1話 旅立ち
0章0話は短編と内容が一緒です。
0話はそのため長いですが、次の1章1話から普通の長さになります。
また短編を読んだ読者様は1章の『1話 旅立ち』以降が無限ガチャの新作部分になります。
「とうちゃん、かあちゃん……ただいま」
僕ことライトが獣人種ガルーへ無事に復讐を終えた後、世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』から出て初めに向かった場所は――元故郷に作った両親の墓前だ。
なぜ『元』故郷かというと、村は魔物か、山賊か、軍隊か、それ以外の何かなのかは分からないが破壊し尽くされていたからだ。
レベル上げ等様々な制約を乗り越え『奈落』から出られるようになって、村の様子を見に行くと既に故郷は蹂躙、両親、村人は殺し尽くされ死体もそのまま放置され建物、畑、家畜小屋なども焼き払われたのか焼け落ちていた。
原因を特定しようにも、時間が経っているせいで風化が激しく、犯人が魔物なのか、他種の手による犯行なのかも分からない。
唯一の幸運は、無数の死体の中に僕のにぃちゃん、妹のユメの死体がなかったことだ。かなりの広範囲、周辺を探したがやはり遺体はなかった。
(もしかしたら2人は無事に逃げ出して生きているかもしれない……)
僕はついそんな希望を抱き、外で情報収集をおこなっている配下に2人の捜索と、村を滅ぼした原因、犯人捜しも命じていた。
そして両親やお世話になった村人、友達だっただろう子供達の遺体を回収し、墓を作ったのは約半年前のことだ。
「…………」
墓前に手にした花を置き、両親、村人達が無事に女神様の元へ旅立つことを祈る。
祈りを終えると立ち上がり、膝に付いた土を払う。
「……もういいのか?」
僕の祈りを見守っていた護衛兼冒険者仲間となる1人、『UR、レベル5000 黄金の騎士 ゴールド』が声をかけてくる。
『黄金の騎士』の文字通り、頭から爪先まで身に纏った甲冑、背負った盾も黄金色で非常に目立つ恰好をしていた。
攻撃能力はそこまで高くないが、防御力に特化しているタイプのため今回の同行に抜擢された人物である。
「とうちゃん、かあちゃんに挨拶や近況も伝えることが出来たから」
「ならさっさと出発するぞ。日があるうちに目的地について宿で休みたいからな! 我輩、初日から野宿とか嫌だぞ」
「ゴールド! ライト様がお心を痛めているのにその言い草はなんだ! 少しはお気持ちを考えて発言しろ! それから敬語を使え!」
ゴールドの隣りに立つ少女が、彼の発言に対して激怒する。
彼女も護衛兼冒険者仲間となる1人、『UR、レベル5000 アサシンブレイド ネムム』だ。
肩より少し上の綺麗な銀髪で、口元をマフラーで隠し、褐色の肌をした17、8歳の美少女である。
先程まで墓参りをしていた僕を、オロオロと心配そうに見つめていた。
まるで自身の胸にナイフを突き刺し抉られているように苦しげに見守っていたのだ。
故にゴールドの無頓着な台詞に激怒してしまったのである。
しかしゴールドはネムムの発言など一切気にせず、肩をすくめる。
「敬語なんて親しさが演出出来なくてつまらないだろ。それにネムム、お主だって初日から野宿など嫌だろ?」
「貴様と一緒にするな! 自分はライト様と一緒なら例え草の上、泥の上、ゴミの中でもお供するぞ!」
「我輩だって主と一緒ならば極寒の冬山でも、灼熱のマグマの上でも共にするぞ。主に黄金の忠誠を捧げることこそ、『黄金の騎士』の騎士道精神だからな。……しかし主の快適な睡眠環境を考えるならば、野宿を避けようと考えるのは当然の配慮ではないか?」
「ッゥ!? た、確かにライト様の睡眠や健康を考えるなら初日から野宿は避けるべき……」
「言いたくはないが、エリー殿を筆頭に忠誠心をひけらかすようなマネをし過ぎるのもどうかと思うぞ? あまり押しつけて主から嫌われても知らぬからな」
「そそそ、そんな訳ないだろ! ライト様が自分達をき、きき嫌うなど! なにより例えき、き嫌われても敬虔な従僕としてひたすら尽くすのみ! 例え死して、魂になったとしてもひたすら尽くすのみだ!」
ゴールドは呆れたように声音を漏らし、ネムムは本来切れ長で美しい瞳を涙目にして声を震わせる。
2人が意図してやった訳ではないが、しんみりとした雰囲気は新鮮な空気に吹き飛ばされたかのように入れ替わった。
僕は思わず笑みを零してしまう。
「大丈夫だよ、ネムム。僕が皆を嫌いになるはずないだろう。ゴールドもあんまりイジメちゃ駄目だよ」
「ライト様っ!」
「主は優しすぎるし優秀すぎる。ちゃんと口にせんと駄馬には伝わらぬこともあるというのに……」
ネムムは光が灯ったように『ぱぁあ』と表情を明るくし、ゴールドは『やれやれ』と呆れたように手を広げ、肩をすくめる。
「さて、行こうか。僕も初日から野宿は勘弁してほしいからね」
実際、野宿になったら無限ガチャから得たカード『SSR、転移』の力を使って一度『奈落』まで戻ればいいだけだ。
出かけた初日から『奈落』に戻るのは僕も気まずいから避けたいところだ。
両親の墓に背を向けると、アイテムボックスから恩恵『無限ガチャ』で出た『SSR、道化師の仮面』と黒いフードを被り、杖を手にする。
「…………」
出発する前にもう一度だけ両親の墓を振り返る。
(『種族の集い』メンバーに『奈落』で『ますたー』ではなかった僕は、念のために殺されそうになった。そのことと全く関係なく、僕が産まれ育った村がたまたま運悪く皆殺しにあい、壊滅することなんてありえるのか?)
