22話 Cがいる?
「召喚! 『アシッド・ビー』! 『アーマー・ビー』! 『エクスプロウシェン・ビー』!」
正体を現した敵、見た目は可憐な少女のミキが、連続で僕達を前にしてモンスター蜂を召喚する。
僕達――僕とナズナとアイスヒートが彼女を囲むと転移アイテムを使い逃走しようとしたが、転移阻害によって逃げられないと知り、腹をくくったのだろう。
彼女が召喚した『アシッド・ビー』は、針の代わりに酸のように物を融かす液体を噴射。
『アーマー・ビー』は硬い鎧を身に纏った蜂で、防御能力が高く鋭い顎で僕達に攻撃をしかけてくる。
一番厄介なのは『エクスプロウシェン・ビー』だろう。
「深紅に燃えろ! ファイアーストーム!」
アイスヒートが右腕を振ると、炎の嵐が蜂モンスター達を飲み込んでいく。
『アシッド・ビー』、『アーマー・ビー』だけではなく、当然『エクスプロウシェン・ビー』も燃やすが……。
ドンォン!
ファイアーストームによって燃やされた『エクスプロウシェン・ビー』が爆発。しかも意外と爆発力が高く、蜂達に斬りかかり飛びかかったナズナが地に足をつけていなかったせいで、爆発に吹き飛ばされゴロゴロと床を転がる。
吹き飛ばされて床を転がっただけのためダメージは無く、すぐに飛び起き大声で怒鳴る。
「この! よくもやったな蜂女め!」
「も、申し訳ありません! ナズナ様!」
タイミング悪く爆発させてしまったアイスヒートが慌てて謝罪するが、ナズナは気にせず敵意をミキへのみ向ける。
ナズナに怒鳴られているミキはというと――不本意そうに視線を向けつつも脱出のための努力を継続させていた。
「『エクスプロウシェン・ビー』、壁に固まって! 起爆!」
壁の一部に『エクスプロウシェン・ビー』が塊となり、爆発する。
密着状態で爆発させたせいで、『巨塔』の壁は耐えきれず崩れてしまう。
その光景にミキは希望を見いだすが、
「やった! これを繰り返してミキが通れる穴を開ければ外へ出られるわぁ! 外に出さえすれば『マジックカード、空を駆ける翼』で逃げることが――ッ!?」
しかし、彼女の希望は壁が生物の如く修復されていく姿を目にして絶望と驚愕に彩られる。
「はぁぁぁッ!? どうして壁が修復するのよぉ! 折角壊したのにこれじゃ出られないじゃない!」
『転移術、アイテム』対策だけではない。
以前のエルフ女王国最強の『白の騎士団』戦の時もそうだったが、敵を外部に逃さないために、『禁忌の魔女』エリーが彼女の魔力とリンクさせて転移阻害や『巨塔』の破損部分の修復をおこなっているのだ。
生半可な攻撃では、現在の『巨塔』の壁を傷つけても直ぐに修復してしまう。
ちなみにメイは予備戦力として待機で、アオユキは『巨塔』周辺の監視をしてもらっている。
他はいつでも動けるように待機中のため、ミキが単独でここから抜け出すのはほぼ不可能だ。
僕は改めて降伏勧告をする。
「無駄な足掻きは止めて降伏することをお勧めするよ。今、大人しく降伏するなら、もしかしたら僅かだけれども、情状酌量の余地が残るかもしれないよ?」
「……最悪、本当に最悪。貴方達、本気でなんなのよぉ。竜人種側マスターがちょっかいを出したって聞いたからちょっと確認のために潜入したら理不尽ばっかり起きるし……。あいつら、もしかしてミキィ達を嵌めるためわざと情報を流したのかしらぁ?」
「竜人種側ますたー?」
「はぁぁ!? とぼける意味分からないんですけどぉ! 趣味が悪いカイザーや陰キャ黒、爆弾魔、魚おじさんじゃこんなの思い付かないから、顔だけは良いヒロか、それこそ陰険細目のヒソミ提案なんでしょ? 本当に最悪! こんなことになるなら立候補するんじゃなかったわぁ」
まるで濁流のようにミキが人物名らしき名称を上げていく。
所々意味不明だが『趣味が悪いカイザー』、『いんきゃ黒』、『爆弾魔』、『魚おじさん』、『顔だけは良いヒロ』、最後はヒソミの名前があがる。
ヒソミは既に接触して知っているが、どうやら竜人種側には他に5人の『ますたー』が存在するらしい。
しかもミキの口調からや声音から、『彼女たち魔人側ますたー』と『竜人側ますたー』は敵対関係と言っても良さそうだった。
僕は思わず目を細める。
「『ますたーかもしれない』と考えていたが、僕達が考える以上に多くの情報を知っているらしいね。身柄を取り押さえて、情報を引き出す必要があるようだ」
「はぁ? なにそれ? 貴方達、竜人種側マスターの部下とか、協力者なんでしょ? ……えっ、もしかして本当に関係なかったりするのかしらぁ?」
「さあ、どうかな。まあどちらにしても、貴女は捕らえて情報を全て引き出させてもらうよ」
「……本当に竜人種側マスターの関係者や部下じゃない……? う、嘘でしょ? ほんとなの? ということは……」
不機嫌そうに眉根を顰めていたミキは、僕の返答に波紋が広がるように歓喜の笑みを作る。
「……ということは、奴らに関係無いのに『長距離転移阻害』や壁の修復が出来て、さらに貴方達のような強いのがここには居るってこと? ならやっぱりここに『C』様が居るってことじゃない!」
「『しー』?」
「そう『C』様! 『C』様が居るからこんなに凄いことが出来るんでしょ? ちょっと行き違いがあったようだけど、ミキィ達は『C』様の味方、仲間よぉ。もう、そうならそうと早く言ってくれればいいのにぃ。それで『C』様はやっぱりこの『巨塔』にいらっしゃるのかしら?」
『しー』は確かヒソミが口にした名称だ。
ヒソミは『しー』と呼ぶ何かを忌み嫌っていた。
彼女は様を付けていることから、その『しー』の部下、崇拝者などなのだろうか?
歓喜の笑みを作っていたミキの表情が、徐々に冷めていく。
僕達の反応からその『しー』が関わっていないと気付いたらしい。
「えっ……ちょっと待ってなんでそんな反応するのぉ? あれ? もしかして『C』様はここに居ないのかしらぁ?」
「……まず、その『しー』とは一体なんだ?」
「……ッ!? 嘘でしょ! ならどうして『C』様の力がないのに、これだけの力を手にしているのよぉ! おかしいでしょ!」
ミキは僕達をまるで未知の怪物のような視線を向けてくる。
「あ、貴方達は一体何者なのぉ?」
その問いに答えるより先に、『巨塔』その物を揺らすような衝撃が襲いかかってきたのだった。
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