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18話 冒険者殺し

今日は17話を昼12時、18話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は18話)。

 結局、ゴールドだけがその場に残り熊獣人達と飲むことになる。

 僕とネムムは精算した金銭を持ち、宿泊している宿へと帰宅した。

 いつも通り恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カードで部屋をクリーンにしてから、装備を外しくつろぐ。


 ネムムは先程のやりとりがまだ尾を引いているらしくぷりぷりと怒り続けていた。


「まったく! どうして地上の奴らはあんなにも下品なのでしょうか! ダーク様の生活環境に甚だ相応しくありませんよ!」

「気持ちは分かるけど落ち着いて。冒険者達との一件はともかく今の所、僕達の狙い通り進んでいるんだから。そう目くじらを立てないで」


 現在、僕達は5階層雪原まで到達。

 需要の大きい氷魔石を大量納品することで、冒険者ランクも一番下の駆け出し(F級)から1人前(D級)にランクアップした。

 ランクアップ速度は、この街が始まって以来もっとも早いらしい。人種(ヒューマン)なのに、とギルドのドワーフ種達からは驚かれている。

 さらに僕達にとっての朗報があった。


「それに最初は広すぎて持て余すかもと思っていたけど、『転移』カードで『奈落』に戻れると分かったお陰で色々はかどっているしね」


 ダンジョンが広いのと5階層に到達できる冒険者達が少ないお陰で、潜っている間はほぼ人目を気にする必要がなくなった。

 とにかく広いので他者の存在を気にする必要がないのだ。

 5階層雪原でイエティー狩りをゴールド達に任せて、僕1人で『奈落』へ一時帰還。


『無限ガチャ』を回したり、エリーに任せている『エルフ種サーシャ復讐計画』の進捗状況を確認できたり、『奈落』を任せている者達と顔を合わせて話をすることなどが出来るのだ。

 ここは僕達にとって都合が良いダンジョンのため、多少地上の冒険者の素行が悪くても許容範囲である。


(……まぁ、ネムムに『殴ってください』と詰め寄ることを素行不良と片づけていいものか悩むけど)


 酒場での一件を思い出し、再び笑いがこみ上げてくる。

 とはいえ全てが順調という訳でもない。

 問題は当然あった。


「ただこれ以上氷魔石を納品しただけでは、冒険者ランクが上がり辛いのが問題かな」

「ダーク様のご活躍を目にして、さっさとA級に上げないなんて。ギルド員の目は節穴もいい所ですよ」

「ギルド員の目が節穴かどうかはともかく、冒険者になってまだ日が浅いからランクを上げられないと言われたら引き下がるしかないよ」


 冒険者ランクはギルドが決めている。

 一般的に実力、貢献度、冒険者期間、素行などを勘定してランクを上げているらしい。

 氷魔石の納品のお陰でギルドに対する貢献度は高いが、冒険者になってまだ日が浅く期間が足りないと言われてしまった。


『わたし達としてもすぐさまダーク様達をC級(熟練した冒険者)に推薦したいのですが、冒険者となった期間が短過ぎて難しいのです。周囲が認めるような功績があれば、押し切ることも出来るのですが……』


 氷魔石を納品しているが、要求難度の上下はあれど冒険者の一般的な仕事でもある。

 さすがにこれだけでC級へ上げるのは難しい。


『本来3、4年の所ですが、後1年冒険者を続けて頂ければC級に上げることが出来ます。それ以上はわたし達でも難しくて……。お、怒ってませんか? 怒っていませんよね? 怒って他の街に行くとか言いませんよね! お願いします! わたし達を見捨てないでください! なんでもしますから!』


 ドワーフ種の受付嬢に最後の方は涙目で訴えられた。

 さすがに制度的に難しいのでは、ゴネる訳にもいかず引き下がった。

 ネムムも当時のやりとりを思い出し、『ガリッ』と奥歯を鳴らす。


「あの受付嬢め、ダーク様に色目を使って……浅ましい」

「別に色目なんて使っていないと思うんだけど……。ただ他ダンジョンに場所を移されるのが怖くて怯えているだけだと思うよ?」

「いいえ、自分も女だから分かります。あの受付嬢はダーク様に色目を使っていました。仮面でお顔をお隠しになっているとはいえダーク様の闇夜のように黒い髪、雪原のような白い肌、天上ハープより綺麗な声音――それを前に女性が色目を使わぬなどありえません! ダーク様はもう少し、ご自身の可愛らしさを自覚した方がよろしいかと。受付嬢だけではなく、女冒険者に声をかけられても安易に付いて行っては駄目ですよ」


 まるで溺愛している弟に注意をうながす姉のような台詞を口にした。

 実際、復讐を忘れないため僕の体は12歳に固定され、ネムムは18歳前後の見た目をしている。

 なので第三者からすれば『弟と姉』に見えなくもないが、実際はもう15歳になるのだ。

 知らない人に付いていっては駄目など、注意される年齢でもないが、僕の身を案じて忠言してくれているのは確かなのだ。

 ここは素直に受け入れておくべきだろう。


「うん、気を付けるよ」

「お言葉を聞き入れてくださりありがとうございます。またダーク様の安全を確保するためにも自分が常にお側に居るのでご安心してください。我が身命に懸けて、絶対にお守り致しますので」


 自分の意見を聞き入れてくれたのと、忠誠心を発露する場を与えられたのが嬉しかったのかネムムが生き生きとした表情で発言する。

 彼女達の忠誠心はもちろん嬉しいが、少々大袈裟過ぎる時もある。


(もう少し、肩の力を抜いてくれたらいいんだけど……)


