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16話 意外な訪問者

「うーん……」


 朝、シリカは目を覚ますと、苦しそうに唸り声を上げてしまう。


「なんだろう……覚えていないけど、酷く悪い夢を視た気がするよ」


 とくに夢の中で体験した頬を凶悪な猛獣に舐められる感触はリアルで、『本当に舐められた』と錯覚してしまうほど生々しかった。


 まだ寝ぼけている頭をすっきりさせようと顔を洗いに出る。


「あっ、おはようシリカちゃん」


 廊下に出ると、既に着替え終えたミキが太陽のように輝く笑顔で挨拶してくる。

 その笑顔は同性でも恋に落ちてしまいそうになるほど美しかった。

 シリカは頬を赤く染めつつ、挨拶を返す。


「お、おはようミキちゃん、起きるの早いね」

「昨日お世話になったシリカちゃんに美味しい朝食を作ってあげようと思って、頑張って起きたんだぁ」

「そうなの? ありがとう! でも、折角だから一緒に作ろう」

「もちろん、大歓迎だよぉ」


 ミキは昨夜、『クイーン・フェロモン・ビー』によるシリカへの催眠と尋問など無かったかのように、会話を重ねる。

 シリカ自身も彼女と会話しているうちに、起き抜けに覚えた違和感など綺麗さっぱり消失。

 笑顔で『どんな朝食を作るのか』と楽しげに話をする。


 とはいえ今日は店を開く日のため、凝った朝食を作る時間は無い。

 そのため2人で簡単なスープ、サラダ、昨日買っておいたパンを朝食にする。

 2人は表面上は楽しく会話を交わし、朝食を摂った。


 朝食を摂り終えると開店準備を始める。


「それじゃまず一通り一緒にやって見せるね。明日からは分担してやろう」

「分かったわぁ」


 ミキの色っぽい返事にドギマギしつつも、シリカは彼女に開店準備手順を教えていく。

 掃除、看板出し、集めたゴミの捨て場、商品の陳列などだ。


 商品の陳列作業中、ミキが並べられていく商品を興味深そうに目にした。


「ねぇ、シリカちゃん、これってもしかして『石鹸』かしらぁ?」

「うん、そうだよ。(うち)の売れ筋商品なんだ」

「確か石鹸って外の街でも結構なお値段するわよねぇ。なのにこんなお値段で、本当にいいのぉ?」


 外で石鹸を買う値段の半額、場所によっては3分の1の値段で売られていた。

 元行商人の娘と擬装しているミキでも、疑問の一つも言いたくなるほど安すぎだ。

 この疑問にシリカが笑顔で答える。


「大丈夫だよ、この石鹸は他の街のと違って妖精メイド様が卸している石鹸だから。この値段でも十分採算が取れるんだよ」

「妖精メイド様がぁ?」

「うん、なんでも石鹸とかで積極的に手を洗うと病気になりにくくなるんだって。だから、『巨塔の魔女』様、妖精メイド様達がわたし達が病気にならないよう安い値段で売っているんだよ」


 実際は……ライトの恩恵(ギフト)『無限ガチャ』から大量に『N、石鹸』が排出されていた。

『奈落』最下層だけでは消費しきれないほど毎日大量に吐き出される。ただ眠らせておくのは勿体なかったのと、『巨塔街(きょとうがい)』の衛生のため放出することを決定。

 本来無料でもよかったのだが、それでは逆に住人達に良い影響を与えないと格安で販売することが決まったのだ。


「値段が安くて、病気になりにくくなるっていうから人気の商品なんだ。他の理由として――」

「理由として?」

「妖精メイド様達が積極的に使っているのと、商品を直接運んできてくれるから『妖精メイド様石鹸』としてありがたがられているんだよ」


 お陰で男性陣達も積極的に石鹸で手を洗う習慣が身に付いた。

 食糧事情が良く栄養状態がいいというのもあるが、この石鹸の普及のお陰で病気になる者達が減ったのも確かだ。


 ミキに商品の説明をしていると、扉が開く。

 シリカは笑顔で振り返り、


「申し訳ありません、まだお店は準備中でもう暫し外でお待ちください――」

「客ではないぞ。頼まれた商品を運んできたのだ」

「ゴールド様達でしたか。すみません、勘違いしてしまって」


 シリカが笑顔で外に追い出そうとした人物達は客ではなく、店の商品を運んできた冒険者達だった。


 重い木箱を楽々担ぎ声をあげる黄金の騎士――ゴールドが軽い声音で否定する。

 黄金色の鎧に身を包んだゴールドの後ろに、褐色にマフラーで口元をかくした美少女、黒髪に仮面を被った少年、さらに加えてシリカは初めて見る少女が立っていた。


(いつもゴールド様達は3人で来るのにもう1人いるなんて、新しい冒険者仲間の人なのかな? ……でも、どこか見たことがあるような)


 彼女は胸中で首を傾げつつも、ゴールド達にお礼を告げる。


「ありがとうございます、運んでもらって。わたしだと重すぎて動かすことも出来ず、少しずつ運んで時間がかかってしまうので」

「なに、騎士としてこの程度、当然のおこないだ。礼など言う必要はないぞ」

「それでもお礼を言いたくて。ネムム様、ダーク様もありがとうございます」


 マフラーで口元を隠す美少女ネムム、仮面を被った黒髪のダークが揃って返事をする。


「ゴールドの言葉ではないですが、これも仕事なので気にせず」

「ネムムの言う通り、これも冒険者の仕事だから、そんなに畏まらなくてもいいですよ」


 ダーク達は返事をしつつ、慣れた様子で所定の場所に荷物を置く。


 なぜダーク――ライト達がこんな仕事(クエスト)をこなしているのか?


 ダーク達は表向き冒険者として、『獣人種大虐殺』で『巨塔の魔女』にがっちりと協力して人質となっていた人種(ヒューマン)を助け出したりした。

 以後、ダーク達『黒の道化師』パーティーは、『巨塔の魔女』の仲間だとアピールするため定期的に原生林外から来る荷運び護衛に付いて仕事をこなし、その姿を住人達に見せることで印象に残そうとしていた。

 シリカの店まで荷物を運ぶのも、一種の宣伝、パフォーマンスでしかない。

 一応、まだ少女と呼べる年齢のシリカ1人では、重い荷物を運ぶのは苦労するだろうからたまにこうして運ぶのを手伝っているのだ。


 そんなダーク達の手伝い中、新しいパーティーメンバーらしき少女が、シリカ達へと声をかける。


「そこの少女達、少々よろしいかしら?」

「リリ――リリアーナさん、彼女達に聞きたいことはなんですか?」

「少々彼女達に聞いてみたいことがありまして」


 ダークが、新しいパーティーメンバーに問う。

 リリアーナはニコニコ笑顔で素直に答えた。


 彼女――リリアーナは偽名だ。

 本名はリリス、人種王国第一王女である。


 なぜ彼女がダーク達の冒険者パーティーに居るのか?


 それを説明するには少し時間を巻き戻す必要がある。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


引き続き頑張って書いていきますので、何卒宜しくお願い致します!


また最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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巻き戻る~w
リリアーナ!
[一言] 巻き戻しwwwwww それ、時系列順に、先に書いたら駄目なの?
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