なプロポーズをしてきたと。

 その結果、亡命したと耳にして最初、何かの冗談と思っていたが……。


 僕はなんだか頭が痛くなって、無意識に片手でグリグリとこめかみを押す。

 気持ちが落ち着いた所で改めて問い返した。


「身柄の安全や衣食住の保証は約束してもいいけど、スズとの結婚に関しては認めることは出来ないよ」

「あら、どうしてぇ。ミキィとスズちゃんを結婚させてくれれば全面的に協力するのにぃ? 貴方は彼女達より立場が上の人なんでしょ? なら部下に命令すればいいだけじゃない」


 ミキの言葉に僕はスズを振り返る。

 彼女は青い顔で足をガクガクと震わせていた。

 余程、ミキが苦手らしい。

 だが、僕が命じればスズはそれでも身を捧げ、ミキと結婚して彼女に尽くすだろう。

 僕が命令すれば……。


 僕はミキへと向き直り拒否する。


「断る。確かに僕が命じればスズは貴女と結婚するだろう。でも、スズは貴女との結婚を嫌がっている。スズや……他の皆も僕にとってただの部下やメイド達じゃない。大切な家族、仲間なんだ。家族でもある仲間が嫌がることを強要することなんて、出来る訳がない! 例え、それで僕達にとって重要な情報を得られなかったとしてもだ!」


 僕は信じていた仲間達『種族の集い』メンバーに裏切られ、殺されかけた。

 あの時ほど絶望し、悲しかったことはなかった。

 そんな苦しみを僕の恩恵(ギフト)『無限ガチャ』から出た彼、彼女達に味わわせることなど出来る筈がない……!


 僕の言葉にスズだけではなく、他の皆が感動した視線、表情、眼差しを向けてくる。

 少々照れくさいがこれが僕の嘘偽りのない想いだ。


「エリー」

「はい、なんでしょうかライト神様(しんさま)! ライト神様(しんさま)のご命令ならばわたくし、どんなことでも致しますわ!」


 僕の発言に感激したエリーが気合を入れて返事をしてくる。

 僕は微苦笑しながら、指示を出す。


「彼女が死亡しても構わないから、情報を抜き出す試みをしてくれ。手段は問わない」

「畏まりましたわ。出来る限り情報を引き出せるよう努力いたしますわ!」

「ちょ! ちょっと待ってぇ! 待ってよぉ!」


 死亡してもいいから、出来る限り情報を抜き取る方向に転換した僕達に対して、ミキが慌てて声をあげる。


「スズちゃんとの結婚は一端保留にするわぁ! だから、交渉しましょう?」

「交渉?」

「ええ、ミキィが知る情報を提供するから、その見返りが欲しいのよぉ。ミキィが欲しいモノをそっちが融通することで、貴方達も欲しい情報を得られる。どう? 公平でしょ?」

「…………」


 確かに一見公平だが、一体何を求めてくるつもりなのだろうか?


 僕は訝しがりながらも、とりあえずミキの条件を尋ねる。


「……言いたいことは分かった。で、そちらは何を望むんだい?」

「もちろん! スズちゃんとのぐちょぐちょ濡れ濡れガチンコ生○○○○よ! それでとりあえずは手を打つわ!」


 場の空気が凍り付く。

 スズは青い顔をしていたが、僕の言葉に赤くなり、再びミキの要求に気絶しそうなほど顔色を悪くする。


(……ミキから情報を引き出すのは諦めて、始末した方がいいんじゃないだろうか)


 僕はつい真剣に検討してしまう。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


引き続き頑張って書いていきますので、何卒宜しくお願い致します!


また最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
地獄へ落ちろー!
もう情報を聞き出そうという下手なスケベ根性出さずに始末したほうがいいと思う。
誓約蜂の契約をエリーが研究もせず即断で解析不能というのはどうも違和感がある。 亡命したんだから半分仲間ということで進むんだろうか。
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