14話 番外編 メイド達の雑談
今日は13話を昼12時、14話を17時にアップしました。前話未読の方はそちらから読んで頂ければ幸いです(本話は14話)。
『奈落』の地下妖精メイド部屋に、部屋の主である妖精メイド4人が集まっていた。
妖精メイド達は基本4人部屋で、部屋ごとに仕事のローテーションが設定されている。
今日、彼女達は休日だった。
妖精メイド達はレベル500あり、この『奈落』ではほぼ最弱と言って良いレベルだが、地上の一般冒険者と比べればかなり高い。
故に単純な疲労など気にすることはないし、無限ガチャカードでの召喚主であるライトのために、それこそ過労死するほど働きたいのが本音である。
しかし、定期的な休日は決められたことであり、主の命令に逆らうなど、彼女達の存在意義に反する。
そのため手持ちぶさたで、昼間からテーブルを囲み雑談しているのだ。
テーブルには恩恵『無限ガチャ』から出たNカード食品が並ぶ。レアリティの低いNカード食品を売店に並べ、彼女達でも購入できる仕組みを作っていた。
話題は当然、彼女達のご主人様、主、存在意義、神――であるライトについてだ。
「ご主人様が転移で、『奈落』に明日戻ってくるらしいよ」
見た目はとんでもない美少女だが、そのせいか逆に個性が薄くなっている気がする妖精メイドがお菓子を摘まみつつ告げてくる。
「『奈落』とは違って外はダンジョン内外関係なく『転移』カードが使えるそうですね。『奈落』も最初から『転移』カードが使えれば、主様もいらぬ苦労をせずにすんだのですが」
眼鏡を掛けた生真面目そうな妖精メイドが、フレームを無意識に押し上げ溜息を漏らす。
隣に座るギャル系妖精メイドが、何度も頷きながら同意した。
「分かる分かる~。ダンジョンにも色々個性があるとは聞いてたけど、『奈落』はその中でも極悪な仕様だよねぇ~。さすが世界最大最強最悪ダンジョン『奈落』。それを攻略したライト様はマジ神だよねぇ~」
最後の1人、彼女も美しい顔立ちをしているが、前髪を伸ばし、纏う雰囲気がどこか暗い。だが逆に影があるため、押しが弱い、気弱な男子が好意を抱く空気を纏っていた。
「そ、そ、そんなマスター様と常に一緒のネムム様羨ましい。羨ましすぎる。羨ましすぎて壁に拳でドンってしたくなるぅ」
「分かる分かる~。その気持ちめっちゃ分かる~。出来るならネムム様と代わってライト様の側でお支えしたいよねぇ~」
「ですが、我々のレベルは500。地上に出ても主様の足を引っ張るだけですから」
「うぅぅーどうしてわたしはレベルが500しかないんだろう。もっとレベルがあればご主人様と一緒に地上で冒険者としてキャッキャうふふ、さらに危機が迫ったらご主人様の盾になって散ることもできたのに……」
一番普通な妖精メイドが頭を抱えて、テーブルに突っ伏す。
彼女の発言は一般的には非常に危うい考え方だが、召喚主であるライトに絶対的忠誠を誓う彼女達からしてみれば極々当たり前の思考だった。
故に誰もツッコムどころか『危機が迫ったらご主人様の盾になって散ることもできた』部分に非常に納得する。
基本、彼女達のようなカードから召喚されたモノ達は、どれほどモンスターを倒してもレベルは上がらない。
レベル500なら、レベル500と固定されているのだ。
マジックアイテムを持てばレベル固定でも強さを底上げできなくはないが……。彼女達のような妖精メイドが底上げしても、レベル5000のネムムと取って代わるのは非常に難しい。
オタクっぽい妖精メイドがさらなる爆弾を投下する。
「し、し、しかも現在マスター様達は雪山で、今はイエティーとかいう魔物の魔石を狙ってた、た、た、倒しているらしいよ。雪山、凍える2人、温め合うため肌と肌で抱き合い、男と女、何も起きない筈もなく……。最高じゃない?」
「冷気完全耐性カードを使えば余裕では?」
眼鏡を押し上げたメイドが一瞬で夢を砕く。
「もう夢が無いよ! ご主人様と抱き合えるかもしれないんだよ! わたし、想像しただけでもう――ッ!」
ライトに抱きしめられる光景を想像し、テーブルに突っ伏していた妖精メイドが今度は自身の体を抱きしめて興奮と悦びで体を震わせる。
そんな彼女を無視して他の少女達も思い思いに口にした。
「もちろん叶うなら、主様と抱き合って温め合いたいです!」
「あーしは逆にライト様を後ろから抱きしめてあげたいな~。こうあーしの腕の中でギュッとして冷たくなったライト様の体も心も温めてあげるとか、控えめに言って最高じゃない~?」
「う、う、う、ウチは、マスター様にメイド服を無理矢理引ん剥かれて裸にされて雪山にほ、放置されたい」
「「「変態か!」」」
あまりの発言に他3人が揃ってツッコミを入れた。
しかしオタクっぽい妖精メイドは、気にせず続ける。
「で、で、でもマスター様に無理矢理メイド服を手ずから脱がされて雪山に放置されるとか、ご褒美だよね?」
「分かります」
「分かる~」
「分かる――けどレベル高過ぎ!」
一通り同意、ツッコミが終わった所で、一番普通の妖精メイドがぽつりと漏らす。
「はぁ……早くご主人様、『奈落』に帰って来ないかな……。抱きしめられるなんて贅沢ありえないのは分かっているけど、せめて一目でいいからお姿をお目にしたいな。もう何日もお見掛けしてないから……」
眼鏡メイドがフレームを持ち上げる。
「確かに抱きしめられないのは仕方ないにしても、一目、いいえ一声でもいいですから主様の存在を感じ取りたいですね」
「分かる~。あーしもライト様の匂いとか嗅ぎたいな」
「ま、ま、マスター成分が切れそう……い、今、き、き、切れた。マスター成分が無いと死滅する。マスター成分が供給不足なんてぐ、軍事協定違反」
なんの軍事協定かは分からないが、他3人もなぜか深く同意するように頷く。
「ていうか、地上に居るライト様の敵は全部抹消しちゃえばいいのに~。そしてライト様が地上を支配すれば皆がハッピー、ハッピーになるはずなのに~。早くそんな世界がこないかな~」
「ほ、ほほ、本当にそれ、な!」
「すぐにそうされないのも主様の考えがあってのこと。メイド風情が口出しすることではありません。我々の存在意義は主様のお望みを叶えることなのですから」
メイド妖精が、フレームを押し上げて物騒な発言をする同僚を諫める。
「あー、早くご主人様にお会いしたいなー」
この一言に他3人も今まで以上に深く、深く同意し頷いたのだった。
本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。
番外編として現在『奈落』に住むメイド達によるライトに抱いている印象、感情について書かせて頂きました。
本編だけだとキャラクターの掘り下げがなかなか出来ないので、ときおり番外編として色々なキャラ等を書かせて頂ければと思います。
また今日も2話を連続でアップする予定です。
13話を12時に、14話を17時にアップしましたのでお見逃しないようよろしくお願い致します!(本話は14話です)。
では最後に――【明鏡からのお願い】
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