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35話 最後の触手

『ギギギギギギギギギギギギギギギギ!』


 取り押さえ、情報を引き出すため気絶させたヒソミの体内から、新しい触手が姿を現し声を上げる。

 口から出てきた触手は、背中から生えている6本の触手とはやや毛色が違った。


 ミミズのような見た目で、うねうねと体をくねらせる。

 ヒソミは気絶したままで、彼の意思で動かしている訳ではないようだ。

 見た目も合わさって非常に気味が悪い。


『ギギギギギギギギギギギギギギギギ!』


 再びミミズ触手が絶叫すると、倒れたヒソミの体が跳ね起きる。

 背中の触手がバネのように地面を叩き、起き上がらせたようだ。


 さらにそれだけでは終わらない。

 背中の触手が伸びてヒソミの体に巻き付いていく。


 背中の触手は昆虫の外皮のような硬さがあり、節がいくつもある。

 そのせいか、触手が伸びて体に巻き付く姿は、まるで無数の昆虫に集られているようにも見えた。

 ミミズ触手もヒソミの顔を隠すように巻き付く。


 あまりの出来事に警戒を強くしていると、絡みつきが終わる。


『ギギギギギギギギギギギギギギギギ!』

「!?」


 ミミズ触手が三度目の叫び声をあげると、触手に絡まれたヒソミが僕に向かって襲いかかってきた。


 反射的にその場から退避!

 ヒソミの右拳は空振り地面を叩く。

 土煙を上げて、地面が陥没してしまう。


「気絶……しているんだよな? なのに攻撃能力が上がっていないか?」

「はい、気絶していますね。鑑定でもそう表示されております。恐らく、あの絡まった背中の触手が原因かと」


 僕の独り言にメイが同意の声音をあげる。

 やはり意識を失っている状態なのか。

 身体能力と攻撃能力が上がっているのも、体に絡みついた触手の補助があるせいなのだろうか?


