18話 シャドー・ビー
(朝、お店の準備をしていたら可愛い子達が4人も来たんですけどぉ~!)
魔人国側マスターのミキは、顔には出さないが胸中で狂喜乱舞する。
『巨塔街』でシリカが営む店の開店準備を手伝っていると、人が店に入って来た。
まだ開店時間ではなく、シリカが笑顔で追い返そうとしたが――相手は仕事で荷物を持ってきた冒険者達だった。
一般的な汗臭いいかつい冒険者なら、ミキはここまで狂喜乱舞しなかった。
今回荷物を持ち込んだ冒険者が一部を除いて、皆ミキ好みの少年少女達だったからだ。
(あの趣味悪いキンキラキンに塗った甲冑男はともかく、仮面を被った黒髪の少年に、マフラーの褐色美少女、田舎から出て来たばかりの新人冒険者っぽい娘とか! ミキィの好みの子ばっかり!)
ミキがこっそり鑑定を使う。
(全員、人種で思ったよりレベル高いわねぇ。黒髪の子は顔に重度の火傷有り? あぁ、だから仮面で顔を隠しているのねぇ)
実際は顔に火傷など無いが、『SSR、道化師の仮面』の力で外部から鑑定で確認されても、『顔に火傷有り』と表示されるようになっていた。
もちろん年齢やステータスなどは全て誤魔化している。
マジックアイテムやスキルなどを使って、『SSR、道化師の仮面』の妨害を突破するほどの強化した鑑定を使えば看破することは可能だが、そこまでの力を使えばこっそりと確認するとはいかない。
明らかに自身を鑑定していると気付くため、対処可能だ。
ミキもそこまで強力なマジックアイテムを人種が所持しているとは想定しておらず、鑑定の結果を素直に受け入れた。
(声からして、あの黒髪少年ダークって子は火傷を治療すれば、絶対に可愛い美少年ショタになるわぁ! ミキィでは治すのがちょっと難しいけど、医療系に特化したドクに頼めば、ちょー簡単に治療してくれるはず。でもぉ、その対価にドクに『ではミキさんの体を是非弄らせてくださいませんか。これも全て人種の未来のためにぃぃぃぃ』って言われそうだから、嫌ねぇ)
仲間……というにはミキもドクも互いに信頼などしていない。
ただ彼・彼女達は『C』へ叶えて欲しいお願い、求めるモノがあるため集まっている集団に過ぎないのだ。
ミキ自身、『C』へ自分好みの美少女少年ハーレムを作りたい、理想の相手を見つけたいという願いを叶えるため魔人種側に付いているのだ。
故に魔人側マスター達は、『C』を敵視している竜人種側マスターとは相容れない。
感覚的には魔人種側に集まっている知り合い同士に近いが、竜人種側マスターが動いた時等、『困った時は協力することもある』と言ったところだろうか。
(でももし火傷を負った彼を治療したら、泣いて喜んでくれるはずよね。そして治したミキィに感謝して、幸せの絶頂を迎えた後、無理矢理押さえつけて、再度顔を焼いて絶望に突き落としたらいったいどんな悲鳴や哀願の声なんかを上げるのかしら……ッ。あぁぁ、想像しただけで体が熱くなって、あそこがキュンキュンしちゃうわぁ!)
ミキはその光景を想像し、1人体を熱くする。
思わずダークをねっとりとした視線で見つめてしまう。
ダークだけではない。
ネムム、リリスへも発情した熱い視線を向ける。
(あのネムムっていう褐色銀髪っ娘なんて、妖精メイド以上に可愛い美少女だし。リリアーナって娘は外の常識を何も知らない田舎から出てきたばかりの女の子のようだし。こういう何も知らない、純粋無垢な娘を全力で汚すのが気持ちいいのよねぇ……まるで誰もまだ足を踏み入れていない、新雪を踏みしめるようだわぁ。ネムムって子はちょっと生意気そうだから、屈するまで拷問してあげたいわ。屈した後はとろけるほど甘やかして、ミキィを信頼し切ったところで裏切るの。ふふふふふぅ……その時、絶対にミキィ好みの可愛い表情を作るんだろうなぁ! あぁあぁぁぁぁ! 今すぐにでも蜂達を召喚してシリカちゃん含めて、この子達の身動きを止めてお持ち帰りしたいわぁ!)
適当にリリアーナからの質問に答えつつ、ミキは胸中で目の前の冒険者達をいたぶるプランを立て続けた。
ちなみに適当と言っても、別に手を抜いて答えている訳ではない。
(行商人の両親が居たっていう実感を持たせるため、竜人種側マスターのヒソミを父親代わりに想像して話しましょう。架空の相手をでっち上げるより、身近な人物を想像して口に出した方が実感力があるって話だしぃ。竜人種側マスターの思想は気に入らないけど、商人をしている人が居て助かったわぁ。うふふふ、ミキィの演技力高過ぎぃ。女優さんでもやって行けるわねぇ)
ミキは『巨塔』調査という事をちゃんと忘れず、真面目に潜り込む努力をしていた。
好みの美男美少女達を前にしても、任務を忘れるほど不真面目ではないのだ。
……今回、その真面目さが徒になってしまったが。
ミキはその事実に気付かず、荷物を置いたダーク達が店を出て行くのを見送る。
彼らの姿が見えなくなった後、シリカの指示に従い開店準備を再開したのだった。
☆ ☆ ☆
――ミキがライト(ダーク)達へ、ねっとりと絡みつくような視線を送っている頃。
無事、『巨塔』内側から抜け出た『シャドー・ビー』が真っ直ぐ魔人国を目指す。
ミキの力で気配遮断能力、基本スペックなどが強化されているため、『巨塔』と魔人国の間を余裕で飛行。
強化された気配遮断能力で敵対生物に襲われることもなく、魔人国へと到着する。
ミキからの第一回報告を無事、魔人国側マスターが受け取った。
ただ問題があるとすれば……最初にこの報告を受け取ったのが、彼女曰く『ダイゴ』だった。
魔人国側マスターの1人、顔に十字の傷を持つ男ダイゴだ。
「あははははははははっ! まさか『巨塔』にレベル500やレベル1000の獲物がこれほど大量に居るなんて! あのミキもたまには役に立つじゃないか!」
ダイゴは珍しく大笑いをすると、早速『巨塔』へ向けて出発する準備を始める。
レベルアップを全てに優先する彼が、レベル500やレベル1000の獲物を前にして我慢できる筈がなかった。
ミキとしてはあくまでこれは第一回報告でしかなく、今後も継続して調査していくはずだった。
もし魔人国マスターのリーダー格であるゴウが手にしていたら、話は別だっただろう。
『タイミングが悪かった』としか言えない。
ダイゴは高笑いしながら、報告メモを手に自室へと戻る。
このタイミングが良かったのか、悪かったのか……結果が出るのはそう遠い未来ではなかった。
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