26話 復讐方法の考察
ダガンの誤解を解き、無事にドワーフ王国の王印を受け取る。
ちょうど良いタイミングだったので、上の階層で発見した冒険者の遺したものであろう剣先を見せて、遺品として地上に持って帰り埋めてやりたいと告げた。
冒険者本人達は死亡し、下手すれば数百年前のものなので遺族も生きてはいないだろう。
一応、ドワーフ種の極秘過去文明遺跡での遺品のためダガンに許可を取ったのだ。
別に地上に刃先を持ち帰り、土に埋めたところで意味はない。
ただこの過去文明遺跡に残り続けるより、地上に持ち帰って埋めた方が冒険者達への供養になると思っただけである。
ある意味僕の自己満足的行為だ。
この提案にダガンは快く了承する。
「かまわんぞ。ライト殿。むしろそこまで考えてくれて冒険者達も草葉の陰で喜んでいるじゃろう」
どこか優しい笑みでダガンが答える。
ダガンの言葉に僕も頷き、感謝の念を伝えた。
ナーノのようなどうしようもないドワーフ種も居れば、ダガンのような者も居ることに僕は複雑な感情を抱く――が、そんな複雑な思いもすぐに呆れに変化する。
「さて……一段落したな。では、この場に儂は残って研究するぞ!」
「ダガン王はまだ上で仕事が残っているだろうが! いいから大人しく仕事をしていろ! わし達に任せておけ、な!」
「国王の仕事がなんじゃい! お主達ならばこれほどの奇跡的成果を前に大人しく、研究せず引き下がれるのか?」
「するわけないわい!」
「親族を売り払い、借金してでも残って研究を続けるな!」
「なら儂の気持ちが理解できるだろ!? 王の仕事など忘れて研究させろ!」
遺品の話をした際、国王らしさを見せていたダガンはまるで子供のように我が儘を言い出す。
他ドワーフ種達が説得するが耳を貸さない。
……他ドワーフ種達が言葉にはしないが『自分達は関係ないから。これだけの研究物を前に地上に戻っても国王として仕事とか可哀相ですねー。まさに愉悦!』と言いたげな表情、態度のためダガンがさらに意固地になってしまっていた。
もっとちゃんと説得すればいいのに……。
しまいにはドワーフ種同士で殴り合いに発展する。
「!?」
「ご、ご主人様、あれ、止めなくてもいいのかな?」
気が弱いスズ、突然始まった喧嘩に驚いたナズナがおろおろしながら問いかけてくる。
短い付き合いだが、彼らの気性は理解してしまった。
溜息を一つしてから返答する。
「スズ、ナズナ、気にしなくても大丈夫だよ。僕達は危険なモンスターやトラップが無いか注意しておけばいいから」
2人ともとまどいはしたが、僕の指示が出たためそれ以上は気にせず職務へと戻る。
その間もドワーフ種達は殴り合いという名の話し合いを続けていた。
☆ ☆ ☆
殴り合いの結果、ダガンは地上へ戻り、今回の発見物の研究より国王としての仕事を優先させることを約束する。
彼らも極秘裏に今回の発見物を研究するための手続きをするため、すぐには取り掛かれない。その辺りを交渉材料にして納得させたようだ。
ダガン達が殴り合いをしている間に、メラから分離した分体達が戻ってくる。
分体を統合し記憶を確認した限り、モンスターや罠もなく、これ以上下りられる穴も無い。
その報告のため一時帰還したようだ。
僕らは他建物にマジックアイテムや本等が無いかの確認のため家捜しを続行した。
数が多いため、丸1日この地にキャンプすることになる。
ドワーフ種達は文字通り寝食も忘れて調査し続けた。
結果だけ言うと――多少の低位マジックウェポン、アイテムを発見したが、それ以上の発見はとくになかった。
最初の直感通り、ここは過去の種達が篭もるために作られた住宅地らしい。
低位マジックウェポン、アイテムも住宅の中から発見されており、自衛用な雰囲気がある。
またドワーフ種達は過去文明遺跡の調査だけには飽きたらず……。
「お嬢ちゃん、ちょっとだけ! ちょっとだけじゃから!」
「来るな! こっち来るな! ご、ご主人様に言いつけるぞ!」
ナズナの持つ神話級『大剣プロメテウス』を調査、分析しようとドワーフ種達が躙り寄る。
レベル9999のナズナが妙な迫力に押されて、涙目で後退る光景を目にしてしまう。
さすがに彼女が怯えていたのでダガン達に注意して止めさせ、釘を刺しておいた。
この時、ナズナは『さすがご主人様、凄いぜ!』と尊敬度をさらにアップさせた表情をしていた。
より尊敬されるのは嬉しくはあるが……こんな理由なのはちょっとどうなんだろう、という気もする。
閑話休題。
とりあえず、無事に調査を終えて、ドワーフ種達を連れて『SSR、転移』を使用。
ドワーフ王国港街で待機している一団と再度合流を計る。
今後はまず極秘裏に回収した書籍やマジックウエポン、アイテムが研究できる場所の確保、環境作り。ちなみに他金銀財宝や、比較的他のものより使えそう・強力そうなマジックウェポン・アイテムは、ダガンに一言伝えた後に『奈落』へ運んである。
将来的には研究のために、過去文明遺跡の最終地点まで研究者達を定期的に『SSR、転移』で連れていくことになるだろう。
ダガン達とも話し合ったが、地上に極秘施設を作るより過去文明遺跡最終地点に研究施設を作った方が、機密性が高いためだ。
一応、地上にも作る予定だが、『竜人種と魔人種相手に地上で隠し続けることは難しい』のと、あれだけの書籍やマジックウエポン、アイテムを管理するとどうしても地上では目立つためである。
地上で調査のとっかかりとなるモノをまとめて、長期間に渡る研究は過去文明遺跡最終地点でおこなわれる可能性が高そうだ。
もちろん全ての研究成果は『奈落』に伝えてもらうことになっている。
ダガンは『さっさと国王を引退して研究に没頭したいわい』と鼻息荒く愚痴をこぼしていた。
機密保持のためにもあまり大声で言うことではないと思うが……。
下手に突っつくと面倒そうなため聞かなかったことにする。
無事に僕達はやるべきことをやって、『奈落』最下層へと帰還する。
僕も流石に疲れたため、その場で解散を宣言。
自室へと戻りベッドで横になる。
僕はベッドに転がりながら1人溜息を漏らす。
「ダガン達の相手は疲れた……肉体的じゃなくて、心労的に……。けど、お陰で過去文明遺跡で『ますたー以外の存在』がいる可能性についても確認できたし、ドワーフ王国の王印と全面協力の約束も得ることができた。これでドワーフ王国から横槍が入るどころか、王国全てに協力させてナーノに復讐が出来る」
とはいえ、未だどうやってナーノに対して復讐するかまでは考えていない。
サーシャの時のように僕が満足できる復讐を果たしたいのだが……。
僕はゴロゴロとベッドに転がりながら、ナーノに対しての復讐方法に思いを馳せたのだった。
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