 単純な能力だけなら、レベル5000ではなく、レベル5500近くありそうだ。


 さらに、


『ギギギギギギギギギギギギギギギギ!』


 ミミズ触手が声をあげると、口から酸弾(アシッド・ブレット)を発射。さらに毒霧(ポイズン・ミスト)や初めて見る蜘蛛の糸のような粘着質な塊を吐き出してくる。

 酸弾(アシッド・ブレット)毒霧(ポイズン・ミスト)はともかく、蜘蛛糸が厄介だ。

 回避が遅れて右足が蜘蛛糸によって接着される。


「ライト様!」

『ギギギギギギッ!』


 メイが慌てて介入しようとするが、それより早く喜々とした声音をあげてミミズ触手ヒソミが襲いかかってきた。

 地面を楽に陥没させる拳を狂ったように振り回してくる。


「……ッ!」


 右、左、右、時折、ミミズ触手が伸びて僕に噛みついてこようとする。

 僕はその全てを杖と、拳でいなし、回避した。

 視界の端にいるメイは僕との距離が近すぎて援護し辛く、手が出せないでいた。


 伸びたミミズ触手の一撃が回避しきれず、頬をかすり『SSR、道化師の仮面』が弾け飛ぶ。

 だがお陰で相手の体が一瞬泳ぎ、隙が出来る。


「いつまでも足止めされていると思うなよ!」


 その隙を狙って、地面と接着された右足に全力で力を込めた。

 レベル9999で上がった脚力に一瞬だけ蜘蛛糸が抗うが、すぐにぶちぶちと力任せに切れてしまう。

 その勢いのままミミズ触手ヒソミの左脇腹を蹴り飛ばす。


『グギギギィッ!?』


 予想外の反撃にガードする暇もなく、敵はモロに蹴りを食らう。

 ミミズ触手ヒソミは投げられたボールのように吹き飛び、地面を転がり繭壁に激突する。

 一般的人種(ヒューマン)なら上半身と下半身が物理的に切断するだろうし、レベルが高い者でも肋骨が砕けて内臓に刺さるほどの重傷を負う一撃だ。


 ミミズ触手ヒソミはというと……。


『ギギギギィ……』


 蹴られた触手部分が砕けてはいるが、繭壁に手をつき立ち上がった。


 砕けた部分に新たな触手が絡みつき、補い始める。

 どうやらダメージはあるが、ヒソミ自身は気絶しているため痛みや動きに支障はなく、さらに触手によって再生、フォローすることすら出来るらしい。


 僕は未だ足に残っていた蜘蛛糸をメイが膝を突き取るのに任せて、観察する。

 メイが拾って手渡してくれた『SSR、道化師の仮面』を被り直す。


「主導権を触手が握っているせいで無駄にタフになっているな……」

(わたくし)の『魔力糸(マジック・ストリング)』で拘束できれば良いのですが……」

「いや、メイは引き続き繭の維持に専念して欲しい。ここで彼を外に出して逃げられるほうが不味いから」


 意外と周囲を覆う繭の維持の負担が高く、実はメイの援護は期待できない。

 周囲を覆い尽くす繭を『魔力糸(マジック・ストリング)』で作り出し、敵の攻撃にも耐えうるよう維持し続けているのだから当然といえば当然だ。


(氷で拘束するか? いや、あの様子じゃ氷を割って無理矢理出てこられるのがオチか……)


 蹴りの感触から中途半端な攻撃は通らず、まごついている間に相手の奥の手――例えば先程の噛みつき攻撃で、あのミミズ触手が僕の体に侵入。現在のヒソミのように体を支配しようとしてくる可能性もゼロではない。

 実際、ドワーフ種が長年隠し続けてきた『大規模過去文明遺跡』の人工海で巨大な魚モンスターに対して、メラが肉体を支配し乗っ取るキメラを作り出したことがある。


 あのミミズ触手に同じことが出来ないとは否定しきれないし、LV差があるから当然レジストできるだろうが表面くらいは浸食される可能性もある。

 そう考えればこの場面では慎重に行くべきだろう。


「……ここは手加減せず、殺すつもりでダメージを与えるか。メイ、いざという時、死にそうになったら回復アイテムを使う準備を頼む」

「畏まりました」


 もちろん回復アイテムを使うのは僕にではなく、死ぬ可能性のあるヒソミに対してだ。

 動けない瀕死状態まで追いつめて拘束するつもりである。


『ギギギギギギギギギギギッ!』


 僕に蹴り飛ばされて腹が立ったのか、今までと違って声音に怒りが滲む。

 真っ正面から突撃してくるミミズ触手ヒソミに、僕も答えるように真っ直ぐ突っ込む。

 メイは僕たちから距離を取り、防御態勢を取る。


『ギギギギギギッッッ!』


 口から酸弾(アシッド・ブレット)毒霧(ポイズン・ミスト)、蜘蛛糸、さらには氷柱まで吐き出す。

 恐らく背中の6本触手が吐き出す事が出来る能力の中で、有効だと思われるものを最大限限界まで吐き出しているのだろう。


 僕は頭の隅でそんなことを考えつつ、恩恵(ギフト)『無限ガチャ』カードの1枚を切る!


「『SR、ファイアーウォール』、解放(リリース)!」

『ギギギッゥ!?』


 全ての攻撃が回避され、目の前に突如、繭天井まで届くほどの巨大な炎壁が姿を現す。

 見た目が気持ち悪い触手でも生物の本能には逆らえず、反射的に速度が落ち蹈鞴を踏む。

 僕は気配変化を敏感に感じ取りつつ、手にした杖――神葬(しんそう)グングニールを突撃の勢いに合わせて全力で投擲!


『グギギィッ!』


 炎壁を突き破り、矢のように飛来した杖を正面から受けミミズ触手ヒソミはガードする暇もなく吹き飛ぶ。

 地面を転がり、再び駆け出した位置、繭壁まで吹き飛ばされた。


 僕は手に戻った神葬(しんそう)グングニールを握り締め、懐からカード……『UR、カードホルダー』に仕舞ってある『SSR 爆豪火炎』の全てを切る!


「メイ! 繭を強化! 全力でいくぞ!」

「お任せください、我がメイド道に懸けて外部に漏らすマネは致しません!」


 彼女の声を聞き届け、僕は一つ頷き『SSR 爆豪火炎』×99を全て解放する。


「抗えるのなら抗って見せろ! 『SSR 爆豪火炎』、フル解放(リリース)ッッッ!」


 刹那、繭内側で火山が噴火したかのような大爆発が起きた。


『グギャアアアァアァァッッッ!』


『SSR、道化師の仮面』越しに、爆発に呑まれて致命傷を負うミミズ触手ヒソミの姿を捕らえたのだった。

本作『【連載版】無限ガチャ』を読んで頂きまして誠にありがとうございます。


引き続き頑張って書いていきますので、何卒宜しくお願い致します!


また最後に――【明鏡からのお願い】

『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。


感想もお待ちしております。


今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] バイオハザードを連想させてしまうなw
[一言] レベルの意味あります?
[一言] 格下に2人で手こずる....
2021/12/08 18:32 退会済み
管理
感想一覧
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