 こればっかりは命令してどうこうなるモノではない。

 僕は軽く息を吐き、話題を変える。


「ネムム、そろそろ良い時間だからいつも通り注文して、下から料理をもらってきてくれないか?」

「了解致しました。……必要なことと分かってはいますが『奈落』より不味い料理に金銭を払い食べないとならないのは、微妙に損をした気持ちになりますね」

「あははは、確かに。でも食べないわけにもいかないからね」


 僕達がその気になれば『奈落』へ一度戻ったり、恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カードで得た料理を食べることが出来る。

 しかし『高級宿屋に宿泊しているのに、一度も食事を摂らない』のはいくらなんでも不自然だ。

 故に宿に戻り宿泊する時は、なるべく食事をお願いするようにしていた。


「ネムムの言葉通り『奈落』での食事の方が『無限ガチャ』カードから出る食材や調味料、調理してくれる料理長のお陰で美味しいけど、貧農時代に比べれば天国だよ」


 僕は瞼の裏の故郷を思い出し、語る。


「とうちゃん、かあちゃんが自分達のご飯をにぃちゃんや僕や妹のユメに譲ってね。それでも足りなくて水を飲んだり、森に入って食べられそうな物を口にするんだ。それでもお腹を満たすことが出来なくてね。ネムム、知っている? お腹が空き過ぎると、空腹を感じなくなるんだよ? あの時代に比べたら食べられるだけ本当にありがたいよ」

「ダーク様、お労しい……ッ」


 なぜかネムムが目頭にハンカチを当てて嘆く。

 別に彼女を悲しませるつもりはなかったのだが……。

 ネムムのような女の子には少々刺激が強すぎただろうか?


『ドンドン』と扉が鳴る。


 目頭にハンカチを押し当てていたネムムだが、すぐさま仕舞い、警戒態勢を取った。

 気配から扉の外に居るのはゴールドだと僕達は気付いているが、念のため仮面も被り直す。

 準備を整えた後、頷き扉を開くようネムムへと促す。


 彼女が扉を開くと、見慣れた黄金甲冑が部屋へと入ってくる。

 その歩みは些か足早だった。

 ネムムが扉を閉めて一拍おき、仮面を取り外す。


「飲み会の割には随分早い帰宅だね。何か問題でも起きたの?」

「さすが我輩の主、慧眼だ。実は冒険者ギルドで面白い話題が上がってな」


 ゴールド曰く――獣人種達と飲み会をしている最中に、ギルドからダンジョン内部で冒険者を狙った『冒険者殺し』が横行していると発表された。

 種族、年齢、外見的特徴など情報は皆無だが、人種を中心に冒険者が狙われているらしい。


 ダンジョン内部で採れる魔石、モンスター素材、鉱物、薬草類などは大切な資源だ。それを取りに潜る冒険者を減らすようなマネはギルド側としても見過ごすことは出来なかった。

 自分達の食事に砂をぶっかけるような所業だからである。


 故に『冒険者殺し』に懸賞金を懸けるらしい。


「情報だけでも良い金額をもらえるが、我輩達にとっては金銭はどうでも良いことだ。むしろ」

「僕達が真っ先に『冒険者殺し』を押さえれば、ランクアップの後押しになるから急いで戻ってきたんだね?」

「ご名答だ。主の恩恵(ギフト)であれば『冒険者殺し』の特定もそう難しいモノではないだろ?」

「うーん、どうだろう? 『無限ガチャ』から排出されるカードは千差万別で強力なカードが多いけど、直接犯人を特定するようなカードは無かったはず。とはいえ皆の協力と、カードを上手く駆使すれば『冒険者殺し』の特定は難しくないと思うよ」


 例えば一度『奈落』へと戻り、捜索の手を増やす。

『SSR、存在隠蔽』で存在を隠し、『SR、飛行』で空を飛び探し回れば『冒険者殺し』発見の可能性は非常に高い。


「ならばこれからすぐ『奈落』へと帰還――ッゥ!? ダーク様!」


 ネムムが意見具申を中断し、叫ぶ。

 彼女の注意とほぼ同時に、僕達も異変に気付く。僕は仮面を着け直し、ゴールドも盾を構えて僕を護る位置に立ち臨戦態勢を取る!


 部屋の空間がぐにゃりと歪み、何かが現れる。

 最初はうっすらとしていたそれは、血を纏った人の姿となり床へとゆっくりと落ちていく――


「……ミヤちゃん?」


 床に意識を失い倒れた少女は、僕が『SSR、祈りのミサンガ』を贈った少女だった。

 彼女の左手に巻かれたミサンガは役目を終えたと言わんばかりに、千切れて手首から落ちてしまったのだった。


本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


個人的に『奈落』地下の食糧事情やライトの過去貧農時代の食生活をかけてよかったです。

出来れば今後は番外編で、食料&食事事情などにも触れていければと思います。

また『冒険者殺し』、そしてミヤがどうやってライト達の部屋に現れたのか?

今後も是非お楽しみに!


また今日も2話を連続でアップする予定です。

17話を12時に、18話を17時にアップする予定なのでお見逃しないようよろしくお願い致します!(本話は18話です)。


では最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
人間種の国が貧しいのは食料輸出では買い叩かれ 塩の輸入ではぼったくられてるせいですよね
一生大切にするって言ってたのに…。命の対価とはいえ、この世界は厳しいなぁ…
[一言]  さすがSSR、強烈な効果ですね  ミサンガご苦労…今は休め…
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