8話 装備進呈
人種王国第一王女リリスから、3つの要望を受け、それに応えることとなった。
その一つ、『リリスのレベル上げをおこなう』について、
(さてリリスのレベル上げか……どうやって彼女のレベルを上げようか)
僕は腕を組み、どうやって効率よくリリスのレベルを上げるか思考する。
僕の時は『奈落』の底へ落ち、『SUR、探求者メイドのメイ レベル9999』を顕現。
彼女のサポートを得て、『尻尾が蛇で巨大な4足獣』のスネークヘルハウンドを倒し、少しずつレベルを上げていった。
途中、『SUR、禁忌の魔女エリー レベル9999』の極限級魔術、『悪夢召喚』によって強力なモンスターを召喚。
倒すことでレベル9999まで上げていった。
ではリリスも僕と同様にスネークヘルハウンドを倒し、『悪夢召喚』でレベル9999まで上げればいいのか?
しかしここで問題が発生する。
スネークヘルハウンドは既に僕達の配下で、仲間を生け贄に捧げるようなマネはしたくない。
そしてリリスは現在、レベル7。
この低レベルで一気に『悪夢召喚』を使い敵を召喚し戦った場合、僕達が補助に付いたとしても、超高レベルモンスター達の強烈な敵意や殺意にリリスが耐えきれず、死亡は確実だ。
僕だって当時はレベル3000を超えていたにも関わらず、メイ達に守られながら苦戦しつつもなんとか召喚したモンスターを倒すことが出来たのだ。
レベル7程度では足手まといになるどころか、超高レベルモンスターが姿を現した時点でリリスの心臓が止まってしまう可能性が高い。
そんな危険なマネを彼女にさせる訳にはいかなかった。
「第一、あくまで彼女が人種王国王女として即位した後、簡単に殺されないためレベルを上げるんだ。別に僕のようにレベル9999まで上げる必要はないんだよな」
せいぜいレベル1000程度あれば十分だろう。
この程度なら、『巨塔』周辺にある原生林で安全にレベルを上げることが出来る。
少々時間はかかるし、効率的ではないが、リリスに死なれても困るため安全性を優先した。
他にも恩恵『無限ガチャ』から出た余っている強すぎない装備の中から、彼女が持ってもデザイン的に問題無い武器や防具、マジックアイテムを選んでいく。
この中からリリスに好きに選ばせればいいだろう。
こうして僕はリリスのレベル上げプランを立てるのだった。
☆ ☆ ☆
第一王女リリスのレベル上げ当日。
リリスはいつもの『巨塔』4階執務室ではなく、3階の広場へと顔を出す。
彼女の目の前には恩恵『無限ガチャ』から排出された武器、防具、マジックアイテムが複数のテーブルに並べられている。
リリスはそれらを前に震える声音で問う。
「あ、あのライト様……こ、これらの武器や防具、マジックアイテムを貸し出してくださるのは本当ですか?」
「いえ、貸し出すのではなくリリス様に差し上げますよ。なので気に入ったのがあったら遠慮無く選んでください」
「!?」
僕の言葉になぜかリリスが絶句する。
(別にそこまで強い武器防具はないし、不味いことは言っていないよね? なのに何でそんなに驚いているんだろう?)
意味が分からず僕はつい首を傾げてしまう。
リリスが震える声音でツッコミを入れてきた。
「目の前にある武器、防具、マジックアイテムはどれも見るからに一級品! 幻想級も混じっていますよね!? 幻想級は一国にいくつかしかない国宝ですよ? 人種王国なんて一つあるかどうか……それを下さるなんて、ライト様、本気なのですか?」
彼女の指摘でようやく互いの認識の差を理解する。
リリスの前に並べられた品物は、僕達にとって取るに足らない物ばかりだ。
確かに幻想級も混じっているがカードで複数排出されている上に、僕達が遣うには性能が低すぎたり、耐えきれない物ばかりである。
とはいえ地上では一国にいくつかしかない国宝扱いされる物を、『貸すのではなく差し上げる』と言われたら驚くのは当然だ。
しかし本当に僕達からすればいらない物しかない。なので素直に伝える。
「もちろん本気です。どれも余っていたりする物なので遠慮無く貰ってください。なによりこれからレベル上げでリリス様自身が戦わなければならないのですから、装備品に手は抜けません。将来も含めて、リリス様の身体を第一に考えれば当然のことですよ」
「わ、私の身を案じて……あ、ありがとうございます」
リリスはなぜか頬を微かに染めて、いそいそとテーブル前へと移動する。
僕は首を傾げつつも、妖精メイド達のアドバイスを受けつつ、装備品を選ぶリリスの背中を見守った。
1時間近くかけて、リリスが装備品を選ぶ。
装備が整った所で、今回、彼女のレベルアップを手助けするメンバーを紹介する。
「今回レベルアップをおこなう場所は、『巨塔』側の原生林の奥地です。木々が多く、視界が悪いのでモンスターの発見が難しく、奇襲も受けやすいため索敵や斥候技術に長けたスズとネムムの2名に、また万が一モンスターからの奇襲を受けてもリリス様を守ることが出来るように、要人警護技術も持つ騎士ゴールド。最後に僕が同行させて頂きますね」
僕の紹介にスズ、ネムム、ゴールドが黙って一礼する。
リリスも彼らの一礼に、頭を下げ『よしなに』と答えてから僕へと疑問を問う。
「レベルアップをおこなう場所や人員は理解致しましたが、ライト様にもご協力頂けるのですか?」
「僕らがシックス公国会議に護衛として同行する際の訓練も兼ねているので。その際は僕、ネムム、ゴールドが冒険者としてリリス様に同行するのでよろしくお願い致します。特にネムムは同性として、会議当日は一番長くお側に居ると思いますので」
まだ冒険者A級にはなっていないが、暇を見つけて地上に出て級を上げるつもりだ。
なので問題なく会議に護衛として出席することが出来るだろう。
「まぁ、そうなのですか? ネムム様、今回のレベルアップだけではなく、シックス公国会議の時も是非よろしくお願いしますね」
「リリス様、自分のような護衛に敬称は必要ありません。どうぞ『ネムム』とお呼びください。シックス公国会議当日は自分の方こそどうかよろしくお願いします」
ネムムが敬意を払いつつ、改めて一礼する。
アオユキとエリーの一件もあったため、ネムムがリリスに敵意を抱いていないか事前に聞き取り調査をしていた。問題が無かったため、内心で安堵する。
また直接顔を会わせて話をした限り、そこまで相性も悪くなさそうだ。
リリスは人種王国とはいえ生粋のお姫様。
ネムムは暗殺技能に長けた人物のため、当然ながら護衛知識にも精通している。故に護衛対象としてリリスとの相性が悪くないようだ。
……本来であれば、リリスのレベルアップ補助に、『奈落』で最も原生林を熟知しているアオユキに案内や護衛を頼みたかったが、どうも彼女やエリーはリリスを敵視している。
一応前回釘を刺しているため、彼女に手を出すようなマネはしないだろうが……レベルアップ手伝い中に空気が悪くなっても嫌なのと、アオユキの心情を考えてメンバーから外した。
『巨塔』原生林に精通しているアオユキが外れたとしても『UR、両性具有ガンナー スズ レベル7777』、『UR、レベル5000 アサシンブレイド ネムム』が居れば問題はない。
こういう層の厚さが僕達の強みでもある。
「さて、準備も整った所で、早速原生林に移動しようか」
僕の掛け声に、皆が声をあげる。
僕はその返事を聞いて、一つ頷くと『SSR、転移』カードを取り出し、『巨塔』側の原生林へと『転移』したのだった。
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