普通に考えれば『否』だ。
いくら原生林近くの開拓村でモンスターや盗賊の襲撃があったからといって、ここまであからさまに滅亡するなどありえない。
(相手は国で、念のため僕を殺そうとした奴らだ。僕の産まれ故郷だから潰した可能性は十分にある)
そこまで徹底する理由は分からないが可能性は無視できない。
もし本当に国家が『念のため』僕の村すら潰したとしたら――。
「とうちゃん、かあちゃん、村の皆――僕は絶対に真実を明らかにするよ。『ますたー』とは何か、どうして僕が殺されなくちゃならなかったのか、村を潰した者達は誰なのか、そして……僕を裏切り、殺そうとした『種族の集い』メンバー達への復讐。絶対に達成してみせるよ」
そして全ての真実を知り世界が歪で悲惨な悪ならば、僕は躊躇わず死と破壊と殺戮、絶望の『猛毒を与える者』として世界を地獄の業火で焼き尽くしてくれる!
「「ッゥ!?」」
僕に対して魂まで捧げるほどの絶対的忠誠心を持つネムムや、フルフェイスの兜を被りいつも飄々とした態度を取るゴールドでさえ息を呑み怯えを示す。
近くの原生林から鳥達が飛び立ち、獣、魔物も問わず遠くへ逃げ出すのを感じ取った。
「――――」
このままでは街に入るどころか近付くことも出来ないため気持ちを落ち着かせる。
数秒も経たず、普段と同じ気持ちへと落ち着かせ、
「とうちゃん、かあちゃん、皆――行ってきます」
挨拶を終えると、墓前に背を向ける。
「……それじゃ行こうか」
「は、はい、どこまでもお供します!」とネムム。
「主よ、街中で先程のような殺気を撒き散らすなよ。我輩達ならともかく、あんな殺気を一般人が浴びたら心臓が止まるぞ」
僕が歩き出すと、ネムムは先程の怯えを誤魔化すようにどもりながらも元気よく声をあげ後へと付いてくる。
ゴールドも小言を口にしつつ、歩き出す。
――こうして僕自身の復讐、真実を知る物語が始まりを告げたのだった。
本作『【連載版】信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
短編でアップした際、皆様から本当に予想以上の反応を頂きました。読んで下さった皆様、感想を下さった皆様、本当にありがとうございます!
あまりの予想を遙かに超える皆様のお声に驚き震え、そしてそのお声に後押し頂き無事連載版の執筆にとりかかりこうしてアップすることが出来ました。こうしてあの続きが書けるのは、短編版を読んで頂き、応援して下さった皆様のお陰です。本当に、本当にありがとうございます!
ちなみに0章0話は短編版をそのままアップさせて頂き、1話からその続きを書かせて頂きました。
最初は短編版を分解し、連載版として書き直すことも考えたのですが……読み直すとなんかよく分からない勢いが0話にあるんですよね。
この勢いが皆様に多数の応援を頂けた要因の一つかと考え、残す方向に致しました。
連載版となり、短編に出ているこの勢いを最後まで途切れさせず、長い道のりになりますが、最終話まで行ければと考えております。
なのでよろしければ最後までお付き合い頂ければ幸いです!
どうか今後も末永くよろしくお願いいたします!
また初日ということで2話連続でアップする予定です。
2話は今日(4月17日金曜日)の17時にアップさせて頂ければと思います。
是非チェックして頂けると嬉しいです!
では最後に――【明鏡からのお願い】
『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。
感想もお待ちしております。
今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!




